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┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2010/2/12号 no.167)━
「労働時間を明示する」というときの「明示」の意味は?
雇用契約を締結するときは、労働条件を明示しなければならないのがルールです(労働基準法15条)。
ちなみに、今回は、絶対的明示事項とか相対的明示事項について話したいのではありません。
雇用契約には必ず労働時間について決めるかと思いますが、この労働時間の設定のしかたが今回のポイントです。
1日の労働時間、始業時間、終業時間、休憩時間、残業の有無などが労働時間に関する項目ですね。その中の1つである「1日の労働時間」をジャスト○時間と決めるのではなく、「○時間~○時間」というように決めたらどうなるかが話の焦点です。
1日8時間とか1日6時間というように決めるのが通例なのでしょうが、「○時間~○時間」というように労働時間に幅を設定してみたらどうかということです。
雇用契約の内容は"明示する"必要があるのでしょうが、どの程度明示すれば足りるのでしょうか。
1日8時間とか1日6時間というようにジャストで明示しなければいけないのか、それとも、5時間から8時間というように幅を持たせて明示することも可能なのか。
分かれますよね。
労働時間に幅を設けたらどうか
なぜ、雇用契約の際に労働時間に幅を設けることを考えるのかというと、契約時間未満で終業してしまうと「休業ではないか」と指摘されてしまうからです。
例えば、1日7時間で契約している社員さんがいるとして、いつも1日7時間もしくは7時間プラスαで仕事をしているとしましょう。普段、この人は7時間未満で終業することはないと考えてください。
ところが、ある日はたまたま仕事が少なく、7時間も仕事をする必要がなく、5時間で終業できたとします。社員本人にとっては「あぁ、今日はめずらしく早く終わったな、、」と思うのでしょうが、第三者の視点から考えると、「7時間の契約なのに5時間で終わっている、ならば仕事ができなかった2時間は休業だ。だから休業手当を支払うべきだ」などと判断されることもあるのですね。
確かに、契約は7時間ですし、会社の判断で5時間の仕事で終わっています。ただ、契約は1日7時間だとしても、必ずしも毎日7時間分の仕事があるわけではありません。忙しいときもあれば、忙しくないときもある。雇用契約は、あくまで先を想定して内容を決めるものですから、後になって当初の想定からズレていくことはあり得ます。
「想定からズレたならば、契約を更新すれば良いのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、イレギュラーに勤務スケジュールを変更した程度で、わざわざ雇用契約を更新すると考えるのはちょっと無理があります。
困るのは、たまたま仕事が早く終わっただけで「これは休業だ」と言われてしまうことです。
忙しかろうと忙しくなかろうと、何が何でも1日7時間は仕事をさせなければいけないというのは、何かヘンですよね。仕事あっての雇用契約であって、雇用契約あっての仕事ではないのですから。
そこで、ジャスト7時間とかジャスト6時間というように雇用契約で労働時間を設定するのではなく、「労働時間は1日5時間から8時間」というように幅を持たせるのはどうかと考えたわけです。
このように労働時間に幅を設ければ、少々早く仕事が終わっても、雇用契約のレンジ内に納めることができますから、休業にはならないのではないかと思うのです。いわば、「ショック吸収」の役割を担わせることができるのですね。
ただ、労働時間に幅を設けて雇用契約を締結することが可能かどうかについては、定かではありません。有益な選択肢なのですけれども。
労働時間に幅を持たせると、時間単位休業が減る
去年のはじめ頃から、社員さんを休業させたときに使える助成金が新しくできましたね。
雇用調整助成金や中小企業緊急雇用安定助成金と呼ばれる助成金ですが、この助成金では時間単位の休業も助成の対象にしています。以前は1日単位の休業だけが対象でしたが、その後に時間単位の休業も対象に含まれました。
ここでちょっと困ることがあって、もし労働時間に幅を設けて雇用契約を締結するとなると、時間単位の休業がなくなることもあり得るのではないでしょうか。
もし「労働時間は1日5時間から8時間」という設定で雇用契約を締結しているとすると、1日5時間までは契約内で変更できるわけです。つまり、1日5時間から8時間の間ならば、どの時間でも労働時間として設定できてしまうのですね。それゆえ、1日8時間から1日5時間に時間短縮して操業しても、休業にはならないと結論できるのです。
上記のように考えると、なんとなくズルい感じがしますね。
時間単位で休業になりにくいように労働時間に幅を設けて雇用契約を締結することもできてしまうのですから。
ならば、「労働時間に幅を設けて雇用契約を締結するのはダメ!」という方針にすれば良いかというと、そうでもありませんね。
最初の方に書きましたが、1日7時間の雇用契約であるものの、たまたま仕事が少ない日があって、その日だけは1日5時間で終業したときに、労働時間を固定していると不都合が生じるのです。「2時間分は休業だ」と指摘する人がいますからね。
「労働時間に幅を設けて雇用契約を締結することはOK」とするのか、「労働時間に幅を設けて雇用契約を締結するのはNG」とするのか。
悩みますね。
私は、「労働時間に幅を設けて雇用契約を締結することはOK」とする方に賛成です。
最近は、ちょっと仕事を休みにしたり、ちょっと早く仕事を終えるだけでも「休業だ!」と言われてしまう世知辛い状況ですから、この状況にストップをかけたい思いがあります。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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