労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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傷病手当金の待機期間に年次有給休暇を使えるか

傷病有休

 

 

傷病手当金には待機期間が3日あるが、その期間は手当金は支給されない。

健康保険には傷病手当金という制度があり、病気や怪我で休むと、手当金が支給されます。支給額は、おおよそ日給の2/3と考えていただければいいでしょう。

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日、これに2/3を掛けると、1日あたりの傷病手当金を計算できます。標準報酬月額というのは、社会保険料を決める際に利用する数字で、給与明細に書かれている給与額とは少し違う数字になります。収入に社会保険料率を掛けると社会保険料を概算で算出できますが、厳密には給与明細に表示された収入ではなく標準報酬月額に社会保険料率を掛けます。

厚生年金と同じように、社会保険料を多く払っている方は、標準報酬月額が高いですから、傷病手当金の額も多くなります。

健康保険料を調べる表を用意していますので、都道府県を選択して自分の収入(社会保険では「報酬月額」と表現しています)を照らし合わせると、標準報酬月額がいくらか分かります。

例えば、月収40万円の方だと、報酬月額は40万円で、標準報酬月額は41万円になります(上記の表を見ると数字が分かります)。月収と報酬月額は同じものと考えていいでしょう。41万円を30日で割ると13,666円。その2/3ですから、1日あたり9,110円が傷病手当金となります。月収40万円の人が病気や怪我で休んで傷病手当金を受け取ると、1日9,000円ほどになると分かります。

なお、怪我をしているけども、午前中だけ働いて、午後からは休みというように、収入があると、収入の分だけ傷病手当金が減額されます。

また、出産のために仕事を会社を休んだときに支給される出産手当金(産前産後休業中に健康保険から支給されるもの)を受給しているときは、傷病手当金は支給されないようになります。どちらも所得を補填するのが目的の制度ですから二重取りにはならず片方だけを受給します。ただ、出産手当金よりも傷病手当金の額が多ければ、その差額分は支給されます。

病気や怪我で休むときの所得を補填するために設けられているのが傷病手当金制度で、自営業者や個人事業主向けの国民健康保険には傷病手当金はありません(感染症への対応として特例で傷病手当金が設けられる場合があります)。さらに、退職して、会社の社会保険を抜けた後に加入できる任意継続健康保険でも傷病手当金はありません。


傷病手当金を受給するには条件があり、怪我や病気で休んでも、すぐに支給されるものではなく、少しだけ待つ必要があります。

待つというのは、決まった待機日の期間休んでおくという意味です。連続して3日間休んだ後、その後の期間が傷病手当金の支給対象になるわけです。つまり、4日目から傷病手当金の対象となるのですね。

いつでもいいから合計で3日間(飛び飛びの日程で3日待機する)ではなくて、「連続して3日間、仕事を休んでいないといけない」のがポイントです。例えば、月曜日から休んだとすると、水曜日まで3日連続で休むと待機の条件を満たします。

休日を待機期間に含めることも可能で、土日が休みの職場があるとして、土曜日から怪我で休んだとすると、月曜日が3日目になり、4日目の火曜日から傷病手当金の対象となります。

民間保険会社の損害保険でも、保険事故が起こった後に待機期間が設けられていますよね。あれと同じものです。

傷病手当金の支給対象にならない待機期間は無給になります。そこで、「年次有給休暇を充当すれば、無給を有給に変えられるんじゃないか?」と思いつくわけですね。

 


年次有給休暇を使って待機期間を過ごしてもいい?

連続3日間、有給休暇を使う。これで傷病手当金の待機条件を満たせるかというと、可能です。つまり、傷病手当金の待機期間に年次有給休暇を使うことは可能なのです。

有給休暇が3日続いて、4日目以降は傷病手当金の支給対象になる。これならば、無給期間がなくなりますね。

ちなみに、土曜日や日曜日、あとは祝日も待機日に含めることができます。土日や祝日に出勤する人もいらっしゃいますし、休みの方もいらっしゃいますが、いずれにせよ傷病手当金の待機日には含められます。

有給休暇を取得した日は給与が支給されますけれども、仕事をしている日ではないですから、休んで待機している状態に違いありません。だから、有給休暇を取得した日を待機日に含めても差し支えないわけです。

 

 

医師の診断書を求めるなら傷病手当金の受給も一緒に。

病気や怪我で休むと、会社によっては診断書を出すように求められることがあります。就業規則に根拠があるか、どういう場合に診断書を求めるか、これらは事業所によって違いがあるかと思います。

3日間の待機期間を終えた後、4日目以降は傷病手当金の対象になり、添付書類に療養担当者の意見書(これが診断書になる)が必要ですから、4日目以降も病気や怪我で休む人に対しては診断書を求めて、3日以内に仕事に復帰できる人には診断書を求めない。このように基準を決めて対応できるでしょう。

傷病手当金を利用する人には診断書のコピーを必要ならば会社に出してもらって、傷病手当金を利用するような症状ではないならば診断書は不要。こういう基準で診断書を出す出さないのルールを就業規則に決めておくといいでしょう。

どういう場面で診断書を求めるのかが曖昧だと、休む人への嫌がらせで診断書を要求しているのではないかと思われてしまうこともあります。診断書を作ってもらうのもタダではありませんし、傷病手当金を受給できるならば、本人が費用を支払っても納得できますが、傷病手当金が出ない場面なのに診断書を求められたとなると、その費用を会社が負担する必要も出てきます。

  


労災保険にも傷病手当金に似た休業補償給付制度がある。

ちなみに、労災保険でも待機日が設けられている制度があります。

休業補償給付(労災版の傷病手当金のようなものです)という制度には健康保険の傷病手当金と同じように3日の待機日が必要です。

ただ、待機日は3日必要ですが、労災保険の場合は合計で3日あれば良いです。連続3日間ではなく、途切れ途切れであっても、合算で3日分の待機日があれば条件を満たします。

じゃあ、労災の休業補償給付を受給するときも有給休暇を使えるのかというと、そうではないのです。

待機日は確かに無給になるのですが、労災が発生するのは事業主の責任と扱われるため、労働基準法76条(以下、76条)に基いて、待機して休んでいる日に休業補償をしないといけないのです。

休業補償というと、労働基準法26条(以下、26条)の休業手当と混同しそうですが、それとは違います。

26条の休業手当は、例えば、リーマンショックのようなイベントで営業を停止して社員を休ませる場合に支給したり、会社が何らかのトラブルを発生させ、工場の操業が停止されたときに支給するものです。

一方、76条の休業補償は、労災が発生した時に適用される内容です。26条では労働者は怪我をしたり、病気にかかってはいませんからね。

よって、労災で待機している日には使用者が補償するため、有給休暇を使って収入を補填する必要は無いのです。

健康保険の場合は、業務外の怪我や病気がフォローの対象になりますので、その原因は仕事ではないため、傷病手当金を受給するときは事業主が補償する必要はなく、本人の有給休暇を使って待機します。

 

 

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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