あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

【在職定時改定】10月分から厚生年金の受給額が毎年増える?

メールマガジン 本では読めない労務管理の"ミソ"

山口社会保険労務士事務所
(2023/8/29号 no.331)

増える年金

10月分から厚生年金が増えるのはどういう人?

年金制度で最も興味のあることは何かと聞かれて、それは何かというと「自分がもらえる年金はいくらなのか」という点に興味を持つ方が最も多いようです。これは公的年金加入状況等調査で分ります。

公的年金加入状況等調査

自分が払うものよりも受け取るものの方が興味を集めるのは当然のことですよね。

人によっては毎年10月分から老齢厚生年金の受給額が増える方がいらっしゃいます。 全ての人が対象ではないのですけれども、 厚生年金を受け取りつつ社会保険に入って厚生年金の保険料を払っている方、 そういう方は毎年10月分の年金額から増額改定される可能性があります。

年金を受け取って保険料を払っているというのは不思議な感じですよね。年金を受け取っているならば、もう年金の保険料を払っていないだろうと思うものですし、年金の保険料を払っているということはまだ年金を受け取っていないだろうと想像するものですからね。

10月分から厚生年金の受給額が増えるのは、65歳以上の方で老齢厚生年金を受け取り、社会保険に入って厚生年金保険料を払っている方が対象です。

すでに退職して厚生年金を受け取ってる方は保険料を払っていませんから年金が増えることはありませんし、国民年金だけ加入してきた方も対象外です。

令和元年 公的年金加入状況等調査によると、65歳以上で厚生年金に加入している人は約103万人います。ちなみに厚生年金全体では約3,978万人ですので、40人に1人の割合です。

払った厚生年金の保険料はいつ年金額に反映される?

厚生年金を受け取りながら厚生年金の保険料を払うというのはなんだか変な感じですが実際にあるケースです。65歳以上だともう仕事をやめて年金を受け取っている生活している方が多くなっていますからイメージしにくいのですけれども。厚生年金の被保険者で、同時に厚生年金の受給者でもある、そういう方がいらっしゃいます。

厚生年金の保険料を払っていれば、それが年金額に反映されるのですけれども、いつ反映されるのかが疑問になるところです。保険料を払うだけで年金の受け取り額は変わらない。そんなことはありませんので、保険料が年金に反映されるタイミングを知りたいですよね。保険料は毎月払っているけども、年金はいつ増えるのか。

年金を受け取り始める時期は人によって違います。60歳から受け取る人もいれば63歳からの人もいますし、65歳や67歳から受け取る人もいます。

今回は、老齢厚生年金を受け取りつつ、厚生年金に入ってその保険料を払っている方は、年金の受け取り額が毎年増えていく、そういう仕組みを説明します。

退職しなくても年金が増額されるようになった

以前は、仕事を辞めて厚生年金から抜けないと厚生年金の受給額が増えなかった(退職時の改定)のですけれども、制度が変わって、仕事を続けながらでも厚生年金が増額改定されるようになりました。この制度を在職定時改定と言います。 難しい言葉が使われていますよね。

老齢厚生年金を受け取りながら会社に勤めていましたが退職しました。受け取れる年金額は変わりますか。(日本年金機構)

仕事を辞めるまでずっと厚生年金の保険料を払い続けて、その後、仕事を辞めて厚生年金の被保険者資格を喪失すると、やっと長い間払ってきた厚生年金の保険料が年金額に反映される。これが退職時の改定です。在職定時改定がなかった時はこういう扱いだったのですね。2年間保険料を払っても、3年、4年と払っても、退職するまでは厚生年金は増えなかったんですね。退職すれば一括で精算されて年金が増えますけれども、何年分もの保険料を先払いしているだけになりますので加入者には不利でした。

在職定時改定ができて、退職しなくても払った保険料が厚生年金の受給額に反映されるようになりました。

令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました(日本年金機構)

保険料を毎月払っているから年金の受け取り額も毎月増えていくのかというと、そういうものではなくて、ある程度の期間をまとめてから年金額に反映するようになっています。

毎年9月1日を基準日として、9月から翌年8月までの過去1年間に支払った厚生年金の保険料を年金に反映して、年金額が増える。つまり、1年毎に保険料を精算して年金額を増やしていく。これが在職定時改定の制度です。退職するまではずっと保険料を払うだけだった状況が変わったんですね。

9月1日に過去1年分の保険料を精算するものですから、毎月、保険料を払うたびに年金が増えていくほど小刻みなものではないです。9月1日というと、定時決定で厚生年金の標準報酬月額が決まる時期と同じですよね。

定時決定(算定基礎届)

在職定時改定で年金が改定されるのは10月分からですので、年金の振込額が変わるのは12月15日に支給されるものからです。10月分と11月分は12月15日に支給されますので。

在職定時改定で老齢厚生年金はどれぐらい増えるの?

支払った厚生年金保険料に応じて、1年毎に老齢厚生年金を増額改定する在職定時改定ですが、ならばどれだけの厚生年金保険料を払うと、どれほど老齢厚生年金は増えるのか。対象者の方が最も興味を持つのはここですよね。

例えば、標準報酬月額が20万円で働く在職中の老齢厚生年金受給者が厚生年金保険料を払うと、厚生年金の保険料は月額で36,600円。これは本人負担分と会社負担分を含めた数字です。年間の保険料は439,000円です。

一方、在職定時改定で増える老齢厚生年金はおよそ年間で10,000円です。月額じゃないですよ、年間で10,000円増えるだけです。

保険料は年間で43万円ほど支払い、増える老齢厚生年金は年間1万円。うーん、これをどう評価するか。老齢年金は終身年金ですから、在職定時改定で増える年金も少なくなるだろうなと想定できますけれども、43万円の支払いで1万円増では、肯定的な評価を得るのは難しいのではないかと。

法人の役員として仕事をしている方だと、在職定時改定を避けるのは難しいかもしれませんが、そうではない方は厚生年金の被保険者にならない形で働くことを考えた方が良いのではないかと。後先長くないのですから、年金ではなく年間43万円を厚生年金保険料で払うのではなく現金で使う方が賢い選択だろうと提案します。

在職定時改定の対象になる人は103万人 年金が増えたと分かるのは12月15日

令和元年公的年金加入状況等調査によると、65歳以上、老齢厚生年金の受給者、厚生年金の被保険者、この条件を満たした人は103万人です。厚生年金の被保険者は全体で4,000万人とすると、1/40ですから多数派ではないですが絶対数では100万人ほどいます。

65歳以上だと、もう定年退職して仕事をしていない方が多いでしょう。働いているとしても短時間で社会保険に入らない形で仕事をしていることも。他には、会社の役員として働いていれば65歳以上の方もいらっしゃるでしょう。さらに、自分の商売で設立した法人に所属して、そこを経由して社会保険に入っている方も。

厚生年金の保険料を払うたびに老齢厚生年金の受給額が毎月増えていくというものではなくて、毎年9月1日の基準日から過去1年間の保険料を精算して、厚生年金の受け取りが増えていく。これが10月分から厚生年金の受取額が増える理由です。

10月分から年金額が増えるとなると、その分が支払われるのは12月です。年金は偶数月に支払われますから、10月分と11月分は2ヶ月まとめて12月に支払われます。そのため、実際に厚生年金が増えていると知ることができるのは12月15日の年金支給日ですね。

給与計算をラクに。社会保険料を自動で正確に計算。
毎月の給与に社会保険料はかかりますけれども、年に数回支給される賞与に対しても社会保険料はかかります。ならば、その額がいくらになるのかを自動で正確に計算してくれると、給与計算が楽になりますよね。

こちらもオススメです

労務管理のツボをギュッと押したければコチラ

厚生年金の在職定時改定とはどのような制度で、メリットは何?

月の途中で退職したら社会保険料はどうなる?

本では読めない労務管理のミソ を登録する

あやめ社労士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
i@growthwk.com
お問い合わせはこちらから

自動音声メッセージによるお問い合わせもできます。
電話(050-7114-7306)をかけると音声メッセージを録音するように切り替わります。
お問い合わせの内容を電話でお伝えください。
内容を確認させていただき折り返しご連絡させていただきます。

© あやめ社労士事務所
登録番号:T3810687585061
本ウェブサイトは、アフィリエイトによるプロモーション、広告を掲載しております。