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■あえて公民権を行使して選挙に行く人◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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無理に公民権を使うことを拒否したい。
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■あえて就業時間中に選挙へ行く。
去年2009年の8月に衆議院選があって、さらに今年2010年の7月に参議院選があり、ふと公民権の行使について考えることがありました。
いきなり話が横道にそれますが、選挙のが実施されるとき、「選挙立会人」という人が投票所にいますが、あの人達はどのような役割なのかがどうも分からない。選挙立会人とは、辞書的には「選挙の手続きが公正に行われるように立ち会う人」という意味ですが、あの人達がいないと公正に選挙はできないのだろうか。私も何度も選挙には行っていますが、いつも選挙立会人はパイプ椅子に座っているだけで、何らかの役割を果たしているとは思えない。やっていることと言えば、投票場にやってくる人を観察したり、選挙立会人同士で雑談するぐらいではないか。
まあ、投票人の行動を見ているだけで役割を果たしているとも言えなくもないけど、あえていなければいけない存在でもなさそう。投票場には、投票人の名簿を管理する人、投票券を発券する機械を操作する人がいるので、その人達が選挙立会人を兼任すれば足りるのではないかと私は思うのですけれども、どうなんでしょうね。投票にやってくる人は荒れることなくみんなキチンと手続きを済ませるのですから、あえて監視するようなポジションを設ける必要はないだろうと思う。どうしても投票所を安全なものにしたいならば、ガードマンを1人設けるという程度でも良さそうだ。
例えば、アフガニスタンのような国ならば、選挙を監視するような役職は必要だろうし、手続きの公正を担保するために特別な取り組みが必要なのだろう。しかし、日本で選挙を監視する必要があるかといえば、おそらくNOだと思う。
話を元に戻すと、仕事をしている人が選挙に行くために公民権という権利があるのは周知の通りです。労働基準法7条に書かれているルールです。
労働時間中に選挙権などの公民としての権利を行使するときは、会社はその権利をキチンと行使できるように配慮しなければいけないというものですね。さらに、但し書きの部分で、公民権を行使する時刻を変更できると書かれています。
ちなみに、現在では、選挙の投票日は日曜日に設定されますし、さらには投票日の1ヶ月前から期日前投票ができる制度もあって、選挙に行くために日程的に不都合になることは少なくなっています。
そこで、投票日に選挙に行くのではなく、さらには期日前投票に行くのでもなく、あえて勤務時間中に投票に行きたいと要望するヘンな人がいたらどうするかが問題となります。
あえて投票日の当日や期日前投票で選挙に行かずに、公民権を行使して勤務時間中に選挙に行っちゃえという考えですね。
「うわぁ、、、なんてヒネクレタ人なのか、、」と思うかもしれませんが、公民としての権利を行使することが保証されているならば、できないことでもないですよね。
さあ、こんなヒネクレタ人にどう対処するか。これが今回の焦点です。
■投票に行くことを会社が拒否するとき。
「そんなヘンなリクエストをするならば、権利の行使を変更すればいいのでは?」とも思えます。
確かに、労働基準法7条の但し書きでは、「但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる」と書かれていますので、この規定で対処できそうです。
ただ、「請求された時刻を変更することができる」と書かれていることを考えると、勤務時間中に公民権を行使することそのものは維持されると判断できます。つまり、勤務時間が10時から18時だと仮定すると、11時に公民権を行使しようとしているところを16時に変更できるというのが公民権行使の時刻変更です。しかし、これでは今回の問題を解決できませんよね。労働基準法7条には、時刻を変更する"時刻変更権"はありますが、日程を変更する"日程変更権"はありません。
選挙当日ではなく期日前投票でもなく、あえて勤務時間中に選挙に行こうとする人に対処したいのですから、公民権を行使する"時刻を変更するだけ"では足りないのですね。必要なのは"日程を変更すること"です。つまり、わざわざ勤務時間中に選挙に行かずに、投票日に選挙に行くか、もしくは期日前投票で選挙に行って欲しいわけです。「何でわざわざ勤務時間中に選挙に行くのよ。当日か期日前に選挙に行けばいいじゃないの」と会社側は思うのですね。他の良い選択肢をチョイスせずに、あえて面倒な選択肢をチョイスしているのですから、当然な思いです。
「いや! 選挙当日や期日前じゃダメなんです! 勤務時間中に選挙に行くことに意味があるんです」などと考えているのかもしれませんが、こりゃもはや「変人」です。会社としては、「当日投票か期日前投票で対処できるのだから、あえて勤務時間中に選挙には行かないで」と言いたいはず。ここは会社の判断の方が真っ当です。
ただ、就業時間中に公民権を行使することを禁ずることはダメという行政通達もあって、企業としては悩ましいところです。
確かに、今回の「変人さん」による公民権の行使は確かな権利の行使です。労働基準法の7条にピッタリと合致していますし、何ら不正なところがありません。
しかし、正しい権利の行使ではあるものの、普通の感覚からは認め難い権利の行使です。これは、いわば「権利の濫用」です。
権利の濫用とは、そのように判断・行動する確かな権利があるものの、その権利を行使することが不公正であるという場合に使う概念です。民法の判例で、宇奈月温泉の土地の権利取引で起こった事件が権利の濫用の例として有名です。確か、宇奈月温泉の送湯管が設置されている何の用途にも使えなさそうな土地を一部だけ取得して、その土地の権利に基づいて宇奈月温泉側に土地使用料を請求したか、その土地の買取りを請求したかという事件でした。
確かに正しい権利があるものの、その権利を行使することが一般的感覚に基づいて認め難いという点は、今回の公民権の行使でも同様だと思います。
日曜日に投票日が設定されているのに、行かない。選挙日前の1ヶ月間に期日前投票ができるが、利用しない。あえて労働基準法7条に基づいて勤務時間中に選挙に行くことを選択する。
このような場合、いくら何でも公民権として権利を保護すべきとは言えません。
労働基準法7条といえども、わざと勤務時間中に投票に行くことまで保障するものではなく、「当日か期日前に選挙に行きなさい」と言って、勤務時間中に選挙に行くことを拒否できると考えるべきです。
■投票のために公民権を行使することはなくなった。
この公民権行使のルールも、おそらく随分と古いものだと思います。
昔は選挙日当日しか選挙に行けなかったのでしょうから、公民の権利として投票する行動を保護しなければいけなかったのでしょう。
しかし、今では週休2日で休みを設定している会社も多いですし、選挙当日よりも前に投票できる仕組みもできあがっています。
ならば、あえて勤務中に公民権を行使して投票に行かなくてもよいわけです。にもかかわらず、公民権の行使だから勤務時間であっても投票に行くんだというのは、やはり制約されてしかるべきです。公民権の行使というよりも、会社への嫌がらせとも判断されかねません。
さらには、インターネットを利用して投票することも技術的には実現できますし、なぜインターネット投票ができないのか不思議なほどです。「なりすまし」とか「代理投票」、「本人確認がしにくい」という不都合が起こることを想定しているのかもしれませんが、利便性を放棄してまで気にするほどのものとは思えません。インターネット投票ができるようになると、若い人の投票率が向上して特定の政党にとって不利になるからという邪推までしてしまいます。現在の選挙では、年齢の高い人ほど選挙にいく傾向があるようで、高齢者に親和的な政党はインターネット投票を避けたいのかもしれません。
他にも、もし家から出れない高齢者がいて投票できない環境だとしても、無線LANに接続したパソコンを持って役所の人が訪問して投票を受け付けるという方法もあります。
選挙にいくために公民権を行使することはもはやなく、自分自身が選挙に立候補する被選挙権を行使する場面に公民権の行使は限られてくるでしょうね。
┏━━━━━━━━━━☆★ 後記 ★☆━━━━━━━━━┓
男性にヒットしたものが女性にヒットすることは少ないけれども、女性にヒットしたものが男性に飛び火することは少なくない。
例えば、釣り。男性で釣りが好きな人は多いけれども、女性で釣りが好きな人にはなかなか出会わない。「以前は男性の間で釣りがブームだった。しかし、今では女子高生にも釣りが人気!」なんてことにはなっていない。
風俗店も同様。男性用風俗が大いに盛んだけれども、女性用の風俗は盛んとは言えない(探せばあるのかもしれないけれども)。女性用の風俗店があっても不思議ではないと思うけれども、やはり私の知る限りでは無い。せいぜいホストクラブぐらい。なお、ホストクラブを風俗店と扱っていいものかどうかは定かではない。
一方、顔のテカリを防ぐための油取り紙はどうか。以前は、女性の間でコッソリと使われている程度だったけれども、今ではメンズ用の油取り紙が売られている。これは女性の間でヒットしたものが男性に飛び火した例だと思う。
他にも、エステが例として挙げられる。エステといえば女性のものという固定観念は今でも強いけれども、今では男性用エステもある。サービスの内容も女性エステとさほど変わりはなく、女性用エステのノウハウをそのまま男性用に転用したものだ。
今では人気アーティストとなっているEXILEも、最初にブームになったのは女子高生からだった。2001年の末ごろから2002年の初め頃はまだEXILEは人気がある状況とは言えず、知る人ぞ知る存在だった。けれども、女子高生の間ではその存在は知られていて、「EXILE知っている?」と聞かれたことがあったけれども、その当時(大学時代)私はEXILEを知らなかった。同年代の男性にも聞いてみたが、知っている人はいなかった。
やはり、「ブームやヒットは女性から」というのがおおよそ正しいみたいだ。
藤田田さんの本(「ユダヤの商法」)では、「商売では口と女を狙え」と書かれていたが、これは本当だろう。
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