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パートタイマーが社会保険に加入するメリットとデメリット

社会保険のメリット

 

 

2017年8月時点では、社員数が多い大規模な企業(従業員数500人以上)だと、2016年の制度変更により社会保険に加入している方もいらっしゃるはず。

それまでは国民健康保険(以下、国保)に加入していた方、配偶者の方の扶養になっていた方、その他にも諸事情で色々な形があるかと思います。

パートタイマーとして社会保険に加入すると、どういう利点があり、また一方で、どういう負担なりデメリットがあるのか考えてみましょう。


会社で社会保険に入ると社会保険料は半額に

まず、以前は国保に加入していた方だと、会社経由で社会保険に加入すると、健康保険料の半分が会社負担になるという点が利点です。国保は保険料が全額自己負担ですから負担感があります。一方、会社経由だと、保険料が半分になりますので、保険料半額で健康保険に加入していると考えれば得ではあります。

また、年金では、国民年金だけ加入していると、保険料は自分で払いますが、会社を経由して厚生年金に加入すると、給与天引きで保険料は半分です。

 

社会保険に加入する利点と加入しない利点

平成28年の9月で、翌月の10月から社会保険に加入するパートタイマーの人が増えます。

週20時間以上勤務していて、月収88,000円以上の人は社会保険に加入するようになります。

加入対象者が増える制度変更であるため、加入するメリットについて色々と情報が流れていますが、加入しない場合にもメリットがあることはあまり伝えられていません。

社会保険に加入すれば、色々と保険給付があって、年金も増えるのだから、利点ばかりのように思えますよね。


確かに、国民年金だけでなく厚生年金も上乗せされますし、傷病手当金も対象になりますし、出産関連の給付も対象になります。

保険料を支払うわけですから、それに見合った便益を得るのは当然ですので、社会保険に被保険者として加入すれば給付内容が充実します。



では、社会保険に加入せず、今の状態をキープしたらどうなるか。

例えば、夫が会社員で、妻がその扶養になっている場合。妻はパートタイマーとして社会保険に加入するのが得策か、それとも加入しないほうがいいのか。


「社会保険に加入する = 給付が充実」
「社会保険に加入しない = 給付が貧弱」

単純に考えるとこのようになりますが、扶養になっているパートタイマーの人というのは、ちょっと特殊な立場なのです。

 

健康保険の被扶養者は毎月30,000円のお小遣いを貰える

夫の扶養になっていると、年金では「3号被保険者」と扱われます。3号被保険者とは、毎月16,260円の保険料が不要になる被保険者区分です。ただ、「不要」といってもいわゆる免除とは違います。保険料は0円ですが、16,260円の保険料を支払ったものとして扱われます。つまり、3号被保険者は、毎月16,260円のお小遣いを貰っているようなものなのですね。

さらに、健康保険で被扶養者になっていると、こちらも毎月の保険料が不要になります。会社経由で健康保険に加入する場合であれ、市町村の国民健康保険に加入する場合であれ、毎月の保険料が必要ですが、被扶養者にはそれが不要です。本来ならば、毎月10,000円とか15,000円ぐらいの保険料が必要なのですが、それが0円になります。もちろん、病院に行ったときは自己負担の3割は必要です。

国民年金で16,260円を節約し、さらに健康保険でも15,000円程度を節約できる。この時点で毎月30,000円ほどの特典が用意されています。

もし、会社経由で社会保険に加入すると、この2つの特典を放棄しないといけません。厚生年金の保険料は給与から天引され、健康保険料も給与から引かれます。

扶養の時は毎月プラス30,000円だったのが、会社経由で自分が被保険者になると、マイナス30,000円になる。この2つの差は毎月60,000円です。


社会保険以外にも、税金の分野では、配偶者の場合は配偶者控除を利用できます(しばらくすると、夫婦控除という制度に変わる予定のようです)。


年金保険料が0円になり、健康保険料が0円になる。さらに配偶者控除も使える。

これらの既得権を放棄してまでパートのオバちゃんが社会保険に加入するかというと、なかなか悩ましいところです。毎月30,000円のお小遣いを貰える権利を放棄してまで社会保険に加入するかと言われれば、「いや、今のままでいい」と判断する気持ちも分かります。

保険料が0円なのに便益を受けられるとなると、3号被保険者制度や被扶養者制度は、低所得のパートタイマーに対するベーシックインカムのような効果を発揮しているのではないかと思えてきます。

今回の制度変更で、1号被保険者から2号被保険者になる人、さらに3号被保険者から2号被保険者に切り替わる人が出てきますから、3号被保険者制度の対象者は減っていきます。



私の予想ですが、いずれ3号被保険者制度は廃止され、1号被保険者と2号被保険者に集約されるのではないかと思います。

健康保険でも、被扶養者に対して毎月3,000円とか5,000円の定額負担を求めるような制度変更がされる可能性もあります。


配偶者控除については、2016年の9月時点で、廃止して夫婦控除という制度に変更するかどうかが話し合われていますので、もう風前の灯です。

 

 

会社経由で社会保険に入ると社会保険料が安くなる人も

国保と国民年金に加入し、保険料を支払って毎月30,000円ぐらいだとすると、会社経由で社会保険に加入し、健康保険、厚生年金(国民年金もセットになっている)に入って毎月の社会保険料が25,000円ぐらいになった(実際の保険料は会社負担を合わせて50,000円)としましょう。

この数字は仮定ですが、会社経由で社会保険に加入する方が本人負担が少なくなるケースがあります。

例えば、月収10万円のパートタイマーの方がいるとして、会社(愛知県の会社だとします)経由で社会保険に加入しているとします。愛知県の健康保険料は、月収10万円だと毎月9,721円で、本人の保険料はその半分である4,860円。さらに、厚生年金の保険料(これは全国共通)が月収10万円で17,818円。その半分が本人負担なので、8,909円。

健康保険料の4,860円。さらに厚生年金の保険料8,909円を合わせると、毎月13,769円です。健康保険、厚生年金、国民年金、この3つに加入して、毎月の保険料が13,769円なのですから、これは安いです。

ちなみに、国民年金の保険料は、平成29年度で16,490円です。

自分で社会保険に加入すると、国民年金だけで毎月16,490円ですが、会社経由で社会保険に加入すると、国民年金だけでなく、厚生年金と健康保険、この3点セットで毎月13,769円です。

国民年金の1号被保険者(自分で社会保険に加入している人)と2号被保険者(会社経由で社会保険に加入している人のこと)との間にあるネジれというか、歪みですね。

ただし、収入がある程度増えてくると、この歪みは解消されます。月収10万円程度のパートタイマーの方がこの歪みから旨味を得られるわけです。

給与計算をラクに。社会保険料を自動で正確に計算。
毎月の給与に社会保険料はかかりますけれども、年に数回支給される賞与に対しても社会保険料はかかります。ならば、その額がいくらになるのかを自動で正確に計算してくれると、給与計算が楽になりますよね。

 

健康保険の扶養からは外れて被扶養者から被保険者に切り替わる

健康保険の被扶養者になっていると、毎月の保険料の負担はなくタダで健康保険に加入できます。もちろん、医療サービスを利用した時には自己負担が発生します。

「扶養になっている人の保険料は配偶者などが払っているのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、被扶養者の健康保険料(毎月支払うもの)は無料です。被扶養者がいるからといって、配偶者の健康保険料がアップすることはありません。

パートタイマーのオネーサマ方が勤務時間や収入を調整しながら働くのは、こういう恩典を放棄しないためです。

もし、自分自身で社会保険に加入すると、健康保険では被保険者になり、被扶養者ではなくなりますので、毎月の健康保険料がタダになるという身分を放棄することになります。

ただ、先程書いたように、月収10万円程度で社会保険に加入すれば、国民年金の保険料よりも少ない負担で社会保険の3点セットに加入できますから、被扶養者の身分を放棄する点はデメリットですが、別の面でメリットがあります。

 

社会保険料は給与? それとも費用?

会社側からすると、社会保険料は給与の一部です。支払った便益は本人に全て還元されるので、社会保険料は給与に含まれると考えます。

一方、社員側からすると、社会保険料は鬱陶しい費用と感じます。毎月、給与明細から安くない額が控除されているのですから、それが給与の一部だとは感じにくい。

会社側の視点では、社会保険料というものを給与に上乗せしている(プラス)。一方、社員側の視点では、社会保険料が給与から控除される(マイナス)。

見え方が違うんですね。同じものでも。

 

 

2022年10月1日から変更 短時間労働者が社会保険に加入する条件

短時間労働者、パートタイマーが社会保険に入る条件が変わります。

パートタイマーが社会保険に入る基準は2つあります。

1つは、フルタイムで働く人の時間を基準にして、1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数がフルタイムで働く人の4分の3以上。この条件を満たすと社会保険に入ります。巷では「4分の3基準」と言われたりします。


2つ目の基準は、短時間労働者が社会保険に入るもので、4つの条件を満たすと社会保険に加入します。

1.1週の所定労働時間が20時間以上であること
2.雇用期間が1年以上見込まれること
3.賃金の月額が88,000円以上であること(年間に換算して「106万円の壁」と言われることもありますね)
4.学生でないこと

参考:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構)

2022年10月1日から、条件2の「1年以上」が「雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれること」に変わり、雇用期間の条件が短縮されます。社会保険に加入する一般の被保険者と同じになります。短時間労働者は1年以上の雇用期間が要求されていましたが、これがフルタイム労働者と同じ扱いになるんですね。ということは、条件2は削除され、短時間労働者が社会保険に入る条件は実質で3つになります。

さらに、短時間労働者が社会保険に入るには、「被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所」が対象でしたが、2022年10月1日以降は「被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所」に変わります。人数要件が変わって、より小規模な事業所も対象になります。

ここでのポイントは、従業員数が500人とか100人ではなくて、「被保険者の総数」と書かれているのがポイントです。被保険者の総数ですから、社会保険に入って被保険者になっている人の数が常時100人を超えている事業所は特定適用事業所になります。上記の人数要件が適用されて、短時間労働者でも社会保険に入る職場になるわけです。

 例えばフルタイムで働いている人が30人いて、この30人は社会保険に入って被保険者になっているとします。さらに、パートタイムで働く短時間労働者が72人いる職場であったとすると、従業員総数は102人ですけれども、被保険者の総数は30人ですから、この職場は特定適用事業所になりませんので、短時間労働者は社会保険には入らないわけです。

ただし、特定適用事業所にならないからといっても、先ほどの条件1に書いた「4分の3基準」に当てはまった場合は、事業所の規模にかかわらず、その人は社会保険に入ります。

短時間労働者が社会保険に入るには、その職場が特定適用事業所になっていることが前提です。

 

社会保険の任意適用事業所が強制適用事業所に変わるところも

事業所によっては、任意適用事業所という形で強制適用事業所ではなく、任意で社会保険に入っている事業所もあります。

社会保険は強制的に加入しなきゃいけない制度というイメージがあるかと思いますけれども、強制適用事業所の条件に該当しない場合は、任意で社会保険に入るという選択肢もあります。自主的に健康保険と厚生年金に入るわけです。それを任意適用事業所と表現しているんですね。

2022年10月1日から社会保険の適用事業所の条件が変わりますけれども、2022年9月末までは、常時5人未満の従業員を使用する適用事業の個人事業所の場合は、強制的に社会保険に入る必要はなくて、事業所内で被保険者となるべき者(社会保険に入る条件を満たしている従業員のこと)の1/2以上の同意を得ることで、認可を得て任意で社会保険に入るという選択ができました。

ちなみに、任意適用事業所であることを止めようとする場合は、認可の取り消しのために被保険者の3/4以上の同意を得る必要があります。入るときよりも止めるときの方が条件は厳しいんですね。

2022年10月1日以降は、常時5人未満の従業員を使用する士業の個人事業所は強制適用事業所になりますので、9月まで任意適用だった事業所は強制適用に変わるところも出てきますね。

2022年(令和4年)10月から、常時5人以上の従業員を雇用している資料の個人事業者は、社会保険の強制適用になります。2022年9月以前は法務(弁護士、会計士、社会保険労務士)の業種は適用事業所にならなかったのですが、この点が変わります。

常時5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所が対象で、弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士の個人事務所で人を雇って、常時5人以上の従業員になっていると社会保険の強制適用事業所になります。5人以上で士業だと法人化して社会保険に入っているところもあるでしょうけれども。小規模な個人事務所も2022年10月以降は対象になるということです。

上記の適用事業所の条件に該当する場合は、2022年10月になったら、新規適用届、被保険者資格取得届等の届出をします。自動的に加入にはなりませんので。放置するとあとからまとめて社会保険料を請求されます。

社会保険に入ると会社経由で健康保険と厚生年金に入りますけれども、社会保険料を本人と会社で折半するのが特徴です。任意適用で社会保険に入らなければ、各人が自分で健康保険と年金に入ることになるので、国民健康保険と国民年金に入るという組み合わせが多いでしょう。さらに、年金を上乗せするために、iDeCoや国民年金基金に入る方もいるでしょうね。

任意適用事業所になっていると、健康保険のみ適用事業所であったり、厚生年金のみ適用事業所であったりするケースがあって、どちらか片方だけ入ることが可能になっています。強制適用事業所だと健康保険と厚生年金がセットなのですが、任意適用だと分けて入る選択もできるんですね。

健康保険の任意適用事業所になるには、厚生労働大臣の認可を受けることになります。一方、厚生年金に任意適用で入る場合は、日本年金機構の認可を受けるという流れになりますので、それぞれ別々で入ることができるわけです。 

もともと健康保険と厚生年金の任意適用事業所だったところが強制適用事業所になった場合は、届け出は不要で、自動的に強制適用事業所に切り替わります。すでに適用事業所届は出していますし、被保険者取得届も出ていますから、そのまま移行できますね。

他方、健康保険のみ適用事業所だった場合は、厚生年金に加入していないわけですから、厚生年金の新規適用届と従業員の被保険者資格取得届が必要です。

また、厚生年金のみ適用事業所ならば、健康保険に入ってないわけですから、健康保険に関する手続きをやらなきゃいけないというわけです。

 

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