法律で決まった日数よりも多く年次有給休暇を付与する職場
年次有給休暇は、勤続期間によって付与される日数が法律で決まっており、多くの職場では、法律で決まった日数の年次有給休暇を付けているはずです。
なお、事業所の裁量で、年次有給休暇の日数を法律で決まった日数よりも、多いものとすることは可能です。
6ヶ月勤務した段階で10日分の年次有給休暇が付く。これは法律で決まった日数ですけれども、10日ではなく15日付与するとか、20日付与するというようにしても構いません。
さらに、6ヶ月勤務せずとも、入社時点で15日の有給休暇を付与する、なんていうことも可能です。
法律で決まった日数以上に年次有給休暇を付与するのはなぜなのかというと、職場で休暇制度を作ってしまうと、それぞれで日数や対象者、条件といったものを細かく作っていく必要があり、運用していく手間がかかります。
誕生日休暇、資格取得休暇、家族休暇、慶弔休暇など、後付で色々と休暇制度を作りがちですよね。
仮に、10の休暇制度があるとすると、それぞれの休暇に対して条件を設定していかなければならないので、メニューの数も10となります。
一方で、休暇制度を独自に作らず、年次有給休暇の日数を増やすことで、他の休暇制度の代わりにすると、休暇のメニューが1つになりますから、管理する手間も減ります。
法律上の年次有給休暇に相乗りして、会社独自の休暇を付けていくことができるわけですから、都合が良いのです。
会社独自に休暇制度を作らない代わりに、年次有給休暇の日数を多くしている。そういう職場もあるかと思います。
年休の時効はすべて2年にするのか、それとも時効期間を分けるのか
法定の年次有給休暇は時効が2年に設定されており、付与されてから2年以内に使っていく必要があります。なお、2020年4月に改正された民法が施行されましたが、年次有給休暇の時効は2年に据え置きされました。
では、法律で決まった以上に付与された年次有給休暇は、有効期間なり時効をどのように扱っていくのか。
法定の年次有給休暇と同じように時効を2年にするのか。会社で上乗せしている年次有給休暇については有効期間を3年にするのか。もしくは法定の年次有給休暇よりも短い1年にするのか。
法定の年次有給休暇と会社が上乗せした年次有給休暇、この2つがあるとなると、どちらの年次有給休暇を先に使うのか、という点も問題になります。
法律上の年次有給休暇を先に使うのか、上乗せされた方の年次有給休暇を先に使うのか、これも決めなきゃいけない。
さらに、半日単位の年次有給休暇、時間単位の年次有給休暇を認めている職場だったら、上乗せされた年次有給休暇も半日や時間単位で使えるのかどうか。
両者を分けてしまうと、メニューが2つあることになりますから、残日数をどのように管理していくか、時効期間をどう管理していくのか、休暇の使い方(1日単位、半日単位、時間単位)をどのようにしていくのか、細かく決めなければいけなくなります。
付与した日数がごちゃまぜになるという問題もあります。法定有給休暇と法定外有給休暇で、それぞれ何日分あるのか把握するのも手間がかかりますから。
上乗せの有給休暇を法定有給休暇と同じ扱いにすれば分かりやすい
一方で、法定の年次有給休暇であれ、上乗せ分の年次有給休暇であれ、同一のものとして日数を管理して、使い方も同じにして、有効期間も同じにして、ということであれば労務管理は容易になるでしょう。
上乗せ分を分けたいのか、それとも法定分の年次有給休暇かと混ぜて、同じものとして扱っていくのか、こういうことも就業規則で事前に決めておかなければいけません、
制度をたくさん作って、細かくチューニングすればするほど、より柔軟で、きめ細やかな労務管理ができていると錯覚しがちですけれども、複雑にすると、それだけ労務管理の手間は増えますし、制度に穴も生じやすくなります。
休暇制度を独自に作らずに、年次有給休暇を上乗せする仕組みにするならば、法定の年次有給休暇と同じ扱いにして、労務管理を分かりやすくするのがおすすめです。
せっかく年次有給休暇制度に相乗りしてるのですから、メニューを分けてしまったら、独自に休暇制度を作ったのと同じになってしまい、相乗りする効果がなくなってしまいます。
慶弔休暇を作らない、誕生日休暇を作らない、病気休暇を作らない、資格取得休暇を作らない。その代わりに年次有給休暇の日数を上乗せする。さらに、全ての年次有給休暇は、法律上の年次有給休暇と同じ取り扱いになる。
このようにするのが最も分かりやすいですし、使用者側も労働者側も満足しやすい仕組みになるはずです。
制度を複雑にして、柔軟性、きめ細やかさをアピールするよりも、単純で分かりやすい仕組みの方が長続きしますし、受け入れられやすいものになります。
複雑なものに接すると、人はイライラするもので、時として理解することを放棄します。しかし、シンプルな内容や仕組み、条件であるならば、反発を招きにくく、受け入れてもらいやすくなります。
ルールが統一される
法定有給休暇と同じく、付与日から2年間有効にすれば、従業員が混乱するリスクを減らせます。また、付与条件や時効が同じなので、管理がシンプルになり、事務的負担も軽減されます。
従業員への公平感
法定外有給休暇を法定有給休暇と同様に扱うことで、従業員に「特別扱いされている」という安心感を与えることができます。実施している会社は多くないでしょうから。また、ルールが一貫していることで、不信感や不平等感が生じにくくなります。資格取得休暇や誕生日休暇だと目的に合っていないと取れませんが、有給休暇ならば理由を問わず使えるので、この点でも公平感があります。
休暇制度が1本化され、休暇取得を促進
法定外有給休暇も法定と同じ「2年間有効」であれば、従業員にとって計画的に取得しやすく、結果的に休暇取得率向上につながります。また、有給休暇の日数も増えますから、積極的に有給休暇を取得する理由になります。