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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/7/15号 no.106)
40時間を超えて時間外労働になるのかどうか
例えば、ある人が、1日8時間の勤務として、週に5日間の勤務で働いているとします(よくある勤務形態です)。
勤務日は、月曜日~金曜日。また、休みの日は、土曜日(土曜を法定休日として固定します)と日曜日、あと祝日など(長期の季節休暇も含む)です。
そこで、ある週に、有給休暇を取得したり、代休になったり、休日を振替えたりすると、計算上は週40時間を超えてしまいます。所定休日である日曜日に有給休暇を取得すると、労働時間が8時間追加されると考えてください。
所定休日は休みなので、労働義務がないため年次有給休暇を取得することはないのが原則ですが、使用者と労働者で合意して所定休日に年次有給休暇を取ったとします。
つまり、日曜日に有給休暇を1日取得すると、40時間+8時間ですから、週48時間になります。
また、代休や振替を週に1日実施したとすると、この場合も48時間になりますね(代休時も振替時も8時間勤務と仮定)。他の週から振替出勤日が追加されると週40時間を超えてきます。
上記のように処理をすると、1週48時間の勤務時間になりますが、では40時間を超えた8時間を時間外勤務として扱うべきでしょうか。
それとも、有給休暇や代休、休日の振替は特別な処理だから、時間外勤務として扱う必要はないのでしょうか。
週40時間を超えているが対応はそれぞれ違う
原則として、勤務時間が週40時間を超えると、法定労働時間外の勤務になります。割増賃金も必要です。
ただし、「勤務時間が週40時間を超える」というのは、形式的に超えるという意味ではなく、実質的に超えるという意味です。
つまり、「勤務時間の数字を見て、週40時間を超えているから、時間外勤務だ」と判断すると、間違うことがあります。
たとえ週40時間を超えた部分でも、時間外にならない部分もあるわけです。
例えば、「40時間+有給休暇(8時間の勤務とみなす)」の場合だと、時間上は40時間を超えますが、法定時間外労働にはなりません。
つまり、形式的には40時間を超えてしまうが、実質的に勤務した時間を基準にすると、40時間以内になるので、法定時間外労働は発生していないと判断するわけです。
年次有給休暇は労働時間に含まれないのですね。給与計算では労働時間が発生しているとみなして扱いますが、年次有給休暇を取得した日は「労働した」とはみなされません。したがって、有給休暇を取った日曜日が週48時間の計算に含まれることはなく、週40時間を超える労働時間は発生しません。
実際に仕事をして週40時間を超えていませんよね。
有給休暇は出勤したとみなされる(出勤率には影響しない)が、実際に出勤して働いたとまではみなされないのです。
「40時間+休日労働(法定休日である土曜日の休日出勤で8時間勤務した)」の場合
時間上は40時間を超え、実際に勤務をしていますので、時間外の勤務になります。
週40時間と土曜日に休日労働8時間を合わせて週48時間ですね。土曜日は法定休日で、休日勤務になりますので、休日割増賃金が必要です。
休日出勤の日は時間外勤務にはならない(例えば、法定休日である土曜日に10時間勤務しても、時間外勤務にはならない)のですが、1週間を合計すると、48時間ですので、時間外勤務になります。
ただし、休日労働に対する割増賃金が35%以上で支給されるため、この休日割増賃金に法定時間外労働の割増賃金も含まれています。そのため、この場合は休日割増賃金を8時間分支払うと割増賃金は足ります。週40時間を超えた部分に対する法定時間外労働の割増賃金は必要ありません。
「40時間+振替出勤(他の週に振替休日を取った代わりに出勤した日)」の場合
代休と同じように、時間上は40時間を超え、実際に勤務をしていますので、時間外の勤務になります。つまり、法定休日の土曜日を、翌週の月曜日と交代させた場合などが例になります。月曜から金曜までで週40時間。追加で土曜日に振替出勤して8時間ですので、週48時間です。
土曜日に振替出勤をすると、土曜日は休日勤務になりませんが、1週間を合計すると、週48時間ですので、法定時間外労働になり、割増賃金が必要です。
代休で休日労働した場合は休日割増賃金を支払い、振替休日で出勤した場合は法定時間外労働として割増賃金を支払います。
代休や振替休日を取れるならば時間外労働として扱わなくても良いか
時間外勤務を判断するときは、「実際に勤務しているかどうか」という点で判断するのがポイントです。
振替出勤のときは、実際に勤務をして週40時間を超えているのだから、法定時間外労働と判断されるわけです。上記で書いたように、休日労働をして代休を取ったときは、休日割増賃金が法定時間外労働の割増賃金を含んでいます。
休日割増賃金を支払っているならば、その労働時間に対しては休日割増賃金が支払われるため、別途で法定時間外労働に対する割増賃金は不要です。
しかし、振替出勤で週40時間を超えたならば、法定時間外労働として扱い、割増賃金が必要です。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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