労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

どちらを使う? 雇用調整助成金と休業者給付金

 

選択

 

 

 

雇用調整助成金を利用するには、先に休業手当を立て替える必要がある。


新型コロナを理由に、従業員を休業させて休業手当を支払うと、その費用の一部が助成金として補助されるのが雇用調整助成金。

何度となく制度が変更され、対象者は雇用保険の被保険者に限定されなくなりましたし、特例で支給率も引き上げられました。

ただ、休業1日あたりの上限額が8,330円で、1日あたりの給与額が多い人、例えば15,000円や20,000円といった給与が支給される人だと、休業手当を支払って、助成金を受け取っても、助成金でカバーできない金額が発生します。

助成金の金額を超過した部分は、使用者が負担しなければいけないので、ならば雇用調整助成金は使わないでおこうか、という判断をする人も出てきます。その結果、無給で自宅待機させられる。

2020年5月には、雇用調整助成金の制度がまた変更され、今までだと上限額が1日あたり8,330円だったところが1日15,000円に引き上げられるとのこと。

仮に、休業手当の額が15,000円だとすれば、その9割が助成金として支給されるとすると、13,500円が助成金として支給されます、

以前のように、8,330円が上限額だと、15,000円の休業手当を支払って、雇用調整助成金を利用した場合、支給率を9割だとして、13,500円ではなく8,330円が上限になり、休業手当の半分近くを会社が負担することになっていました。

雇用調整助成金を利用するには、先に休業手当を立て替える必要があります。

先に手元資金で休業手当を払っておいて、助成金の申請をして、後からそのお金が銀行に入金されます。

一時的に手元の資金が減りますから、それに耐えられる事業所ならば雇用調整助成金を利用できます。

しかし、手元に現金がなければ、休業手当を支払うことができず、助成金も利用できません。

すでに手元の現金がなくなっている会社やお店だと、助成金を利用したくても、休業手当を支払えないわけですから、どうしようもなくなります。

赤字でも会社は倒産しませんが、現金がなくなれば倒産します。身動きできなくなりますので。

その事態に対応するために、休業者給付金が設けられたというわけです。

 


会社に給付される雇用調整助成金。従業員に給付される休業者給付金。


雇用調整助成金と休業者給付金の違いは、雇用調整助成金は会社経由で申請するもので、会社が助成金を申請しないと、支給されません。

他方、休業者給付金は、本人から申請で支給される制度になります。イメージとしては、失業手当に近いものと考えていいのではないかと思います。

会社経由で手続きをして、支給されるのが雇用調整助成金。従業員本人が申請して、支給されるのが休業者給付金。

雇用調整助成金と休業者給付金は、どちらか片方を使うことになり、休業手当が支給されて自宅待機している人は休業者給付金の対象にはなりません。

一方、休業手当が支給されずに無休で自宅待機させられている人は、休業者給付金の対象になります。

事業所が雇用調整助成金を利用する意思がないと、休業手当も支払われず、従業員側としてはどうにもできない状況になります。

そこで、直接に雇用調整助成金を利用できるような仕組みが必要ではないか、と言われてきて、それが休業者給付金という形になったわけです。

そうなると、「休業者給付金があるんだから、休業手当は払わなくてもいいだろう」と考える使用者も出てくる可能性があります。

つまり、休業手当を回避する手段に利用されるということ。

手元の現金を使って、休業手当を支払わなければいけないわけですから、雇用調整助成金は事業主には負担があります。

しかし、休業者給付金にはその負担がありませんので、雇用調整助成金を使わず、休業者給付金を使うよう誘導していくような案内も起こり得ます。

雇用保険の特例措置である「みなし失業」の仕組みを利用して、休業者給付金を支給する予定とのことです。

この「みなし失業」とは、激甚災害時における求職者給付の支給の特例が根拠になっており、自然災害を想定した仕組みで、感染症への適用を想定しておらず、地震や津波、大雨による影響を受けた場合は適用できるのですが、これを新型コロナにも適用できるよう制度を変えていくのでしょう。

政府にとってみれば、雇用調整助成金であろうと、休業者給付金であろうと、現金を給付する点は同じですから、どちらかでお金が流れれば良いと考えることも可能です。

後者を利用すると、事業所が休業手当を一時的に立て替える必要がなくなり、この点でも利点があります。休業手当の支払いを回避できてしまうという短所はありますが。

 

 

 

新型コロナウィルス感染症が休業の原因なのだから、休業手当は払わない?


新型コロナで休業したら、それは使用者の責任なのかどうか。ここは判断が分かれるところです。

政府による緊急事態宣言、都道府県知事による自粛要請によって休業しているわけですが、「強制ではないから営業できる」と解釈すれば、その休業は使用者の責任になります。

しかし、事実上、強制されていると解釈すれば、休業は使用者の責任ではないと言えます。

商売では、契約で買うと約束したものを一方的に要らないとは言いにくい。

「やっぱり買いません」とこちらの都合で売手に伝えれば、買手は責任を負わされます。

物を買う時、売る側は買主のために準備をして、品物を調達します。一方で、買主は売主が用意してくれた品物を条件通りに購入します。

買主が一方的に「やっぱり買わない」と言えば、売主は困りますし、約束を破ったことになる。

商取引では、一旦契約が成立した後は、当事者の一方が自己の都合で契約を破棄してしまうと、事前に決めた違約条項に基づいて、違約金を支払うことがあります。

身近な例だと、宿泊施設の予約です。

例えば、旅館を予約して、宿泊日の2週間前までにキャンセルしてもらえればキャンセル料はかからない。

けれども、宿泊日の2週間前を経過した後、1週間前までに予約をキャンセルすると、宿泊料の30%がキャンセル料になる。

1週間を経過した後、3日前までに予約をキャンセルすると、宿泊料の50%がキャンセル料に。

3日前を経過した後、宿泊日の前日までに予約をキャンセルすると、70%をキャンセル料として旅館に払う。

宿泊日当日にキャンセルした場合は、宿泊料の100%がキャンセル料としてかかる。

これは一例ですが、買主と売主には約束があって、その約束を一方的に破ると、ペナルティが課せられるのが商取引です。
旅館は、部屋を確保するために、他のお客さんを断ったかもしれませんし、料理の材料を調達しているかもしれませんから、準備のための費用はかかっています。

そのため、一方的にキャンセルされたときは、キャンセル料を払ってもらって補填するわけです。

雇用契約でも、使用者が一方的に勤務日数や勤務時間を減らした場合は、契約違反になり、休業手当という形で、違約金を払う必要があります。

従業員側が一方的に休んだ場合は、違約金のようなものはないのですけれども、使用者側が契約よりも少ない勤務日数や勤務時間を設定するとペナルティがあるのです。

労働者よりも使用者の方が責任が重くなっているというのが雇用関係なのです。

新型コロナによる休業は、使用者の責任なのかどうか。判断しにくいのが悩みどころ。

感染症なのだから、使用者がウイルスをばら撒いてるわけではなく、感染させてるわけでもないので、休業はウィルスによるものだから、使用者の責任ではない、という理屈もあります。

ただ、無休で自宅待機させてしまったら、もはや雇用契約を維持する理由はなくなりますから、会社から何か指示をしても従ってもらえません。

新型コロナの騒ぎが落ち着いてきて、営業を再開しようとしても、従業員が戻ってこない。

無休で休ませるような職場に戻ろうと人は思いにくいものです。

 

 

 

休業者給付金の中身は? 申請するには何が必要なのか

 

休業者給付金という名称が使われていたものの、支援金という名称を使うところもあって、休業者給付金になるのか、休業者支援金になるのか、まだ定まりません。

雇用調整助成金や小学校休業等対応助成金は、会社経由で間接的にお金が流れていきます。一方、休業者向けの支援金だと、本人へ直接にお金が流れます。

そのため、休業手当を払わない、助成金を利用しない、と事業所が判断してしまうと、従業員側では困ってしまいます。

そこで、助成金で間接的に資金が流れる方法だけでなく、雇用保険の基本手当(通称では、失業保険の失業手当と言われるもの)のように、本人に申請してもらい、直接的に給付していく仕組みを用意したというわけです。

お金が流れる経路が違うだけで、どちらも実質はほぼ同じです。

上限額は月33万円で、賃金の約8割。直近6ヶ月間で、最も賃金が高い月の8割となるようです。

直近6ヶ月で最も高かった賃金の8割ですから、例えば、12月、1月、2月、3月、4月、5月、この6ヶ月間で最も給与が多かった月を利用して、給付額を計算するとどうか。

おそらく、12月と1月の年末年始が最も給与が多くなっているのでは。まだ新型コロナの影響も出ていない時期でしたし、支援金を計算するには丁度いい月ではないかと思います。

期間は、例えば、3月から5月末まで休業していたとすると3ヶ月分。2019年12月の給与が最も高く、月額30万円だったとすれば、その8割の24万円。これが3ヶ月分なので、72万円が支援金となります。

月33万円を上限にして、休業していた期間が対象ですから、簡単に計算すれば上記のようになります。

対象期間は2020年9月末までですから、9月末までに無給で自宅待機させられた方は、休業者支援金を申請できます。3月頃から臨時休業し始めた事業所があるでしょうから、そこから対象期間に含めて申請すればいいでしょう。

直近6ヶ月で最も高い給与を利用できるとのことですが、申請時期が7月、8月と後にズレると、年末年始の給与を利用できなくなる可能性があります。制度がどのように確定するのかまだ定かではありませんが、余裕を設けて、直近12ヶ月のデータを使っても良いのではないかと思います。

申請するには、事業主からの休業証明が必要になります。事業主で対応する必要があるのは、休業証明書ぐらいです。助成金を申請するときのように色々と書類はありません。

どういう書面か、用紙は用意されているかどうか、任意で用意してもいいのか。申請書や休業証明書のフォーマットはまだ公開されていません。

証明日、労働者名、休業期間、事業主の所在地や名称、などを書く簡易なものになると思いますが。

いつから申請できるのか。この点は支援金の額を決める給与データとの関連で重要ですが、この点も未定。

申請先はハローワークですが、窓口申請か、郵送申請も可能なのか。さらに、オンライン申請は可能なのか。

解雇されたり、退職してしまっている人も申請できるのか。それとも離職したら申請できないのか。この点も気になります。雇用保険に加入していない方だと失業手当はありませんから、休業者給付金をさかのぼって申請できると助かるでしょう。

パートタイムで働く方で、休業手当無しで自宅待機されられている人がいらっしゃるでしょうし、特に学生の方はぜひ利用すべきです。

バイト先から無給で休むように指示されている学生は、この休業者支援金を確実に申請したいところです。

 

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com
お問い合わせ

© 社会保険労務士 山口正博事務所