- 今までは電車通勤だったけど、徒歩や自転車での通勤に変えた
- 通勤手当を支給する条件を決めるときのポイント
- 運賃はタダだが自転車や徒歩でも費用は発生している
- 自転車通勤のコストはタダ?
- 歩くのも、自転車に乗るのも、費用が発生している
- 通勤手当が出れば自転車で通勤する人は増える
- インセンティブがなければ人は動かない
- 住宅手当を組み合わせて自転車通勤を増やす
- 通勤手当を支給しないとどういう効果がある?
今までは電車通勤だったけど、徒歩や自転車での通勤に変えた
最近までは電車で移動していたけれども、健康のために徒歩移動に変えた人とか、または自転車移動に変えた人がいらっしゃるのではないでしょうか。
10kmぐらいだったら自転車で移動できる(いわゆるママチャリでは辛いか)距離でしょうし、徒歩でも2km程度ならば歩こうと思えば結構歩けるものです。
ただ、「今までは電車通勤で交通費が支給されていたけれども、徒歩や自転車に変えたら交通費はなくなるのかな?」と思う人もいるのではないでしょうか。
バス通勤でも同様ですね。先月まではバスを使っていたけれども、今は徒歩で通勤している人も上記と同様の思いを抱くのではないかと思います。
交通機関を使おうと思えば使えるが、あえて使わないことを選択すると交通費がなくなっちゃうのは何か変な感じだよね、と思ってしまうのが人の感情ですから、上記のように思うのは不思議なことではないです。
通勤手当を支給する条件を決めるときのポイント
通勤手当を出すとすれば、まず公共交通機関、電車やバスを使っている人たちに限定して手当を出すのか。それとも、交通用具を使って通勤している人たちも対象にするのか。
さらに、「交通用具」と表現すると、これは何を意味するのかがまた問題となります。自動車を意味するとしたら、四輪の自動車だけが対象になるのか、それとも二輪の自動車も含むのか。二輪の自動車を含むならば、原付一種や原付二種だけなのか、それとも250ccや400ccといった大きな二輪も含むのか。さらに、交通用具の中には自転車も含まれるのかどうか。
どのような交通手段で通勤した場合に通勤手当の対象になるのかを決める必要があるんですね。
通勤距離の制限を設けるとすれば、例えば2km以上離れた場所から通勤している人を対象にするのか。自転車ならもっと近い距離から通勤する人もいるでしょうから、500mや1kmの距離で通勤している人たちも通勤手当の対象にするのか。自転車で通勤するなら距離は1km以上というように条件を緩和してみるのか。
通勤手当の支給条件は会社ごとに色々と設定の仕方があり、工夫の余地がありますよね。
ちなみに、通勤手当を支給する額を少なくして、職場の近くに住んでいる人を採用していくのも工夫の1つです。職場ごとに合った形で通勤手当の条件を設定して運用していく。これが人事労務管理では求められるんですね。
運賃はタダだが自転車や徒歩でも費用は発生している
交通費というのは"実際に発生した費用"に対して支払われる金銭です。
それゆえ、実際に交通機関を使っていない社員さんに対して交通費は支給されません。
でも、社員さん本人は「あえて使わないことを選択したのに何か損した気分だ、、」と思ってしまいますよね。「会社の経費削減にも寄与しているのに、、、」という気分にもなるかもしれません。
ならば、何らかのフォローを実施すれば満足してもらえるのではないでしょうか。
つまり、あえて徒歩通勤や自転車通勤を選択した社員さんに対して"何らかの旨味"を与えれば良いわけです。
歩けば靴底が減りますし、自転車はタイヤやブレーキが消耗し、車両本体も劣化していきます。つまり、運賃はかからないものの、通勤のための費用は生じているわけです。
例えば、電車通勤やバス通勤を自転車通勤に切り替えた社員さんに対して「自転車購入補助金」というお金を支給するのも有効なフォロー方法ですよね。
あえて自転車で通勤しようとする人なのだから、何かこだわりの自転車に乗る人が多いのではないでしょうか。ロードレーサーなどのスポーツ型の自転車に乗る人には補助は喜ばれるのではないかと思います。
また、徒歩通勤でしたら、靴の購入補助とかも良いのではないでしょうか。歩くと靴底がすり減りますから、これは徒歩通勤の経費とも言えます。
長い距離を歩く人だと、革靴やハイヒールではなくスニーカーを履いて通勤し、会社に到着してから革靴やハイヒールに履き替えるのではと思います。
そのため、通勤で使う靴の購入費補助を実施すれば喜ばれるのではないでしょうか。
もちろん、上記の補助には月毎や年毎の上限を設けて運用すれば過大な支出にはなりませんから、会社にも負担にならないはずです。
自転車通勤のコストはタダ?
国土交通省のウェブサイトに「自転車通勤導入に関する手引き」という文書が掲載されており、自転車での通勤を奨励する内容になっています。
自転車通勤導入に関する手引き(国土交通省)
通勤手段というと、電車かバスが主流ですが、自転車で通勤している方もいます。
自宅から事業所まで距離が短ければ自転車で通勤するでしょうが、自転車通勤には通勤手当を出さないところが多いのが残念な点です。
公共交通機関を利用すれば運賃がかかりますから、その費用を通勤手当として支給するのは分かります。一方、自転車で職場まで行けば、時間と自転車を漕ぐ労力が必要とされるものの、運賃は発生しません。そのため、自転車通勤には通勤手当が出ないことが多いのです。
満員電車でヘトヘトになるよりは自転車で風を感じながら通勤する方が気持ちいいでしょうし、通勤用の車を駐車する費用もかからなくなりますし、色々と利点はあります。
ただ、通勤する本人が利点を感じないと、自転車での通勤を促進するのは難しくなります。
健康に良い、満員電車に乗らなくていい、こういう点も利点ではありますが、「よし、自転車で通勤しよう」と決断するには弱いでしょう。
バスや電車は運賃がかかりますが、自転車通勤は運賃は必要無いものの、色々と費用はかかっています。
車両、消耗品交換などのメンテナンス、自転車を漕ぐ労力、雨の日に体が濡れる負担、暑い日に汗だくになる厄介さ、など自転車であってもタダで通勤できるわけではありません。
電車で通勤していると会社に申告して通勤手当が出ているのに、実際は自転車で通勤して電車には乗らない。こういう通勤手当の不正受給を防ぐ効果も期待できるのでは。
電車には通勤手当が出るけど、自転車で通勤すると通勤手当が出ない。だから電車で通勤していることにして通勤手当だけを受け取ろうとする。そういう不正が発生するとすれば、自転車で通勤した人にも通勤手当が出れば、不正も少なくなっていくのではないかと。
歩くのも、自転車に乗るのも、費用が発生している
電車やバスに乗れば運賃を払いますけれども、運賃という形で金額がわかれば、確かに交通費としては支給しやすいのかもしれません。一方、歩いて職場に来たり、自転車に乗って職場に来ている人からすれば、歩いたり自転車に乗るのもタダじゃありませんからね。
歩けば自分の体が消耗しますし、エネルギーを使います。自転車も、車両を購入する費用がかかりますし、パンクすれば修理しなければいけません。ブレーキシューも減ってきますし、タイヤもすり減れば交換しなければいけないわけです。当然、故障すれば修理も必要でしょう。
歩いたり自転車に乗るのもタダではなくて、相応の費用がかかってるわけですから、それに対して補助を出すのはあってもしかるべきです。
今回は、自転車の通勤についてだけ書いてますけれども、徒歩での通勤だって補助があっても良さそうですよね。例えば、1回通勤するごとに100円とか。1か月で20日通勤すれば2000円になりますし、その費用をジムやスポーツクラブの会費に充当する、なんてこともできるわけです。ほら、健康的でしょ。
電車やバスだけでなく、徒歩や自転車で通勤する人たちに対して、どういう仕掛けをしていくのか。これも労務管理で考えていかなければいけないところでしょう。
通勤手当が出れば自転車で通勤する人は増える
「通勤手当も出ないのに、なんでシンドイ思いをして自転車で職場に行かなければいけないのか」
「電車やバスに乗れば、乗っているだけで目的地に運んでくれるし、夏は涼しく、冬は温かい。自転車を漕ぐ体力も要らない」
このように思ってしまえば、自転車で通勤しようと思う人は増えません。
しかし、通勤手当が出るとなると、話が変わってきます。
電車やバスなどの公共交通機関を利用しないと通勤手当は出ないと思っている方もいらっしゃるでしょうが、実は自転車での通勤に対しても税制上の非課税枠が用意されています。
職場から自宅まで近いという前提条件が必要ですが、片道2kmぐらいならば自転車での通勤ならば現実的なものです。
さすがに毎日、片道10kmなんて走っていられないし、真夏は汗だくになりますが、2kmからkmぐらいでしたら自転車で走れるでしょう。
自転車の平均時速を12km/hだとすると、片道3kmだと片道15分かかります。15分間、自転車を漕ぐ前提ですから、実際は一時停止や赤信号で停まります。となると、25分ぐらいはかかるでしょう。ゆっくり運転する人だと30分は見積もっておく必要があります。
ゆっくり運転して30分で3km。2kmだと20分。通勤時間としてはそう長いものではありません。
片道2キロメートル以上だと、月に4,200円までは非課税で通勤手当を支給できます。なお、距離に応じて非課税の枠は大きくなります。
ちなみに、電車での通勤だと1ヶ月に15万円もの非課税枠があり、新幹線での通勤も想定してのことですが、ここまで優遇すると自転車で通勤するなんてバカバカしくなります。
通勤ラッシュの原因の1つは、電車に対する税制上の優遇が厚すぎる点にあるのではないかと思っています。
仮に、自転車で自宅から職場まで行き来するとして、毎月4,200円を交通費として支給されたらどうなるでしょうか。年間だと50,400円になります。
自転車で通勤して、年間50,400円の交通費が支給されたら。どうでしょう、「自転車で通勤しようか」と思い始めるのではないでしょうか。
インセンティブがなければ人は動かない
「健康にいいですよ」、「満員電車に乗らなくて済みますよ」というだけでは自転車で通勤しませんが、「1年で50,400円の交通費が出ますよ」となれば動く人は出てきます。
言葉だけでは人は動きにくいですが、お金が絡んでくると人は動き出します。
仮に、1回の自転車通勤で200円の通勤手当を出すとして、月に21回出勤すれば4,200円。これならば非課税枠の範囲内です。週5日出勤の方だと、月に21回ぐらいの出勤日数になるはずです。
月に4,200円だと、年に50,400円。2年に1回、自転車を買い換えるとすれば、100,800円の購入補助が付くようなものです。
ただ、2年も乗れば、パンク修理はするでしょうし、タイヤやブレーキシューも交換するはずです。それゆえ、車両代以外にも費用はある程度かかります。
シティサイクルだと、1台30,000円も出せばかなりいいものが手に入ります。2年で乗れなくなるほど品質が低いものは少なく、4年なり5年は乗れるものが手に入るでしょう。
スポーツタイプの自転車だと1台10万円ぐらい(高いものだと100万円を超えるものも)するでしょうが、通勤手当を自転車を購入する際の補助として利用すれば、随分と費用負担が軽くなります。
ポケットマネーで高級自転車を買うのは抵抗感がありますが、通勤手当で購入費の一部を補助してもらえるとなれば、「じゃあ、自転車で通勤するか」と気持ちが変わるのでは。
このようなメリットがあれば自転車で通勤しようかと思う人も出てきます。電車やバスで通勤しても、通勤手当はすべて運賃に消えますから後に残りません。体を目的地に運んでもらえば、それで終わりです。
手当も出ないのに、単に健康を目的に自転車で通勤する人がどれだけいるでしょうか。自転車好きの人ならば分かりますが、それ以外の人は違う選択をするはずです。
自転車通勤もタダではありませんから、何の見返りもなしに電車やバスから自転車での通勤に変える人は多くないでしょう。
「通勤手当が出るかどうか」ここが自転車通勤が普及するかどうかの境目です。
税制上の非課税枠を1キロメートル以上から設定すれば、自転車通勤に対して手当を出しやすくなります。
例えば、
1キロメートル以上5キロメートル未満:2,900円
2キロメートル以上10キロメートル未満:4,200円
このように、もう1段階メニューを追加すれば、自転車通勤にも適用しやすいでしょう。
住宅手当を組み合わせて自転車通勤を増やす
職場から近い場所に住んでいる人に住宅手当を出すようにして、さらに自転車通勤に通勤手当も出せば、遠いところから通勤する人は減ります。
月に15万円もの非課税枠を作ってしまうと、もっと遠くから通勤しても大丈夫だと思ってしまい、通勤ラッシュは解消できません。
職場の近くに住めば、住宅手当が出て、さらに自転車で通勤すれば通勤手当も出る。自転車を買い換える費用も少なくなり、常にキレイな自転車に乗れる。
自分がどれだけ得をするか。人が行動を起こすかどうかの出発点はここです。
通勤手当を支給しないとどういう効果がある?
通勤手当を支給しないというのも1つの手です。
人材募集の条件で通勤手当全額支給と書かれているものを見かけますが、通勤手当を支給するかどうかは会社ごとに決めることができます。そのため通勤手当や交通費が出ない職場があっても構わないのですね。
通勤手当が出ると、職場から遠いところから電車やバスに乗って通勤することができる利点があります。
職場から近くに住んでいる人を募集したいと考えているならば、通勤手当を支給しない条件にすると、遠くから通勤する人は応募してこなくなります。
近くに住んでいる人だと勤務シフトに融通をきかせやすいでしょうし、通勤する負担も少なくなりますから、働く人にも利点があります。
他にも自転車で通勤する人に限って通勤手当を出すのも1つの方法です。電車やバスで通勤する場合には通勤手当は出ませんが、自転車ならば1回出勤するごとに200円を支給する。これだと自転車で通勤できる範囲の人たちが人材募集に応募してくるでしょう。
通勤手当の条件を工夫して、人材募集に応募してくる人を変えていくことができるのですね。