労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

2010/8/12【外部の人に仕事を代わってもらう】



┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■┃  メールマガジン 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃  山口社会保険労務士事務所 http://www.growthwk.com?ml=20100818_20100728
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2010/8/12号 no.214)━







■外部の人に仕事を代わってもらう◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■
社員の立場を一時的に譲渡するのはアリ?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





■雇用契約の当事者としての立場を他人に譲渡する。



会社は、社長や役員のようないわゆる使用者の立場の人と、使用者以外の社員であるいわゆる労働者の立場の人で構成されています。

また、社長や役員が1日ごとに入れ替わったりする会社はそうないでしょうし、社員さんが1日ごとに入れ替わる会社もそうはないでしょう。派遣社員は派遣元で継続的に雇用されていますし、日雇いで働いていても1日だけで職場を変えていくことは少ないのではないでしょうか。おそらく、数日か数週間は同じ現場で働くはず。

このように、使用者としての立場や労働者の立場というのは変動しにくいわけです。


では、使用者としての立場や労働者としての立場を一時的に他人に代わってもらうとしたら、どんな問題が起こるでしょうか。

例えば、来月は旅行に行くので、自分の会社の社長を友人に代わってもらうというのはどうでしょう。8月はグァムに行くので8月いっぱいは友人が社長になり、9月からはまた自分が社長に復帰するというような場面ですね。ちなみに、この交代は社長の判断だけで行われていると考えます。こりゃぁ、随分と風変わりな社長です。

また別の例を挙げれば、営業を担当している社員さんが、午前中だけは自分が仕事をして、午後からは自分の弟に仕事を代わってもらっているというのはどうでしょう。ちなみに、弟に仕事を代わってもらっているということを会社は知りません。この社員さんとその弟は顔や姿もよく似ているので、他人がパッと観ても判別するのは容易ではありません。

使用者としての立場を他人に代わってもらったり、社員としての立場を他人に代わってもらうのはアリなのかナシなのかが問題となります。


まあ、滅多なことでは上記のようなヘンな人たちに出会わないでしょうが、全く有り得ないことでもなさそうです。一卵性双生児の兄弟や姉妹ならば、仕事を代わってもらう事もできそうです。

私は一卵性双生児ではないですけれども、小学校から中学生の頃に、一卵性双生児の兄弟が同級生でいましたね。私は随分と長い間この兄弟を見ていましたから、どちらがどちらなのかを判別することはできましたが、付き合いの浅い人がこの兄弟を見た場合、双方を判別することはできなかったようです。ちなみに、この兄弟は一卵性双生児ですから、年齢も同じです。しかも、背丈もほぼ同じで、顔がちょっと違うという程度であり、人としての雰囲気もよく似ていました。そのため、さらに判別が困難だったのかもしれません。






■単純な仕事を代わってもらう。



他人を代役にすることについては、民法にルールがあります。

(使用者の権利の譲渡の制限等)
第625条
1項:使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
2項:労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
3項:労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。


1項を読むと、社長は自分だけの判断で他人を社長の代役として立てることはできませんね。自分の友人に「8月は海外へ旅行に行くので、ちょっと社長やってくれる?」などと軽いノリでお願いすることはできません。突然、誰か分からないような人が社長としてやってきたら、社員さんはビックリしますからね。「誰? あれ」みたいな。中には、「ウチの会社、乗っ取られたんじゃないの、、?」と思ったり人もいるかも。もしこんなことが起これば、社員さんから社長にクレームが出るでしょうから、実現しないのが普通だろうと思います。

ただ、625条の第三者というのは、いわゆる「部外者」を想定しているので、社長の親族同士だと交代することが有り得るでしょうね。例えば、社長である父親が1ヶ月ほど出張するので、長男とか配偶者に社長を代行してもらうことはありそうです。

ただ、この場合の長男といっても、会社の役員になって実際に業務に携わっている長男なのか、それとも、形式的に役員になっているだけで業務には携わっていない長男なのかで事情は変わるでしょうね。前者の長男が社長を代行するならば、おそらく何らの問題もないでしょう。しかし、後者の長男が社長を代行するとなると、会社の人は困るかもしれません。おそらく、後者の場合は、社長の代行を設けずに、役員の人や管理職の人でやりくりするのではないでしょうか。決裁が必要な事柄は、電話やメールで連絡し解決すると思います。

使用者の代行では周りの人がフォローできるので、雇用契約に影響が出ることもあまりないのかもしれません。


一方、社員としての立場を他の人が代行するとなると、使用者の場合とは違って、他の人が止めることができない場面もあります。先ほどの例のように、午前中だけ自分が営業をやって、午後は自分の弟が営業をやるとなると、複数人で動いているならば他の人が気づくでしょうが、単独で動いている営業ならば、誰かが気づくこともできないはずです。

社員本人ではなく、その弟が兄の名刺を持って営業するとなると、もうこれは「なりすまし社員」です。これを会社が許すかどうかが問題です。会社の承諾を得ずに代行させているとなると、雇用契約を解除する理由になります(先ほど挙げた、民法625条3項より)。

ただ、ごく簡単な仕事を外部の人に変わってもらうという場面は有り得るかもしれない。例えば、屋台の店番などが典型例でしょう。屋台の店番など、やることは難しくなく、簡単な調理をしてお金の授受をするか、お金を受け取ってクジを引いてもらったり金魚すくいの紙を渡したりする程度です。店に行ったら、突如として、「焼きそばを焼いてくれ」なんて任されたりすることもあるのかもしれない。これならば、一時的に祭りにやってきた友人に店番を代わってもらうこともあるでしょう。もちろん、親密度の高い友人に限られますが。

簡単な仕事だと、いちいち使用者である店主に断ることなく、第三者が勝手に仕事に参加することも有り得るんですね。

親しい間柄で交代するとか、友人同士で運営している屋台では、必ずしも厳密に雇用契約のルールが維持されているわけではないのですね。






■人にくっつくのが雇用契約。



なぜ勝手に代わってはいけないかというと、人と雇用契約がリンクしているからです。つまり、「"特定の"雇用契約」は「"特定の"使用者」と「"特定の"労働者」のためのものであって、その当事者以外の人が介入してしまうと、雇用契約の内容を維持できなくなるからなのですね。そのため、雇用契約は「属人的な契約」と言われることもあります。

ただ、お祭りの店番のように雇用契約に属人性をさほど求めない場面もあります。友人同士で仕事を代わったり、親の代わりに息子や娘を充てるなど、普通の雇用契約だと避けるべきことでも、非常に人的な代替性の高い仕事の場合は許されたりします。しかし、コンピュータープログラマーが、たこ焼きを焼いているおっちゃんと交代するというようなものはダメです。人的な代替性が低いですから。たこ焼きを焼いている人がPythonのコードを書いたりすることは想像しがたいです。稀にできる人もいるかもしれませんが、あくまで稀です。


他にも、「ウチの社長は酒井という人なんだけど、今日だけ樋口さんが社長なんだよ」なんてことはないはず。まあ、1日店長とか1日社長というキャンペーンのようなことをする企業もあるのでしょうが、それはあくまでイベントとしてやっているだけ。ちなみに、警察署での1日署長というのも有名です。小学生ぐらいの子供が担当するようで、これもキャンペーンやPR活動ですね。

他の人でもできるからという思いで、他の人(もちろん、同僚などは除く)に仕事を代わってもらったりすると、雇用契約が解消する原因になりますので、やらないようにしてください。マトモな人ならやらないと思いますけれども。







┏━━━━━━━━━━☆★ 後記  ★☆━━━━━━━━━┓



株主を社員と表現することに違和感がある。

社員という言葉の意味には、「会社の一員として勤務している人」という意味と「株主」という意味の2つがある。会社で勤務する人と株主は全く違うものだが、なぜか同じ社員という概念に一括されている。

昔の商法(会社法の部分が商法に含まれていた)を学んだ人とか、今の会社法を学んだ人ならば、「株主=社員」と理解しているのかもしれない。私も、古い商法を学んだことがあるので、「株主=社員」として教えられた記憶がある。確かに、商法の本を読んでも、株主は社員として書かれており、間違いのない内容なのだと思う。

しかし、「株主=社員」という説明に違和感を感じていたし、今でもそのように私は感じている。「なんで株主が社員なの?」という素朴な疑問だ。「社員は社員だし、株主は株主でしょう?」というのが私の考え。おそらく、世のほとんどの人は私と同じではないかと思う。「社員は会社で働いている人、株主は会社の持ち分を有している人」と分けて理解しているはずだ。株主=社員とは理解していない。

英語では、社員と従業員はEmployeeという表現で統一されており、双方は同じものだと定義されている。しかし、日本語では、社員と従業員では違う意味が付されることがあり、会社で働く人は社員ではなく従業員として表現される。

ちなみに、私は従業員という言葉が嫌いだ。社員も従業員もほぼ同じようなものと一般には理解されているのだけれども、私は社員という表現の方が好み。おそらく、文字の感じで選択しているのだと思う。社員というのはシンプルだけれども、従業員という言葉は何かダサイ感じがするので、前者を好んでいるということ。


「株主=社員」という表現はだれが作ったのだろうか。「会社の所有者は株主」という価値観を押し進めると、株主=社員という表現に行き着くのだろうか。社員は社員、株主は株主と理解する方が自然だと思うが、私の方がヘンなのかどうなのか。






┗━━```☆....━━━━━━━━━━━━━━━```☆....━━━┛


今回も、メルマガ【本では読めない労務管理の「ミソ」】を
お読みいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。

労務管理のヒント

http://www.growthwk.com/entry/2014/04/07/135618?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_2

ニュース

http://www.growthwk.com/entry/2014/03/12/082406?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_3


┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ┃本では読めない労務管理の"ミソ"山口社会保険労務士事務所 発行
┣━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┃メルマガの配信先アドレスの変更は
http://www.growthwk.com/entry/2008/11/28/122853?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_4

┃メルマガのバックナンバーはこちら
http://www.growthwk.com/entry/2008/07/07/132329?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_5

┃メルマガの配信停止はこちらから
http://www.growthwk.com/entry/2008/06/18/104816?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_6


┣*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*

┃労務管理のヒント
http://www.growthwk.com/entry/2014/04/07/135618?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_7
┃仕事の現場で起こり得る労務の疑問を題材にしたコラムです。

┃ニュース
http://www.growthwk.com/entry/2014/03/12/082406?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_8
┃時事ニュースから労務管理に関連するテーマをピックアップし、解説やコメントをしています。

┃メニューがないお店。就業規則が無い会社。
http://www.growthwk.com/entry/2007/11/01/161540?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_9

┃山口社会保険労務士事務所 
http://www.growthwk.com?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_10

┃ブログ
http://blog.ymsro.com/?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_11

┃『残業管理のアメと罠』
┃毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、
┃月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、
┃平均して8時間勤務というわけにはいかない。
┃しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、
┃ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。
┃それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
http://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_source=mailmagazine&utm_medium=cm&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_12

┃電子タイムカード Clockperiod
┃始業や終業、時間外勤務や休日勤務の出勤時間を自動的に集計。
┃できれば勤怠集計の作業は随分とラクになるはず。Clockperiodは、
┃出退勤の時刻をタイムカード無しで記録できます。タイムカードや出勤簿で
┃勤務時間を管理している企業にオススメです。
https://www.clockperiod.com/Features?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_13


┣*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*━*
┃Copyright(c) 社会保険労務士 山口正博事務所 All rights reserved

┃新規配信のご登録はこちらから
┃(このメールを転送するだけでこのメルマガを紹介できます)
http://www.growthwk.com/entry/2008/05/26/125405?utm_source=mailmagazine&utm_medium=mel&utm_campaign=mailmagazine_mel_HT_15

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com
お問い合わせ

© 社会保険労務士 山口正博事務所