有休取得の義務化、約半数が「知らない」と回答 「出勤日の残業が増え職場がブラック化するのが怖い」と危惧する声も
2019年4月から、年10日以上の有休が付与される労働者に対して、年5日以上有給休暇を取得させることが義務化される。この有休取得義務化を「知らない」(48.3%)と答えた人が約半数だった。
有給休暇の義務化を知らない人が約半数とのことですが、
職場で有給休暇を取得できる環境が作られていないと、
このような情報も入ってこないもの。
義務化で取得する日数は年に5日以上ですから、
2ヶ月に1日のペースで取得するだけでもクリアできる水準です。
有給休暇を取得させるための環境整備
義務化に対応する以前に、
有給休暇を取得させるような環境を整えていない職場もあります。
1.本人がどれだけ有給休暇を持っているのかを知らせる
入社して6ヶ月以降になれば、
出勤率80%以上という条件はありますが、
有給休暇は付きます。
その後、1年6ヶ月、2年6ヶ月、
と1年刻みで有給休暇が付与されていきますけれども、
その残日数が分かるようにしているかどうか。
給与明細に有給休暇の残日数を記載しておくのが一般的ですが、
それができていないとなると、
自分にどれだけ有給休暇があるのか分かりません。
個人ごとに残日数は違いますから、
毎月の給与明細で通知するのが簡便です。
備考欄にちょこっと書くだけでいいんです。
まず、ここができていないと、
そもそも有給休暇を取れません。
自分に有給休暇がどれだけあるのか分からないと、
取得申請もできませんからね。
給与明細に有給休暇の残日数を記載しておく。
これは有給休暇を取得するための環境整備として必須です。
2.有給休暇を取得申請する手順を決める
どういう手順で有給休暇を申請するか。
これを決めておくことも必要です。
- 勤務スケジュールを調整して、有給休暇を取得する日を決める。
- その後に、申請書を書いて提出する。
申請書で記録を残しておくのが大事です。
いつ取得申請したのか。
有給休暇を取得する日はいつか。
ここをハッキリさせておかないと、
後からスケジュールを間違って休んでしまう、
もしくは出勤してしまうことも。
申請書といっても、
記録を残すためのものですから、簡単なもので足ります。
- 申請日
- 名前
- 社員番号など
- 有給休暇を取得する日
書くとすればこれぐらいです。
A4サイズを4分割したぐらいの小さい用紙で足ります。
テンプレートを作り、1枚印刷して、
それをハサミやカッターで切って使うのも良いですね。
事業所によっては、
メールや勤怠管理システムで
有給休暇の申請や管理をしているところもあるでしょう。
3.有給休暇のスケジュール調整は従業員同士に任せる
ここも重要なポイントです。
有給休暇を取る時に上司が介入すると、
何かと不満を招きやすいもの。
上司は有給休暇の取得を妨害するようなことを言うと
部下は思っているものです。
有給クイズを出して嫌がらせする人もいるぐらいですからね。
業務が回らなくなる状態を回避できれば、
有給休暇を取っても支障は無いのですから、
従業員同士で勤務シフトを調整して、
坂本:「私はこの木曜日に有給休暇で休むわ。
今井さんが出勤しているし」
今井:「そう。じゃあ、木曜日は出勤して、
来週の月曜日に私は有給を取るわ」
こういう感じで、
お互いの勤務スケジュールを見比べながら、
出勤日と有給休暇を調整してもらえばいいのです。
「代わりに出勤する人がいない」
という職場もあるでしょうが、
カツカツの人員で業務を回すと有給休暇を入れる余地がありませんから、
ワークシェアリングに近い発想で人員に余裕を持たせておく必要があります。
これは使用者が取り組まないといけないところです。
具体的な調整方法としては、
全員分の勤務スケジュールを書き込む用紙を用意して、
出勤する日や休む日を各自が書き込んでいきます。
上司が1人で勤務シフトを作るとなると、
調整が面倒ですし、時間もかかります。
事前に従業員同士で、
スケジュールを調整してくれると、
上司に回ってきた段階で
すでに勤務シフトがほぼ出来上がっている状態になります。
従業員同士でスケジュールを調整するため、
有給休暇の取得が促進されますし、不満を感じにくい。
さらに、
勤務シフトを作成する手間や時間も減らせます。
- 残日数を給与明細で通知する。
- 申請手順を決める。
- スケジュール調整は従業員同士で。
この3点を満たすような環境を作れば、
有給休暇の取得は促進されるでしょう。
有給休暇を定期取得 2ヶ月に1日は取得する
有給休暇の義務化は大企業だけでなく、
中小企業も対象です。
年5日以上、有給休暇を取るならば、
最低でも2ヶ月に1日以上のペースで取得していく必要があります。
1ヶ月に1日なら、年間で12日です。
個人的には、
年10日以上で義務化しても良かったのではないかと思えますが、
まずは5日以上をラインにして様子を見るのかと。
1ヶ月に1日ぐらいなら、
有給休暇を入れることも難しくないのでは。
休日は取れるけれども、
有給休暇は取れないというのもおかしな話ですし。
休む暇がないほど繁盛している事業所ならば、
それはそれで結構ですけども。
有給休暇を取れないというよりも、
「取る環境が整備されていない」
のが問題ではないでしょうか。
「有給休暇があれば、安い時期に旅行に行けるので嬉しい」(50代女性)
これは良い使い方ですね。
年末年始やお盆時期は旅行料金が高くなります。
閑散期に比べ、
繁忙期の旅行料金は3倍ぐらいになる傾向があり、
繁忙期を避けられるのは有給休暇の利点です。
「10年以上同じ職場で働いていて、1日も有給を取得したことがないので、義務化され有給が使えるようになれば嬉しい」(30代女性)
有給休暇を取得する環境が整備されていない職場なのでしょう。
10年も働いて、1日も有給休暇を取っていないとなれば、
時効で消滅した分を除くと、
有給休暇の残日数は40日になっています。
まずは、有給休暇を取得する環境ができているかどうか。
ここが出発点です。
閑散期に年次有給休暇を取ったら年休取得促進手当を支給する
年次有給休暇の取得促進策の1つとして、職場の閑散期に有給休暇を取ってくれたら年休1日あたり1,000円の年休取得促進手当を出します。これにより、繁忙期に有給休暇を避ける効果が期待できますし、年次有給休暇の計画取得のようにスケジュールが固定されません。
例えば、5月、7月、9月には例年、仕事が少なくなり、閑散期になるならば、5月に年休を1日取得した場合、年休取得促進手当として1,000円加算します。3日取得すれば3,000円です。
このようなインセンティブがあれば、仕事が少なくなっている時期に年次有給休暇を集中して取ってもらいやすくなります。
さらに、対象の全ての月に年次有給休暇を取得したら、さらに追加で年休取得手当を3,000円支給します。上乗せインセンティブです。
一例として、5月と7月と9月、それぞれの月に1日の年休を取ると年休取得促進手当は3,000円です。さらに、対象の全ての月に年次有給休暇を取得したので追加で3,000円。合計で6,000円になります。
閑散期に有給休暇を取ると手当が加算されるのですから、「それならば、この月に年休のスケジュールを入れるか」と思いますよね。
年休取得促進手当を支給すると、繁忙期に年休を取るのを避けるよう意識してもらうことができますし、年休の取得義務化への対応もできます。さらに働く人も嬉しいですから一石三鳥です。