労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

「今日は仕事がないから、休みにして」と言われたら。

今日休み

  

 

当日になって、急に仕事が休みになる。

そんな経験をした方もいらっしゃるのでは?


例えば、

木曜日に、

10:00から15:00まで、
5時間の勤務シフトだったとしましょう。


そして、

当日の木曜日、

10時少し前、9:41に職場に着いた。

そこで、
「今日は仕事がないから、休みにして」
と言われる。


もし、自分自身がそう言われたら、どう思うか。


「いやいや、もっと早く伝えてよ」

「当日、しかも出勤してから休みにするなんて、困る」


仕事をするつもりで準備してきているのでしょうし、
当日、出勤してから休みと言われても、
そりゃあ納得できないもの。


こういう場合、どのような対応をするか。

 

 

あなたはキャンセル料を払わないドタキャン客を許しますか?

https://www.bengo4.com/c_5/c_1624/c_1668/c_1669/n_6271/¥
バイト出勤1時間前に「やっぱり休みで」と店から指示…給料を請求できる?


シフトが入っていたのに、当日になって電話がかかってきて、「今日は休みでいいわ」と言われる。

学生のアルバイトではありそうな話ですね。

では、一方的に休みにされて、そのまま終わるのかというとそうではありません。

「雨が降ってお客さんが少ないから今日は休んで」
「今日はお客さんの入りが少ないから、早く上がって」
「台風だから今日は休みでいいよ」

これを書いているのが6月ですから、まさに梅雨時期。雨だからナンダカンダと言われて休みにされちゃう。そういう方もいらっしゃるのでは。


会社としては、休みにしたり、早退させれば、給与が要らないと思ってしまいがちですが、休ませても給与は必要になります。

「えっ? 仕事をしていないのに給与が必要なの?」と思うでしょうが、必要なんです。

ノーワーク・ノーペイという原則は確かにありますけれども、使用者側の判断で一方的にシフトを休みにしたり、あらかじめ決めた終業時間まで仕事をさせずに早退させると、働いていない部分も含めて当日の給与を支払わないといけなくなります。


ただし、お店が壊れて営業できなくなった場合は別です。例えば、洪水で店が流されたとか、暴風で店舗が壊れたとか、落雷で停電して営業できないとか。このように物理的に営業できなくなれば、それは不可抗力なので、使用者には責任はありません。

けれども、雨でお客さんが少ないとか、台風で雨風が強くて暇だとか、そういう理由で社員を休ませると、それは使用者の責任になるのです。雨でも台風でも、営業そのものが可能であれば、契約で決めたとおりに仕事をしてもらわないといけないのです。


例えば、ある会社に対して、部品を100万個発注すると契約で決めておきながら、後から「以前の注文量は多かったので、60万個にして」とその会社に伝えたらどうなるか。おそらく、違約金を請求されます。

契約で100万個を買うと約束したのですから、相手側はチャンと買ってくれるという前提で生産します。それを途中で60万個まで減らしてと言われたら、残りの40万個は余ってしまいます。これを相手側の責任にするわけにはいきませんから、その損失は発注者が負担すると契約であらかじめ決めておくのです。

決めたことを履行せずに途中で変えてしまうと、相手からの信頼を損ねて、その後の取引条件が悪化します。支払時期を短くされたり、発注量に上限を設定されたり、場合によっては今後の取引はお断りということだってあります。

そういうもんです。商売というのは。

40万個キャンセルされても、「いいですよ。いいですよ。ナンボでも減らしますよ」と受け入れる受注者はおそらくいないのではないかと思います。


他にも、旅館やホテルでもキャンセル料が設定されていますよね。10日前までは支払い代金の0%。7日前までは20%。5日前までは50%。3日前までだと80%。当日キャンセルは100%。このようにキャンセル料を設定しているものです。これも部品発注や労務管理と同じです。

もし、あなたが旅館の経営者だとして、当日になって連絡も無しに宿泊をキャンセルされ、代金は1円も支払われない。これに対して平気な気分でいられるかどうか。当日になって勤務シフトを一方的に休みにされるのはこれと同じです。キャンセル料を踏み倒して、平気な顔をしている人と同じですよね。やっていることは。


あらかじめ約束した内容(雇用契約、部品供給契約、宿泊契約)に基づいてお互いに行動するのですから、当事者の片方の都合で変更やキャンセルをすれば、それ相応の補償が必要になるのは当然です。


使用者側の都合で、勤務シフトを休みにしたり、途中で早退させたりした場合に支払う休業手当は、違約金やキャンセル料と同じなのです。

雇用契約であれ部品供給契約であれ、さらに旅館の宿泊契約であれ、契約の当事者は対等ですから、一方が有利になるような扱いはできないのですね。

 

 

出勤する日を一方的に休みにしたら、「休業」になる。

木曜日の当日になって、

「今日は休みにして」と伝えると、

これは「使用者の責任による休業」として扱われます。


使用者の責任で休業させると、

給与の6割以上を支払わないといけなくなります


10時から15時まで、5時間働いて10,000円だとすると、
その6割以上、つまり6,000円以上を会社は本人に払わないといけません。

 

「休みになって、仕事をしてもらっていないのに、給与を払うの?」
と思う方もいらっしゃるでしょうが、

会社の都合で一方的に従業員を休ませると、

休みであっても、給与を払わないといけないんです。

 

 

休業手当は「雇用契約の違約金」のようなもの。

労働基準法の26条(以下、26条)には、
先ほどの休業手当に関する決まりが書かれています。

26条
 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。


一方的に、「今日は休みにして」と伝えると、
給与の60%以上を払わないといけないんですね。


なぜこのような条文があるのかというと、

「買うと約束したものをドタキャンさせないため」

です。


「木曜日の10時から15時まで、
この5時間の労働力を使用者は購入します」
と雇用契約で決めているのですから、

 

当日になって、
「やっぱ要らないわ」
と言われたら、

契約の相手方は困ります。


木曜日に働けると期待しているわけですから、
この期待を保護しないといけない。

そこで、

使用者側から一方的に仕事を休みにされた場合に
対処するため、

26条が用意されているんです。


会社も従業員も、
雇用契約で決めた内容を履行します。

週4日勤務で契約したならば、
1週間に4日は働けるようにしないといけない。

1日5時間勤務と契約で決めているならば、
1日に5時間は働けるようにしないといけない。

それが雇用契約なのです。


この点は、雇用契約に限ったことではなく、
他の契約でも同じです。


例えば、

ホテルの宿泊をインターネットで予約し、

宿泊日当日になってキャンセルすると、
キャンセル料が発生しますよね。

当日キャンセルだと、キャンセル料は100%。
3日前だと50%。
7日前までにキャンセルすれば、0%。

というように、

宿泊施設の予約にはキャンセル料が設定されています。


雇用契約における休業手当もこれと同じ、
キャンセル料のようなものと考えていただければ良いでしょう。


買うと約束したものを、
後から「やっぱり要らない」とは言えない。

商売ですからね。


余裕を持ってキャンセルすれば話は別ですが、
ドタキャンのようなことをすれば、
相手から違約金(キャンセル料、休業手当など)を請求されるのが当然です。

 

 

どうしても休みにしたいときは、どうするの?

例えば、

大雨が降ってお客さんが少ない、

台風がやってきて、お店がガラガラ、

こういう状況だと、

お店を閉めたいと思うのが人の気持ちです。


そういう場合はどうすればいいのか。


「お客さんがいなくてガラガラでも、
強引に営業しなさい」

と言ってしまっては、
何の解決策にもなりません。

 

もし、休みにしたいときは、
他の日と振り替えるのが現実的な解決方法です。


先ほどの例だと、

木曜日の10時から15時までの勤務シフトを
休みにしたわけですから、

それを休みの予定だった土曜日に振り替えて、
土曜日の10時から15時に出勤する。

こうすれば、

木曜日は休みになりますが、
その代わりに土曜日に出勤できます。


出勤日を休みに変えても、
他の日に振り替えるならば、

雇用契約の内容を履行できますし、
休業手当も必要ありませんから、
セーフです。


木曜日を休みにして、
何の補填策も講じずに、
そのままにするのはダメです。

週4日出勤のはずなのに、
木曜日が休みになって、
出勤日が週3日になった。

これだと、休業手当が必要になります。

 

 

早退のときも振り替えで補填。

丸1日、出勤日を休みに変えた場合だけでなく、

例えば、

2時間早く早退させた場合も、

他の日に、勤務時間を2時間延長して振り替える
方法があります。


勤務シフトが木曜日の10時から15時までのところ、
当日は13時に終わってもらい、

翌日の金曜日に2時間延長して、
10時から17時まで働いてもらう。

このような振り替えもあります。


ただ、
このような振り替えは
あまりやらないようにしたいところ。

契約違反とまでは言えないですし、
違法でもないですが、

コロコロと勤務シフトが変えられてしまうと、
スケジュール調整がシンドイですからね。


あまり頻繁に勤務シフトを振り替えていると、

「こんなに勤務シフトがコロコロ変わるならば、
もう辞めます」

と言う人が出てきてもおかしくない。


便利な道具も、
その使い方次第で、

良い効果をもたらすか、

それとも、

良くない効果をもたらすか

が変わります。

 

 

他の人が休みなので自分も休みにされた。休業手当は必要?

会社側、つまり使用者の都合で休みにされると、
休業手当という名目で給与を支払わないといけない

これが法律です。

 

仕事をしていなくても、
給与を払わないといけなくなるんです。

 

 

他の人が休みで、1人だけ出勤しても仕方ないので休みに。


例えば、

とある日に、
業務上の理由で、
日付が変わる深夜まで残業が発生した。

 

午前1時20分とか、
外が真っ暗で、
電車も動いておらず、
人が道を歩いていない。

そんな時間まで残業だったとしましょう。

 

ずいぶんと遅くまで時間がかかったので、
残業が発生した当日に出勤していた人に対し、
翌日の仕事を休みにした。

 

午前1時頃まで仕事をして、
翌日は朝からまた出勤となればシンドイですからね。

「じゃあ、次の日は休みにしようか」
と判断したわけです。

 


しかし、
残業が発生した当日に
休みだった人がいたらどうなるか。

 

午前1時20分まで残業した日に
たまたま休みだった人がいた。

その人は残業していませんから、
翌日の仕事を休む必要は無いはずです。


疲れていませんし、
休んでいたのですから、

「よし明日は仕事だ」
と気合が入っている。


ところが、
残業した人たちは休みになっているのですから、

仮に元気に1人だけ出勤したとしても、
他の人がいません。


自分1人だけ出勤しても、
仕事ができるわけではなく、

「じゃあ、あなたも休みに」
と会社側は指示したいところ。


ですが、

休まされる本人としては
出勤するはずが一方的に休みにされてしまい、

「休業手当が支給されるのでは?」
と考えた。


労働者本人には責任は無く、
使用者側の都合で休みにされたわけですから、
休業手当を支払うべきなのではないかと
考えるのも当然です。

 

 

会社の都合で休ませたら、給与が必要。


他の人達が休みになっているため、
1人だけ出勤しても仕方ないので休みにさせた。

確かに、そういう場面もあるでしょう。


しかし、

当の本人にとっては、
休まされる理由は無いですし、
雇用契約に基づいて出勤するところ。

それを会社側の判断で休みにしてしまうとなれば、

「使用者の責に帰すべき事由による休業」(労働基準法26条)

に該当しますから、

休みになった日の給与(平均賃金の100分の60以上の手当)
を支払わないといけなくなります。

 


他の例でも、

週4日出勤で契約しているのに、
週3日に減らしたとか。

火曜日は出勤するはずなのに
休みにされてしまったとか。

こういう場面でも休業手当が必要になります。

 

 

休業を回避するには振替出勤。


他の人が休みでいないので、
あなたも休みに。

このまま普通に休みにしてしまうと、
休業手当が必要になります。

 

しかし、

【休みにするけれども、
代わりに他の日の休みを出勤日に変えて】

というように
振り替えれば、
休業にはなりません。

 

代替案もなく、
「この日は休みにして」
と言ってしまうと、
休業手当が必要です。

 

けれども、

「この日は休みにして。
その代わり、この日は出勤して」

このように振り替えれば、
休みになった日は休業になりません。

 
例えば、
火曜日を休みにした代わりに、
休みの予定になっている木曜日を
出勤日に変えてもらう。


これで火曜日は休業になりません。

 

 

休業手当はキャンセル料や違約金と同じ。


【なぜ働いてもいないのに給与を支払うのか】

休業手当に対する疑問の多くはこの点に
集まるはずです。


なぜ休業手当という仕組みがあるのかというと、

出勤する日を一方的に休みに変えてしまうのは、
「買う」と約束したものを
ドタキャンして「要らない」と言うようなものです。

 


例えば、

ホテルや旅館を予約したとき、
キャンセル日に応じて
キャンセル料が設定されています。

1ヶ月前までならば、キャンセル料0%。
2週間前までならば、キャンセル料20%。
1週間前までならば、キャンセル料30%。
前日までならば、キャンセル料50%。
当日キャンセルは、キャンセル料100%。

あくまで一例ですが、
このようにキャンセル料が設定されています。

 

宿泊すると予約した後は、
宿泊施設側も準備を始めますし、
他の予約を断ることもあります。

機会を逸失させて予約を受けているのですから、
キャンセルされてしまうと、
部屋がポッカリと空いてしまい、
収益を得られなくなります。

そのため、
解約する時期に応じて
キャンセル料が決まっているのです。


雇用契約もこれと同じです。


労働力を買うと
雇用契約で約束したのですから、

使用者の一方的な都合で
休みにしたり、出勤にしたりはできないのです。

 

約束を反故にした場合は、
その補償として休業手当を支払わないといけない。

これが雇用契約です。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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