労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

通勤交通費(通勤手当)を全額支給するな。

NO交通費

 

 

交通費を出すから電車に乗る。

通勤ラッシュをどうしたら解消できるのか。この点についてずっと議論が続いていますが、交通費が支給されていたら、電車に乗るのは当たり前です。

交通費全額支給』、『交通費全額会社負担』、求人情報を見ると、会社が交通費を負担すると書いているものが多い。

通勤手当が支給されれば、実質無料で電車に乗れるのですから、「じゃあ、電車で通勤するか」となるのは当然です。

たくさんの人が電車に乗る。その結果、電車に人が殺到し、通勤ラッシュが発生する。

原因と結果は単純なものです。

交通費が出なければ電車に乗る人は減ります。そうなればギチギチに電車に乗ることもなくなり、混雑は緩和されます。


通勤ラッシュの原因が分かっているのに、あえて対処しようとはしない。不思議ですよね。

 

 

通勤手当を廃止すれば通勤ラッシュを解消できるか。

交通費全額支給。人材を募集する条件に、このような文言が含まれているのを見たことがある人は多いでしょう。電車やバスに乗って通勤すると、その費用を会社が全額補助する。その結果、従業員は実質的に交通費をタダにして会社に来れるわけです。

通勤途中で買い物や寄り道ができるし、休みの日でも定期券を使えますから、交通費を受け取ることは利点があるにはあります。しかし、交通費を負担しないで済むとなると、人は好きな場所に住もうとします。

職場に近い場所に住まずに、電車で片道1時間もかかるような場所にマンションを借りたり、何十年ものローンを組んで郊外に一軒家を買ってしまう人もいます。

自宅での生活は快適でしょうが、片道1時間となると、朝の通勤は苦痛です。苦痛であるにもかかわらず、交通費の負担がないためか、このような生活を受け入れるのですね。

混雑した電車で移動してもロクなことがありません。外は真冬なのに電車の中は真夏のようにムシムシしている。知らない人と身体が接触する。オバサンの化粧の匂いがキツイ。オジサンのカレーシューが漂ってくる。足を踏まれる。電車内で喧嘩が始まる。

社内では本や新聞ですら読みにくいですし、スマホをいじっているのも時間の無駄です。さらに痴漢や痴漢の冤罪も起こりえる場所です。一体何の利点があるのでしょうね通勤ラッシュには。

まぁ、満員電車に乗ると色々とありますね。ほんと、乗っているだけでライフが減少しますから、目的地に着いたときには、ライフの残量はすでに60%ぐらいまで減っていたりします。これじゃあ、強敵に遭遇したらやられてしまいますね。

交通費全額支給の欠点は、職場から自宅が離れていてもいいだろうと働いている人に思わせる点にあります。金銭負担が生じると行動を変えようとしますが、無料とかタダとか、全額補助という甘い提案を出されると、人は受け入れてしまいやすい。

そこで、通勤手当を廃止すれば、通勤ラッシュは減るのではないでしょうか。手当が出ないとなると、遠くからわざわざ混雑した電車に乗って移動しなくなるでしょうから、良い結果がもたらされそうです。

 

 

通勤ラッシュが発生する原因。

単に通勤手当だけを廃止して終わりとなると、さすがに厳しい。今までの交通費補助がなくなるのですから、何らかの代案が欲しいところ。

通勤手当をゼロにする代わりに、住宅手当を支給して補填するといいでしょう。職場に近い場所に住んで、その住居コストを手当で補助する。そうすれば、通勤ラッシュの電車に乗らないで済むし、職場まで徒歩や自転車で行けるので健康的だし、さらに住居費用も軽減できる。一石三鳥です。

交通費から住宅手当へ重点を変えて、人のインセンティブを変える。毎日往復で2時間もロスしていた時間がなくなるのが最も良いところです。

通勤交通費は税制で優遇されているので、どうしても交通費を支給したくなりますが、それでは通勤ラッシュから逃げにくくなります。

政府は税制度で通勤交通費を優遇している。さらに、郊外に一軒家を買うために住宅ローンも優遇しています。鉄道会社には、通勤客からの定期券収入があります。金融機関や不動産業界は、借金して一軒家を買ってもらいたい。

各方面から、通勤ラッシュを生み出す力が加わっているため、自然に問題が解消するのを待っていても埒が明かない。となると、企業や社員単位で自衛するのが近道です。

通勤手当から住宅手当へのシフト。さらには、朝方勤務やフレックスタイム制、在宅勤務も。これらを駆使して、通勤ラッシュという無駄から開放されるようにしたいですね。



月額15万円まで通勤手当を税金で優遇してしまっている。

政府は、通勤手当に対する優遇税制をさらに拡張しています。平成27年までは月額10万円までの通勤手当が非課税として扱われていましたが、平成28年からは15万円まで非課税枠が引き上げられました。

通勤手当の非課税限度額の引上げについて(国税庁)

新幹線でも通勤できるようにとのことですが、もはや異常です。

通勤手当を減らして、電車から人を遠ざけないといけないのに、もっと電車を使わせようとする。そして、もっと通勤ラッシュが酷くなる。

新幹線に乗らないと行けないほど遠くから毎日通勤するなんて、どういう価値観に基づく判断なのか理解しがたいものです。

そんなに電車にお金を使うならば、そのお金で職場の近くに住む方がよほど快適ですし、気分も落ちつくでしょう。乗り遅れそうになって駅構内をダッシュすることはないですし、横の座席に乗っている人に気を使うこともない。さらに、電車に乗らなければ、移動時間を節約できるのが大きいでしょう。

「新幹線の中で仕事ができる。車内が静かだから」こんな理屈をこねる人もいるでしょうが、なぜ、あえて新幹線の中で仕事をしようとするのか。仕事をするならば、自宅か勤務先でやればいいでしょう。

デキるビジネスマンを演出したい気持ちは分からないでもないですが、そんな見栄を張ってもしょうがない。

もう電車で通勤することに慣れきってしまっていて、おかしいと気づけないのでしょうね。職場の近くに住んで、徒歩や自転車で職場まで行ければ、これほど快適なものはない。


通勤手当の非課税枠を広げてしまうと、さらに電車で通勤する人を増やし、通勤ラッシュは解消するどころかさらに悪化します。

 

 

通勤手当が充実すると、通勤ラッシュは酷くなる。

交通費は全額会社負担。会社員だとこれが当たり前のように思えてしまうのですが、交通費を自己負担しないとなると、「遠くから通勤しても大丈夫だ」と思わせてしまい、片道1時間、人によっては2時間と、通勤だけで1日の10分の1ないしそれ以上の時間を失います。

通勤ラッシュについては、何年も何年も、それを解消しようと議論が続いていますが、交通費を全額支給しているうちは解消しないでしょう。

お金を使わないならばタダ。表面的にはそうですが、一方で時間をポンポンと捨ててしまっているので損失はあります。お金は稼げますが、過ぎた時間はどのようにしても取り返せませんから、お金よりも時間のほうが希少価値は高い。

職場から遠い場所に家を買い、長い時間を通勤に費やす。住宅ローンでお金を失い、通勤で時間も失う。このような生活のどこに魅力があるのか、私には分かりません。


税制度を変更して、さらに通勤手当に対する優遇を拡充するようですから、このままでは通勤ラッシュを解消するどころか、さらにラッシュが過密化するでしょう。

では、いかにして通勤の負担を減らすか。通勤のミソは、「通勤させない」のがポイントです。

 

通勤手当に上限があれば、遠くから通勤しない。

方法としては、通勤手当を定額支給に変えます。

現状では、実費を全額、会社が負担していますが、これを例えば月額5,000円というように一定額までで止めます。


また、通勤手当の支給条件は色々と細かいのが特徴です。

まず、申請した交通機関しか使ってはいけないという制約があります。電車で通勤していると申請し、交通費を支給されているのに、徒歩で通勤していると、懲戒対象になり、受け取った交通費を返還せよと要求されることもありますね。

他には、電車やバスを利用しているなら、定期券のコピーを提出する。自動車を使って通勤しているならば、任意保険に加入していると証明する書類のコピーを提出する。

自転車での通勤に対しても、何らかの補助がされている会社もありますので、ここでも何かと条件が付いてきます。

通勤する本人の気持ちとしては、雨が降った時だけ電車やバスに乗りたい。晴れている時は自転車で行きたい。などと思うこともあるでしょう。

また、何らかの理由で電車を使えない場合は、バス、タクシー、徒歩という代替的な手段で移動したいと考えるはずですが、他の交通手段を使うと交通費が出ないとなると困りますよね。


そこで、通勤手当を毎月一律5,000円支給し、どのような手段で通勤してもOKとする。電車に乗ってもバスに乗ってもOK。自転車で来てもいいし、徒歩でもいい。タクシーに乗るのも可能。

通勤に要する費用を全部まとめて定額5,000円で対応してもらう。

徒歩でも交通費が出るのが納得出来ない人もいるでしょうが、徒歩でも相応の労力を要しているので、その対価として交通費が支給されるのもアリでしょう。

個別に分けずに、通勤補助を一律定額で支給する。この方法ならば、定期券のコピーは要らないですし、保険証書のコピーも要らない。電車通勤のはずが徒歩で通勤している人の不正チェックも必要なくなります。まさに管理しない労務管理です。

交通費全額補助をヤメるべきか否か。

さて、月に5,000円だけだと、遠方から通勤している人には金額が足りないはずです。

そこで使うのが、住宅手当です。職場に近いところに住むと、住宅費用が補助されるようにして、月に5,000円の定額通勤手当でも足りるようにします。

職場に近い場所に住むとなると、住居コストがかかるでしょうが、そこを住宅手当でフォローし、自宅が職場に近いので交通費がかからなくなる。

定額通勤手当と住宅手当をコラボさせて、通勤環境を変える。これが狙いです。

通勤手当と住宅手当を反比例させる。


通勤手当は移動するための費用でしかありませんが、住宅手当は住むことによる便益を得られますし、通勤時間が短くなり、混み合った電車やバスに乗る機会も減ります。

交通費を全額支給していては通勤ラッシュを解消するのは無理です。

 

 

通勤手当を減らし、住宅手当を増やす。

通勤手当を出すと、「遠くからでも通勤できるな」と人に思わせます。一方、住宅手当を出すと、「なるべく職場の近くに住もう」と人に思わせます。

では、どちらが良いのか。


職場から近いほど住宅手当が増える設計にして、近くに住んでいないともらえないようにする。一方で、通勤手当は段階的に縮小していく。

今までは「通勤手当9:住宅手当1」だったものを「通勤手当6:住宅手当4」と変えてき、「通勤手当3:住宅手当7」、「通勤手当1:住宅手当9」と予算配分のウェートを変える。そして、最終的には通勤手当を0にして、住宅手当への予算配分を10にする。

こうすれば、もう電車に乗って通勤しようとは思えなくなります。

ちなみに、鉄道会社にとって通勤客はドル箱ですから、通勤手当を減らされることには反対するでしょう。しかし、人間を電車に押し込めて運ぶような現状が望ましいものなのかどうかというと、私は望ましいとは思いません。


遠い場所から通勤していると、勤務シフトを交代するのも難しくなります。

近くに住んでいれば、「今日出勤して、明日は休みにしてくれないか」と言われても対応しやすい。しかし、片道1時間もかかるとなると、そう簡単には応じれない。1時間もかけて職場まで行くのは面倒ですからね。

交通費が出ない職場ならば、人材募集のとき、自動的に応募者がフィルタリングされ、遠くに住む人は応募してきません。近くに住む人を採用したいならば、交通費を出さないのも一考です。

さらに、自転車で通勤した人には自転車手当を出すのも良いですね。住宅手当と連携させて、職住近接を促進できます。自転車で通勤しても税金は優遇されます

自転車通勤に交通費が出ないのはなぜ?

電車に乗ってきても交通費は出ないけれども、自転車で通勤した人には手当が出る。このようなインセンティブを設定するのも1つの選択肢です。近くに住んでいる人を優遇するんですね。


住宅手当が支給される対象を賃貸住宅に限定するのもアリです。賃貸住宅ならば負債がなくて身軽ですし、引越しもしやすい。人事異動で住所が変わっても、スッと移動して、住んでいる間は住宅手当が出る。

ここで、一軒家に住んでいる人はどうするかが考えどころですが、住宅手当を定額支給にするのはどうでしょうか。どんな家に住んでいても住宅手当は毎月2万円とか。

賃貸を優遇して、一軒家よりも有利にしておけば、賃貸住宅に住む人を増やせます。与信枠を目一杯使って、大きな負債を抱えて仕事をしてもらうよりも、経済的に身軽な状態の方が仕事が捗るでしょう。


交通費が出なければ電車に乗って通勤しない(通勤ラッシュが解消に向かう)。住宅手当が出れば職場の近くに住む。自転車通勤に手当が出れば、会社やお店に近い場所に住んでいる人が働いてくれる。

人の気持ちがどのように動くかを考えて手当を配分する。これも労務管理なんです。

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com
業務のご依頼に関するお問い合わせ

© 社会保険労務士 山口正博事務所