- 有給休暇をいつ使うかは当事者次第
- 祝日に年次有給休暇を充当するかどうかは労働者の任意で決めるもの
- 祝日を年次有給休暇にする要望を使用者が受け入れる義務はない
- 祝日が平日と同じ通常の出勤日になる職場だったら年次有給休暇は使える?
有給休暇をいつ使うかは当事者次第
法律では、年次有給休暇を付与する条件と日数についてルールが定められていますが、どういう使い方をするかは決められていません。
用事があるから有給休暇で休むのは良いですし、病気で休んでいるときに使うのもアリです。単に休みたいだけで年次有給休暇を取得するのも問題ありません。
では、祝日に有給休暇を使ったらどうなるか。
仮に、祝日は休みになる職場があるとして、祝日には有給休暇で休むように会社から指示されたらどうか。
もしくは、会社からの指示ではなく、労働者の判断で祝日に年次有給休暇を充当したらどうか。
なお、1週間に1日は休日を入れないといけないのが法律ですが、その休日には該当しない祝日に有給休暇を使うことを想定してください。
つまり、法定休日ではない日に有給休暇を使うというわけです。
「祝日が休みの日ならば、労働義務がない日だから、有給休暇は使えない」という理屈もありますが、休みの日に年次有給休暇を使うことが法律で禁止されているわけではありませんので、この点はクリアできているという前提で考えてください。
祝日に年次有給休暇を使うことは可能ですが、いくつかのポイントに注意する必要があります。
祝日が既に休みである場合
祝日は法律で定められた休日であるため、その日に労働が予定されていない場合、有給休暇を使用する必要はありません。労働義務がない日に年次有給休暇は使えないという理由によるものです。例えば、会社が祝日を休業日としている場合、その日は既に休みとされているので、有給休暇を取る意味はありません。
労働日として扱われる場合
祝日でも会社が営業しており、通常の労働日として扱われる場合、その日を有給休暇として取得することは可能です。たとえば、祝日に出勤が求められる職場やシフト制の職場などでは、有給休暇を使うことが認められています。
祝日に給与を付けたい場合
人によっては、祝日はすでに休みであるものの、給与を付けるために年次有給休暇を使うケースもありますね。
祝日に年次有給休暇を充当するかどうかは労働者の任意で決めるもの
無休の祝日にしてもいいし、有給休暇を祝日に充当するのもOKというように選択できるならば大丈夫です。
しかし、祝日は半ば自動的に有給休暇が充当されるという運用はダメです。
有給休暇は労働者本人が自主的に使うものですから、会社側で祝日を有給休暇に変えてしまうことはできません。
本来ならば無休になるところ、有給休暇で祝日に休めるならば、労働者にとって悪い扱いでもありませんが、どうするかは労働者が決めることです。
他には、労使協定を締結して、計画有給休暇を事前に決めているならば、会社側で決めたスケジュールで祝日を有給休暇にすることも可能です。
計画年休を実施するには、事前に労使協定を締結して、実施内容を決めておく必要があります。何らの準備もせずに一方的に祝日を計画年休に変えてしまうことはできないのです。
祝日だけでなく、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など、休みが連続する時期に計画有給休暇を充当させるのは、有給休暇の使い方としては良い方法です。
連休中の平日に有給休暇を入れる『ブリッジホリデー』というものもあり、平日を休暇に変えて連休を作り出すという使い方です。
では、カレンダーにあるすべての祝日を計画有給休暇の対象にできるかというと、付与された日数のうち年5日を超える分だけが計画付与の対象にできます。
5日分だけは本人が任意で使えるように残しておき、それ以外の休暇はカレンダーを見ながら計画的に埋めていけます。
ただ、計画年休を実施するとなると、残日数が足りなくなった人をどうするかが問題です。
計画付与する段階で有給休暇の残日数がゼロになっていれば、計画年休を使えませんので、別途で休暇を与えないといけなくなります。
計画年休の欠点を避けるには、原則として祝日は無休の休みになるが、本人が希望すれば有給休暇を充当することも可能とする。
これがベストな解決策ではないかと思います。
祝日に有給休暇を充当するかどうかは本人の選択に任せるほうが会社もラクですし、従業員も納得しやすいでしょう。
祝日を年次有給休暇にする要望を使用者が受け入れる義務はない
祝日を会社の判断で年次有給休暇に変えてしまうと、休みの日が1日なくなってしまいますから、会社側から一方的に祝日を年次有給休暇に変えることはできません。
しかし一方で、従業員から、「祝日だと給料がない無給の休みになるから、祝日に年次有給休暇を入れたい」と言われた場合は、会社はそれに応じなければいけないのかというと、応じる義務はありません。
祝日はもともと休みになっている職場ならば、あえて年次有給休暇を使う必要はありませんから、祝日を年次有給休暇に変えたいと要望を出されても、会社側はそれを拒むことができます。
本来は出勤する日を休みに変えるのが年次有給休暇の効果ですから、既に休みになっている祝日に年次有給休暇を入れるのは、本来の使い方としては想定されていません。
ですが、会社と従業員とのあいだで、祝日に年次有給休暇を使うことに関して合意しているならば、第三者がそこに割って入って、そういう年次有給休暇の使い方をしちゃいけないよ、と止めることはできません。
例えば、『年次有給休暇を取得できる日は、労働基準法35条に定める休日を除く日とする』と就業規則で定めていれば、祝日に年次有給休暇を利用できると分かります。
休みになっている祝日に年次有給休暇を入れるの本来の使い方ではないので、そういう形での年休の使い方をしないようにしたほうがいいのですけれども、労使間で合意した上で、そういう運用しているとなれば、法律に反するものではありませんし、ましてや第三者が介入して止めるようなことでもないです。
祝日が平日と同じ通常の出勤日になる職場だったら年次有給休暇は使える?
祝日でも会社が営業しており、通常の労働日として扱われる場合、その日を有給休暇として取得することは可能です。たとえば、祝日に出勤が求められる職場やシフト制の職場などでは、有給休暇を使うことが認められています。
では、祝日が平日と同じ通常の出勤日になる職場なので、祝日が休みにならない。このような場合は、どのような工夫をすればいいでしょうか。
この場合、祝日が出勤日となった際に振替休日を提供する方法があります。祝日が出勤日になる代わりに他の日に祝日の振替で休めるようにします。
祝日が出勤日になって潰れてしまうと感じてしまうため、その代替として、他の日に休みを設けます。そうすれば実質的に祝日で休んだのと同じ効果がありますよね。振替休日で祝日のスケジュールを変更しているわけです。
例えば、1月13日の月曜日が祝日だけれども、普段の月曜日と同じならば、他の日程で振替休日を取れるようにします。従業員同士で勤務シフトを調整し、交代で休日を取ればいいですね。
他に、お盆の時期や年末年始には平日もありますので、その平日に祝日から振替休日で休みの日を回していくのも一案です。上記のブリッジホリデーで年次有給休暇を入れることもできますし、祝日を振替休日にして入れていくこともできます。
祝日がバラバラに取れるよりも、まとまった休みがあることで、リフレッシュ効果が高まります。連続休暇により、従業員はより集中して休むことができ、ストレス軽減やパフォーマンス向上につながります。
「振替祝日制度」という名称で、祝日が潰れないようにして、お盆や年末年始に振替祝日分の休みをスケジュールに組み込むように人事労務管理を設計するといいですね。
祝日を振替休日に変えて活用することで働きやすい、働きがいがある職場と感じてもらえます。働く人を募集するときも、祝日振替制度をアピールすれば、選んでもらいやすい職場になるでしょう。