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暇だから早退させられた 早退と休業の境目はどこ?

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■早退と休業の境目はどこ?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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早退のような休業ではないか
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早く仕事を終えたら早退か、それとも休業か

仕事が少ないある日に、

上司の人(店長とか):「今日は暇だから早く帰るか?」

部下の人:「そうですね。早く帰りたいです」

というやりとりがなされる。

上記のような経験がある人も少なくないのではないでしょうか。


いつもは、定時まで仕事をするし、場合によっては時間外まで仕事をすることもあるでしょう。ところが、稀に暇な日というものはあって、「今日はお客さんが少ないねぇ、、。榎本さん(仮想の人物です)、今日は早めに上がるか?」などと店長(飲食店の店長と仮定します)が榎本さんに言う場面もあるんですね。もちろん、飲食店に限らず、他の仕事でもこのようなやり取りがなされることは不思議なことではありません。

社員さんの方も、いつもはキッチリ定時まで仕事かもしくは残業があるために、たまに早く帰れると嬉しく感じるんですね。上記の榎本さんも、「おっ!ラッキー。今日は早く帰れそう。フフフン♪ 時間があるから、高島屋のデパ地下にでも行こうっと」などと思うんですね。

上記のように、暇で早く帰れるときは、社員さんは納得の上で会社のオファー(早退の要求)を受け入れることの方が多いのではないかと思います。時には、半ば強制的に早退の同意を求められる雰囲気が作られるときもありますが、必ずしもそうとは限りません。


では、軽い雰囲気で早退の要求と受け入れがなされたとき、これは単なる早退として考えるべきか、それとも、いわゆる休業として考えるべきかが分岐点となります。


「たまたま、暇になっただけだし、榎本さんも早退を受け入れているので、単なる早退として考えていいのでは?」と判断するのか、

それとも、

「いや、会社の判断で早退させたのだから、使用者の責任で早退させたということになる。ならば、これは早退ではなく休業だ」と判断するのか。

どちらでしょう。

今まで使われることがほとんどなかった労働基準法26条

休業については労働基準法の26条にその内容が書かれています。使用者の責任で社員さんを休ませると、平均賃金の60%以上を支払うというものです。

おそらく、2008年11月頃になるまで、休業手当について知っている人は少なかったはずです。その頃までは、休業手当などというものが存在しているなどと知らずに過ごしていた経営者さんや社員さんが多かったはずです。ところが、2008年11月頃に、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金が創設されて、休業手当制度への注目度が上昇しました。

「休んでも給与を支払わなければいけない」ことを知っている会社は意外と多くはなく、「休んだら"No work, no pay"だろう」と考える会社の方が多いはずです。


「使用者の責任で休んだら、一定の給与が支給されるのか」と認知され、上記の助成金の認知度も上昇しました。

ただ、「使用者の責任で休んだら」という意味が客観的に定まっていないために、休業と判定される範囲が広がってしまっているという困ったことも起こっています。

「使用者の責任で休んだら」という部分の意味を、「会社の判断で休んだら」という意味に解釈されているフシもあって、もう右から左へ休業、休業、休業と判断されてしまい、息苦しく感じるときもあるぐらいです。

雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金では、1日単位の休業だけでなく、時間単位の休業も対象にできるために、「今日は暇だから早く上がろうか」と思っても、早く上がった分だけ休業にしなければいけないという状況にもなっています。1日単位の休業だけしか助成金の対象にできないと、パートタイムで働く人をカバーできないので、時間単位の休業まで助成金の対象を広げたのでしょうが、ちょっと不都合な状況も発生しているのですね。


「今日だけたまたま暇なので、早く上がろうか」という状況まで休業にされるのはちょっと行き過ぎですよね。社員さんの方も、「今日だけたまたま早く帰れるのだから嬉しい」と感じるでしょうし、あえて休業にしてもらおうと思うこともないだろうと思います。こんな状況でもあえて休業にするのだろうかと考えると、どうも納得しにくいところです。

使用者に責任がある場面を具体的に決められない

「使用者に責任」と書いているならば、「使用者に落ち度がある休業」を想定するのが普通であり、「使用者に落ち度が無い休業」は除くべきとも思えます。

しかし、実務では使用者の責任を広く認めるのが通例で、使用者側で早退や休むキッカケをを作ったら、これは使用者の責任と考える傾向があります。ただ、これではどうしても使用者の責任を広く認め過ぎてしまいます。

確かに、雇用契約で約束した内容どおりに使用者は社員さんが仕事をできるようにするべきではある。しかし、たまたま暇で早退するときのような場合でも休業にするのは少し酷ではないかと思います。


他にも、店舗改装で休業という場面もありますよね。店舗を改装するので、その改装作業中は店を休みにすることもあるかと思いますが、これも休業と考えられてしまうかもしれません。ただ、店舗改装の作業を社員さんに手伝ってもらうようにすれば仕事になるので、休業が問題になることはないのかもしれません。そのため、店舗改装のときは、その店舗の社員さんも作業に参加させる会社もあるようです。

しかし、改装業者が専任で行う部分は介入できないので、そのときは休まざるを得ません。ここが問題ですね。

使用者は休業にしたくて休業にしているのではなく、改装のために物理的に就業できないので、やむを得ず休みになってしまっているだけなのですから、これを使用者の責任にしてしまうのは、ちょっと行き過ぎな感があります。



ここで、「会社と社員さんの間で合意があるならば休業にしない。合意がないならば休業」という基準が使えそうな感じもしますが、合意の有無で判別する方法は十分ではありません。

休業する際に助成金(雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金)を利用するとき、「休業協定書」という書面を作成します。この書面には、休業することについて、会社と社員の間で合意している旨について書かれています。つまり、会社と社員の間で合意をしていても休業にはなるのですね。


他の方法を挙げると、「3日以下の休業は労働基準法26条の休業にしない」というように待機期間のようなものを設定する方法があります。これならば、たまたま暇で早退したりしても、休業になりません。ただ、「3日休業して1日出勤。その後、3日休業して1日出勤、、、」というように脱法的なことを考える人もいるかもしれない。けれども、労働基準法26条を現状のままにするよりは前に進んでいると思います。


中には、「わずか数日ならば、休業として扱ってもいい」と考える経営者さんもいるかもしれませんね。わずか数日の休業程度でアレコレと物議を醸すならば、全部休業にしたらいいじゃないのと思うのでしょうね。これも1つの選択肢でしょうね。


労働基準法26条を作った当初は、休業手当のルールが濫用されるとはさほど考えていなかったのかもしれません。しかし、現在のように休業手当のルールが実際に使われるようになると、思いのほか濫用の余地があると気づくのですね。


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