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在職定時改定とはどのような制度で、メリットは何?

在職定時改定

 

在職定時改定とは

在職定時改定とは何なのかと聞かれれば、退職して厚生年金の被保険者資格を喪失せずとも、働いている途中、つまり在職中でも受け取る老齢厚生年金の額を増やしていける、そういう制度です。

なんだか分かりにくい制度ですけれども、在職定時改定がない場合に比べて、在職定時改定があると、「老齢厚生年金の受取額が増える」と説明すればわかるでしょうか。 

在職定時改定のイメージ

年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました(厚生労働省)

年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省

在職定時改定の対象となるのは、65歳以上の年齢であり、在職中つまり会社に所属して厚生年金の被保険者として働いている状態で、老齢厚生年金を受給している、これら3つの条件を満たした人が在職定時改定の対象となります。

ということは、65歳未満の人は在職定時改定の対象外になりますし、65歳以上で在職していない人も対象外です。この場合の在職というのは、会社経由で在職していることを意味しますから、厚生年金の被保険者になっている状態を意味します。つまり、給与から厚生年金保険料を払っている人です。


『令和元年度  厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金の被保険者は4037万人。そのうち男性が2488万人、女性が1550万人。年齢別で被保険者を見ると、65歳以上の方は、男性で4.7%、女性で3.2%です。2488万人のうちの4.7%ですから約117万人。1550万人のうち3.2%だと49.6万人。65歳以上の厚生年金被保険者は合計で166.6万人。厚生年金の全被保険者に占める割合は約4.13%です。

この4.13%の人たちが在職定時改定の対象になりうる被保険者ですので、大多数の方には関係のない制度改正です。

65歳以上で厚生年金の被保険者になっているだけでなく、老齢厚生年金の受給者が対象になりますから、今まで厚生年金の保険料を払ったことがない方は、老齢厚生年金を受け取りませんので、在職定時改定の対象外です。

国民年金だけ加入しており、確定拠出年金(iDeCo)やNISA、株式や不動産などを使って金融資産を作ってきた人達は、厚生年金に入っていないので、在職定時改定の対象とはなりません。厚生年金保険料を払ったことが無い方には無関係です。

また、60歳ぐらいで退職して、もうすでに在職していないとなれば、この方も在職定時改定の対象になりません。

 


在職定時改定のメリットは何? 

厚生年金に加入しているということは、厚生年金保険料も払っているのですから、保険料を払った分だけ老齢厚生年金の額も増えていかなければいけません。

例えば、65歳から70歳まで5年間、会社に在職して、厚生年金に加入し被保険者として保険料を払っているならば、その払った保険料の分だけ老齢厚生年金も受給額が増えなければいけませんよね。

在職定時改定の制度が無いときは、上の例だと、70歳で退職して被保険者資格を喪失するまでは老齢厚生年金の額が増えませんでした。しかし、在職定時改定制度があれば、1年ごとに老齢厚生年金の額が増額改定されて、厚生年金の取り分が増えます。

つまり、65歳から66歳までの1年間に厚生年金に加入して、厚生年金保険料を払ったわけですから、その一年分の保険料を老齢厚生年金を受給額に反映しよう、というのがこの在職定時改定です。退職まで5年も待つ必要がなくなったわけです。

退職して厚生年金の被保険者資格を喪失しないと、以前は年金額が増えなかったのですけれども、1年ごとに支払った厚生年金の保険料を精算して、その分だけ厚生年金の老齢厚生年金の受取額を増額して反映させていく。これが在職定時改定の利点です。

ですから退職まで増額されるのを待つ必要はなくて、働きながら厚生年金保険料を払っていいると、じりじりと1年ごとに老齢厚生年金の受取額も増えていくというわけです。

 

 

在職定時改定によって130,000円得をする

厚生労働省のウェブサイトに掲載されている在職定時改定イメージ図(上記掲載)では、事例として標準報酬月額20万円で、1年間就労したとき、老齢厚生年金が年間で13,000円増加すると示されています。

標準報酬月額というのは、要するに月収と考えて頂いて結構です。厳密には賞与も含んで、給与と合算した形で、この標準報酬月額を算出するのですけれども、分かりやすく捉えるには、標準報酬月額というのは月収のことだと考えていただければいいでしょう。

月収20万円で1年間働き、厚生年金の保険料を支払っていくと、その結果、年間で13,000円、老齢厚生年金が増えます。1ヶ月あたりに換算すると1,100円程度。

仮に、毎月の老齢厚生年金が10万円だとすると、年間で120万円。1年間在職して、厚生年金保険料払うと、そこに13,000円が上乗せされるので、2年目は年間で1,213,000円が老齢厚生年金の支給額になるわけです。

標準報酬月額20万円のまま、2年目も働き続けたとすると、さらに年間で13,000円の年金が増えますので、2年目と合わせると合計で26,000円、老齢厚生年金が増えます。年間に換算すると、1,226,000円

在職して厚生年金保険料を払いつつ、齢厚生年金を受け取っていると、1年ごとにこのような形で厚生年金の受取額が改定されて増えていくのです。

5年後の70歳で退職するまで厚生年金の支給額が変わらないならば、5年間でジリジリ増えるはずだった年金が受け取れなくなるわけですから、初年度は増額なしですが、2年目で13,000円、3年目で26,000円、4年目で39,000円、5年目で52,000円。在職定時改定が無ければ、この合計額を受け取れません。

在職定時改定によって増える老齢厚生年金、これを5年分合算すると、130,000円になります。在職定時改定がなければ、これを受け取れなかったのですけれども、在職定時改定制度が出来上がることで、この130,000円を受け取れるようになるのですね。

在職定時改定の対象になる方は少数派かもしれませんが、実際に対象となる方にはメリットのある制度改正です。 

 

厚生年金の保険料を払いながら厚生年金を受け取るという話をすると、なんだか不思議な感じがするかもしれませんが、65歳以上の方だと、年金の受給開始年齢に達していますから、老齢厚生年金を受け取りながら会社に在職して、かつ、厚生年金の保険料を払うという状態になる方もいます。

老齢厚生年金を受け取っている一方で、厚生年金の保険料を払っているという不思議な状況ですけれども、そういう状態になるわけです。

65歳以上で在職して厚生年金の被保険者になっているという人が対象ですから、人数は全被保険者の約4.13%しかいません。65歳以上で厚生年金の被保険者というと、会社の経営者や役員の方が大半ではないかと思います。中小企業の役員なら定年退職なしに働く方もいらっしゃるでしょう。

60歳になれば退職される方が多いですし、ましてや65歳の段階になると、もう働いていないという方もいらっしゃるでしょう。働くとしても、厚生年金の被保険者にならない範囲で、短時間労働者として働くという方もいらっしゃるでしょうから。

 

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山口正博 社会保険労務士事務所
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