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任意継続の健康保険には保険料に上限がある。

 

健康保険

 

 

在職中の健康保険を退職後も続けたい場合、任意継続制度を利用すると、在職時の健康保険を続けることができます。

とはいえ、保険証は退職時に会社に渡し(その後、健康保険協会に保険証が送られる)、一旦は健康保険から脱退します。

一時的に健康保険から抜けて、任意継続の手続きを済ませると、新たに健康保険証が発行され、在職時の健康保険をまた利用できるようになります。

加入後は健康保険料が気になるところで、在職中とどのように違うのか。今回はこの点について解説していきましょう。

 

 

 

健康保険料は際限なく増えない。


在職時の健康保険料は会社と折半負担で、半分を本人が支払い、残り半分を会社が払うのが一般的です。会社によっては、会社の負担割合を増やして、会社6:本人4のような形にしているところもあります。本人の負担は最大で5割までですが、会社の支払割合を増やす(5割を超えて設定する)のは自由なのです。

任意継続の健康保険料は本人がすべて支払いますが、この保険料には上限が設定されています。収入に連動して、上限なく保険料が増えると思っている方もいらっしゃるでしょうが、そうではないんですね。

都道府県ごとに保険料が違いますから、多少なりとも差がありますが、東京都の場合だと、保険料率(2019年度のもの)が9.9%で、毎月の健康保険料は最大で29,700円までです。ちなみに、他の道府県でも、3万円前後が保険料の上限になっています。

全国の健康保険料の一覧表

ちなみに、2019年3月までは、任意継続の健康保険料の上限は27,720円ですが、4月以降は少し増えて29,700円に変わります。

月29,700円という水準は、月収で29万円から31万円の人が支払う健康保険料で、退職後の任意継続健康保険はこの水準を上限に保険料を設定しています。

 

仮に、在職時の月収が50万円だったとすれば、在職中の健康保険料は、東京都の場合、月49,500円(会社負担分と本人負担分を合算した額)です。この人が退職して、任意継続健康保険に加入すれば、毎月の健康保険料は29,700円になります。

総額では月2万円ほど支払額は減っています。なぜこうなるかというと、任意継続の健康保険料は、29,700円が上限額であるため、在職時にそれを上回る保険料だったとしても、上限額で保険料が止まるためです。

補足すると、49,500円を半分にすれば24,750円ですから、在職時よりの退職後の方が本人が支払う保険料は増えていますけれども、支払い総額では減っています。

在職時は24,750円で、退職後は29,700円ですから、在職時に比べて約2割増になっています。
保険料を全額自己負担するとなれば、在職時に比べ保険料は2倍になると思われていますが、この例では2割増しで済んでいます。


在職時の収入を基準にすれば、任意継続の健康保険料は月49,500円になるところですが、上限があるため、29,700円でストップするというわけなのです。

収入に連動して、際限なく増えると思われている健康保険料ですが、一定の水準で止まるようになっています。



もう1つ例として、月収80万円の人が退職後に任意継続の健康保険に加入するとどうなるか。

在職時の健康保険料は78,210円。本人負担分を半分とすると月39,105円になります。
※ここでも東京都の健康保険料を前提にしています。

一方、任意継続の健康保険料は、上限額の29,700円です。

この人の場合、本人が支払う健康保険料は在職時よりも減っています。39,105円が29,700円に変わっています。約25%ほど割引きされているようなイメージですね。



さらに、在職時に月収25万円だった人はどうなるか。

この人だと、在職時の健康保険料は月25,740円になり、この半分の12,870円が本人負担分です。

退職して任意継続の健康保険に加入した場合、保険料が上限額を超えていませんので、在職時と同じ25,740円が毎月の健康保険料になります。退職後の健康保険料は2倍になっています。


「退職後は保険料が折半負担ではなくなるため、健康保険料が2倍になる」と思うところですが、上で説明した通り、人によって違いがあるのです。2割増で済む人もいれば、25%ほど少なくなる人もいるし、想定どおりに2倍になる人もいます。


都道府県別の健康保険料は一覧で閲覧できるようにしています。

都道府県を選択すれば、収入に対応した健康保険料が分かります。

 

 

 

税金には上限が無く、社会保険料には上限がある。


税金も社会保険料も収入に連動して増減する仕組みになっていますが、税金には上限額は設定されておらず、パーセンテージ計算で絶対額は無制限に上がっていきます。

一方、社会保険料は、ある程度までは収入に連動するものの、一定額に達すると、そこからは保険料が上がりません。

先程の任意継続健康保険では、月3万円程度が保険料の上限で、月収50万円強を超えてくると、保険料は皆同じになります。月収80万円でも100万円でも、毎月の健康保険料は3万円前後です。


ちなみに、任意継続ではない、在職中の健康保険にも保険料に上限があります。

任意継続では月3万円程度が上限ですが、在職中だと月収135.5万円以上の加入者は保険料が同じになります。

東京都の例だと、月収135.5万円以上の健康保険料は月137,610円。これを半分にして、68,805円を本人が支払います。


健康保険料の一覧表から東京都を選択し、一番下の50等級が保険料の上限額になります。

月収135.5万円が上限なので、月収200万円であれ、月収500万円であれ、健康保険料は月137,610円で同じなのです。会社員の方でこの水準の収入がある方は少ないかもしれませんが、役員の方ならば社会保険料の上限を超えている方もいらっしゃるでしょう。

つまり、上限を振り切ってしまえば、収入に占める社会保険料の割合は減っていきます。

月収200万円で月に健康保険料が14万円だとすれば、収入に占める保険料の割合は7%。月収500万円だとその割合は2.8%になります。

健康保険料は全国平均で約10%ですが、上限を振り切っていくと、社会保険料が実質的に下がっていくわけです。


一方、税金だと、単純に10%なり30%と設定されているだけで、上限額は定まっていません。200万円の10%なら20万円。500万円の10%なら50万円となります。

 

高額所得者は、税金にはブーブー言いますが、社会保険料にはさほど物申さないもの。その理由は、社会保険料には上限があって、そこを振り切ってしまえば、負担感が軽減していくからなのです。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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