副業の時代 2つの会社で働いた場合の残業代(時間外割増賃金)はどうなる?

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複数の事業主、

つまり、

複数の会社で雇用されて働く人の
労働時間はどのように計算されるのか

さらに、

残業代はどうやって計算するのか。


2つ以上の会社で働くと
残業代がどこの会社から出るのか
が問題になります。

 

 

 


3時間しか働いていないのに割増賃金を支払うの?


2つの会社、
事業所A事業所Bで働く場合を考えてみましょう。


まず、事業所Aで、
10時から17時まで勤務。

休憩時間が1時間あるとすれば、
労働時間は6時間です。


この後、
B事業所に移動して、
19時から22時まで勤務する。

休憩は無いものとして、
労働時間は3時間


朝から夕方までは事業所Aで勤務し、
夜に事業所Bで勤務する。

合計で労働時間は9時間になります

 


8時間を超えた時間は法定時間外労働になり、
割増賃金が必要です。

9時間労働だと、
1時間分の時間外割増賃金が出るはずですが、
この割増賃金をどの事業所が支払うのか。

 

事業所Aが割増賃金を支払うのか。

それとも、

事業所Bが割増賃金を支払うのか。


この点が問題になります。


「出勤時間が後になっている事業所Bが払うのでは?」
と思う方もいるでしょうが、

それで問題を解決できるでしょうか。



事業所Bでは19時から22時まで、
3時間しか働いていません。

にもかかわらず、

「1時間分の割増賃金を支払え」
と言われても、

「いや、ちょっと待ってくれ」
と事業所Bの使用者は言うでしょう。

 

 

 

労働基準法38条1項の内容を実現するのは困難。


労働基準法38条1項(以下、38条1項)では、

【労働時間は、事業場を異にする場合においても、
労働時間に関する規定の適用については通算する】

と書かれています。


ならば、

「事業所Aでの6時間」

「事業所Bでの3時間」

は通算され、8時間を超えた1時間分に対して
割増賃金を支払う必要がある。


、、、という解釈をするはずですが、

現実として可能なことでしょうか。

 


ちなみに、

事業場だけでなく、
事業主が異なる場合(お互いに全くの別会社のケース)でも
38条1項は適用されると行政通達で解釈されています。


同じ会社の中ならば、
勤怠データを集約できます。

しかし、

別会社の勤怠データをどうやって取得するのか。

ここを解決できないまま、
38条1項を適用するのは困難です。

 

 

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「労働時間を通算できる場合」と「労働時間を通算できない場合」



事業主が同じで、事業所が異なる。

これならば、勤怠データを集約できますから、
労働時間を通算することも可能です。

 

例えば、
チェーン展開する会社がこれに当てはまります。

本部があって、
各店舗があり、
営業は店舗で行う。

飲食チェーンや小売チェーンが実例です。


梅田店で、
10時から17時まで働き、

その後、

心斎橋店に移動して、
19時から22時まで勤務する。


店舗が違っても、
本部は同じですから、

労働時間を通算し、
8時間を超えた1時間分に対して
割増賃金を支払えます。

 


しかし、

事業主が異なり、事業所も異なるとなると、

どうやって勤怠データを集約するのか。


別会社がデータを持っており、

勤怠データは、
特定の個人を識別することができるものです。


労働時間や日付の羅列では誰のデータか分かりませんから、
本人の氏名もそれらのデータに結びつけています。

となると、そのデータは個人情報に該当します。


個人情報である勤怠データを
他社に渡すことはないでしょう。

勤怠データを取れないのですから、
労働時間を通算することもできません。

 

 

勤務する時間帯が違うだけで、割増賃金の支払いを免れる。


事業所AとBの話に戻ると、

B事業所は納得しないでしょう。

「ウチでは3時間しか働いていないのに、
なぜ割増賃金を払う必要があるのか」
と言うはずです。


1つの事業所で9時間勤務になれば、
そのうち1時間は時間外労働になり、
割増賃金を支払うのは納得できます。

しかし、
先に勤務を開始しているA事業所は割増賃金の支払いを免れて、
B事業所は免れないのは不合理です。

 


「法定時間外に使用した事業主に割増賃金の支払義務がある」
という解釈もありますが、

「法定時間外に使用した事業主」とは
どちらの事業主のことかが曖昧です。

勤務する時間帯が時間的に先というだけで
割増賃金の支払い義務を免れるとなれば、
夜に勤務している側である事業所Bは納得しないでしょう。


「法定時間外に使用した」
と判断するには、

その労働者が法定労働時間外になっているかどうか
を知らないといけませんが、
それをどのように知るのか。

 

電話をかけて、
他社の勤務状況を教えてもらえるものではないですし、

本人の自己申告ではデータとして不正確です。


副業に関してうるさい職場ならば、
「他の会社では働いていない」と言うはずです。

正しい申告はしません。

 

38条1項の文言を読めば、
労働時間を通算するべきなのだけれども、
実務では通算できないのですね。

仮に、
マイナンバーを使って強引に労働時間を通算したとしても、
「どこの事業所が割増賃金を払うのか」という点を解決できません。


何とかして38条1項の内容を適用していきたいという気持ちは分かりますが、

  1. 個人情報の取り扱い。
  2. 割増賃金の支払い義務。

この2点をクリアできないため、
事業主が異なる場合には、38条1項の適用を諦めざるを得ません。

 

 


「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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