- 通勤交通費(通勤手当)は必ず支給される?
- 通勤手当が支給されるかどうかは会社ごとに違う
- 新幹線通勤は快適なのか。職住近接で通勤しない選択肢もあるのでは?
- 通勤手当は移動だけに使われる。住宅手当は通勤以外にも波及効果がある
- 満員電車の原因は通勤手当?
- 通勤重視から住宅重視へシフトする
通勤交通費(通勤手当)は必ず支給される?
「交通費は全額支給」、「交通費支給、上限月額3万円」などなど、会社が交通費を支給するという文言。求人情報に接すると、見かける就労条件です。
雇用契約の中には、当然のようにメニューに含まれているものですよね。
また、社員さんの交通費は会社の経費として扱えるので、会社にとって交通費を支給することにはあまり抵抗は無いようです。
ただ、「交通費は当然に支給されるもの」と思っていると、それとは異なる状況に遭遇することもあります。
まれに、「ウチの会社では交通費が支給されないのですけど、、、」と言う方もいらっしゃいますが、「当然に支給される」と思っているのでしょうね。
通勤手当が支給されるかどうかは会社ごとに違う
交通費の支給は義務ではないのですね。交通費全額支給、と書かれていれば、そこの会社がそのように決めているからです。
支給するかどうかは会社が任意で決めていることですから、支給しない決まりだったとしても、おかしくはないのです。
ただ、交通費を自腹で負担するとなると、人が集まりにくくなるでしょうから、ほとんどの会社では交通費は会社負担なのでしょうね。
近所の人に働いてもらえば、勤務シフトを融通しやすいから、あまり遠くから通勤して欲しくない。そのような目的があって、あえて交通費を出さないという決まりにしている可能性も。
例えば、電車やバスだと通勤手当が出ないが、自転車で通勤すれば1回の出勤あたり200円支給される。これだと自転車で通勤可能な近場に住む人が集まってくる可能性が高まるでしょう。
ちなみに、私は、交通費が全額自己負担になっているという会社は知りません。
距離に応じた定額支給というのは知っていますが、全額負担は無いですね。
過去に、筆者が学生だった頃、1回の勤務あたり300円まで会社が通勤手当を支給して、それ以上は自己負担という形の職場があった記憶があります。往復だと電車賃は300円を超えてしまう場所にあり、130円ぐらいは自己負担になっていたように思います。
一般的には、通勤手当を全額で支給する会社が多いですが、支給額に上限を設けたりしているところもあります。
もちろん、支給するかどうかを会社で決めることができるのですから、全額支給でも部分支給でも構いません。通勤手当は無し、というのもアリです。
全額にしたり、定額にしたり、上限を設けたり、通勤距離で金額を決めたり、いろいろです。
交通費は必ず支給される、、わけではないのです。
新幹線通勤は快適なのか。職住近接で通勤しない選択肢もあるのでは?
通勤手当は税制で優遇されており、決まった額までの支給額ならば税金がかかりません。そのため交通費を全額支給する職場もあるわけです。
平成26年度の時点では、交通機関を利用している場合、月に10万円まで非課税で通勤手当を支給できました。その後、平成28年度の1月からは、非課税枠が月に15万円まで拡大されています。
通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁 平成26年度
通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁 平成28年度
会社にとっては、交通費を支給しても課税されないし、社員にとっては交通費が補助されて嬉しい。さらに、運輸サービスを提供する鉄道会社やバス会社にとっても通勤客が増えるので歓迎するところ。
会社、従業員、鉄道会社、バス会社、誰も損をしないかのように思えるのですが、通勤手当を支給すると、遠いところから通勤する人が減りません。
月に15万円まで非課税になったので、新幹線での通勤を認めるような企業も出てきました。
例えば、新大阪から名古屋までの1ヶ月定期を通勤タイプで購入すると、14万円弱です。移動時間は1時間弱。名古屋に住んで、新幹線で新大阪のオフィスに行く(逆でもいいですが)ような通勤も考えられる。時間も片道1時間弱だから、通勤時間としてはあり得る範囲内です。
在来線の通勤ラッシュでモミクチャにされて通勤するよりは、確実に席に座れて、快適に職場まで行ける新幹線は悪くないでしょう。東京の中央線快速とか、小田急線、埼京線なんてラッシュ時に席に座るのは至難の業。それに比べて、新幹線は、ゴールデンウィークやお盆、年末年始の繁忙期には立ち乗りする人が出てきますけれども、それ以外の時期ならば席に座るのは容易です。
住宅費用が安い場所に住んで住居費用を抑え、新幹線で通勤し、都心部のオフィスで働く。悪い話ではないものの、そこまで費用をかけてまで通勤する必要があるのかが疑問。
通勤手当は移動だけに使われる。住宅手当は通勤以外にも波及効果がある
職場の近くに住む場所を設ければ、電車に乗らずとも、自転車や徒歩で仕事場まで行けます。片道1時間も電車に乗り続けることはないし、朝に起きる時間も遅らせられます。通勤で1時間かかるということは、その分だけ早起きする必要がありますから。
通勤手当よりも住宅手当を増やすほうが賢いと思うのですが、住宅手当には非課税枠がなく、通勤交通費に比べて不利です。通勤手当も住宅手当も割増賃金の計算からは除外できますが、それだけでは切り替える動機としては弱いです。
職場からの距離に応じて住宅手当の額を変え、職場に近いほど住宅手当の額が増え、離れると減る。さらに、支給対象を賃貸住宅に限定すれば、大きな借金を背負うことなく仕事ができます。
税金の取り扱いだけに着目すれば、通勤手当の非課税枠いっぱいまで交通費を支給するのが合理的です。しかし、通勤の快適さを重視すれば、職場の近くに住んで、住居費用を補助してもらう方が合理的。
動くお金だけに注目すれば通勤交通費の方がいいという判断になりますが、出勤するまでに通勤ラッシュで体力を消耗して、痴漢トラブルに遭遇したり、他人と密着して不快な気持ちになるなどの「見えない費用」を考えると、職場の近くに住んでもらう方がいいのではないでしょうか。
例えば、家賃の半額を補助して、1ヶ月の上限額は8万円だとすると、最大で家賃16万円のマンションに住めます。月額16万円のマンションとなると、都心部であっても、ワンルームどころか、2LDKぐらいは住めるんじゃないでしょうか。家賃相場が安いところならば、3LDKのマンションも借りれるかもしれない。
通勤は、移動という便益しか提供しませんので、波及効果は期待できません。一方、住宅は、通勤で移動していない間(食事や寝ている間など)も価値を提供し続けるものですし、同居する家族にも便益が及びます。睡眠時間を長くできるし、職場まで悠然と歩いて行けます。金銭的な数字では見えない便益があるのが住宅手当の良いところです。
ゆえに、通勤手当よりも住宅手当の方が価値が高いと判断できます。電車に乗っている時間よりも自宅でくつろいでいる時間の方が良いはず。
通勤に関する問題を根本的に解決するには、通勤手当に対する非課税枠を減らし、住宅手当に対する非課税枠を作るのが望ましいでしょう。
フラット35だの、住宅ローンに対する特別控除だのと、住宅向けに色々な施策を用意しているにもかかわらず、なぜか住宅手当には手を付けないのが不思議。
通勤ラッシュを何とかしないといけないと話しながら、通勤手当の非課税枠を拡大するのは矛盾では。ラッシュを酷くしたいならば話は別ですが。
住宅手当の話からは変わりますが、自転車での通勤にも非課税枠はありますので、通勤距離が2km程度の方なら、電車やバスから自転車通勤に切り替えるように促すのも1つの案です。
満員電車の原因は通勤手当?
午前7時44分、新宿駅から出発した東京 中央線快速、あの混み具合は忘れもしない。
大学生の頃、1限目から授業があると、超コミコミの電車に乗って移動しなければならず、通勤ラッシュのツラさが良く分かりました。
なぜこんなに混雑するのか。「電車に乗る時間を分散できれば混まないんじゃないの?」と思っていたが、一向に解決する雰囲気は無かったですね。
通勤ラッシュや実質所得の増加のため、通勤手当を廃止すべきと考える方もいらっしゃいます。一方で、通勤手当が無くなると不都合と考える方もいて、賛否両論です。
会社で務めていると、交通費は全額支給されるのが当たり前と思ってしまうので、職場から遠い場所に自宅があっても金銭的に困らない。そのため、毎朝、電車が混雑してしまう。
通勤ラッシュを解消しつつ、住まいの貧困も回避する。そんな方法がないかどうか、考えてみましょう。
通勤重視から住宅重視へシフトする
通勤手当が充実しているから、職場から遠くに自宅を構える。ならば、通勤手当と住宅手当が反比例する仕組みがあれば、職場の近くに住むインセンティブを与えることができます。
具体的には、職場から自宅が離れると、通勤手当が増え、住宅手当が減るようにする。逆に、職場と自宅が近い場合は、住宅手当が増え、通勤手当が減るようにする。つまり、通勤手当と住宅手当が反比例するようにすれば、職場の近くに住む動機を持ちやすくなります。
2つの手当を単独で運用せず、連動させることで職住近接を実現する方法です。
効果を強める場合は、住宅手当の方を優遇するようにすればいいでしょう。
例えば、交通費は上限が月に1万円までだが、住宅手当の場合は月に5万円まで支給されるようにすれば、遠くから通勤するよりも、職場に近いところに住もうと思いやすい。
さらに、職場から自宅までの距離も考慮して住宅手当を決めてもいいですね。職場から半径1km以内ならば月に5万円まで、1km超-3km未満の場合は月2万円までというように差を付けてもいい。
一軒家を買うと身動きしにくくなるから、賃貸の家賃を補助するようにするのもポイントです。家を買うと、家を基準に生活を設計するので、職場から遠くなりがち。そのため、住宅手当の対象になるのは賃貸住宅に限定する。
通勤費から住宅費に予算の重点を組み替えていき、通勤に対するインセンティブを減退させる。これが問題の解決策です。
とはいえ、通勤手当には税金面で優遇されており、この優遇枠を住宅手当に振り向けると、さらに職住近接が実現しやすくなります。
No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
不動産業界や銀行は住宅手当がテコ入れされれば有利になるので、もっと政治に圧力をかけていいのではないかと思います。そして何よりも、通勤でヘトヘトになっている人にも都合が良いですから、反対する理由は少ないでしょう。
通勤ラッシュの原因は、通勤手当の非課税枠が大きすぎる点にあります。非課税だから、交通費を会社が全額負担する。全額負担してくれるから、郊外に自宅を構える。その結果、満員電車に毎朝乗らないといけない。
仮に、毎月10万円まで住宅手当が非課税になったらどうなるか。
家賃の半額を会社が補助する場合、社員は家賃20万円までの家に補助付きで住めます。
大阪で家賃20万円までの物件となると、よほど高級なマンションでない限り、選択肢は多い。3LDKでも。4LDKでも選び放題のはず。
通勤に対する優遇をヤメて、住宅に対する優遇を設ける。そのために、通勤手当を廃止するならば、私は賛成です。付け加えると、テレワークなりリモートワークという働き方を推進するならば、なおさら通勤手当から住宅手当への予算替えが有効ではないでしょうか。
通勤手当だけでなく各種手当には、残業代を計算するときに含める手当と含めない手当があって、そういった区別をしていかなければいけないのが給与計算ですから、自動で楽に給与を計算してくれると助かります。
こちらにも興味がありませんか?