10年かけて少しずつ1,000円に近づいていった。
2009年頃だったか「最低賃金を1,000円に」という主張をする政治家が出てきて、当時は非現実的な話だと思っていたのですが、2019年になり、それがついに実現します。
最低賃金1,000円という話は民主党政権の頃に出てきたもので、一気にそこまでの水準には達しませんでしたが、2019年には東京都と神奈川県で1,000円を超えます。
2018年の10月には、東京都が985円、神奈川県が983円に改定され、2019年10月に28円プラスされ、前者は1,013円、後者は1,011円に変わります。
ちなみに10年前は、東京都が791円、神奈川県が789円でした。10年で約200円ほど最低賃金が上がったことになります。
最低賃金が変更されるのは毎年10月ですから、最低賃金近くに給与を設定している事業所は、労働条件を変更する対応が必要になります。
時間と給与が連動するとヤル気がでない。
最低賃金は経済学者には不評で、最低賃金が無いほうがいいという意見もあります。
賃金水準に下限値が設定されると、下限を下回る賃金しか払えない会社では人を雇えなくなりますから、労働市場での需要が減退します。
労働需要が減るということは雇用が減ることを意味しますから、労働者にとっても都合が悪い。ゆえに、最低賃金が無いほうが雇用が最大化される、というのが経済学での理屈です。
時間と賃金が連動していて、どんなに仕事をしても給与が変わらないとなれば、使用者にすれば賃金が割高になりますし、労働者にとっては賃金が安いと感じてしまいます。
繁忙期は、費用よりも収益が上回り、事業者にとって嬉しい状況になりますが、閑散期にも同じ賃金で雇うとなれば、収益よりも費用の方が多くなり好ましくないのです。
本来ならば、繁忙度合いに応じて報酬も変わるべきなのですが、時間と給与を紐つけてしまっているため、忙しかろうと暇であろうと同じ給与を払わないといけないわけです。
一生懸命に仕事をやろうがやるまいが同じ給与ならば、人間は手抜きしようと思うもの。時間給900円と決まっていたら、どんなに忙しくても1時間で900円ですし、逆に、どれほど暇でも900円です。これだと、忙しい日は不満を言う人がいるでしょうし、なるべく暇な日に出勤しようとする人も出てくるはずです。
時間と給与が連動していると給与計算はラクですが、働く人のヤル気は思わぬ方向へ行きがちです。
「時間に対する賃金」と「仕事に対する報酬」を組み合わせる。
時間に対する賃金はゼロにはできませんし、最低賃金法で下限値も設定されています。そのため、それを下回る水準に設定することはできません。
時間に対して給与を支払っているとヤル気が出ないものですが、仕事や成果に対して報酬が支払われる仕組みがあれば状況は変わるでしょう。
成果報酬といっても、簡単なところから始めることも可能です。成果を定量的に評価するのは難しいのですが、やった仕事に対する評価ならば難しいものではありません。
例えば、掃除当番をやると500円、店頭挨拶をやると1000円のように、仕事に対して報酬を付けます。さらには、お中元を紹介販売をすると1件で500円というのも良いですね。
時間に対する賃金は少なめに設定し、このような形で報酬を上乗せしていくと、働く人の気持も変わるのではないかと思います。
他には、繁忙日とそうではない日で給与に差を付けるのも一案です。土日祝日は時間給を100円プラスする。夏休みの時期は学生の時間給を100円プラスするなど。時間給を増やすのではなく、先程のような仕事に対する報酬を増加させるのもありです。
時間を給与に変えるような働き方ではなく、仕事なり成果を給与に変える仕組みがあれば、人はヤル気になるもの。
時間に対する給与で最低ラインの収入を確保しつつ、そこに上乗せしていくというイメージです。
最低賃金が上がっても、時間と賃金が固定されている状況では、人の気持ちは変わらないものです。言葉でヤル気を出せと言っても動けるものではありませんが、具体的な仕組みがあれば人は動きます。
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