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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/1/24号 no.57)━
出勤したと扱うから有給休暇は労働時間に含まれる?
有給休暇というのは、勤務することなしに給与が支給される仕組みです。
また、出退勤の査定では、「出勤した」と評価されます。
さらに、有給休暇の日の賃金を支給する際には、出勤したと仮定して給与の計算をします。
ならば、有給休暇の時間数を労働時間の中にも含めても差し支えないのではと思えますよね。
そこで、有給休暇として休みになった日を労働時間に繰入れて良いのかどうかが問題です。
1日8時間と1週40時間、2つの基準がある
労働時間には、「1日8時間以内」と「1週間で40時間以内(例外業種を除きます)」という制約があります。
そこで、例として、1日8時間、週5日勤務の人を想定します。
月:8時間
火:8時間
水:有給休暇(8時間の給与を支給)
木:8時間
金:10時間(残業が2時間)
(土日は休みと仮定)
上記のような働き方をした週があるとすると、実際に勤務した時間数は34時間です。実労働時間が34時間ですね。
しかし、有給休暇も労働時間に含むとなると、42時間になりますよね。
ここで、「有給休暇を労働時間に含まなければ、1週40時間以内に収まりますよね。だから、法定時間外労働の割増賃金は出ないのでは?」と疑問になるわけですね。
確かに、1週40時間のラインは超えていませんね。
しかし、金曜日は1日8時間のラインを2時間超えています。ですので、この場合は金曜日の2時間が法定時間外労働に対する割増賃金の対象になります。
では、また別の例として、1日6時間、週6日勤務の人を想定してみます。
月:8時間(2時間の所定時間外勤務を含む)
火:8時間(2時間の所定時間外勤務を含む)
水:有給休暇(6時間の給与を支給)
木:8時間(2時間の所定時間外勤務を含む)
金:6時間
土:6時間
(日曜日は休みとします)
この場合は、労働時間は1週36時間です。今回は、1日8時間の法定労働時間は超えていませんよね。
また、所定時間外勤務を除くと、6日勤務(6時間×6日=36時間)しても40時間は超えません。
ここで、水曜日にある有給休暇の6時間を含むと、42時間になります。
つまり、有給休暇の時間分を労働時間に含むかどうかで、法定時間外労働の割増賃金の支給に関して結論が変わるのです。
給与の計算では労働時間に含んで計算するが、時間外労働を判定するときは労働時間に含まない
まず、「有給休暇の性質」というのは、本来の労働義務を免除してリフレッシュするというものです。
つまり、労働義務は免除されているならば、有給休暇の日は勤務時間には含まないと考えます。
また、法定時間外労働の割増賃金は、予定よりも長い時間に渡り、働いてもらったので、その働きを慰労するというものです。
ですが、給与を計算する時には、有給休暇の日も働いたと仮定して計算をしないといけませんよね。つまり、給与計算のために「便宜的に仮定している」ということです。
しかし、実際の勤務時間と同じようにカウントしてしまうと、割増賃金の計算に含めないといけなくなりますから、除外して判断するのです。
あくまで「休暇」ですから、実際に勤務したと同視することはできないためです。