- 入社日が違うから年次有給休暇を付けるタイミングも違う
- 年次有給休暇を個別に付与するか、基準日を揃えるか
- 基準日で年次有給休暇を付与する時期を揃える方法
- 学生のバイトからフルタイム社員に切り替えたときの年次有給休暇はどうなる?
- 雇用契約や就業規則で条件を決めずに前倒しで年休を付与したら
勤務期間に応じて年次有給休暇の日数は決まっています。
ただ、入社日は、
全員同じというものではなくて、
4月1日に入社した人
5月17日に入社した人
9月3日に入社した人
、というように、個々にバラバラです。
新卒で一括採用されると、4月1日が入社日になるのでしょうが、それは例外。
入社日が違えば、勤務期間も個々に違います。
そこで問題になるのが、有給休暇を付ける時期です。
入社日が違うから年次有給休暇を付けるタイミングも違う
有給休暇の日数を関するときに悩みのタネになるのが
【休暇を付与するタイミング】
入社から6ヶ月を経過した時点で、最初の年次有給休暇が付与されますけれども、
入社日が違うと、この付与日も違ってきます。
4月1日が入社日だと、最初の有給休暇は10月1日に付与。
5月17日に入社すれば、11月17日。
9月3日に入社した人ならば、3月3日。
このようにバラバラになり、「こりゃあ、大変だ」となるわけです。
できれば全従業員の年次有給休暇を同じ日に付与したい。そう考えますよね。
年次有給休暇を個別に付与するか、基準日を揃えるか
入社してから半年経つと、初めての年次有給休暇が付与されるのですが、入社時期がそれぞれバラバラだと、年次有給休暇を付与するタイミングもそれぞれ違ってしまいます。
入社日に応じて年次有給休暇を付与する方法
入社時期がそれぞれ違って、年次有給休暇を付与する時期も違うとなると、残日数の管理や付与日なり基準日を把握するのが面倒になります。ですが、入社日に応じて正確に年次有給休暇を付与するため、もっとも良い方法ではあります。
各従業員の入社日を正確に管理し、個別対応が必要なのが欠点ですが、人事労務管理ソフトがクラウドサービスでもありますので、そういったサービスを利用すると、個別に年次有給休暇の日数を管理しやすくなります。
他に、その残日数の管理をしやすくするにはどうすればいいのか。
4月に入社した人だったら、その6ヶ月後の月の10月に6ヶ月を経過したことになるので、年次有給休暇を付与することになりますが、月だけでなく日にちまで違うと、年次有給休暇を付与するタイミングや残日数の管理が大変です。
そこで、有給休暇を付与するタイミングを全ての社員で統一してしまうと、管理が簡単になります。
月単位で入社日を1日に統一する方法
4月に入社した人は、全員が4月1日に入社したものとみなして、6ヶ月後の 10月1日に最初の年次有給休暇を付与するのも一つの方法です。
入社日の取り扱いは、月の途中で入社した場合も、その月の1日に入社したものとして計算します。例えば、4月15日入社 → 4月1日入社として扱い、10月1日に年次有給休暇を付与します。
ちなみに、月末に給与明細を渡しているならば、9月末の給与明細に年次有給休暇が付いた日数を表示しておく必要がありますね。細かいところですが、こういったところで働きやすさが変わりますし、職場として選んでもらえる会社のポイントです。
この方法だと、月はバラバラになりますが、日にちに関しては全員が1日入社とみなされるので、毎月の給与を支払うときに、年次有給休暇を付与する対象者特定して、有給休暇をつけることができます。つまり、月ごとに基準日を設けるようなものですから、毎月支払う給与とタイミングを合わせることができるのがこの方法の利点です。
4月1日に年次有給休暇を付与する日を統一する方法
また別の方法としては、毎年4月1日の段階で全社員に年次有給休暇を付与する。こういうやり方もあります。
付与日が統一され、管理が簡便になりますし、他の従業員と同じタイミングで休暇を取れるため公平感があります。
全社員の基準日が4月1日になりますから、毎月の給与を支給する段階に年次有給休暇について考える必要がない、という利点があります。しかし、4月1日だけしか基準日がないのですから、年度の途中で入社した人に対しては、前倒しで年次有給休暇を付与しておかないと、法律で求められている水準を下回ってしまいますので、この点に注意が必要です。
4月1日だけ基準日を設けていると、仮に5月に入社した人がいれば、その人の年次有給休暇は半年後の11月には付与しなければいけないわけですから、翌年の4月1日まで待って、有給休暇をゼロの状態にしておくわけにはいかないんです。11ヶ月ほど年次有給休暇を付与しないのはだめですので、5月に入社した段階で付与するなどの対応が必要です。
となると、11月に年次有給休暇を付与しないという前提に立てば、5月に入社した段階で、最初の年次有給休暇を付与しておく必要があるでしょう。もしくは、入社した初年度に限って、入社日に合わせて年次有給休暇を個別に付与して、翌年度からは4月1日に揃えていく。そういうやり方でもいいでしょう。
年次有給休暇の基準日を4月1日と10月1日にする
年次有給休暇は、初年度は勤続半年で付与されますし、その後は1年6ヶ月、2年6ヶ月という形で1年ごとに付与されますから、基準日を4月1日だけではなくもう1日設けておくのも一つの方法です。4月1日を基準日にして、その半年後の10月1日も基準日にしておく。これならば年度の途中で入社した人にも対応が出来ます。5月に入社した人には、最初の年次有給休暇を10月1日に付与し、次の年次有給休暇は、翌年の4月1日から付与することで、それ以降は毎年4月1日を基準日にして揃えていく。
8月や9月に入社した人も10月1日の最初の基準日に年次有給休暇が付与されるのですが、一斉に付与する基準日を設ける以上、ある程度の個人差が出てしまうことは受け入れなければいけません。
正確さと簡便さのトレードオフです。
基準日で年次有給休暇を付与する時期を揃える方法
入社日が違えば、年次有給休暇の付与日もズレる。
この問題に対処するために、「基準日」を設けて、その基準日になったら、一斉に有給休暇を付与する方法があります。
「基準日」という言葉が出てきましたけれども、
付与日と言ったり、
統一日と表現したり、
起算日という言葉だったり、
会社によって使う言葉が変わります。
いずれも同じ意味で使われており、
「有給休暇を付与する日」
と考えていただいて結構です。
学生のバイトからフルタイム社員に切り替えたときの年次有給休暇はどうなる?
学生の身分で働いていた職場に、卒業後はフルタイムで働き続けるとき、有給休暇の扱いはどうなるのか。
継続した勤務期間に応じて有給休暇の付与日数は変わりますので、学生の頃の勤務期間が卒業後も通算される場合と通算されない場合では、休暇の付与日数が変わります。
週3日勤務だと、勤務日数に比例して年次有給休暇が付与され、6ヶ月勤務して年次有給休暇は5日、1年6ヶ月で6日、2年6ヶ月で6日となります。一方、週5日勤務だと、6ヶ月勤務して休暇は10日、1年6ヶ月で11日、2年6ヶ月で12日となります。なお、所定労働時間は年次有給休暇の比例付与日数に影響しません。
例えば、学生の頃は週3日で3年間勤務して、卒業後はフルタイムで週5日に切り替わる場合、勤務期間を継続した場合と継続しない場合で休暇日数がどれだけ変わるか。
勤務期間を継続した場合
すでに3年の勤務期間がありますので、ここからスタートします。
フルタイム社員に切り替わってから6ヶ月時点で、すでに継続勤務期間は3年6ヶ月ですので、有給休暇の付与日数は16日、さらに1年6ヶ月時点では継続勤務期間は4年6ヶ月になりますから休暇の付与日数は18日になります。
また、学生の頃に付与された年次有給休暇の残日数も引き継ぎます。
勤務期間を継続しない場合
一方、勤務期間を継続しない場合は、先ほどと同じように、6ヶ月勤務して休暇は10日、1年6ヶ月で11日です。
では、勤務期間を継続するかどうかをどのように判断するかというと、「実質的に労働関係が継続しているかどうか」で判断します。
上の例だと、職場はそのまま同じで、卒業前から卒業後もそのまま同じ場所で仕事をしているので、この場合は「実質的に労働関係が継続している」と判断します。
ここで、「じゃあ、少し期間を開けたらどうなる?」と思うところです。
例えば、2月に一旦契約を終えて、卒業後の4月から新たに契約して仕事を再開する場合、勤務期間は継続するのかというと、職場が同じで事業主も同一であるならば、「実質的に労働関係が継続している」ので、勤務期間は継続します。
なぜこういう扱いをするのかというと、もし勤務期間を継続しないとしてしまうと、契約を一時的に終了させて労働基準法39条を潜脱させてしまうので、実質的に労働関係が継続しているかどうかで判断するのです。
シンプルな方法で対処したいならば、従業員が有利になるように扱うようにすると、小難しいことを考える必要はなくなります。具体的には、すでに取得している年次有給休暇は、日数をそのまま移行させて、勤続期間もリセットせずに、フルタイム勤務になったあとも継続して持ち越せるようにすれば、従業員にとって不利益になりませんので、トラブルも起こりません。
勤続期間をリセットするように狙ってくる職場で働き続けたいとは思えないでしょうから、学生からそのまま続けて働いてくれるような魅力を提示すると良いですね。
雇用契約や就業規則で条件を決めずに前倒しで年休を付与したら
就業規則や雇用契約の中で、年休を先取りで取得できるという点について決まりがないものの、現場の判断で、入社から6ヶ月が経過する前に年休を付与してしまってもいいのかどうか。
年休を付与するタイミングを全ての従業員で揃えたい。そのために、入社から6カ月の時点で年休を付与するのではなく、前倒しでそれを付与することで、他の従業員と年休の付与時期を揃えたい。そういう考えで前倒しで年休を付与しているのかと想像します。
例えば、入社から2ヶ月の段階で10日分の年次有給休暇を付与した。その場合に就業規則に特に決まりはなく、雇用契約での根拠もない中で、現場の判断で前倒しで年休を与えるのはいいのかどうか。
労働基準法39条(以下、39条)では、6ヶ月以上勤務した人で、出勤率の条件を満たすと、10労働日の年次有給休暇が付きます。
第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
6ヶ月間の継続勤務が条件になっていますけれども、法律よりも有利な扱いをするならば、6ヶ月よりも前に年次有給休暇を付与したとしても39条には違反しません。前倒しで年休が付くならば従業員には嬉しいことですので。
しかし、法律には違反しませんけれども、就業規則や雇用契約に根拠がない中で、前倒しで年休を与えてしまったとなると、じゃあもっと前倒しで与えていいんじゃないかとか、入社段階で年休をつけてもいいんじゃないか、他の人も「じゃあ私も前倒しで年休を取らせてください」と、基準がない中で労務管理をしてしまうと収集がつかなくなりますよね。
他の人がやっていいんだったら、じゃあ私も、と考えるのが人間ですから。
良かれと思ってやっていることでも、根拠や基準がなく対応してしまうと、その後に困ります。年休の付与日を全体で揃えていくという目的があって、その目的のためにどのような条件で年休を前倒して付与していくのか、というところを事前に決めておきます。
会社として就業規則や雇用契約で、入社から6ヶ月経たずに年休を付与するというような決まりを設けているなら、それはもちろん実現可能です。ちゃんと判断の目安が設けられているのですから問題ないわけです。
しかし、そういう根拠がない中で、現場の判断でやってしまうと、もう何でもアリになってしまいます。
前倒しで年休を付けるならば、雇用契約や就業規則で条件を決めておく必要があります。