夜遅くまで働き、翌朝早い出勤を避ける
仕事が終わると、家に帰って食事をして、お風呂に入り、寝る。
そのように休息を取ってから、次の日の出勤を迎える。
2日間連続で出勤日が続いていると、
こういう形のスケジュールになるかと思います。
ここで、仕事が終わって、
翌日の勤務を開始するまで何時間あけておけばいいのかが問題になることがあります。
仮に、夜の20時に仕事が終わるとして、
次の日も出勤だとすると、最短で何時から仕事を始めるのがよいのか。
あまり時間に余裕がないと寝る時間がなくなりますから、
出勤日の間はある程度の時間的間隔が必要です。
夜20時に仕事が終わるとして、翌日は朝の5時から出勤だと、
なかなか本人とっては辛いわけです。
帰って寝るだけになりますからね。
遅番の翌日が早番だと、こういうスケジュールになります。
20時から翌朝の5時まで9時間ですから、
その時間で家に帰って、食事して、お風呂入って、
寝て、職場に出勤して、
となると9時間で足りるのかどうか。
寝る時間を8時間として、通勤時間は往復で1時間、
生活に使う時間は2時間。これだと休息時間は11時間ありますが、
11時間は長いように感じるものの、
寝て休息するにはカツカツな時間です。
まして9時間でこれを全てやるとなれば、
おそらく時間不足でしょう。
そこで、翌日の勤務まで何時間あけるかを決めるのが勤務間インターバルというもの。
意識することなく勤務間インターバルを取れている職場も
勤務間インターバル制度とは、
終業時刻から次の始業時刻の間に、一定時間の休息を設定するもの。
勤務間インターバルについて特に決めていない職場だけれども、
インターバルを取れている。
知らないうちに時間的間隔を取れている。
そういう職場もあるでしょう。
ルールは無いものの、
翌日の始業時間まで11時間あけるようにしている。
慣例として、そのような対応をしているところもあるのでは。
夜の18時に仕事が終わって、翌日は9時から始業だとすると、
休息時間は15時間ありますから、
スマホをいじって夜更かししない限りは、
健康上の負担というのはなさそうです。
体を使って仕事をする職場だと、
勤務時間にブレが少なく、仕事の時間も定時で始まり、
定時で終わるところが多いのでは。
問題となるのは、夜遅くまで仕事をして、
翌日の勤務が早いときです。
夜の22時頃まで仕事をして、翌日は6時からとか。
こうなってしまうと、寝る時間がほとんどありませんから、
眠たくてぼんやりして事故を起こしたりするもの。
それを避けるために、仕事が終わって、
翌日の勤務を開始するまで、ある程度の時間を空けなきゃいけないわけです。
勤務間インターバルに関しては、特にルールは定めていないけれども、
勤怠データを見てみたら、11時間以上の休息はちゃんと取れている。
意識せずに勤務間インターバルは取れてしまっている。
そういう職場ならば、問題は無いのでしょう。
定時に仕事が始まって、定時に仕事も終わる職場だったら、
勤務間インターバルのルールを作らなくても支障はありません。
ただ、就業規則で決められている方が、判断の基準があって安心できます。
しかし、日によって勤務シフトが違う、
朝の時間帯に出勤したり、夕方の時間帯や夜の時間帯に出勤したり、
コロコロと働く時間が変わる職場では、
出勤日が連続すると、休息時間が短くなってしまう日も出てきてしまいます。
それを避けるために、勤務間インターバルをルールとして作っておいて、
判断する際の基準にします。
就業規則で勤務間インターバルのルールを決める
勤務間インターバルを設ける努力義務が法律で決まっています。
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の2条1項で、
『健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定』と書かれており、
この部分が勤務間インターバルの根拠になっています。
では、どうやってルールを決めるのか。
厚生労働省の規定例を参考に考えてみましょう。
例えば、就業規則で、
1 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の
開始までに少なくとも、11時間の継続した休息時間を与える。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及
ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみ
なす。
と決めているとしましょう。
上の規定例では、
「休息時間と翌所定労働時間が重複する部分を労働とみなす場合」とされているものです。
仮に、木曜日と金曜日が出勤日だとして、
木曜日に夜の22時まで働いたとします。
では、夜の22時に終業して、
翌日の金曜日は何時から出勤すればいいか。
11時間の休息時間を入れる必要があると決めていれば、
22時から11時間経過した時間というと翌日の9時です。
最短で翌朝の9時から仕事を始められると判断できます。
もし、金曜日の始業時間が朝の7時になる場合は、
7時から9時までの時間は休息時間なので、これを労働したものとみなします。
実際は9時から仕事を始めているのだけれども、
7時から仕事を始めたと扱って、労働時間を計算していくわけです。
捉え方によっては、2時間分の特別有給休暇を取ったようなイメージです。
休息時間を取れない場合、特別有給休暇を用意しなければならず、
使用者にとっては「ちゃんと勤務間インターバルを取れるようにしないと費用がかかる」と思わせる効果があります。
また、始業時刻を繰り下げるパターンも例示されています。
1 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の
開始までに少なくとも、11時間の継続した休息時間を与える。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及
ぶ場合、翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下
げる。
1項の内容は先程と同じですが、2項の内容が変わっています。
こちらの場合は、働いたとみなすのではなくて、
始業時間を後ろにずらしていくというもの。
金曜日の始業時間は7時を予定していたけれども、
休息時間が11時間必要なので、
始業時間を9時まで後ろにずらしていく。
これで休息時間の11時間を確保するルールの決め方です。
足りない時間を働いたとみなすのか。
休息時間が終わるまで始業時間を後ろ倒しするのか。
2通りあります。
ルール通りに勤務間インターバルを取れている場合は、
特に何かする必要はないのでしょうけれども、
業務上の都合で、決まった休息時間を取れなくなる時があるとすれば、
その時にどういう対応するか。
時間単位の特別有給休暇を付与して穴埋めする、
休息時間が取れなかった日の翌日を休みにする、
不足した休息時間に対して割増賃金を支払う、
など対処法を用意しておくのも一考です。
努力義務ですから、休息時間を取れなくても、
使用者、労働者、双方に何らのペナルティは無し、という対応もありです。
勤務間インターバルを導入している例
勤務間インターバルの導入事例が掲載されており、
一通り目を通してみると、ルール通りにならなかったといって、
何か特別なことをしている会社は少ないようです。
就業規則にルールとして決めているため、
ある程度の強制力はあるものの、履行できない場合のペナルティは無し。
中には、フレックスタイム制と勤務間インターバルを組み合わせるところもあり、
勤務時間を本人に調整してもらい、
インターバル時間も本人がコントロールしていくようです。
フレックスタイム制を利用すれば、
通勤ラッシュを回避できるでしょうし、
本人に働く時間を決めてもらうと、
長時間労働は減っていくとのことです。
さらに、新型コロナウィルス感染症が流行したのをきっかけに、
リモートワークを導入する職場が増えましたが、
通勤時間をカットできれば、休息時間を増やせて、
満員電車で痴漢の被害に遭う可能性を減らせるのではないかと。
所定労働時間という概念が労務管理には長年存在していて、
決まった時間は職場にいなきゃいけないという義務のようなものがあります。
1日8時間が所定労働時間だとすると、
少なくとも8時間は職場で拘束される。
新型コロナウィルスをきっかけに、人の接近を嫌う傾向になり、
1つの場所に多人数が集まって仕事をするのが難しくなりつつあります。
労働時間に対する評価は低くなって、リモートワークが主流になり、
労働時間をお金に換える働き方が通用しにくくなります。
1日8時間働く必要があるのかどうか。
当たり前と思っているものですが、例えば1日6時間でも足りるのでは。
新型コロナウィルスをきっかけに人間が関わる仕事が減らされていき、
週5日出勤ではなく、出勤するのは週に2日で、
残りの3日はリモートワークという働き方も出てきそうです。
休息時間を基準として決めておくと、時間外労働が発生するほど、
次の始業時間が後にずれていきます(始業時間を遅らせるルールの場合)。
だから、労使ともに残業しないように意識が向く。
眠いと効率が下がり、さらに残業が増えて、
勤務間インターバルも取れない。悪循環に嵌ります。
健康だからこそ働けるのですから、
休息時間を基準として決めておくと良いでしょう。