労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

休暇を廃止して会社独自の有給休暇に集約する。

 

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休暇制度を作ると後で困る。

会社には色々と労務管理の制度があって、休暇制度もそのうちの一つです。

有給休暇が最も知られている休暇ですが、他にも誕生日休暇、結婚休暇、出産休暇、弔事の休暇、資格取得のための休暇など、多種多様な休暇が設けられている会社もあるでしょう。

休暇制度にはそれぞれに条件があって、休暇の日数や対象者、勤続年数など、色々と制約があります。誰でもどの休暇でも利用できるというものではなく、条件に当てはまった人が利用できる休暇で、有給休暇とは違いがあります。

組織の規模が小さい時は、労務管理のルールもサッパリしていて、休暇らしい休暇はなく、普通の休日と有給休暇ぐらいで、他の休暇は手付かずという状態かもしれませんね。

会社の規模が大きくなると、制度が増えてきて、休暇の種類も増えてくるはずです。

休暇制度が増えてくると、管理が面倒臭くなるし、社員さんにとっても、自分がどの休暇を利用できるのかを把握しづらくなります。

何十種類も休暇があると、条件を理解するだけでも一苦労ですし、もし申請を忘れたら、「使えるはずの休暇を利用できなかった」という状況にもなりかねない。

では、どうやってこの状況を変えるか。ここが今回の話の焦点です。

 

 

休暇を作らずに休暇を作る。

休暇をドンドンと作ると、条件設定が面倒になり、利用者も把握しづらくなるのですから、休暇を増やさないようにすれば問題を解決できそうです。

人と企業を活性化する休暇制度を導入しましょう
社員と会社が元気になる休暇制度 導入事例集

上記の事例集を見ると、これでもかというほど色々な休暇制度があって、よくまぁここまで作れるものだなと感心します。

選択肢が増えるのは良いとしても、休暇のメニューを増やせば、それだけ条件設定なり使い方を決めなければいけませんので、労務管理は複雑になります。

条件に合わなければ休暇は使えませんから、どういう人が対象になり、どういう人は対象外なのか。さらに、休暇の日数は何日なのか。年に何回使えるのかなど。1つの休暇制度に対して、個別に条件を決めていかなければいけません。

休暇を取得できる条件に合わない人にとっては面白くないもので、例えば、結婚休暇。独身の人には何もありません。結婚する本人は嬉しいのでしょうが、周りの人は休暇で休めるわけではありません。

他にも、リフレッシュ休暇というものもあります。しかし、何をもってリフレッシュとするのか。家で寝転んでスマホのゲームで遊んでいるのもリフレッシュなのか。寝転んでテレビを見ているだけでもリフレッシュなのか。ずーっと布団の中で寝ているだけでもリフレッシュなのか。リフレッシュの定義から始めないといけないので、実にメンドクサイ。

誕生日休暇なんてのもありますが、最近は個人情報の取り扱いで色々と制限があって、自分の誕生日を人に教えない人もいるぐらいです。会社の人も、他の人の誕生日を知らないなんてことは普通にありますし、履歴書などの書類には生年月日は書くものの、個人的に誕生日をホイホイと教える場面は多くはないのです。

資格取得休暇もありますね。簿記とかファイナンシャルプランナーとか、そういう類なの資格を取るための休暇なのでしょうが、資格に興味のない人には使えない休暇です。

さらに、お葬式やお通夜、四十九日法要などに利用する弔事休暇もありますし、どういうときに何日休むのか。なぜ1日だけなのか、3日ぐらい欲しい。こういう要望が出てきて、キリがありません。さらに、有給にするのか無給にするのか、これも決めないといけません。


休暇制度1つ1つに対して、細かな条件を決めていくわけですから、10の休暇制度があれば、どれだけの手間や時間がかかるか。

ではどうするかというと、休暇を作らずに休暇を作ればいいわけです。

休暇を作らずに休暇を作るというと訳がわからないと感じるかもしれませんが、その方法は「年次有給休暇ですべて対応する」というものです。

といっても、労働基準法の有給休暇だけでは足りないでしょうし、法定の有給休暇は本人が自由に使うものであって、用途を限定できないので、そのままでは他の休暇を代替することはできません。


そこで、例えば「付加有給休暇」というものを設けて、目的を問わず使えるようにします。労働基準法で決まっている有給休暇に上乗せする形で、付加有給休暇を設けて、その休暇を多種多様な目的で使うようにすれば、個別の目的で休暇制度を作る必要がなくなります。

休暇制度を作って、休暇の利用目的や条件を固定してしまうと、いつ、どんな目的で、何日まで使えて、いつまでに申請するかなどメンドクサイ手続きを作ってしまいがちです。

失恋休暇や生理休暇のように休暇の目的を公にしたくない場合もあります。

付加有給休暇の日数をどう設定するかは様々ですが、法定の有給休暇に連動するようにすれば簡単な仕組みに出来ます。例えば、法定の有給休暇の半分を付加有給休暇として設けるようにすれば、法定の有給休暇を1.5倍に増量(ここのさじ加減は事業所ごとに変わるでしょうが)するだけで対応できます。

用途不問の付加有給休暇で対応するようにすれば、条件設定で悩むことはないので、休暇制度を設計する手間を省けるし、目的を問わないのでプライバシーを保護することもできる。一石二鳥の仕組みです。

勤続年数に応じて年次有給休暇の日数は決まっています(労働基準法39条2項)。

6ヶ月:10日
1年:11日
2年:12日
3年:14日
4年:16日
5年:18日
6年以上:20日

 

では、この日数を2倍にしてみましょう。

6ヶ月:20日
1年:22日
2年:24日
3年:28日
4年:32日
5年:36日
6年以上:40日

日数の半分は法律で決まった有給休暇として、さらに、それと同日数を上乗せする。時効や日数管理は法定の年次有給休暇と同じにして、公的な制度に相乗りする形で運用します。制度を設計、運用する手間を省けますし、取得条件を問わないため従業員同士での不公平もありません。

 

この上乗せされた休暇を、誕生日なり結婚式なり、お葬式やお通夜、四十九日法要なり、色々な用途で使えば良いのです。資格取得のために使っても良いですし、寝坊をごまかすために有給休暇を使うなんてのもあるでしょうね。二日酔いでお酒臭いので、今日は有給休暇で休んでおく。こういう使い方もアリです。

個別の休暇制度だと、条件に適合するかどうかを判断する必要がありますが、年次有給休暇に相乗りする休暇ならば条件を考慮せずに取得できます。

日数の調整も本人次第です。会社が決めた日数だけしか利用できないものではありませんから、例えば、お通夜とお葬式を4日で終わらせても、1週間かかっても、有給休暇ならば日数が固定されませんので、どちらでも対応できます。慶弔休暇は2日と固定されていたら、3日や4日の休暇は取れません。しかし、年次有給休暇の日数が上乗せされていたら、そこから必要な日数を取得していけばいいでしょう。

 

 

 

休暇制度を作るのはいいとしても、それを運用していくのは難しい。

ナントカ休暇、カンタラ休暇と、会社の規模が大きくなると休暇の種類が多くなります。

資格取得休暇、アニバーサリー休暇、結婚休暇、その他色々なワケの分からない休暇。休暇は休みですから、社員にとっては嬉しいものです。これは確かです。

しかし、休暇の種類が増えると、労務管理で生じる悩みのネタも増えます。休暇を作るとなると、それぞれ条件を決めて就業規則に書かないといけないし、実際に利用する際には条件に該当するかどうかを判断しないといけない。

何日の休暇なのか。取得期限は。取得理由は。対象者の範囲は。休暇を作る前は、「ようし、新しい休暇を作るぞ」とちょっとウキウキするのですが、実際に作って運用すると、そのウキウキ気分はあっさりと雲散霧消する。

規模が大きい会社に努めている人ならば分かるかと思いますが、休暇の利用条件というのはアッサリと就業規則に書かれているだけで、実際に休暇を使う段階になると、当初では想定していなかったことも起こるものです。

例えば、取得期限を就業規則に書いていなかったら、1年後でも2年後でも休暇を使えてしまいます。他にも、対象者をキチンと特定していないと、勤続年数や職種、勤務形態に関わらず休暇を取得できてしまう。また、休暇を取得する理由も、それが適切かどうか、妥当なのかどうかが人によって判断が異なったら、「あの人は休暇を使えたのに。私は使えないのはなぜ?」と言われ、返答に窮してしまう。

人事や総務で働いている人ならば、休暇制度を運用する厄介さを知っているはずです。

では、その厄介さの原因は何なのか。

それは、休暇に理由を求めている点にあります。




年次有給休暇に取得理由は要らない。

新しい休暇を作りたくなる気持ちは分ります。しかし、その後の面倒臭さを想像すれば、やめておくべき。

社員からの陳情に応じていると、ドンドンと休暇の種類が増えていく。会社の規模と休暇の種類は比例するのではないかと思えるほどです。

もし、どうしても休暇を作りたいならば、会社独自の有給休暇を作るといいでしょう。有給休暇というと法律で決められた休暇と理解されていますが、会社独自に有給休暇を作っても構いません。

労働基準法39条の有給休暇とは別に、例えば年に5日というように有給休暇を設定し、理由を問わず使えるようにする。結婚でも誕生日でも、資格取得でも、出産の付き添いでも、結婚式や葬式に出席するためでも、さらには単に家で寝ていたいという理由でも有給休暇を使える。

特定の目的に応じて休暇を作ると、先ほど書いたように後から厄介な状況に遭遇する。それを避けるために、会社独自の休暇を有給休暇に集約する。社員の事情に合わせて休暇を設定したいという思いは分りますが、その思いやりが労務管理を無駄に厄介なものにしていることは確かです。

労働基準法の有給休暇と条件を全く同じにしなくても構わないので、年に何日という設定は自由だし、利用期限も当年度内のみで失効するようにしてもいい。

最も簡単な方法は、法律に基づく有給休暇に日数を加算する方法です。例えば、法律で年に10日の有給休暇があるとして、そこに追加で3日を会社独自に上乗せする。その結果、13日分の休暇を利用できるようになるという仕組みです。

時効や運用は労働基準法の規定を流用できるので、独自に条件を設定する必要はなくなります。必要な条件があるとすれば、日数をどうするかという点、後は、法律上の有給休暇と会社独自の有給休暇、どちらを優先して消化するかという点。この2点です。

さらに期待できる効果として、有給休暇の消化が促進されるという点があります。イベントに合わせて休暇を設定せず、有給休暇として一本化するので、何かのイベントが発生するたびに有給休暇が減っていきます。法律上の有給休暇と会社独自の有給休暇が1つにまとまっているので、有給休暇が減りやすくなるわけです。

細々とした休暇を廃止して、上乗せ有給休暇に一本化する。休暇を作りたいと思った時は、まず有給休暇を加算することを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

使えない休暇ならば、固定の休日にしちゃえ。

有給休暇を遠慮無く使える職場、そんな職場はそう多くはないのではないでしょうか。

有給休暇があることそのものを知らされない職場。あるけれども他の人が使わないので自分も使えない職場。使えるけれども上司からグチを言われる職場。「ウチはそういうのはないんですよ」と事務を統括するシャチョーのオクサンが言う職場。

その他にも様々な理由で、有給休暇を使いにくい職場は少なくないと思います。

有給休暇は権利だけれども、行使しにくい権利になっているのは確かなことで、会社に勤めたことがある人ならば多くの人がそのことを感じているはず。小規模な会社やお店だと、有給休暇の取得率が0%のところもあるでしょう。

そこで、「じゃあ、有給休暇をなくして、固定の休日にしちゃえばいいんじゃないか。そうすれば、遠慮することもないし、グチを言われることもないだろう」と考え、有給休暇を廃止したらどうかと提案する方もいらっしゃいます。

『有給休暇制度』撤廃のススメ
http://blogos.com/article/67924/

『有給休暇制度』撤廃論の【補足説明】
http://blogos.com/article/68067/

上記のウェブサイトでは、有給休暇を廃止して、固定の休日に変えることで、有給休暇に関する悩みを解消しようと提言されています。

もし、まだ読んでいないならば、どうぞ一読してみて下さい。


権利なのに、使いにくい。だから、廃止して、固定の休日に変えてしまう。

確かに、使いにくい休暇よりは、固定の休日の方が心理的にはラクです。休暇の取得申請をする必要がないし、休暇の取得理由を説明する必要(時季変更するかどうかを判断するため、休暇の取得理由を考慮する企業もある)もない。時季変更したのに、ウヤムヤにされて、休暇そのものがなくなってしまったなんてこともない。

自分で裁量的に使える休暇よりも、強引にスケジュールに組み込まれた休暇ならば、何もしなくても休みになるので、事務手続きはいらないし、休む側もラクチン。


上記のように強引に固定休日として休む方が好まれるのか。それとも、自由裁量で休暇を取得できる方がいいのか。

これは簡単には判断しにくい部分です。


小規模な会社だと、まず有給休暇は取れない。だから、固定休日に変えてしまう方を選択する人が多くなるはず。

一方、中規模以上の企業になってくると、キチンと労務管理がなされはじめるので、有給休暇を取得できるところも増える。


有給休暇の消化率が高い人はそのままでいいと思うだろうし、消化率の低い人は固定の休日にしてくれたほうがいいと思う可能性が高い。

だから、有給休暇を廃止するとなると、判断が分かれてしまう。


上記のように人の判断は分かれるところですが、今回は、有給休暇を廃止して、固定の休日に切り替えることを想定して考えてみましょう。

有給休暇制度を廃止するとして、じゃあどうやって有給休暇に変わる仕組みを用意するのか。固定の休日といっても、どういうカタチで実現するのか。有給の部分はそのままなのか、それとも無給になるのか。


有給休暇を廃止した後、どういう仕組みになるのか。ここについて考えてみたいと思います。




どうやって有給休暇を固定の休日に変えるか。

「有給休暇をなくして、固定の休日を増やす」。これだけを聞くと、漠然としたイメージしか浮かびません。

固定の休日を増やすといっても、日曜日や土曜日のような日を増やすのか。それとも公的な祝日を増やすのか。それとも、また別の方法で対処するのか。

さらに、無給の休日にするか、それとも有給状態を維持したまま固定の休日に変えるのか。


1,休日の増やし方。2,無給か有給か。この2点が問題となります。

まず、休日の増やし方から考えましょう。

休日を増やすならば、法定労働時間を現行の40時間から32時間に変更すれば、週休2日から週休3日に自ずと変わります。

法定労働時間が週40時間の場合、週5日勤務で、1日あたり8時間労働にすれば、週休2日になる。一方、法定労働時間を32時間に変えると、週4日勤務で、1日あたり8時間労働にすれば、週休3日になります。

1ヶ月を4週間だと仮定すると、週休2日から週休3日へ移行した場合、1ヶ月あたり4日の休日が増える。それが1年間となると、4日×12ヶ月ですので、48日の休日が追加されることになります。

1年で48日も休日が増えるとなると、これは増えすぎです。有給休暇は、もっとも少ない付与日数で10日であり、もっとも多い場合でも20日ですから(労働基準法39条2項)、週休3日に切り替えて有給休暇を廃止するとなると、年に48日の休日が追加されるので、やっぱり休日が増えすぎです。

また、週休何日にするかは会社ごとに決めることなので、現状で週休2日にすらなっていない企業もありますし、法定労働時間を短縮しても残業しちゃうと元の木阿弥です。

「休日が増え過ぎるならば、勤続年数に応じて固定休日の日数を決めればいいんじゃないか?」と思う人もいるかもしれない。

確かに、勤続年数に応じて休日の日数を決めれば、先ほどのように休日が大量に生じることもない。しかし、勤続年数に応じて休日の日数を決めてしまうと、それは以前の有給休暇の仕組みから変化がないことになります。有給休暇を廃止しておきながら、有給休暇の仕組みを使うとなれば、「じゃあ有給休暇はそのままでいいんじゃないの?」と言われかねない。

次に、無給か有給かという点について。

有給休暇を固定の休日に変えるとなると、他の休日と同じ扱いになる。土曜日や日曜日、祝日、これらの休日と同列に扱うのでしょうから、無給にするのが妥当です。

もし、固定の休日に変わったのに、有給の状態を維持するとなると、これもまた有給休暇との違いがハッキリとしなくなります。「有給の休日にするぐらいならば、有給休暇をそのままにすればいいんじゃないの?」と指摘される。

じゃあ、有給状態を維持した状態で、休暇を固定化させる方法はないのか。有給休暇と固定休日のイイトコどりができる。そんな仕組みがないのかどうか。

あります。

それは、計画有給休暇の仕組みで実現できます。

計画有給休暇制度は、有給休暇そのものは廃止しない方法ですが、「有給+休暇を固定化」という2つの効果を得られます。


「でも、有給休暇をそのままにするならば、話が振り出しに戻るだけなんじゃないか?」と思うところです。

お盆と年末年始に計画有給休暇を充当するのが妥当な解決策だと私は思います。

夏と冬に連休を取得する慣習がありますから、無給で休みにしてしまうのではなく、ここで有給休暇を一気に消化して、有給でお盆や年末年始を休むようにするのが現実的な解決方法です。

『お盆と年末年始に有給休暇を使う。』

お盆と年末年始はほとんどの会社で連休になるのですから、ここに計画有給休暇を重ねあわせて、集中的に休暇を消化してしまえば、休暇の利用を促進できるでしょう。

取りたくても取れない、取りにくい有給休暇を廃止するのも悪い案ではないものの、有給休暇に変わる仕組みを提示できない以上、計画有給休暇で対処していくのが妥当だと思います。

 

休暇制度をいくつも作らずに年次有給休暇に集約していく。
年次有給休暇を固定の休日に変えてしまう(これは法改正が必要)。
スケジュールを決めて、年次有給休暇を計画消化していく。

普段から年次有給休暇の消化が進んでいる職場ならば、このようなことを考えなくてもいいのですが、何らかの仕組みを設けて年休を使いやすくしていく工夫も必要なのでしょう。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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