労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

年金に加入せず、健康保険にだけ入りたい。

 

健保だけ

 

 

厚生年金はいらない、健康保険だけでいい。こんなこと可能なの?

今年、平成28年の10月から、パートタイム勤務の人も社会保険に加入する人が出てきます。週20時間以上勤務で、月額賃金8.8万円以上の人(従業員数501人以上の企業)は対象になります。

短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大(厚生労働省)

今まで、3号被保険者として被扶養者だった人、1号被保険者として国民年金と国民健康保険に加入していた人が2号被保険者として社会保険に加入するかと思いますが、人によって事情が色々とあるようです。

中には、「年金には入りたくない。健康保険だけ入りたい」と希望するパートタイマーの人もいます。年金については色々と話題がありますので、年金を避けて、健康保険だけに加入したいと考える人がいても不思議ではありません。しかし、どちらか片方だけを選んで加入するのは不可能なのです。

健康保険(協会けんぽ)と厚生年金はセットで加入する必要があり、どちらか一方だけに加入したいと思っても、それは出来ないのです。健康保険だけというのはダメですし、厚生年金だけというのもダメなのです。

社会保険に加入するときは、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」という書類を作成し年金事務所に提出します。名称を見て分かる通り、健康保険と厚生年金の資格取得は抱き合わせされており、両者を分離できないようになっています。

従業員を採用したときの手続き(日本年金機構)

ゆえに、今年、平成28年の10月から社会保険に加入されるパートタイマーの方は、協会けんぽの健康保険と、厚生年金に同時に加入することになります。厚生年金には入らずに、健康保険だけ入るよう選択することはできないのですね。

なお、国民健康保険に加入している人は、会社経由で社会保険に加入すると、国民健康保険6条の一に該当し、適用除外になります(被保険者資格を喪失する)。

1号被保険者の人は国民年金の保険料も支払っていますが、会社経由で社会保険に加入すると、厚生年金に加入し保険料を支払うので、国民年金の保険料を支払う必要がなくなります。なぜかというと、厚生年金の保険料には国民年金の保険料が含まれているため、国民年金の保険料を単独で支払う必要がないからです。

では、社会保険に加入したほうが負担が少ないのか、それとも加入しないほうが負担が少ないのか、簡単な計算をしてみましょう。



社会保険に加入したほうが負担が減る場合もある。

例として、報酬月額98,000円の場合で計算します。報酬月額とは、月収のことだと考えてください。

まず、会社経由で社会保険に加入せず、国民年金と国民健康保険に加入している場合。

国民年金の1号被保険者の保険料が16,000円。国民健康保険の保険料を6,000円と仮定します。この場合、保険料は月に22,000円となります。


次に、会社経由で健康保険と厚生年金に加入している場合。

健康保険料を10%と考えると、月額9,800円です。これを会社と半分にして負担するので、4,900円です。厚生年金の保険料率は18.3%なので17,934円です。これを会社と半分にすると、8,967円です。合計すると、月額13,867円となります。

健康保険、国民年金、厚生年金、この3つをセットにして加入しても、本人負担は月額13,867円です。補足すると、厚生年金に入った場合、国民年金にも入っていると扱われるため、会社経由で社会保険に加入すると、左記の3つに加入していると扱われます。

国民年金に単独で加入すると、保険料は国民年金だけで月額16,000円ですから、会社経由で加入してしまったほうが健康保険と厚生年金もセットになるので経済的には得です。

全額負担で考えると、月27,734円ですけれども、それを会社と本人で折半すると、国民年金と国民健康保険に入っているよりも、会社を通して社会保険に入ったほうが本人が給与天引きで支払う保険料は少なくなります。

社会保険に加入すると負担が増えるというイメージがありますが、人によっては2号被保険者に変わったほうが、負担が少なくなる場合もあります。

さらに、3号被保険者の場合はどうなるか。3号被保険者は、被扶養者なので健康保険料を負担せず、国民年金の保険料も免除されている立場の人です。

3号被保険者の人が会社経由で社会保険に加入すると、先ほどの計算のように、月額13,867円が本人負担となります。月額0円から月額13,867円ですから、負担は増えますね。

パートタイマーへ社会保険の適用を拡大した目的の1つとして、3号被保険者を減らすという目的があります。健康保険でも国民年金でも、負担なしで制度を利用できる人たちを減らして、1号被保険者や2号被保険者と取り扱いを近づけるのが狙いです。

将来時点では、社会保険の適用対象を拡大して、3号被保険者制度を廃止し、1号被保険者と2号被保険者の2つに集約する可能性もありますね。

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短時間労働者を社会保険に加入させ、制度にタダ乗りする人たちを減らしている?

社会保険に加入するパートタイマーの対象範囲も徐々に広がってきています。

令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

短時間労働者を社会保険に適用させないといけない事業所の規模も、以前は常時500人超だったものが100人超になり、50人超になり、という形で対象となる事業所をじわじわと広げてきています。

雇用見込み期間も、以前は1年以上使用される見込み、という条件が付いていましたけれども、2022年10月以降は2か月を超えて使用される見込みがあれば社会保険に加入する必要があります。

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社会保険に加入する短時間労働者は増えていく(日本年金機構ウェブサイトより)

3号被保険者の人たちを会社経由で社会保険に入れると、2号被保険者に変わります。国民年金の第3号被保険者になっている人は、健康保険では被扶養者になっているという場合が大半でしょうから、この人たちは社会保険にタダ乗りしてるような状態です。

国民年金の3号被保険者であれば、国民年金保険料を払わないでも、それを払ったものという形で加入期間が保険料納付済期間として扱われます。毎月、16,000円程度のお小遣いを貰っているようなイメージです。

健康保険では、被扶養者だと毎月の健康保険料は不要です。病院を利用した時は3割負担が必要ですが、毎月の保険料が健康保険では10%ですから、その負担が被扶養者にはありません。

国民年金の3号被保険者かつ健康保険の被扶養者の人をなるべく少なくしていき、最終的には1号被保険者と2号被保険者に国民年金の被保険者種別を集約していくのはほぼ確実でしょう。

会社経由で社会保険に入れば、健康保険でも、被扶養者から被保険者に切り替わって、毎月の給与から保険料を支払うようになります。

女性の就業を抑制するような面もある3号被保険者制度と被扶養者制度ですから、これらの対象者を減らしていくことで、働く女性を増やしていこう、という意図もあるのかもしれません。 

 

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