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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/1/21号 no.56)━
■■ 「労働時間数=仕事の成果」と判断するのが労働基準法
■■ いつでも時間を基準に考えてしまうという欠点
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■時間数と成果は連動しないのが普通です。
日給制や時給制というのは、本来ならば「異常な給与体系」です。
給与というのは、売り上げがあって、原価を除いた粗利益が
出て、そこに労働分配率を加味して出てくるものですよね。
まず給与があるのではなく、まず売り上げや利益があるはずです。
「無い袖は振れない」のですから、当然ですよね。
1時間、特に仕事がなく、手待ち状態で過ごしても給与が
あるのが時給制ですよね。
確かに、「時間拘束しているから給与は支払うべき」とも
言えますが、「普通の感覚からしておかしい」と感じます。
「企業は社員の生活給を保障しなければいけない」
これは労働法が求めることなのですが、「元がないから払えない」
という価値判断とは相容れないところです。
営業、企画、経営、コンサルタント、などなど。
今では、「時間数≠成果」である職業も増えています。
確かに、「社員の生活保障」とか「雇用主の責任」という
ことも考えないといけないのは分かります。
そうは言っても、時間基準で判断する労働基準法の「歪み」
を感じざるを得ません。
■社員自身が保護を拒否する時。
一般に、「労働基準法は労働者保護法である」と理解されて
います。
つまり、労働者は弱い存在であって、保護してあげなければ
いけないという考え(もしくは、前提)に基づいています。
しかし、その保護が「ありがた迷惑」になることもあるのです。
例えば、外資系の投資銀行や戦略系コンサルティング会社で
働いた人ならば、「時間外手当は年俸に含む」という理解が
通常です。
そこで、その人たちに対して、時間外手当を支払うと会社が
決めると、
「時間外手当をきっちり払うとなると、作業内容や離席と
いった細かい事まで監視されるようになってしまう。ならば、
手当は要らない」とか、
「毎月の時間外手当として払うのではなく、ボーナス支給時に
時間外の部分を加算して欲しい」などの要望があるかもしれ
ません。
確かに、真っ当な要望ですよね(労働基準法では認めにくい
ところですが)。
この場面というのは、法律で社員さんを保護しようという
試みが、むしろ社員さんに嫌われているという状況です。
こちらは守ってあげようとしているのに、相手は「その必要は
無い」と言うわけです。
このように、保護の対象者が自ら保護を拒否したとなれば、
法律はどうすべきなのでしょう?
そんなことは構うことなく、保護を強制すべきなのか。
それとも、労働者が自ら保護を要しないと判断したのだから、
どちらの判断にも一理あります。
■当事者の意思や考えを無視してでも法律を使うべきなのか。
会社も社員も納得した上で(雇用契約の段階で説明していると
仮定)、年俸の中に時間外手当を含むとしているならば、法律
によって保護すべき権利というのはもはや無いのではないで
しょうか。
法律というのは、何らかの権利侵害を予防したり、侵害された
権利を回復したりするのが役目です。
ならば、「権利が侵害される危険性」も「侵害された権利」も
ないならば、法律に出番は無いのではないでしょうか。
例えば、民法には、「私的自治の原則」という原則があります。
この原則を大雑把に説明すると、取引や契約を行う時には、まず
当事者の意思を優先し、法律は事後的にフォローするに留まる
という考え方です。
もちろん、詐欺とか錯誤などのような行為があれば、法律を
積極的に使うべきでしょう。
しかし、当事者が納得した取引や契約ならば、たとえ第三者
から判断して不当な取引や契約であると判断できても、有効と
すべきではないでしょうか。
労働法の世界には、
【労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約】
という上下関係があります。
この関係に基づけば、労働基準法に反する労働契約は無効と
判断すべきではあります。
しかし、当事者(会社と社員)が納得して決めたことを無視
してでも、法律を優先すべきとなると、やはり違和感を感じます。
例えば、Aさんが所有している1,000万円の車を、Bさんに100円
でうるという売買契約が締結されたとします。
この場合、AさんもBさんも契約内容に納得しています。
(なお、詐欺や錯誤などは無いと仮定します。また、
不当廉売などの不正な取引も無いと仮定します)
しかし、第三者から判断すると、おかしな契約です。
普通の感覚では、1,000万円の車を、Bさんに100円で売る
というのは、異常ですよね。
「その取引チョット待った!」と言いたいところです。
ですが、当事者(AさんとBさん)は納得しているんですよね。
ならば、外部から妨害はできないのです。
また、労働基準法は「強行法規」ですから、会社や社員さんの
意思を無視してでも適用できます。
しかし、「年俸の中に時間外手当は含まれている」と雇用契約
を締結し、納得の上で働いているならば、強行法規といえども
出番を控えるべきではないかと私は思うのです。
(もし、「年俸の中に時間外手当は含まれている」というのが
嫌ならば、雇用契約をしなければよいわけですからね)
にもかかわらず、法律を使えとなれば、もはや「法律は悪者」と
なってしまうのではないでしょうか。
メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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┃時事ニュースから労務管理に関連するテーマをピックアップし、解説やコメントをしています。
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