火を使う商売というと、
飲食店、食品加工、金属加工など
色々とあります。
そういう仕事では、
火のトラブルが起こらないように、
日頃から対策を講じているはず。
- ガスの元栓が閉まっているか。
- 火が消えているか。
- 消化器が所定の位置に置かれているか。
- スプリンクラーの周りに障害物がないか。
- 防火チェックを毎日、実施しているか。
など、
対策があろうかと思います。
とはいえ、何らかの不注意で、
「火事」
が起こってしまうときもあります。
お店が火事になって臨時休業に
私も、火事になったお店を見たことがあります。
現場では、まさに火が出て燃えている状況で、
熱と匂いが伝わってきたのを覚えています。
自分が勤めていたお店なり会社では、
幸いにも火事に遭いませんでしたが、
火事で全焼したドラッグストア
火事が発生して、営業を休止したステーキ店
そんなお店もあります。
ステーキ店で火事が起こったとなれば、
怪我する人がいたり、
店舗の設備が壊れたりしますが、
しばらくは営業できなくなることもあります。
軽いボヤぐらいならば、
パパっと火を消し止めて、
周辺が焦げるぐらいで済んで、
営業には影響しないでしょう。
しかし、
調理器具が壊れた
天井の一部が燃えた
お店の半分が焼けた(半焼)
となると、
すぐに営業再開とはいかないもの。
お店の一部が燃え、
調理器具を入れ替えるため、
1ヶ月間、営業を休止するとなればどうなるか。
働けないなら、休業手当は出る?
1ヶ月間、営業できないとなれば、
職場で働いている人も、仕事ができません。
1ヶ月も無給で待機するならば、
辞めて他の仕事をする方もいらっしゃるはず。
そういう場合に、
使用者として、どのように対応するか。
まず、休業手当が出るのかどうかというと、
休業手当を支給するには、
「使用者に責任がある」
と判定できるかどうかがポイントになります。
ステーキ店で起こった火事ならば、
不慮の事故と考えられますし、
従業員の不注意かもしれませんし、
思いがけず火の勢いが強くなって制御できなくなったのかもしれない。
いずれにせよ、
使用者が「故意に」火事を起こすものではないのは確かです。
さらに、
日頃から、
「火には注意するように」
「ガスの元栓を確認する」
「防火チェックを毎日、実施する」
「消化器、スプリンクラーの周りに物を置かない」
など、
使用者として必要な注意を払っていれば、
なおさら「使用者の責任」とは判断し難いところ。
お店で働く被用者が重過失で火事を起こしたとなれば、
使用者は責任を負いますが、わざと火事を起こす従業員がいるとは考えにくいですし、
この点でも使用者が責任を負うと考えるのは難しいです。
ゆえに、
火事の責任は使用者になく、
労働基準法26条の休業手当は出ないと判断します。
使用者はどう対応する?
ステーキ店がチェーン店ならば、
同じグループのお店で従業員を吸収できるでしょう。
例えば、
渋谷店で火事が起こったら、
近隣の
新宿店
原宿店
六本木店
で渋谷店の従業員を受け入れるとすれば、
営業を休止している1ヶ月間も働けます。
お店の修繕が終わったら、
もとの店舗に戻ればいいでしょう。
では、チェーン店ではないお店で、
店舗は火事が起こった1店舗しかないならばどうするか。
他の店舗でしばらく働いてもらうというわけにもいきませんし、
近所のお店で従業員を一時的に受け入れてもらうという方法もありますが、
交渉して受け入れOKになるとも限りませんし。
休業手当が出ないとなれば、
1ヶ月間は雇用契約を継続していても、
給与が出ませんし、
かといって働く場所もありません。
となると、
退職するか、
1ヶ月間、休みのまま待つか。
他には、年次有給休暇を使って時間を稼ぐか。
もし、退職する人が出てしまうと、
お店を再開した時に、
人を新たに雇わないといけないですから、
新しく入った人へ仕事を教えないといけない。
1ヶ月で営業を再開できるならば、
例えば、給与の半分を出して、
雇用契約を維持するというのも1つの案です。
休業手当は必要ないとしても、
新しい人を雇えるかどうか分からないですし、
採用後の教育も必要ですから、
雇用契約を維持するために、
実際に働いた場合の給与の半分を出しておく。
店舗用の火災保険には、
「休業損失補償特約」
なるものがあって、
事故の際はそういう保険があると助かります。
保険金を使って、
休業中の給与に充当するのもアリですね。
ここで、
退職ではなく「解雇にはならないの?」
と思う方もいるでしょう。
本人の意思で仕事を辞めるわけではないから、
「退職」という言葉ではしっくりこない。
一方、
お店側は、解雇したいわけではなく、
店舗の修繕が終われば、
また働いてもらいたいと考えている。
とすれば、「解雇」というのもヘンな感じ。
ただ、解雇するだけの合理的な理由はあります。
火事でお店が営業できないし、
働くにも働けないのですから、
解雇予告手当(給与1ヶ月分)を支払って、
雇用契約を解除するという選択肢もあります。
1ヶ月で営業を再開できるならば、
解雇予告手当を払うよりも、
給与の一部を支払ってでも雇用契約を維持した方が
賢明でしょう。
火事の規模によっても対応は変わります。
小規模なものならば、修繕して、営業を再開できます。
しかし、大規模な火事だと、営業用の設備が使えなくなり、
閉店するところもあります。
2013年か2014年でしたが、
火事で全焼したドラッグストアがありまして、
そのお店は火事の後、閉店しました。
全焼でまっ黒焦げになって、
店舗だけでなく建物自体が建て替えになりました。
閉店後、新しく別の企業のドラッグストアが建てられて、
営業しています。
火事が起こると、
職場がなくなりますし、
仕事がなくなり、
給与もなくなります。
使用者にとっても、
労働者にとっても、
火事は厄介です。