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雇用調整助成金の仕組み メリットとデメリットは?

給与(休業手当)を肩代わりする雇用調整助成金

従業員を休ませて、休業手当を支払うと、雇用調整助成金によって、その休業手当を補助してもらうことができます。

従来だと、助成率は最大で 2/3 でしたが、新型コロナウイルス感染症による休業に対応するため、特例で助成率が90%になり、2020年4月25日の発表では、さらに100%に変更されるとのこと。

新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大について

ただし、すべてのケースで100%助成というわけではなく、60%を超過した部分(40%相当)だけ10割助成で、60%の部分は以前のように90%助成となる場合もあります。その場合は、助成率は全体で94%です。

一定の条件を満たした場合は、休業手当の全体に対して助成率100%が適用されます。

60%を超えた部分だけ100%助成

雇用調整助成金の更なる拡充について

3月に助成率を最大90%に引き上げ、4月にはそれを最大100%まで引き上げました。

助成率を90%にした段階で、90%にするぐらいだったら、もう100%にしてしまえばいいんじゃないか、と考えていたのですが、1ヶ月ほど経過して、助成率は100%になったというわけです。

ただし、一律に助成率が100%になったわけではなく、申請する事業所の状況によって助成率は変わります。

基本となる助成率は、中小企業だと4/5、大企業は3/4で、一定の条件を満たすと、そこから助成率が上乗せされます。条件を問わず、助成率100%というわけではありません。

雇用調整助成金 助成率確認票

雇用調整助成金の様式をダウンロードできるページに掲載されている助成率確認票を見ると、休業した時期、解雇をしたかどうか、自粛要請があったかどうか、休業手当の支給率、支給額によって助成率が変わると分かります。

雇用調整助成金の利点は、お店や会社を閉めてる間に、支払う給与を助成金で肩代わりしてくれるところにあります。

給与払わずに、休業なり自宅待機させてしまうと、従業員からすると、もう会社やお店は潰れちゃうんだろうと考えて、仕事を辞めてしまう方も出てくるでしょう。

休業手当を支払って休ませているならば、雇用契約を解除することもないでしょうが、給与も出ないのに雇用契約を維持していても、労働者にはメリットがありませんので、契約を解除して、別の仕事をすることになります。

コロナウイルスの問題が収束して、営業を再開しようとしても、従業員がいなければ再開できないません。休業手当を払わずに従業員を休ませてしまうと、使用者が自ら会社なり企業を潰すということを意味します。

助成率100%だからといって、休業手当の全額が助成されるとは限らない

雇用調整助成金の助成率が100%(10割)になるという発表を受けて、休業手当が全額、助成金で助成されると考えている人もいますが、それは労働者ごとに違います。

雇用調整助成金には上限額が設定されており、1日あたり8,330円まで。これを超過した分は会社が負担する必要があります。新型コロナウイルス感染症に対する特例として、1日あたりの助成額は15,000円に増額されています。

さらに、助成率100%が適用されるには、1日あたりの上限額である8,330円以上の休業手当を支払う必要があります(2020年6月中旬に成立予定の第二次補正予算に基づき、助成額の上限額が1人あたり1日15,000円に変更されました)。

※以下の文では、8,330円を15,000円と読み替えてください。

100%助成には条件がある。

もし、1日あたり5,000円なり7,000円の休業手当(8,330円未満)になる場合、以前の助成率である90%が適用されます。

すべての場面で助成率が100%となっているわけではない点には注意が必要です。

8,330円ぴったりで休業手当を支払えば、100%助成にはなりますが、そう都合よく帳尻は合わないでしょう。

この8,330円というのは、雇用保険の基本手当、言い換えると失業手当の支給額が目安となっています。

年齢によって基本手当の給付額は変わるようになっていて、その給付額が最も高くなる水準が45歳以上60歳未満の被保険者で、1日8,330円と設定されています。

雇用調整助成金を受給する際は、基本手当を受給しているのと同じだとみなして、その給付額を最大で1日8,330円に設定していると考えていいでしょう。

この上限額を引き上げるだとか無制限にするとなると、基準がなくなり、予算を組めなくなるため、政府としては上限額を廃止するわけにはいかない。

仮に1日8,330円が支給されるとして、1ヶ月の所定労働日数が20日だとすると、1ヶ月で助成金は166,600円。

毎月、月給が50万円なり80万円の人にとってみれば、月166,600円の助成金では足りないでしょう。

1日8,330円の上限額が設定されていた雇用調整助成金ですが、さらに制度が変わり、1日15,000円に上限額が引き上げられます。6月12日に成立予定の第二次補正予算に基づいて、雇用調整助成金によって補助される額が上がります。

ちなみに、1日15,000円という上限額は、従業員1人あたりでのものであって、1事業所あたりではありませんので誤解なく。

小規模な事業所では、実際に支払った休業手当を基準に助成額を計算できるようになっており、助成率100%の事業所で、従業員1人に対して1日15,000円の休業手当を支払ったとすると、その全額が助成され、事業所の負担は無しということになります。

中小企業で雇用を維持しているとの条件を満たすと、助成率が9/10から10/10に上乗せされ、さらに、平均賃金ではなく、実際に支払った休業手当の額から助成金の支給額が計算されますから、1日15,000円の範囲内だと実際に100%助成も可能になります。

助成率100%の小学校休業等対応助成金と同じ助成率に

小学校休業等対応助成金とは、学校や保育園が休校なり休園になって、その保護者が仕事を休むことになった場合、事業主がその人たちを特別有給休暇(法定の年次有給休暇とは別枠で設定したもの)で休ませると、その給料を助成金て補助してくれる制度です。

こちらの助成金は、創設された当初から助成率が10割に設定されています。

雇用調整助成金と同様に、1日あたりの上限額は8,330円ですが、その金額の範囲内ならば全額が助成金として支給されるものです。2020年6月12日に成立する予定の第二次補正予算で、小学校休業等対応助成金の上限額は1人あたり1日15,000円に変わります。

今回の制度変更で、雇用調整助成金の助成率が10割になりましたから、小学校休業等対応助成金と内容は同じになります。

ただし、先程書いたように、雇用調整助成金で助成率100%を適用させるには、1日8,330円以上の休業手当を支給する必要があります。

ですから、職場によっては、小学校休業等対応助成金を利用しても、雇用調整助成金を利用しても、助成金の額が同じになる場合があります。

増額後の上限額は15,000円ですから、1日15,000円以下の賃金で働く方だと、特別有給休暇の賃金は、小学校休業等対応助成金で全額が補填されます。

ただ、「子供を持つ人は休めるのに、子供がいない人は休めない」という課題がありますから、休む人は特別有給休暇で対応するとして、一方で、出勤している人には給与を加算する、もしくは手当を上乗せして、休んでいる人の分だけ仕事が増えたことに対するフォローが必要です。

「出勤している自分たちには何もない」と思わせるのはダメです。

助成金が出るため、それを原資にして、休まず出勤している人にインセンティブを用意していく必要があります。

休業手当を100%で支払ったら、年次有給休暇の義務日数に含めていいのか

年間で年次有給休暇を5日以上取得するよう義務化されていますが、雇用調整助成金を申請するために、休業手当を100%の支給率で支払い、従業員を休業させた場合、この休業日は義務となっている年5日の年次有給休暇の日数に含めてよいものかどうか。

つまり、休業手当が100%の支給率で支払われるならば、年次有給休暇を取ったのと同じになると考え、休業した日を年次有給休暇を取った日とみなすのはどうか、という疑問です。

休業と年次有給休暇は違うものなので、100%支給の休業手当を受け取って休んでいる日であっても、年5日の年次有給休暇の枠には計上しません。

よって、休業した日を年次有給休暇を取った日とみなすことはできず、年5日分の日数には含まれません。

給与が出て休んでいるため、休業日と年次有給休暇が似ていると感じますから、年次有給休暇の義務日数に計上できるのではないか、と思えてしまうところ。

両者は似てはいますが、休業した日と年次有給休暇を取った日は別物ですので、年次有給休暇の義務日数の中に休業日を含めることはできないのです。

休業手当を受け取って休業している間に、職場外で副業やバイトをしても大丈夫?

自分が働いている職場なり会社が休業になって、休業手当が支給されている状況で、その休業手当を受け取りながら休んでいる。これが休業なのですけれども、休業中に仕事をしていない状況で、暇だから副業なりバイトなりをして別の収入を得たらどうなるのか。

連日連夜、寝転がってスマホを弄くり回しているわけにもいかないですし、数日で飽きます。

職場から休業手当が支給されていて、さらに副業やバイト、自営業などから収入を得ているとなると、実態としては二重に収入を得ているような状態になります。これが許されるのかどうかが気になるところ。雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金が不支給になったら困りますからね。

休業手当を受け取っているとなると、会社員の身分として働いているわけです。一方で、副業やバイト、自営業というのは、個人事業主のような形で働いているわけです。

となると、会社員の身分と個人事業主の身分は別々ですから、会社から休業手当を受け取りつつ、個人事業主として収入を得ているとなれば、それぞれの収入は別々であって、お互いに影響しないという解釈もできます。所得税でも、給与所得と事業所得は別物ですから。 

雇用調整助成金は、事業所で休業が実施されて、従業員に休業手当を支払い、その人たちを休ませているならば支給されるものですから、その事業所の従業員は別のところで働くなり、個人事業主として副業したとしても、助成金の支給には影響がありません。制度上は。

職場以外で副業やバイトをしてるかどうかをどのようにして正確に把握するのかというのは、長い間問題になっていて、従業員本人の自己申告に依存しているのが実態です。

従業員本人が休みの日に何をしているか、特に申告や報告、届出をしていなければ、事業所としては副業やバイトの実態を把握することはありません。

お互いに知らないふりをしているというような職場もあるのでは。

休業している日に副業やバイトで収入を得たからといって、雇用調整助成金が不支給になるというような条件はありません。厚生労働省のウェブサイトを見ても、副業すると助成金が減額や不支給になるとは書かれていません。

自分が働いてる事業所が休業になって、休業手当を受け取りながら休んでいる、という形になっていれば、助成金は支給されます。当然ですが、その事業所で実際に出勤しているにも関わらず、休業しているかのように装って助成金を申請するのはもちろん不正ですけれども、その事業所では休業しているということが確かであるならば、助成金は支給されます。

よって、雇用調整助成金が支給されるかどうかは、職場外で副業やバイトをしてるかどうかは関連しないのです。

休業手当を受け取りながら、さらに副業で収入を得るという部分に対して、物議を醸すところかもしれませんが、雇用調整助成金では、休業中に他の仕事をして収入を得ることに対して制限を課していないのです。

副業先の労働時間でもそうですが、労働者が自主的に雇用先の労働時間を申告してくれないと把握できないのが現実です。

ですから、休業中に副業やバイトで他の仕事をしていたとしても、労働者本人が自主的に申告してくれないと、事業所としてはそれを把握しようがありません。

事業所としても、自分のところの職場のことだけを処理して、それ以外のことには関わらない方が面倒な手続きが増えません。労働者としても、副業のことを職場に知らせたいと積極的には思わないでしょうから、両者の利害は一致しています。

副業の実態を把握しようとする試みないし制度の変更がされつつありますけれども、副業している本人の自己申告に依存しているという時点で、うまくいかないのは明らかです。

休業中に他の会社で働いたり副業しても雇用調整助成金の対象になる

副業つまりダブルワークをしている人が休業したとして、片方の会社では休業で休んで休業手当を支払われているけれども、もう片方の仕事の方では通常通りに働いている。そういう状況で、雇用調整助成金は支給されるのかどうか。

先に結論から書くと、ダブルワークをしている労働者であっても、雇用調整助成金の支給対象にできます。厚生労働省の Web サイトに掲載されている雇用調整助成金FAQ(令和3年10月27日現在版) のページにダブルワークする人も雇用調整助成金の対象にできる点について書かれています。設問番号4−18、4−19、4−20が該当箇所です。

休業中に他の職場で働いたり、自営業で働いたりしても、雇用調整助成金が不支給にならないというわけです。 

例えば、会社Aと会社B、この2つの職場で働いてる人がいるとして、会社名 A の方では1日8時間勤務している。一方、会社 B ではパートタイムで働き、1日4時間ぐらいの勤務時間で、1週間あたり15時間とか18時間ぐらいで働いているとしましょう。

この条件で、会社 A で休業になり、1日8時間の勤務がなくなって、休業手当が支払われている状況になったとしましょう。一方、会社 B での仕事は、以前と変わりなく行われていて、勤務時間も以前と同じ時間数で働いているとしたらどうなるか。

なお、会社Aの方で休業手当が出ていますから、こちらの方で雇用調整助成金も支給されています。

会社Bでは以前の通りに働いているのですけれども、会社Aでの休業の状況や雇用調整助成金の支給については支障がなく、会社Aで休業しているにも関わらず、会社 B で働いていますが、雇用調整助成金は支給されます。 片方の会社では休業しつつ、もう片方の会社では通常通りの仕事をしている。休業の判定は会社ごとにされており、他の環境での就業状況は影響しないのです。

休業して会社から休業手当を支払われている状況であったとしても、家でぼーっとしている必要はなくて、会社での仕事は休業になってるけれども、別の職場で働いてみるとか、自分自身で自営業で商売をしてみるとか、こういったことは許されているわけです。これで雇用調整助成金の不正受給にはなりません。

会社の就業規則で、他の職場で働いてはいけない、みたいな形で制限をかけられているところもあるかもしれませんが、そういう制限は特にない職場で働いているならば、休業中にじっとしておくのではなくて、他に自分が考えた仕事をしていけば、有意義に時間を使えますよね。

【1日15,000円に増額】給与が1日8,330円以下の従業員を休ませる手段

パートタイムで働いている人は、1日あたりの所定労働時間が4時間なり6時間で、フルタイム労働者に比べて労働時間が少なめです。

そのため、1日あたりの給与も8,330円を超える人は多くないはず。

仮に時給1,500円で6時間働いたとすれば9,000円。この人を休業させて、休業手当を9,000円払ったとすると、助成率は100%になり、助成金が上限の8,330円支給されるわけですから、会社の負担は670円で済みます。

東京都の地域別最低賃金は、2019年10月以降は1,013円。 パートタイム労働者の時間給は、最低賃金に近い水準だと考えて、時給1,100円だとすれば、6時間勤務で6,600円、7時間勤務でも7,700円。

1日8,330円を超えておらず、この場合は休業手当を満額支払ったとしても、助成率は90%なので、全額が雇用調整助成金として支給されるわけではありません。

一方で、1日の給料が3万円になる人がいたとしたら、その人を休業させて、休業手当を満額支払うと3万円。雇用調整助成金を受給した場合は、上限額が8,330円なので、残りの21,670円 は会社負担となります。

パートタイムで働く従業員(学生も含む)を休業させる際には、雇用調整助成金は有利な制度です。

助成率が最大で100%になっており(休業手当が1日8,330円以上でなければ最大90%)、1日あたりの上限が8,330円ですから、休業中の給料をほぼ助成金で肩代わりしてもらうことが可能です。

ですから、わざわざ無休で自宅待機させる必要はないですし、店を閉めてる間は、いつも通り働いているとみなして給料を払って、助成金を受給すればいいわけです。

ただ、問題となるのは給料水準が高い人です。

先ほど書いたように、フルタイムで1日働いて、給料が3万円に達するような人だと、雇用調整助成金だけでは基本手当の全額をカバーできませんから、足りない分は会社負担となります。

(2020年5月26日 追記)上限額が8,330円から15,000円に

助成額の上限額が1日あたり8,330円になっていた雇用調整助成金ですが、15,000円に上限額が変更されます。

いつから変更されるかが気になるところですが、6月12日に成立予定の第二次補正予算が通れば、6月から実施されるでしょう。過去の期間にさかのぼって15,000円に変更して追加分を支給するのか、6月分の休業から1日15,000円が上限額になるのか、この点も後日判明するはずです。

上限額を超過した分は事業主が負担しなければいけないため、給与額が高い人を休業させると、助成金でカバーできない金額が発生します。

15,000円に上限額が引き上げられると、仮に助成率80%だとして、1日の給与が18,750円の人を休業させた場合、15,000円が助成金の額となります。

事業主が負担する額を減らせるため、会社のキャッシュの減りを遅くできるのが利点です。ただ、先に事業主が休業手当を立て替える必要があり、そのための現金を持っているかどうか。この点が助成金を利用できるかどうかの分かれ目です。

小学校休業等対応助成金も上限額が15,000円に引き上げられています。

雇用調整助成金の特例期間は、2020年6月30日まででしたが、小学校休業等対応助成金と同様に、9月30日まで延長されます。9月30日までの休業がコロナ特例の雇用調整助成金による対象になります。

特例でコロコロと制度が変わっていく雇用調整助成金ですから、受付窓口に周知されるまで時間がかかり、適用されるはずの特例が適用されないというケースも起こり得ます。

(2020年6月12日 追記)雇用調整助成金をさらに拡張。上限額が15,000円に。助成率も引き上げで、過去に遡って差分の助成金を支給へ

2020年6月12日より、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金が更に拡張され、1日あたりの助成額の上限が8,330円から15,000円に変わりました。

雇用調整助成金の助成額の上限額を引き上げ

休業手当が1日8,330円を超過していた場合に、超過分を会社が支払っていたのですが、この金額が15,000円に変わり、超過額が発生しにくくなるため、手元現金の減少を遅らせることができるようになります。

なお、この上限額は、中小企業のみならず大企業にも同じように適用され、どちらも15,000円になります。また、解雇等を行っている事業所であっても、上限額は15,000円に変わります。上限額の引き上げは、条件を付けず、全ての事業所が対象となっています。

中小企業で、解雇等を実施しておらず雇用を維持している場合の助成率は90%から一律100%に変更されました。なお、解雇等を実施した場合は90%ですから、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の中小企業向けの助成率は、100%と90%の2種類に集約され、さらに分かりやすくなっています。

以前の制度だと、60%を超過した休業手当の部分に対しては助成率100%で、それ未満の休業手当は助成率90%というように、分かりにくい仕組みになっていました(上記の助成率確認票を参照)。6月12日の変更により、中小企業の助成率は90%か100%のどちらかになり、雇用を維持していれば100%で、その条件を満たさなければ90%と、二者択一でシンプルになりました。

小規模事業所では、実際に支払った休業手当を基準に助成金を支給する方式になっており、1日15,000円までの休業手当ならば全額が助成されるケースもあります。

仮に、雇用している従業員に1日15,000円の休業手当を支払ったとして、その事業所が小規模事業所だとして、解雇等をしていなければ、雇用調整助成金の助成率は100%ですから、支給される助成金は15,000円になります。この場合、休業手当と助成金が相殺され、事業所の負担はありません。

助成額の上限が15,000円に引き上げられ、中小企業向けの助成率は100%になり、さらにこの内容は2020年4月1日に遡って適用されます。ここは重要ポイントです。6月12日以降の休業が対象になるだけでなく、4月1日からの休業も対象にできます。

つまり、4月1日以降の期間を対象として受給した雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を再計算し、新しい特例との差分を追加で支給するというわけです。例えば、以前に支払った休業手当は1日13,000円だったものの、上限額が8,330円であるため、上限を超えた部分は事業所が負担していましたが、上限額が15,000円に変わり、差額分の4,670円が追加で助成金として支給される、というのが今回の変更点です。

なお、この差分の助成金を受給するために追加での申請手続きは不要で、労働局側で計算し、助成金を受け取る銀行口座に振り込まれます。

助成金の額が1日8,330円を超過していた従業員がいる事業所だと、6月以降に追加分が支給されるというわけです。

さらに、過去に遡って、休業手当の額を増額した場合(例えば、当時は休業手当の支給率を60%にしていたが、それを100%に変更して増加分を支払うケース)は、その増加分に対して助成金が支給されます。増加分に対する助成金については、追加での申請(再申請書や支給決定通知書の写し、増額した休業手当の額が分かる書類などを用意します)が必要です。言い換えると、「後出しジャンケン」を認める仕組みになっているわけです。

雇用調整助成金の再申請様式ダウンロード (新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)

ただし、4月1日以降、休業手当を支払っておらず、雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を申請していない事業所は、遡って休業手当を支払ったとしても再申請の対象になりません。4月1日以降の期間に対して助成金の支給決定を受けているのが再申請の条件になっていますので、休業手当を支払っていなかった事業所が再申請することはできません(そもそも申請していないですから、再申請というのも変ですからね)。

手続きが必要なのは、4月1日に遡って、休業手当を修正して、増額した事業所です。手続き上は「再申請」という名称になっていますが、イメージとしては「修正申請」と表現してもいいかと思います。

一例として、4月分と5月分の休業手当の支給率は60%だったが、6月中旬に、先の2ヶ月分の休業手当を支給率100%に変更し、増加分の40ポイント分を6月にまとめて支払った。この場合だと、6月に増加分の再申請書を作成し労働局に提出すれば、助成金が追加で支給されます。4月分と5月分は再申請書で手続きし、6月分の休業は通常の支給申請書で手続きしますから、これらの書類をまとめて1回で提出すれば手間を少なくできます。

以前から100%の支給率で休業手当を支払っていた事業所は、手続き無しで差分が4月1日に遡って支給されます。一方、60%なり80%など、休業手当の支給率が100%ではなかった事業所が、4月1日に遡ってその支給率を100%に修正した場合は、増加分を再申請する手続きが必要になりますのでお忘れなく。

なお、増額支給の制度変更は、雇用保険に加入している従業員を対象とする雇用調整助成金だけでなく、雇用保険に入っていない従業員を休業させた場合に対象となる緊急雇用安定助成金も同じように適用されます。

(2020年8月25日 追記)雇用調整助成金の特例期間を2020年12月末まで延長。助成の上限額は1日15,000円、助成率100%で年末まで継続

雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

特例期間は2020年9月末まで延長されていましたが、さらに延長することが決まり、2020年12月末まで特例の内容で雇用調整助成金を利用できます。

休業して、会社が従業員に休業手当を支払い、その後から雇用調整助成金でその費用が補填されますので、立て替える資金は必要であるものの、会社にはほぼ金銭的負担はありません。右から左にお金を流していくようなものですから。

100%未満の支給率で雇用調整助成金を受給した事業所であっても、遡って差額を支給する特例も継続中ですから、忘れないように利用したいところです。

申請期限も、6月30日までの休業に対する雇用調整助成金の申請は、9月30日までに延長されています。原則は、判定基礎機関の末日の翌日から2ヶ月以内に申請手続きを済ませる必要があるのですが、1月24日から6月30日までの期間に対応する雇用調整助成金を申請する場合は、申請期限に余裕が設けられていて、原則の期限である2ヶ月を超えていても、後から申請できるようになっています。

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https://www.mhlw.go.jp/stf/enchou200911_00002.html より引用。

2020年1月24日から6月30日までに判定基礎期間の初日がある休業(雇用保険に加入していない人を対象とする緊急雇用安定助成金は、2020年4月1日から6月30日までの休業)ならば、申請する日から数ヶ月前の休業であっても、9月末まで雇用調整助成金の申請を受け付け可能になりますから、過去の休業であっても遡って手続きできるようになります。

時間に余裕があるからと手続きを先送りせずに、給与を締めた後、速やかに手続きするといいでしょう。申請手続きが早ければ助成金の支給も早くなりますから。

なお、助成額1日15,000円、助成率100%の特例が適用されるのは、2020年4月から12月までです。他方、遡って申請できるのは、2020年1月24日から6月30日までに判定基礎期間の初日がある休業です。そのため、1月から3月までの休業は特例の適用外となります(従来の内容での雇用調整助成金になる)。「特例の期間」と「遡って申請できる期間」は別です。

(2020年11月27日 追記)雇用調整助成金の特例期間を2021年2月末までさらに延長。助成の上限額は1日15,000円、助成率100%、2021年2月末まで継続

雇用調整助成金の特例対応が2020年12月末まで延長されていましたが、新型コロナウイルス感染症が再度拡大し、特例期間がさらに延長されることになりました。2021年2月までの休業に対しては、雇用調整助成金の特例措置が適用され、休業手当の大半が助成金で補助されます。

休業手当を助成金で肩代わりするのが雇用調整助成金ですが、営業を自粛するよう要請しなければ、通常通りに営業でき、助成金を支給する必要もありません。しかし、感染が拡大している、営業時間を短縮して、お店を休業してと求めてしまうと、その補填として雇用調整助成金のような制度を設けなければいけなくなってしまいます。

「withコロナ」という言葉の通り、感染対策をしながら普段どおりの生活や商売を続けていく必要があり、ブレーキを踏むか、アクセルを踏むかの二択ではなく、ウイルスを受け入れながら人間は生きていく段階なのだろうと思います。

(2021年4月6日 追記)雇用調整助成金の特例期間を2021年4月末まで延長

雇用調整助成金の特例対応がまた延長されています。感染状況に応じて延長していますが、2021年3月からまた陽性者数が増えたため、特例期間が延びています。

雇用調整助成金は、会社が休業手当を出して、その費用を肩代わりする、という形で支給されている助成金です。

ですから、従業員本人が雇用調整助成金を直接に申請することはできません。会社が全部取りまとめて、助成金を申請するという形になっています。

会社から休業手当が支給されない場合は、休業者給付金が用意されていて、こちらは従業員本人が直接に支給申請ができる制度です。

雇用調整助成金を受け取るということは、休業手当が支給されていて、対象の従業員は休業している状態ですから、お店や会社が営業していない状態です。従業員全員が一斉に休業する必要はなくて、例えば、売上が通常時に比べて50%まで少なくなっているとすれば、従業員の数も50%で足りるはずです。単純に考えれば。

ならば、出勤する従業員を50%にして、残り半分の従業員は休業にする、というような調整の仕方もあります。今月は半分の人が出勤して、来月は休業した人と出勤していた人が交代する。2ヶ月ごとに半分ずつ従業員が出勤したり休業したりという形で、交代で出勤と休業を繰り返すようにして、雇用調整助成金を利用します。

現状でどれぐらいの売上規模なのか、どれぐらいの従業員が必要なのかに応じて、出勤する人と休業する人を調整していく。このような助成金の使い方も可能です。

短時間休業でも雇用調整助成金を利用できますので、例えば、普段は1日8時間勤務のところ1日4時間勤務にして、残りの4時間は短時間休業という形で助成金を利用するのも一案です。

(2021年4月9日 追記)まん延防止等重点措置を受けている地域では、雇用調整助成金の特例期間を2021年6月30日まで延長

毎月のように特例の延長や制度の変更がある雇用調整助成金ですが、まん延防止等重点措置を適用されている地域では、雇用調整助成金の特例期間が2021年6月30日まで延長されます。措置が適用されていない地域での特例は、2021年4月30日で終わる予定ですが、まん延防止等重点措置を適用されていると雇用調整助成金の特例期間は6月30日までに変わります。

解雇などを実施していなければ、助成率が10/10 になり、助成の上限額の範囲内ならば、休業手当を助成金で全額補填できます。

2021年5月1日以降に休業を実施して、雇用調整助成金を支給申請するときの申請書の様式が変更されています。

雇用調整助成金の申請書類

雇用調整助成金の特例措置は、もう何度も延長されていますけれども、1日あたりの支給上限額が、以前は15000円でしたが、5月以降に休業する場合は1日当たり13500円に変更されています。助成金の規模を縮小していく段階に入っているんですね。ただし、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用されている地域は、以前の上限額である1日あたり15000円が適用されるようになっています。

先に休業手当を支払っておいて、後から助成金を申請しますから、一時的に手元の資金が減るのですけれども、あとからほぼ全額の補填がされるのが雇用調整助成金です。

人件費の部分は雇用調整助成金で対応できるかもしれませんが、それ以外の部分で、お店や会社を休業にしていても費用はかかりますから、その費用に耐えられるかどうか。

社会保険料の納付を猶予する申請も助成金と一緒に

※2021年5月時点で、納付猶予特例制度は終了しています。

現金がなくなれば会社は潰れますので、入ってくる現金が減っているならば、なるべく現金が減らないようにする必要があります。

雇用調整助成金は、人件費を肩代わりして、会社のお金が減っていく速度を遅くしてくれます。さらに、健康保険料と厚生年金保険料の納付を猶予する特例を利用すれば、毎月発生する社会保険料の負担を繰り延べできます。

適用条件は、前年同月比での売上数字で20%以上減少している必要があり、比較対象の月は、任意の月から選択したもので計算できます。

雇用調整助成金は5%以上の減少が条件で、社会保険料の猶予では20%以上の減少ですから、ややハードルが高いものの、任意で選んだ月と前年同月比で判定できますから、緊急事態宣言が出ていた2020年4月か5月の数字を利用すれば、適用対象になりやすいかと思います。

雇用調整助成金の窓口は労働局で、社会保険料の猶予申請は年金事務所で窓口は違いますが、どちらの制度も会社の手元現金を保つのに有効な手段です。

助成金と違い、社会保険料の猶予は毎月申請する必要はなく、1度の申請で済ませることができますから、雇用調整助成金なり緊急雇用安定助成金の初回申請と一緒に、社会保険料の猶予申請も行ってしまうと良いのではないでしょうか。

2020年2月1日から2021年1月31日までに納期限が到来する社会保険料が猶予の対象となりますから、毎月の社会保険料を翌月に納付するものと考えると、2020年1月分から12月分までが猶予されることになります。

猶予の対象となる社会保険料の期間は2020年12月分までで、猶予の申請期限は2021年2月26日です。2021年1月分以降は対象ではありませんので注意。

労働保険料は少額ですから、仮に支払ったとしても負担感は比較的小さいですが、社会保険料は税金に準じるほどの金額になります。また、年に1回、標準報酬月額が算定されたあとは保険料が固定されます。

そのため、会社から出ていく現金も多くなりますから、1年間、延滞料無しで先送りできるとなれば、実質的に無利息で融資を受けているのと同じ効果を得られます。

労働保険料の年度更新と社会保険料の算定基礎届も延長される?

6月1日から7月10日までの間に、労災保険と雇用保険、つまり労働保険の年度更新をする手続きが毎年あります。また、社会保険でも、1年間の社会保険料を決めるための算定基礎届を作成して出す手続きも同時期に実施します。

以前は、労働保険と社会保険で手続きの時期がズレていたのですが、年度更新と算定基礎届の手続き時期が揃えられ、まとめて手続きできるようになっています。

新型コロナウイルスの影響で、労働保険の年度更新時期が延長され、7月10日までのところ8月31日まで手続き期間が延長されています。

令和2年度労働保険の年度更新に係るお知らせ

さらに、労働保険料の納付を猶予する特例も実施されており、納付を1年間猶予する申請も可能で、この申請も2020年の8月31日までに済ませる必要があります。年度更新手続きと一緒に納付猶予の申請も済ませれば手続きを1回で終わります。

一方、社会保険の算定基礎届の申請期限は7月10日で変わりないのですが、こちらも新型コロナウイルスを理由に、期限後の提出が可能になっています。

算定基礎届を出す段階では現金は出ていきませんので、早く手続きしても延長しても現金の増減には影響しません。

4月、5月、6月の報酬を基準に、標準報酬月額が決まり、社会保険料も決まるのですが、今回は新型コロナウイルスで休んでいた期間がありますから、9月以降の社会保険料が下がる方も出てくるのではないかと思います。

なお、休業手当を100%の支給率で受け取っていた方は、社会保険料が変わらないままになる可能性があります。

雇用調整助成金を受け取るのをやめて、営業をいつ再開するか

休業手当を政府が代わりに支払ってくれる雇用調整助成金。休業中は休業手当を支払う必要がありますし、それを助成金で補填してくれるのは確かに助かります。

しかし、雇用調整助成金を受け取るということは、休業の対象者は出勤せずに休んでいる状態ですし、おそらくお店なり会社も営業を停止なり縮小しています。

雇用調整助成金を受取るには休業していないといけませんし、営業を再開すれば助成金は出なくなります。となると、どの段階で営業を再開するかが悩みどころです。

営業を再開すれば助成金が入ってこなくなりますから、営業から収益を得ていくことになります。一方、助成金を受け取り続けると、営業せずに休んだままになりますから、いつまでも営業を再開できないなんてことにもなりかねません。

どのタイミングで、雇用調整助成金を受給するのをやめて、元の営業状態に戻していくかを経営者は考えなければいけなくなります。助成金を受け取っているだけでは商売が拡大発展していくことはありませんから。

(2021年6月29日 追記)雇用調整助成金の特例措置 2021年7月31日まで延長

雇用調整助成金の原則的な内容が、どんなものだったか分からなくなるほど特例措置が延長されていますね。

緊急事態措置及びまん延防止等重点措置に係る雇用調整助成金のお知らせ

雇用調整助成金は、給与となる休業手当を肩代わりしてくれる助成金です。この雇用調整助成金で休業手当の支払いは肩代わりしてもらえているので、雇用契約をそのまま維持しても、事業主は人件費をほぼ負担することなく、会社を存続できます。社会保険料の事業主分は負担が必要ですが。

助成金を受け取っている間は、従業員を休業させている状態ですから、営業できてないわけです。休業手当に必要な費用を助成金で補填してくれているといえども、その間は売り上げが上がらないわけですから、いつかは雇用調整助成金を使うのをやめて、営業を再開していかなければいけないのです。

しかし、長い間、この助成金を使っていると、どのタイミングで助成金を使うのをやめて、営業を再開するか。時間が長くなれば長くなるほど、これを考えるのは難しくなってくるのが難点です。

雇用調整助成金ではなく、休業支援金や雇用保険からの給付で、働いている人たちに直接に給付することで支援していく形にすれば、会社は雇用契約を解除できますし、休業手当を支払う必要もありません。店を閉めたまま、ズルズルと長い時間を経過することもないでしょう。さらに、会社が休業手当を払ってくれない、雇用調整助成金を利用してくれない、というトラブルも起こりません。

雇用調整助成金だと、会社を経由して、休業手当を払い、雇用調整助成金を申請して、間接的に働く人たちの給料を払っていく制度になりますから、時間と手間がかかります。雇用契約を維持することを目的とした助成金ですから。

雇用調整助成金で労働者を抱えたまま雇用契約を解除しないのは、良いのかどうか。仕事もなく、休んでいるのに、給料だけは出るような状態が人間にとっていいのかどうか。

働かずに給与が出るなら、その方が良いじゃないかと思ってしまうのが普通の人間です。

店や会社を閉めて、助成金や給付金、協力金を受け取っているだけでは仕事や商売にはなりませんから、雇用調整助成金を止めるタイミングをそろそろ探し始める時期に来ているのではないかと。

(2021年9月30日 追記)雇用調整助成金の特例措置 2021年12月31日まで延長

雇用調整助成金の特例延長ですが、2021年の春頃には、7月末までで特例を終わるといい、夏になると11月末まで延長するとなり、さらに秋になると、年末まで延長しちゃう、という流れで、もう一体、特例期間を何度延長してきたのかが分かりにくくなっていますね。

休業中に支払った休業手当を補填してくれるのが雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金ですけれども、休業しているということは営業していないわけですから、休業手当が助成金で補助されるのはいいとしても、営業しなければ売り上げは出てきません。ですから、休業手当をずっと払い続けて営業せずに会社やお店を延命するというわけにはいかないわけです。

商売である以上、いつかは休業を終了して、通常の営業を開始し、売上を上げていかないと、休業手当を払って、助成金を受け取って、と続けていては一体何のための商売なのかわからなくなります。休業するために会社やお店を作ったわけではありませんから。

営業を始めれば、休業は終わり、助成金も受給できなくなりますけれども、営業しながら助成金を同時に受け取るわけにはいきませんから。

全員が一斉に休業する必要はなくて、例えば、従業員が100人いたとしたら、30人は出勤して働いてもらって、残りの70人は休業してもらい、その人たちには休業手当を払い、助成金も利用する。このように出勤と休業を混ぜていくことも可能です、

どれぐらいの規模で営業できるのか、コロナ前の売り上げを100として、緊急事態宣言やまん延防止等措置が解除されることで、どれぐらいの売上が立つのかによって、休業を解除する人たちの割合の調整していくと良いでしょう。

仮に、営業を再開して、売り上げがコロナ前の30%で出るとするならば、出勤する人員も30%で足りる、ということになります。数字の上では。実際の現場では、売上数字と人事予算とのすり合わせで決めていくでしょうね。

営業を再開してどれぐらいの数字が上がってくるのかに合わせて、出勤する人たちの割合と休業する人たちの割合を調整していく必要があるでしょう。

仕事を休んでも、休業手当で給与を受け取れるのですから、出勤するよりも休業する方が得だと感じるのが従業員の本音です。働かずに給与が出るほうがいいですからね。

ですから、特定の人たちがずっと休業するのではなく、一方で、特定の人たちがずっと出勤するわけでもないように勤務シフトを作らなければいけません。

上記のように、コロナ前と比べて30%の数字が上がってくるならば、残りの70%は休業で休みますから、雇用契約に基づいて週5日で従業員の人たちが出勤していたとするならば、そのうちの7割を休業にすればいいということに。

となると、週5日出勤のうち2日は出勤して、残りの3日は休業のままでしばらく維持する。この勤務シフトならば、全員が交代で出勤し、交代で休業することができます。また、半日出勤を入れて、週1.5日出勤にすれば、休業割合をキッチリ70%にできます。

営業再開によって上がってくる数字に合わせて、出勤する人と休業する人の割合を徐々に変えて、通常営業に戻していく。このように雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を利用していくのと良いですね。

最低賃金を引き上げて雇用調整助成金の休業規模要件緩和を利用する

2021年10月1日から最低賃金が引き上げられました。最低賃金の引き上げを促進するため、事業場内最低賃金を地域別最低賃金よりも一定以上引き上げると、雇用調整助成金の休業規模要件が緩和されます。


最低賃金を引き上げた中小企業における 雇用調整助成金等の要件緩和について

雇用調整助成金を受給するには、休業規模要件が設定されており、1ヶ月あたり1/40以上の休業を実施する必要があります。事業場内最低賃金を地域別最低賃金よりも一定以上高い水準まで引き上げている事業所は、この休業規模要件を問わずに雇用調整助成金が支給されるよう要件が緩和されています。

休業する人数が少ない事業所では休業規模要件を満たせずに助成金を利用できないところもあるでしょうが、最低賃金引き上げによる要件緩和を利用すれば、そのような事業所でも助成金を受給できます。

対象となる休業期間は2021年10月から12月までの3ヶ月間ですから、期間としては短いものの、最低賃金を引き上げつつ、小規模な休業を実施する事業所ならば、この制度を利用できるでしょう。

ここで最低賃金が2種類出てきています。まず地域別最低賃金があり、それとは別に事業場内最低賃金があります。では、それぞれの違いは何なのか。

まず地域別最低賃金は、政府が都道府県ごとに決める最低賃金で、厚生労働省のウェブサイトに公開されています。


地域別最低賃金の全国一覧

ほぼ毎年、10月になると改定されるのが地域別最低賃金です。2020年は小幅な改定でしたが、2021年は例年通りに近い改定幅になっています。

時間給で働く人だけでなく、日給、月給という形で給与を支払われる人も1時間あたりの賃金がこの地域別最低賃金を下回らないように支払う必要があります。

一方、事業場内最低賃金は、会社ごとに決める最低賃金で、政府が決める地域別最低賃金とは違うものです。決め方は事業所ごとに違いがありますが、就業規則に賃金に関する項目を作って、そこで事業場内最低賃金を決めておき、それを従業員の人に適用します。

ですから、地域別最低賃金よりも事業場内最低賃金の方が高くなる傾向があります。

最低賃金の引き上げで雇用調整助成金の要件緩和を適用させるには、地域別最低賃金からさらに30円以上引き上げた水準に事業場内最低賃金を設定する必要があります。

例えば、地域別最低賃金が900円だとすると、事業場内の最低賃金を少なくとも930円以上にする必要があるわけです。

ただし、この要件緩和の対象になるには、「事業場内最低賃金と地域別最低賃金との差が30円未満の場合に限る」と書いていて、少し分かりにくいところです。

地域別最低賃金が900円ならば、その数字と事業場内最低賃金との差は30円未満でなければいけませんから、その水準から30円未満となると、929円までの事業場内最低賃金であるならば、要件緩和の対象になります。

最低賃金が2つ入り込んでいるのが分かりにくくなっている原因です。

929円が事業場内最低賃金として定められているなら、これを30円以上引き上げる必要がありますから、少なくとも959円以上の事業場内最低賃金にする必要があります。

10月に引き上げられた地域別最低賃金をさらに上回る事業場内最低賃金を設定している。そういう会社に対しては助成金で優遇していこう、というのがこの要件緩和の目的です。

業況特例または地域特例の対象となっている中小企業が対象ですが、2021年の9月末で緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は解除されていますから、地域特例の対象になる中小企業はありません。

ちなみに、雇用調整助成金の地域特例とは、「緊急事態宣言対象区域において、特定都道府県知事の要請を受けて営業時間の短縮等に協力する事業主」、「まん延防止等重点措置を実施すべき区域において、都道府県知事の要請を受けて営業時間の短縮等に協力する事業主」を対象とするものです、

業況特例(売上高等の生産指標が最近3か月平均で前年又は前々年同期に比べ30%以上減少している全国の事業主)の対象となる中小企業で、最低賃金を地域別のものよりも事業場内の方が高くなるように引き上げると、2021年の10月11月12月の3ヶ月間、休業規模要件が緩和され、小規模な休業でも助成金を利用できます。

原則の要件だと雇用調整助成金の対象にならない小規模な休業を実施する事業所でも、この最低賃金引き上げによる要件緩和を利用すれば、助成金を受給できる可能性があるでしょう。10月から営業再開して休業する人数を減らしている事業所ならば、この要件緩和の対象になるのでは。 

(2022年4月12日 追記)雇用調整助成金の特例期間が2022年6月30日まで延長

雇用調整助成金の特例期間は延長され続けていますが、2022年6月30日まで特例期間として扱われています。

令和4年6月までの雇用調整助成金の特例措置等について

休業手当を助成金で補填するのが雇用調整助成金ですから、一般的なイメージの助成金とは違うのではないかと。助成金を受け取ると会社にお金が残ると考えている方もいるかもしれませんが、雇用調整助成金は従業員に支払った休業手当を助成金で賄うもので、右から出たお金(休業手当)を左から補給(雇用調整助成金)するようなものです。

人件費と相殺する助成金で、手元にお金が残るものではありません。

休業手当が出ないならば従業員は退職してしまいますから、人を引き止めるための助成金と言ってもいいのではないかと。

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