あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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入社直後や退職直後で健康保険証が手元に無いから病院に行けない?

保険証

健康保険証が手元になければ病院代は自己負担になる?

会社に入社して、社会保険に加入すると健康保険証が発行されます。また、退職時には、会社に健康保険証を返却して、健康保険の被保険者資格を喪失させる手続きをします。


入退社のときは健康保険証の受け取りや返却がありますが、保険証を受け取るまでに病院に行ったらどうするのか。保険証を使えないから全額自己負担になるのか、それとも健康保険証が手元に無くても健康保険を利用できるのか。

また、退職時に保険証を返した後、以前の健康保険を任意継続するか、市町村の国民健康保険に加入するまでの間に病院に行ったらどうするか。この場合も、保険証が無いから自己負担になるのか、それとも何らかの方法で健康保険を利用できるのか。

手元に健康保険証があれば問題なく病院には行けるのですけれども、手元にそれが無いとなれば、やはり不安なもの。


入社直後に健康保険証がないけれども病院に行きたい。その場合にどうしたら良いか。

退職直後に健康保険証がないけれども病院に行きたい。その場合にどうしたら良いか。


それぞれ対処法を考えてみましょう。

 

 

入社した時点で健康保険には加入している

入社してから、社会保険の手続きをして、後ほど健康保険証が自分のもとに届きますから、大体1週間ほどでしょうか、保険証が無い期間は。

「1週間ぐらいなら、病院に行くこともないだろう」そう思う方もいるでしょうが、短期間であっても、何らかの原因で病気なり怪我なりをして、治療をしないといけないときもあるでしょう。

保険証が無いと、「まだ健康保険には加入できていないんじゃないか」と思うところですが、社会保険に加入する条件を満たしていれば、入社時点から健康保険には加入しています

保険証が届くまで、手元にはモノがありませんけれども、それでも健康保険の被保険者であることは確かなのですね。

じゃあ、「病院の窓口で保険証を出さなくてもいいの?」と考えるところですが、保険証を出さないと病院代は10割負担になります。

「10割負担になるなら、健康保険に加入していない状態と同じでは?」と言いたいところでしょうが、病院の窓口では健康保険に加入しているかどうかを確認できないため10割負担になりますが、実際はすでに健康保険の被保険者になっています。

この場合は、先に10割分を立て替え払いしておき、後から「療養費」を請求すると、支払った額の7割は指定した金融機関の口座に返ってきます。


療養費(全国健康保険協会)

 

 

健康保険被保険者資格証明書を使えばどうか

先程は、立て替え払いしておいて、後から療養費を請求する方法でしたが、健康保険には『健康保険被保険者資格証明書』というものがあり、保険証が手元に届くまでの間に使える証明書として発行されています。


従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き(日本年金機構)


健康保険被保険者資格証明書を発行してもらい、これを病院の窓口に出すと、保険証を持参した場合と同じように3割負担になるとのことですが、利用した経験のある方は少ないのではないでしょうか。

なぜ少ないかと言うと、仮に健康保険被保険者資格証明書を発行してもらったとしても、健康保険証が届くまで一時的にしか使わないからです。そのため、あえて請求せずに、保険証が届くまで待っている方のほうが多いはずです。

健康保険被保険者資格証明書を発行してもらうには、申請書を書いて、年金事務所に出すのですが、2019年3月時点では、年金事務所で証明書を発行してもらえないケースもあるようです。


日本年金機構のウェブサイトでは、年金事務所で原則として当日中に交付すると書かれていますが、年金事務所へ手続きに行くと、広域事務センター(健康保険の事務処理を一括して処理している場所)に申請書を郵送するよう案内されるケースがあり、健康保険被保険者資格証明書がすぐに手に入らないこともあるとのこと。

健康保険に加入して、保険証が届くまでの期間が1週間だとすると、健康保険被保険者資格証明書を使うのはその1週間限りとなります。

郵送でやり取りすれば、3日ほどはかかりますから、証明書を使える期間は実質的に数日しかありません。即日で交付されればまだ使いようもありますが、申請から交付まで数日かかるとなれば役に立たないでしょう。

申請書を書いて、今か今かと待って、健康保険被保険者資格証明書が届いても、すぐに使わなくなるのです。

それならば、健康保険被保険者資格証明書を申請せず、保険証が手元にない期間は、立て替え払いで対応し、後ほど療養費を請求する方が楽だろうと思います。

病院によっては、療養費の手続きを病院側でやってくれるところもあり、本人が療養費申請書を出さなくていいケースもあります。

療養費の手続きならば、後からゆっくりと書類を作って郵送すればいいですし、健康保険被保険者資格証明書を申請するときのようにバタバタと急いで手続きすることもありません。


健康保険被保険者資格証明書は、使おうと思えば使えるものの、手間と時間、届いてからの使用期間の短さを考えれば、申請しない方が良いのではないでしょうか。

健康保険被保険者資格証明書を年金事務所に申請して発行してもらうのではなく、会社側で作成して発行できるならば、即日で渡せるため利点がありますけれども、申請してから数日かかるとなると、健康保険被保険者資格証明書を申請せず、被保険者資格取得届を出して、健康保険証が届くのを待っていた方が手間が増えなくていいのではないかと。

郵送で手続きをしたとして、健康保険被保険者資格証明書が届くのは3日ぐらいはかかるのでしょうし、それだったらもう健康保険証が手元に届くまで待っておこう。そう考えるのでは。被保険者資格取得届を出して1週間ぐらいで健康保険証が届きますから。

「健康保険証が手元になかったら健康保険を使えないのではないか」と心配になるでしょうけれども、後日、療養費で保険負担分の7割が返ってきます。ですから、健康保険証が手元になかったとしても健康保険を使うことはできます。病院の窓口で「今、健康保険証を発行する手続きをしている最中なので、手元に保険証がありません」と伝えておけば良いでしょう。 

マイナンバーカードを健康保険証として使えるようになれば、常に手元にマイナンバーカードはありますから、被保険者資格を喪失したり取得したりすることで一時的に健康保険証が手元から無くなることはなく、常にマイナンバーカードが手元にあるので、それを利用すれば健康保険の被保険者資格があるかどうかは判断できるようになります。

手元に健康保険証がないのが不安の原因ですから、マイナンバーカードならずっと手元にあります。健康保険証を返したりまた新しいもの送ってもらったりという手間もなくなりますし、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようになる利点は大きいですね。

健康保険料を自動で正しく計算してくれる給与計算ソフトは?
給与は基本給だけでなく雇用保険料や健康保険料も含めて計算しなければいけないものですから、それらの保険料を自動で計算してくれる給与計算ソフトは便利ですね。

 

退職した後、次の保険証が届くまでの期間も健康保険が適用される

退職日までは在職時の健康保険証を使えます。その翌日からはもう健康保険証は使えませんから、次の健康保険、任意継続での健康保険、もしくは国民健康保険に加入して保険証が届くまでは手元に健康保険証はありません。

この場合も、入社時と同様に、保険証がない期間は、病院代を先に立て替え払いしておき、後から療養費を請求すると、7割分は返ってきます。

健康保険に未加入になって全額自己負担になるわけではないので安心です。

退職日の翌日から、任意継続の健康保険なり国民健康保険に入っていたと扱われ、無保険の期間が無い状態になるのです。

ゆえに、保険証が手元に無くても、健康保険を利用できるため、後ほど療養費を請求すれば、3割負担で病院に行けるというわけです。

「保険証が無いと、健康保険が使えない」と考えてしまいがちですが、新しい保険証が交付されるまでの期間に対してキチンとフォローが用意されているのですね。


ちなみに、国民健康保険にも『被保険者資格証明書』というものがありますが、これは国民健康保険税(国民健康保険料と表現する市町村もある)を滞納した人に送付されるもの。

先程書いたように、保険証が手元にない人が一時的に使う健康保険被保険者資格証明書とは違いがあります。

 

 

マイナンバーカードを保険証として使えるなら解決できる問題

保険証のやり取りは、もう何十年も前から時間と手間がかかる作業で、2019年現在でも書類やカードのやり取りがされています。

入社時には、被保険者資格取得届を出してもらい、保険証を発送し、それを会社経由で本人に渡す。

退職時には、会社経由で保険証を返して、被保険者資格喪失届を出す。

すぐに保険証は手元に届きませんし、保険証を作って発送するにも費用がかかります。また、先程書いたように、保険証が手元に無い間に病院に行ったら、後から療養費を請求する必要があります。

退職時にすぐに保険証を返還せず、退職した後に保険証を使ってしまう人もいます。大阪では、平成30年9月末時点で、資格喪失後1ヶ月以内に保険証を回収できたのは88.56%。全国平均は91.36%で、大阪の回収率はそれよりも低いです。

資格喪失後に健康保険を使ったのは、平成29年度で、13,142件、金額では311百万円。

退職した後に健康保険を使うケースが年間で1万3千件ほどあるとのことですから、「手元に保険証があればまだ使っていいんだろう」と考えている方も少なからずいるのだろうと予想します。


マイナンバーカードを健康保険証として使うと、資格取得手続きが終われば、すぐに健康保険を使えるようになります。以前のように、保険証が送られてくるのを待たなくてもいいですし、健康保険被保険者資格証明書を申請する必要もなくなります。

1日か2日で健康保険が有効化され、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようになるでしょうから、病院代を立て替え払いして後から療養費を申請するケースも減ります。また、健康保険被保険者資格証明書の出番も無くなるでしょう。

カードそのものは常に手元にありますから、入社や退社のつどカードを新しくする必要はありません。

被保険者資格取得届を出して、その確認が済めば、加入者のデータを更新して、即日にでも健康保険を使えるようにできます。早ければ1日、遅くても2日でマイナンバーカードを保険証として使えるでしょうから、書類やカードをやり取りしているときに比べて所要時間を短縮できます。

資格取得手続きが終わったかどうかは書類ではなくマイナポータル(マイナンバーカードを使って閲覧できる自分専用のウェブサイト)で通知するようにすれば良いでしょう。さらに、マイナポータルの通知がスマホにも届くようにしておくと、どの時点から健康保険を使えるようになったかが分かりやすいでしょう。


カードの券面を見るだけでは被保険者資格を有しているかどうかは判別できませんので、健康保険証を病院の窓口に持ってこられると、「健康保険に加入している」と受け付けてしまいます。

一方、マイナンバーカードだと、ICチップを端末で読み取って、オンラインで資格確認できるようになりますので、健康保険に加入できているかどうかを病院の窓口で判断できます。


健康保険証以外にも、入院して手術を受けるときに限度額適用認定証を事前に申請して、それを病院の窓口に出すと、高額療養費制度を病院の窓口で利用できますが、この認定証もマイナンバーカードに集約しておけば、認定証の作成と発送が不要になりますし、認定申請を済ませるだけで限度額適用を受けて高額療養費制度を利用できます。


資格喪失時も、被保険者資格喪失届を受理したら、すぐに健康保険を無効化して、資格喪失後に健康保険を利用しないようにできます。カードを回収する必要はなく、加入者データを更新すれば手続きが終わりますから、資格喪失後の利用は減るでしょう。

健康保険を任意継続する場合は、任意継続の申請書を出せば、1日か2日で手続きが終わり、以前のようにマイナンバーカードを健康保険証として使えるようになります。健康保険を利用できるまでの時間的間隔が短くなりますから、後から療養費を申請する機会も減っていくはずです。


回収した保険証は裁断して廃棄するだけでしょうし、何枚もカードを作って、廃棄してと繰り返せば費用も手間もかかります。マイナンバーカードはずっと使うものですし、健康保険証のように使い捨てにはされません。

カードや書類のやり取りが減るという点だけでも、マイナンバーカードを健康保険証として利用するメリットがあります。

 

 

被保険者資格を喪失した後に健康保険証を使ったら、療養費の手続きはどうなるのか

健康保険証が手元にあるけれども、すでに被保険者資格を喪失をしている段階で、その保険証を使ってしまったらどうなるか。

被保険者資格の喪失手続きと同時に健康保険証を返却するところですけれども、古い方の健康保険から新しい健康保険に切り替わるとき、前者から発行されている健康保険証をやむを得ず使ってしまった、そういう場面もあるでしょう。

被保険者資格を取得する手続きをしても、健康保険証が届くのは1週間ぐらいかかりますから、その間に病院に行かなければいけないとなった時に、以前の健康保険の保険証を使ってしまったとなると、資格喪失後の給付になりますから、後ほど療養費の手続きが必要になります。 

例えば、3月31日で国民健康保険の被保険者資格を喪失した人が、翌日の4月1日に医療機関に行って、国保の保険証を出して治療を受けたらその後どうなるか。被保険者資格は3月31日で喪失してるけれども、国保の保険証がまだ手元にあるので、翌日の4月1日にそれを使って病院に行った場面です。

なお、3月末の段階で、国民健康保険から協会けんぽへの切り替えが終わっており、4月1日からは協会けんぽの被保険者資格を取得しているとします。

本来ならば協会けんぽの健康保険証を使って病院に行くところですけれども、4月1日の時点では、まだ保険証が手元になかったため、国保の保険証を使って病院に行きました。

このとき、国保の健康保険証が使えないかというと、国保の保険証で保険診療を受けることができます。法律上は被保険者資格を喪失しているので、保険診療を受けることはできませんが、病院の窓口では保険証を提示すると、健康保険を使って治療を受けることができます。

4月1日の段階では、国民健康保険の被保険者資格は既に喪失していますから、窓口で国保の保険証を使えたとしても、後ほどその保険で給付されたものは返還する必要があります。

この返還に関する通知ですが、市町村からすぐに連絡が来るということはなくて、資格喪失後の利用から半年ぐらい経過した段階で、郵便で医療費の返還についての連絡が届きます。

健康保険が使えないところを保険証を使って、診療ないし治療を受けたわけですから、その費用は市町村に返還しなければいけないのです。

現金で市町村に支払って、そのあと4月1日から被保険者資格を取得した協会けんぽの方に療養費を請求する。この2つの手続きが必要なのかと思えるところです。

市町村に保険診療分を現金で振り込む形で返還し、その後、同じ金額を協会けんぽの方に療養費として請求するとなると、手続きが煩雑ですし、めんどくさいと感じて放置する人も出てくるのではないでしょうか。

では、実際に実務でどのようなことが起こるかというと、市町村から保険診療分の返還について連絡が来て、その郵便の中に、協会けんぽ向けに「療養費請求書」と、その「療養費を国保の運営側である市町村が代理で受領することへの同意書」この2つが同封されています。実際の文書は『国民健康保険資格喪失後受診に伴う返納金清算に係る同意書(兼 委任状)』という名称です。

協会けんぽに療養費を請求する書面と、その療養費を国保側が代理で受領する。この書面を市町村に送ると、国保と協会けんぽとの間で療養費のやり取りをしてくれます。その結果、加入者側で療養費の返還(立て替え払い)と療養費の請求という2つの手続きをやる手間を省くことができるようになっています。

面倒な手続きを加入者にさせると、回収不能になる可能性が高まり、厄介ですから、国保と協会けんぽの間で療養費をやり取りして、確実に回収できるようにしているのですね。

被保険者資格を喪失した後に、健康保険証を使ったとき、新たに別の健康保険に加入できているならば、以前の健康保険制度と新しい方の健康保険制度で、療養費のやりとりを代わりにやってくれるという形で便利な手続きができるようになっているわけです。 

 

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