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こんなのアリ? 退職するときに年次有給休暇を減らされた。

 

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退職するときに、残った有給休暇を使う方もいらっしゃるでしょうが、

会社によっては

【退職するときに有給休暇を減らされる】

なんてこともあるようです。

 

なぜ退職するときに有給休暇が減らされるのか。
この仕組みというか理屈が分からない方もいらっしゃるはず。

 

結論から先に書くと、

「すでに付与された有給休暇は減らない」

という話になります。

 

 

 

有給休暇を付与する時期を揃えると、問題が発生。

 まず、会社側は、なぜ退職時に有給休暇を減らすのか。

ここから説明しましょう。

 

年次有給休暇は、勤続年数に応じて付与日数が決まっています。


週5日勤務の人ならば、
勤続6ヶ月で10日勤続1年6ヶ月で11日
このように勤続年数と有給休暇の日数が紐ついているんです。

 

6ヶ月に達した時点で10日。1年6ヶ月に達した時点で11日。
このように有給休暇を付与していれば、特に問題は起こりません。
退職時に有給休暇を減らすこともないです。

 

しかし、
【有給休暇を付与する時期を揃えている】
と問題が発生します。

 

 

 

有給休暇を先取り。

例えば、
有給休暇を付与する時期を

4月1日

に設定していたとします。

 

これは、
入社日にかかわらず、
全員の有給休暇を4月1日に付与するという意味です。

 


本来は、
入社日が違えば、
有給休暇を付与する時期も変わるのですけれども、


個々に有給休暇の付与日が異なると、
管理が大変なので、4月1日に付与時期を揃えているのです。


仮に、
2月1日に入社した人がいたとして、
この人の有給休暇が最初に付くのは、
6ヶ月後の8月1日。

 

しかし、
4月1日に有給休暇の付与日を揃えているならば、
時期を前倒しして、4月1日に10日分の有給休暇を付けます。


まだ入社して2ヶ月ですが、
4月1日が統一の付与日なので、
この時点で有給休暇が付くわけです。

 

 

 

有給休暇を減らす理屈。

 本来、付与される時期よりも早く有給休暇が付くため、
有給休暇を先取りしているような状態になります。

この「先取り」という部分が問題を起こします。

それゆえ、
退職するとなると、
「先取りした有給休暇を減らす」
という話が出てくるんです。

 


先程の例では、

入社日が2月1日。

4月1日に有給休暇が10日分付く。

という流れでしたが、
5月末で退社したとすれば、どうなるか。

 

入社からまだ4ヶ月ですけれども、
5月末で退職するとなれば、
8月1日まで、まだ2ヶ月あります。


そこで、
先取りした有給休暇に対して
2ヶ月の期間(退職すると未経過になる勤務期間)
に相当する日数を減らす

という理屈を会社は展開するわけです。

 

 


未経過の期間だけ有給休暇を減らす。

有給休暇は10日で、退職までに経過した期間は4ヶ月。
未経過の期間は2ヶ月ですから、
10 × 1/3 = 3日分(端数を切り捨て)。

ゆえに、退職までに使える有給休暇は、7日分となるわけです。

 

 

 

なぜこんなことが起こるのか。

有給休暇を付与する時期は、
入社する時期によって本来は個々に違います。

 


しかし、

有給休暇を付与する時期に基準日を設けて、
半ば強引に付与日を揃えてしまったために、

「未経過の期間に相当する有給休暇を退職時に減らす」

というヘンテコリンな処理をしてしまうのですね。

 

 

有給休暇を付与する時期を統一すると、
程度の差こそあれ、前倒しで有給休暇を付与しないといけなくなります。


基準日を設定して有給休暇を付与すると、
必ず誤差は生じます。

もし、基準日が年に1回、4月1日しかなければ、
この誤差は大きくなります。

しかし、
基準日を毎月設定しておけば、
誤差が小さくなり、今回のような問題は起こりません。

毎月、給与を計算するたびに有給休暇も計算するようにすれば、
対処できる問題です。

従業員ごとに違うから困る 有給休暇を付与するタイミングを決めるには?

 

 

 

付与した有給休暇は減らせない。

 基準日を設定し、有給休暇を付与してしまったら、
後々、退職するとしても、有給休暇を減らすことはできなくなります。


すでに付与された有給休暇は減らない。

付与してしまったら、もう減らせないんです。

 

 

本来は、過去の勤務実績に応じて有給休暇を付与するため、有給休暇を先取りすることはありません。

しかし、
基準日を設定すると、付与する日を一律にするため、
有給休暇が付くまでの期間に差が生じます。

それゆえ、
退職時に、有給休暇を付与される本来の日までの経過していない期間を考慮して、
付与した有給休暇を減らしてしまうのです。

給与の計算は毎月やるのですから、
それと一緒に有給休暇の処理も毎月実施すれば良いのです。


つまり、
有給休暇の基準日を毎月設けるのが解決策になります。

 

 

 

もう退職するのだから、有給休暇を減らす?

退職する人の中には、「有給休暇が付与されて、しばらくしたら退職します」という方もいますよね。

せっかくだから、休暇が付与されるまで在職して、休暇が付与された時点で退職しようというわけですね。その後、付与された年次有給休暇を全部使い切ってから、正式に退職となる流れです。


ただ、退職する予定の社員さんにとっては、「すぐに退職するのだから、さすがに休暇の全部を使うことはできないのではないか」と思うようです。

一方、会社にとっても、「休暇を付与されてすぐに辞めるんだから、例えば、月割りで休暇を減らすなどという対処をしても良いのではないか」と考えるようですね。


法律では、有給休暇を付与する条件が設定されていて、それは「出勤率」と「勤続期間」の2つだけです。

にもかかわらず、「休暇を付与された後の退職」まで条件に含めても良いのでしょうか。

  

ある会社に、有給休暇の付与日が4月1日の社員さんがいるとします(今現在の時間はは4月1日とします)。

さらに、この社員さんは、5月の末日で退職すると仮定します。

また、勤続期間は4月1日でちょうど1年6ヶ月です。

 

この場合、会社はこの社員さんにどの程度有給休暇を付与すれば良いでしょうか。

 

「1年6ヶ月だから、11日の有給休暇を付与すべきだ」と考えるのか、

それとも、

「もう退職するんだから、有給休暇は減らす(もしくは無し)」と考えるのか。


どちらでしょう。

 

そこで、来月いっぱいで退職する社員さんに対して、あえて今月に有給休暇を付与すべきかどうかが疑問となります。

 

 

「過去の」勤務期間と出勤率を基準にしているのが有給休暇。

結論を言えば、前者が正解です。


なぜならば、「将来の勤務予定」によって有給休暇の内容は変更されませんので、たとえ来月いっぱいで退職することが
確実であっても、有給休暇は通常通りに付与すべきとなります。


確かに、「もうすぐ退職する社員さんに有給休暇を通常通りに付与するのは、何となく腑に落ちない」と感じることもあるのでしょうね。

たとえ付与するとしても、日数を減らして付与するという対応をしたいと考える場合もあるようです。

 

しかし、有給休暇を付与するかどうかの基準は、「過去の勤務期間」と「過去の出勤率」という2点です。

つまり、過去の勤務実績を考慮して、有給休暇を付与したりしなかったりするわけです。


ゆえに、休暇を付与した後、間もなく退職することが確実であっても、有給休暇の日数を減じたり、休暇自体を付与しないという対応は正しくありません。

 

「有給休暇は過去のデータを基準に付与される」

ということを覚えておいてください。

 

有給休暇を付与されて、その後にすぐに退職するとしても、付与された全ての休暇を使うことは可能です。

有給休暇の条件は、「出勤率」と「勤続期間」の2つだけですから、この条件よりも厳しい条件を設定するのは労働基準法のラインを下回りますので、ダメです。

つまり、「休暇を付与された後の退職」まで条件に含めるのはいけません。

 

ただ、会社としては、休暇を付与されてすぐに退職するならば、休暇の日数を減らすことも可能なのではと思う場合もあるようですね。


その場合は、賞与について考えてみると良いかもしれませんね。


例えば、賞与を受け取ってすぐに辞めるという社員さんがいるとしても、条件(査定期間や支給日など)を満たした上で賞与を受け取っているならば、賞与を減らしたり、不支給にしたりはできませんよね。

「賞与をもらってすぐに辞めるんだから、賞与を一部カットする」ということにはならないはず。


ならば、有給休暇を付与されてすぐに退職する場合も、上記の賞与と同じように考えてみると分かり易いでしょう。

 

ゆえに、休暇を付与されてすぐに退職することが分かっていても、休暇の日数を減らしたり、休暇自体を与えないとすることはできないのです。

 

 

 

雇用契約が細切れなので、有給休暇も細切れにしたい。

有給休暇というのは、6ヶ月勤務で10日、1年6ヶ月勤務して11日というように、勤務期間と休暇の日数がリンクしています。

ただ、上記のリンクを意識すると、6ヶ月に到達するまでは休暇を付与してはいけないとか、1年6ヶ月に到達するまでは休暇を付与できないと思ってしまう方もいらっしゃいます。

確かに、労働基準法でも、勤務期間と休暇日数が明示されていますから、「守らなきゃ!」と思うのも無理からぬことです。


となると、例えば、3ヵ月ごとに雇用契約を更新する会社があるとして、その更新ごとに有給休暇を小出しに付与したいと考えたときには、どうすれば良いでしょうか。

つまり、3ヵ月時点で5日の休暇、さらに、6ヶ月時点で5日の休暇というように休暇を付与するのはOKなのかということですね。


労働基準法では、「勤続6ヶ月で10日の休暇」としか書かれていませんから、悩みどころです。

 

 


「勤務期間」と「休暇日数」の比率を守る

確かに、休暇の付与方法は、6ヶ月で10日、1年6ヶ月で11日、、、というのが原則です。

ただ、これはあくまで「原則」です。


一定の条件を守れば、必ずしも、上記の付与ルールに基づかなくても、変則的に休暇を付与することも可能です。

例えば、3ヵ月ごとに雇用契約を更新しているならば、入社から3ヵ月時点で5日の休暇を付与して、その後、6ヶ月時点で5日の休暇を付与するという取り扱いも可能なのですね。

なぜならば、6ヶ月時点で、10日の休暇は付与されているからです。


ただし、6ヶ月時点で計10日の有給休暇が付与されていなければいけません。

「6ヶ月で10日の休暇」というのが遵守ラインですから、このラインを下回るような扱いはダメなのですね。

例えば、3ヵ月時点で4日、6ヶ月時点で4日の休暇を付与しているとすると、合計で8日しか付与されていませんから、ダメです。


しかし、6ヶ月よりも早い段階で、10日の休暇を付与してしまうのは構いません。

つまり、3ヵ月時点で5日、4ヶ月時点で2日、5ヶ月時点で3日の休暇というように、6ヶ月に到達する前に、必要な休暇を付与してしまうのは良いわけですね。

これほど小刻みに年次有給休暇を分ける利点があるのかどうかは、また別の問題ですが。


ゆえに、勤務期間と休暇日数の比率を守っているならば、有給休暇の付与方法は工夫の余地があるわけです。

 

 

 

 
山口正博 社会保険労務士事務所
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