労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

傷病手当金の待機期間に年次有給休暇を使えるか

傷病有休

 

 

 

傷病手当金には待機期間が3日あるが、その3日間に傷病手当金は支給されない。

健康保険には傷病手当金という制度があり、病気や怪我で休むと、手当金が支給されます。支給額は、おおよそ日給の2/3と考えていただければいいでしょう。

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日、これに2/3を掛けると、1日あたりの傷病手当金を計算できます。1日あたりの給与の2/3ぐらいが傷病手当金で支給されるのだろう、と考えていただければいいでしょう。

標準報酬月額というのは、社会保険料を決める際に利用する数字で、給与明細に書かれている給与額とは少し違う数字になります。収入に社会保険料率を掛けると社会保険料を概算で算出できますが、厳密には給与明細に表示された収入ではなく標準報酬月額に社会保険料率を掛けます。

毎年7月になると標準報酬月額を決めるための月額算定手続というものを会社は行います。

月額算定というのは、標準報酬月額を決めるための手続きなのですが、毎月の収入(これを報酬月額と表現しています)を基準にして標準報酬月額決めて、その標準報酬月額に社会保険料率を掛けることで、毎月の社会保険料を計算することができます。

厚生年金と同じように、社会保険料を多く払っている方は、標準報酬月額が高いですから、傷病手当金の額も多くなります。

健康保険料を調べる表を用意していますので、都道府県を選択して自分の収入(社会保険では「報酬月額」と表現しています)を照らし合わせると、標準報酬月額がいくらか分かります。

例えば、月収40万円の方だと、報酬月額は40万円で、標準報酬月額は41万円になります(上記の表を見ると数字が分かります)。月収と報酬月額は同じものと考えていいでしょう。41万円を30日で割ると13,666円。その2/3ですから、1日あたり9,110円が傷病手当金となります。月収40万円の人が病気や怪我で休んで傷病手当金を受け取ると、1日9,000円ほどになると分かります。

なお、怪我をしているけども、午前中だけ働いて、午後からは休みというように、収入があると、収入の分だけ傷病手当金が減額されます。傷病手当金は収入と調整される制度ですので、傷病手当金を受給している間は、働かずに収入が出ないような形にするのが合理的です。なお、休んでいる間の社会保険料は、傷病手当金から支払うようにします。病気や怪我で休んでいても社会保険料はかかりますので。

また、出産のために仕事を会社を休んだときに支給される出産手当金(産前産後休業中に健康保険から支給されるもの)を受給しているときは、傷病手当金は支給されないようになります。どちらも所得を補填するのが目的の制度ですから二重取りにはならず片方だけを受給します。ただ、出産手当金よりも傷病手当金の額が多ければ、その差額分は支給されます。

病気や怪我で休むときの所得を補填するために設けられているのが傷病手当金制度で、自営業者や個人事業主向けの国民健康保険には傷病手当金はありません(感染症への対応として特例で傷病手当金が設けられる場合があります)。さらに、退職して、会社の社会保険を抜けた後に加入できる任意継続健康保険でも傷病手当金はありません。


傷病手当金を受給するには条件があり、怪我や病気で休んでも、すぐに支給されるものではなく、少しだけ待つ必要があります。

待つというのは、決まった待機日の期間休んでおくという意味です。連続して3日間休んだ後、その後の期間が傷病手当金の支給対象になるわけです。つまり、4日目から傷病手当金の対象となるのですね。

いつでもいいから合計で3日間(飛び飛びの日程で3日待機する)ではなくて、「連続して3日間、仕事を休んでいないといけない」のがポイントです。例えば、月曜日から休んだとすると、水曜日まで3日連続で休むと待機の条件を満たします。

休日を待機期間に含めることも可能で、土日が休みの職場があるとして、土曜日から怪我で休んだとすると、月曜日が3日目になり、4日目の火曜日から傷病手当金の対象となります。

民間保険会社の損害保険でも、保険事故が起こった後に待機期間が設けられていますよね。あれと同じものです。

傷病手当金の支給対象にならない待機期間は無給になります。そこで、「年次有給休暇を充当すれば、無給を有給に変えられるんじゃないか?」と思いつくわけですね。

無給で3日間待つよりも、給与が出た状態で3日間待つ方がいいですよね。
 

 

年次有給休暇を使って傷病手当金の待機期間を過ごしてもいい?

連続3日間、有給休暇を使う。これで傷病手当金の待機条件を満たせるかというと、可能です。つまり、傷病手当金の待機期間に年次有給休暇を使うことは可能なのです。

有給休暇が3日続いて、4日目以降は傷病手当金の支給対象になる。これならば、無給期間がなくなりますね。

ちなみに、土曜日や日曜日、あとは祝日も待機日に含めることができます。土日や祝日に出勤する人もいらっしゃいますし、休みの方もいらっしゃいますが、いずれにせよ傷病手当金の待機日には含められます。

有給休暇を取得した日は給与が支給されますけれども、仕事をしている日ではないですから、休んで待機している状態に違いありません。だから、有給休暇を取得した日を待機日に含めても差し支えないわけです。

 

 

普段支給される給与と傷病手当金の差額を会社が払ったらどうなる?

病気や怪我で休んで、その間は健康保険の傷病手当金を受給する。そういう方もいらっしゃるでしょう。傷病手当金の支給額は、普段の給与と同額ではなく、少し少なくなります。

普段受け取っている給与を10とすると、傷病手当金の支給額は6、つまり普段の給与の6割ぐらいが傷病手当金の支給額になると考えていただいていいでしょう。

そこで、給料が6割になっているので、会社側の任意の判断で、残りの4割部分を本人が休んでいる間、支給したらどうなるのか。傷病手当金との差額を支給するわけですね。

収入の6割が傷病手当金で支給されていて、残りの4割が会社から支給されているので、本人が受け取る給与は休む前と同じ水準の10割になっているわけです。

ならば、この場合、傷病手当金は通常通りに支給されるのかどうか。

給料の4割を会社が補填したとすると、それは報酬を支払ったと判断されて、収入の4割に相当する傷病手当金が減額されます。 

ただし、会社が支給するといっても、給料の4割を休んでいる間ずっと補填するものと違って、一時的な見舞金として10万円支払ったとなれば、その10万円は傷病手当金と調整はされないようになっています。

仮に、病気で3ヶ月休んだとして、その3ヶ月の間、収入の4割を会社が補填し続けたとなると、それは報酬になりますから、傷病手当金から減額されるわけです。 

例えば、普段の毎月の給料が50万円だったとすると、その6割の30万円が傷病手当金になると考えると、残りの4割の20万円を会社が支給したとなれば、本人が受け取るのは病気で休む前の給料と同じ50万円になります。

ですけれども、支給された20万円は会社から報酬を受け取ったということになって、傷病手当金として支給される30万円から控除され、実際に支給される傷病手当金は10万円となるわけです。

ですから、会社から何か支給するとすれば、お見舞い金という形で、具体的な金額はそれぞれ違うのでしょうけれども、毎月の給与を補填するのではなく、一回だけの見舞金としてポンと支払うならば、傷病手当金とは衝突しないようになります。 

 

医師の診断書を求めるなら傷病手当金の受給も一緒に。

病気や怪我で休むと、会社によっては診断書を出すように求められることがあります。就業規則に根拠があるか、どういう場合に診断書を求めるか、これらは事業所によって違いがあるかと思います。

3日間の待機期間を終えた後、4日目以降は傷病手当金の対象になり、添付書類に療養担当者の意見書(これが診断書になる)が必要ですから、4日目以降も病気や怪我で休む人に対しては診断書を求めて、3日以内に仕事に復帰できる人には診断書を求めない。このように基準を決めて対応できるでしょう。

傷病手当金を利用する人には診断書のコピーを必要ならば会社に出してもらって、傷病手当金を利用するような症状ではないならば診断書は不要。こういう基準で診断書を出す出さないのルールを就業規則に決めておくといいでしょう。

どういう場面で診断書を求めるのかが曖昧だと、休む人への嫌がらせで診断書を要求しているのではないかと思われてしまうこともあります。診断書を作ってもらうのもタダではありませんし、傷病手当金を受給できるならば、本人が費用を支払っても納得できますが、傷病手当金が出ない場面なのに診断書を求められたとなると、その費用を会社が負担する必要も出てきます。

4日以上休む必要がない病気や怪我なら、従業員に対して診断書を要求する必要があるのかどうか考えなければいけなくなります。傷病手当金が出ないような欠勤に診断書は要らないのでは。

何か特別な理由があって、診断書が必要な場合。例えば、感染症が広がっている、流行しているので、その感染症に罹患していると診断された人は診断書を持ってきてもらう。このように1日休むだけであっても診断書が必要だ、という理由があるのだったら、診断書を持ってきてもらってもいいのでしょうけれども、単にズル休みを防ごうとする目的で診断書を求めるのは、時間と費用の無駄です。

傷病手当金を申請する際には、療養担当者の意見書を添付しますから、これをコピーして会社に提出すれば良いでしょう。診断書だけを単独で請求するわけではなく、傷病手当金を申請するついでに取得できるものですから。療養担当者の意見書が診断書の代わりになります。

 

 

傷病手当金よりも先に自分の年次有給休暇を使わなければいけない?

病気や怪我で仕事を休む時は、傷病手当金を利用できますけれども、傷病手当金を申請する前に、年次有給休暇が残っているなら、それを先に使うように、と言われる職場もあるようです。

年次有給休暇を使うかどうかは本人が決めることですから、病気や怪我を理由に年次有給休暇を使うかどうかも本人が決めることです。

傷病手当金には待機期間が3日必要ですから、3日連続で年次有給休暇を取得して、待機期間を完成させる、という形での使い方はよくあるでしょう。

しかし、傷病手当金を申請する前に、まず自分の年次有給休暇を全部使わなければいけない、という決まりはありません。

就業規則で年次有給休暇を計画消化するルールが定められているならば、それに関しては会社主導で消化させることができます。しかし、傷病手当金と年次有給休暇は、それぞれ別物であって、先に年次有給休暇を使わなければ傷病手当金を申請できない、というものではありません。

職場によっては、上司が訳のわからないルールを振り回してくるところもあります。就業規則で定められていないなら、そのようなルールは通用しません。就業規則であっても、傷病手当金よりも年次有給休暇を優先するような定めはできませんが。

待機期間である3日間に対して年次有給休暇を使うのが最も合理的な利用方法でしょう。

 

 

短時間でも出勤して働くと、その日は傷病手当金が不支給になる

傷病手当金を受給する要件の中の1つには、「労務に服することができない(労務不能)」という点があります。

労務に服することができないというのは、出勤せずに休んで療養しているということを意味していて、2時間だけ出勤したとか、半日だけ出勤した、という形で、ちょっとでも仕事をすると、その日の傷病手当金は支給されなくなります。

当日の給与と傷病手当金の差額が支給されるんじゃないか、と思う方もいらっしゃるでしょうが、労務に服することができないという要件を満たさなくなるので、一部支給ではなく不支給になります。

病気や怪我といっても人によって症状や程度は違いますから、これぐらいだったら今日は働けそうとか、来週は短時間勤務ならできそうとか、そういう形で個人差は出てくるかもしれませんけれども、数時間であれ、半日であれ、出勤してしまうと、出勤した日の傷病手当金が不支給になりますので、この点は注意が必要です。

傷病手当金は、1日ごとに判定して、1か月分ごとに傷病手当金を支給申請するのでしょうけれども(数カ月分をまとめて申請することも可能。なお、傷病手当金の時効は2年)、傷病手当金を受給している間は、出勤するのか出勤しないのかによって、支給されるか不支給になるかが分かれます。

中途半端に短時間で出勤するよりは、丸1日休んで、早く完治させる方が良いでしょうし、傷病手当金も受給できます。

傷病手当金を受給している間は、短時間であれ半日であれ、出勤せずに治療に専念する方が望ましいということになります。

 

 

 

 

病気や怪我で休んでいる期間も給与が支給されるなら、傷病手当金は支給される?

会社によっては、病気や怪我で休んでいる間であっても、給与が出るところもあります。病気や怪我を理由に休んだときは、休み始めてから1か月間は給与が通常通りに支給される。このような内容が就業規則に定められていたりします。

こういう職場の場合は、労務に服することができないという条件を満たしているので、傷病手当金は支給されますけれども、休んでる間も給与が支給されますから、支給された給与と傷病手当金を比較して、傷病手当金の方が多ければ差額が支給されます。逆に、給料の方が多ければ、傷病手当金は不支給になります。

 

病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

 

 

支給されている傷病手当金から毎月の社会保険料を控除できる?

病気や怪我で休んでいる間も毎月の社会保険料がかかりますから、会社が負担する部分と本人が負担する部分、この2つを合わせて翌月末までに納付しなければいけないわけです。

出産に関する産前産後休業期間や育児休業の期間については、社会保険料を免除する制度がありますけれども、病気や怪我で休んでいる間の社会保険料を免除する制度はありません。残念ですけれども。 

会社側が負担する社会保険料については、いつも通りに払うとしても、残りの半分の本人が負担する部分をどうやって払ってもらうかが悩むところです。病気や怪我で休んでる間の給与を支払っていませんから、そこから社会保険料を徴収できません。 

普段通りに働いてもらって、毎月の給与を払っている状況ならば、給与から社会保険料を払うことができるのですけれども、 例えば病気によって仕事ができないので、休んで健康保険から傷病手当金を受給している。そういう人から社会保険料を徴収できるのかどうか。

そこで、傷病手当金が実質的に給与と同等のものだから、そこから社会保険料を払ってもらえばいいんじゃないか、と思えるところです。傷病手当金の額は、普段支払われている報酬のおおよそ6割ぐらいですから、社会保険料を払おうと思えば払えるぐらいの金額が給付されています。 

しかし、社会保険料は報酬から控除するものであって、報酬というのは毎月の給与や一定期間ごとに支払われる賞与のことであって、傷病手当金は報酬に含まれません。

ということは、病気の間は報酬が支払われていないわけだから、傷病手当金から社会保険料を徴収することができないのですね。

健康保険法61条には、健康保険からの受給権を保護するという点についての決まりもありますから、この内容から考えても傷病手当金から一方的に毎月の社会保険料を徴収するわけにはいかないです。 

じゃあ、本人が負担する社会保険料はどうするのかというと、会社と本人との間で話し合って、どうやって払っていくのかを決める必要があるわけです。つまり自由に決めて構わないわけです。

病気や怪我で休んでいるからといって、社会保険料が免除される制度はありませんから、遅かれ早かれ払わなければいけないものです。

ですから、本人が納得の上で、傷病手当金の一部を使って、社会保険料を払いますと提案してきたならば、それは会社として受け入れて構わないのです。一方的に傷病手当金から社会保険料を取るぞ、というようなアプローチはできませんけれども、いずれ払わなければいけないものなんだから、今受け取っている傷病手当金から払います、と本人が自主的に提案してきたならば、会社としてはその提案を受け入れてもいいのです。

他の方法としては、病気の間は社会保険料を払わずに、職場復帰してから分割払いで支払っていく。これも可能です。病気で休んでる間の社会保険料は会社が立て替えておいて、職場復帰してから分割払いで払ってもらう、という形にしても構わないわけです。

また別の方法を考えるなら、1ヶ月分を2回に分けて払ってもらう方式にすると、負担感が軽くなりますから、病気で休んでる間であっても払えるのではないでしょうか。

仮に病気で休む期間が3ヶ月だったとして、3ヶ月分の社会保険料を払う必要があるわけですけれども、それを6回に分割して、病気で休んでる間に払うというのも良いのでは。

傷病手当金を受給している間の社会保険料をどのようにして払うかについて就業規則であらかじめ決めておけば、その時が来た時に困ることは少なくなるのではと。 

 

 

新型コロナウイルス感染症の検査をして、無症状の陽性者でも傷病手当金が支給される。

病気や怪我をした時に利用できる健康保険の傷病手当金。ならば、新型コロナウイルス感染症に感染したとき、つまりPCR検査をして陽性であると判定された時に、この傷病手当金を使えるのかどうか。

発熱や息苦さなど、そういったはっきりした形での症状が出ている人もいれば、無症状の状態で陽性の人もいます。症状が出ていれば、風邪やインフルエンザのように休んで療養するところですが、新型コロナウイルス感染症には、無症状病原体保有者、つまり無症状だけれども陽性の人がいます。

ならば、無症状だけれども、陽性なので休んで療養するように医師の診断が出た場合、健康保険の傷病手当金を使えるのか。

労務に服することができない場合に健康保険の傷病手当金が支給されますから、陽性と判定されて、労務に服することができないとなれば、無症状であっても傷病手当金が出ます。

Q2 被保険者には自覚症状はないものの、検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」 と判定され、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給され るのか。
A 傷病手当金の支給対象となりうる。

新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について

 

無症状でも傷病手当金の対象になると文書で厚生労働省も明記しています。

となると、健康な人が積極的に PCR 検査を受けて、陽性と判定されれば、自分自身には症状はないけれども、傷病手当金を受け取りながら休むことができます。

待機期間が3日間ありますから、その3日間は年次有給休暇を使って、4日目以降は傷病手当金を受け取るようにします。

傷病手当金を受給している間は、会社から給料を受け取らないようにするのもポイントです。給与が支給されていると、傷病手当金が減額もしくは支給停止になるので、傷病手当金が出ている間は給与を支給しないようにする、というのは合理的な判断です。

病気や怪我で支給されるのが健康保険の傷病手当金です。本来は無症状の病気に対して支給されることはないのでしょうけども、新型ウイルス感染症は色々な所で特別扱いされていますから、無症状の人であっても傷病手当金が支給されるようになってるんですね。

このような仕組みが良いかどうかはまた別の問題ですが、無症状で休んでも傷病手当金が出るならば、「じゃあ検査しに行こうか」という健康な人も出てくるでしょうし、陽性者の数も増えてしまうという結果になるのではないかと。

おそらく、無症状であっても、PCR 検査をして陽性であると結果が出れば、出勤できないようになるでしょうから、労務に服することができないという要件を満たします。

息が切れてハアハア言いながら療養していれば辛いでしょうけれども、無症状で療養しつつ、傷病手当金を受給できるとなれば、健康な状態で年次有給休暇を使っているのと近い状態になりますよね。

 

 

傷病手当金の受給期間が「支給日から1年6ヶ月」から「通算で1年6ヶ月」に。

支給開始日から1年6ヶ月の期間、傷病手当金は支給されるのが以前の制度でしたが、法律が改正されて、通算で1年6ヶ月分が支給されるように変わります。

支給開始から1年6ヶ月だと、1回受給したら2度目の受給は、同じ事由ではできなくなるのですが、同じ事由で傷病手当金を利用したとしても、通算で1年6ヶ月だったら、2回、3回、4回と分けて傷病手当金を受給できるようになります。

例えば、病気は治ったものの、数カ月後にまた同じ病気が再発する。そういう場合に傷病手当金を利用しやすくなります。以前の制度だと、同じ病気で休んだとしたら、2回目の受給ができなかったところ、通算で1年6ヶ月分というルールに変われば、何度か休む時があっても、その都度、傷病手当金を小分けにして受給できます。

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傷病手当金の支給期間を通算化したイメージ

傷病手当金について(厚生労働省)

傷病手当金を受給し始めたら、途中で何日か出勤する日があって、不支給になる日があったとしても、受給開始から1年6か月を経過した時点で受給期間が終了してしまいます。支給開始から1年6カ月という以前のルールだとこのようになるわけです。

一方で、通算で1年6カ月というルールに変われば、傷病手当金を受給し始めて、病気を治療し、症状が少し良くなったので、短時間勤務で出勤していたり、半日出勤してみたり、という形で傷病手当金が支給されない日が出てきたときは、1年6カ月の期間から除かれます。実際の受給日数で1年6ヶ月分を受給するまでは、傷病手当金を受給し続けることができるというわけです。

例えば、傷病手当金を受給し始めて3ヶ月経ち、症状が良くなったので、短時間勤務で3ヶ月出勤したとしましょう。この時点で経過した期間は6ヶ月です。傷病手当金の受給期間が通算で1年6ヶ月となれば、受給した期間としてはまだ3ヶ月分だけです。ですから、残り1年3ヶ月の期間、傷病手当金を受給する期間が残されているということになります。

なお、傷病手当金の受給期間が通算化されるのは2022年1月からの予定です。

以前のように、支給開始から1年6カ月というルールだと、受給していなかった3か月間もその期間から除かれますから、先程の例だと残り1年が傷病手当金を受給できる残りの期間になります。

入院や退院を繰り返すようながん治療、高血圧治療等を想定して制度が改正されました。

「支給開始から1年6ヶ月」「通算で1年6ヶ月」この2つは似ているのですが、違いがあります。

以前は、初めて傷病手当金を受け取ってから1年6ヶ月の間に、同一の傷病に対する傷病手当金の受給を終えなければいけなかったのです。

例えば、高血圧を理由に傷病手当金を何度か受給した人の場合。初めて傷病手当金を受給したのが1月だとして、そこから休んだり職場復帰したりを繰り返して、何度か傷病手当金を利用していたのだけれども、1年6ヶ月の時点で法定期間満了による不支給の通知が来て、傷病手当金は打ち切られた。こういう事例がありました。

1年6ヶ月分の傷病手当金を受け取れるという意味ではなく、1年6ヶ月の期間内に同一の傷病に対する傷病手当金の受給を終えなければいけないのが以前の傷病手当金でした。

 ですから、1年6ヶ月の間に実際に傷病手当金を受給したのは2ヶ月分しかなかったというようなことも起こっていたわけです。「1年6ヶ月分の傷病手当金を受給できるんじゃないのか」と誤解する人もいて、支給開始から1年6ヶ月という制度を改めて、同一の傷病に対しては通算で1年6ヶ月分を支給すると制度が変わったのです。

以前の制度だったら、1年6ヶ月分の傷病手当金を受け取る前に打ち切られていたものですけれども、同一の傷病に対しては通算で1年6ヶ月分の傷病手当金を受け取れるようになり、1年6ヶ月で全部を受給する必要はなくて、入退院を繰り返し、2年かけても3年かけても、1年6ヶ月分は傷病手当金を受給できるようになったというわけです。

病気の治療をしながら仕事を続けている人たちにとっては有利な制度改正です。また、仕事と治療の両立もしやすい方向に向くでしょうね。

傷病手当金を利用する方からすると有利に制度が変わったわけですから、歓迎できる制度変更ですね。 

通算で1年6ヶ月という新しいルールが実施されるのは、令和4年1月、つまり2022年の1月からです。

 

 

労災保険にも傷病手当金に似た休業補償給付制度がある。

ちなみに、労災保険でも待機日が設けられている制度があります。

休業補償給付(労災版の傷病手当金のようなものです)という制度には健康保険の傷病手当金と同じように3日の待機日が必要です。

ただ、待機日は3日必要ですが、労災保険の場合は合計で3日あれば良いです。連続3日間ではなく、途切れ途切れであっても、合算で3日分の待機日があれば条件を満たします。

じゃあ、労災の休業補償給付を受給するときも有給休暇を使えるのかというと、そうではないのです。

待機日は確かに無給になるのですが、労災が発生するのは事業主の責任と扱われるため、労働基準法76条(以下、76条)に基いて、待機して休んでいる日に休業補償をしないといけないのです。

休業補償というと、労働基準法26条(以下、26条)の休業手当と混同しそうですが、それとは違います。

26条の休業手当は、例えば、リーマンショックのようなイベントで営業を停止して社員を休ませる場合に支給したり、会社が何らかのトラブルを発生させ、工場の操業が停止されたときに支給するものです。

一方、76条の休業補償は、労災が発生した時に適用される内容です。26条では労働者は怪我をしたり、病気にかかってはいませんからね。

よって、労災で待機している日には使用者が補償するため、有給休暇を使って収入を補填する必要は無いのです。

健康保険の場合は、業務外の怪我や病気がフォローの対象になりますので、その原因は仕事ではないため、傷病手当金を受給するときは事業主が補償する必要はなく、本人の有給休暇を使って待機します。

 

 

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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