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パートタイマーが社会保険へ加入する基準とは

 

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8.8万円から6.6万円へ。

パートタイム労働者が社会保険に加入するには、
月収8.8万円以上が条件になっていますが、

これを月収6.6万円以上に引き下げるかどうか
検討されているとのこと。


8.8のゾロ目から6.6のゾロ目に変更となれば、
さらに5.5とか4.4なんてのもあるのか。

それはさておき、

パートタイム労働者が社会保険に加入する基準が
さらに緩和される可能性があります。


月収6.6万円を年収換算すると79.2万円

ずいぶんと加入基準が低くなります。


2016年の秋頃までは、
週30時間以上の契約でないと
社会保険には加入できず、

パートタイマーであっても
年収150万円ぐらいの人が
社会保険に入っていました。

 

 

月収6.6万円で社会保険に加入すれば、社会保険料はいくらになる?

会社経由で社会保険に加入すると、
「厚生年金保険料」「健康保険料」が必要になります。

この2つを合わせて社会保険料と言います。

なお、40歳以上の人は介護保険料も必要です。

 

例として、

27歳の人が月収6.6万円で社会保険に加入したとして、
社会保険料はいくらになるか。

 

まず、
厚生年金は、月16,104円で、
これを会社と折半して、
本人の保険料は月8,052円。


健康保険料は都道府県ごとに違いがありますが、
保険料率を10%とすると、
6,600円になり、これを会社と折半して、
本人の保険料は3,300円。


厚生年金と健康保険と合わせて、
毎月の保険料(本人分)は月11,352円になります。


厚生年金、国民年金、健康保険。

この3つに加入して、
保険料が11,352円ですから、
ずいぶんとリーズナブルです。


第1号被保険者ならば、
国民年金の保険料だけで約16,000円ですから、
それに比べれば会社経由で社会保険に入った方が
毎月の保険料は少なくなります。

 

 

雇用契約を締結するときに、社会保険への加入を回避。

週20時間以上の契約で
月収8.8万円以上になりそうな人には、

契約時に働く時間を減らして
加入条件に達しないように
させる会社もあります。

社会保険に加入したいと本人が考えていても、
本人の希望だけでは加入できないこともあります。


もしくは、

「週30時間以上の契約ならば社会保険に加入できる」
という条件を提示され、

【週20時間、月収8.8万円】
の基準では、

現実に社会保険に加入できない
なんてことも起こります。


そこで、

月収6.6万円まで条件を下げれば、
学生を除いて、
パートタイムで働く人の大半が
社会保険への加入対象になるでしょう。


週20時間で働けば、
最低賃金程度の水準でも
月収6.6万円には達するでしょうから、
学生以外のパートタイマーは、
ほぼ全員が社会保険に入ることになるはずです。

 

 

なぜパートタイマーで社会保険に加入する人を増やすのか。

加入条件を引き下げれば、
社会保険に加入する人が増えます。

では、なぜ加入者を増やそうとしているのか。


理由はいくつかあります。

1つは、
社会保険料の収入を増やすため

 

加入者が増えれば、保険料収入が増えます。

保険料収入が増えれば、社会保険の財源が潤い、
財政状況が良い方向へ向かいます。

日本の支出が約90兆円あり、
そのうち約30兆円が社会保障関係で、
最も費用が発生しています。

そのため、
なるべく保険料収入を増やして、
給付を減らしていき、
財政状況を好転させていこうとしているわけです。

 


外の理由としては、

年金の第3号被保険者
健康保険の被扶養者

を減らそうとしているのではないかという点。


会社経由で社会保険に加入すれば、

年金では第2号被保険者になり、
給与から保険料を支払います。

健康保険では被保険者の扱いになり、
こちらも給与から保険料を支払います。

 


主婦でパートタイマーとして働いている方は、

年金では第3号被保険者の方が多く、
保険料無しで国民年金に加入しています。

国民年金保険料は払っていないものの、
支払ったもの(既納)と同じ扱いになり、
その加入期間は年金額にも反映されます。

つまり、
毎月16,000円ほどのお小遣いを貰っているのと同じです。


また、
健康保険では被扶養者になっており、
毎月の健康保険料は不要です。

利用時の自己負担は必要ですが、
毎月の健康保険料を払う必要がありませんから、
こちらも毎月10,000円ぐらいの恩恵を受けていると
考えていいでしょう。



第3号被保険者制度は、
毎月の保険料が必要な第1号被保険者や第2号被保険者に比べて
不公平感があります。


例えば、

働いていない大学生は第1号被保険者(保険料が必要)なのに、
収入があるパートタイマーの人は第3号被保険者(保険料不要)
というのも歪な感じです。


パートタイマーが社会保険に加入する基準を下げて、
第3号被保険者を第2号被保険者に切り替えさせ、
健康保険の被扶養者を被保険者に切り替えてもらい、

最終的には、
第3号被保険者と被扶養者制度を廃止する
のが目的ではないかと思います。


第3号被保険者制度
被扶養者制度

この2つは、
「タダ」、もしくは「ほぼタダ」で
社会保険を提供しているようなものですから、
いずれは縮小なり廃止されていくのでしょう。

 

 

 

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厚生年金は健康保険とセットで加入する。

社会保険への加入基準が6.6万円に下がるといっても、
厚生年金だけ加入して、
健康保険には加入しないという選択はできません。


健康保険では被扶養者のままで、
厚生年金に入る。

こういう組み合わせはできないのです。

 

厚生年金に加入すれば、
健康保険では被保険者になります。

厚生年金と健康保険の被保険者資格取得届は
1枚の用紙でまとまっていますから、
どちらか片方だけ加入するという余地はありません。


ちなみに、
厚生年金に加入すれば、
自動的に国民年金にも加入しているものと扱われます。

 

「厚生年金に入っているけど、
国民年金には入っていないよ」

なんてことは起こりません。


厚生年金に加入しているということは、
厚生年金と国民年金に同時に加入している状態です。

支払う保険料は「厚生年金保険料」だけですが、
この厚生年金保険料の中に国民年金保険料が
含まれていると考えてください。

 

 

第1号被保険者とのバランスをどうするか。

パートタイマーとして社会保険に入れば、
第1号被保険者として国民年金に加入するよりも
保険料が少なくなります。

ちなみに、
会社経由で社会保険に加入すると、
年金では第2号被保険者になります。


厚生年金、国民年金、健康保険。
この3つに加入して、毎月の保険料(本人負担分)が1万円強です。

一方で、

国民年金だけ加入している人は、
保険料が毎月約16,000円ほどですから、
第2号被保険者に比べて保険料が多くなります。


前者は3つの制度に加入して
保険料は1万円強。

後者は1つしか加入していないのに
保険料は約16,000円。


保険に多く加入するほど保険料も増えるものですし、
3つ加入している方が1つしか加入していない方よりも
保険料が多くなるべきです。

しかし、
パートタイマーの社会保険では、
制度に多く加入している方が保険料が安くなるという
歪な状況が発生します。


この不均衡を解決する方法としては、
社会保険の最低保険料を引き上げるのも1つの手です。


具体的には、

厚生年金保険料は、
最低額が月16,104円(会社分と本人分を合算したもの)で、
これが厚⽣年⾦保険料額表の第1等級になります。

この等級を、例えば5等級から開始するように変更し、
1等級から4等級までを廃止すると、
厚生年金保険料の最低額は月21,594円になります。

これでも本人負担は10,797円ですから、
国民年金だけ加入している人に比べて割安です。

 


ただ、保険料の最低額を引き上げる方法には欠点があります。

  1. 所得に占める社会保険料の割合が上がってしまう。
  2. 会社が負担する社会保険料も上がってしまう。

この2点が欠点です。

 

月収6.6万円で、厚生年金保険料が1万円だとすれば、
所得に占める厚生年金保険料は15%になります。

8,000円ならば、
所得に占める厚生年金保険料は12%です。

本人負担分だけで割合を計算していますが、
保険料の全額で計算すれば、
前者は30%、後者は24%になります。

厚生年金の保険料率は18.3%ですが、
それよりも所得に占める保険料の割合が
実質的に多くなります。

 


外の方法としては、
月収10万円以下の人は、

社会保険料の負担割合を
会社3:本人7
というように変えてしまうのも1つの案です。

所得に占める社会保険料の割合は高くなりますが、
第1号被保険者との差を縮める方法の1つです。

 


月収6.6万円以上でパートタイマーを社会保険に加入させるには
【第1号被保険者との差】
をどうやって処理するか。

ここが最大の考えどころであり、課題です。

 

 

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