- 技術が進歩しているのに、働く時間は週40時間のまま
- 人が業務に関わる時間を減らしていく
- 週4日勤務を実現する方法
- 柔軟な週4日勤務を実現する仕組み
- 業務の繁閑に合わせて時間配分を変える
- 法定労働時間を週32時間に変えるのか
「週4日勤務」を試験導入したら──従業員の熱意が上がり、ストレスは減少:研究結果
西欧社会で工場で働くことが雇用の基本形態となった時代、週の休日はキリスト教の安息日である日曜日の1日だけだった。1日8時間労働と週休2日という現在のかたちは、20世紀になって米自動車メーカーのフォードなどが導入したことで広まった。これはもともと、休日が増えることで消費行動が活発化し、経済に寄与するという理由で取り入れられた制度で、同時に十分な休息を取ることで労働者の生産性を保つことができると考えられていた。
技術が進歩しているのに、働く時間は週40時間のまま
週4日勤務して、休みは週に3日。
これに憧れる人がいたり、望む人もいるのでしょう。
法律で決まっている法定労働時間は、1日あたりでは8時間、1週あたりだと40時間です。
この法定労働時間を軸にして、会社ごとに所定労働時間を決めています。
多くの会社では、1日8時間勤務で、1週間に40時間働く。これが当たり前だと思われていますけれども、本当に週40時間も必要なのかどうか。
ロボットだ、AIだと話題になりますが、そういうものが世の中に出てきているなら、人間の働く時間はもっと減ってもいいはずですよね。
人が業務に関わる時間を減らしていく
新しい新幹線であるリニア中央新幹線に乗れば、品川から名古屋まで40分。
さらに、新大阪まで60分で到着できるとのこと。
ファーストリテイリングとダイフクが協力して有明に物流倉庫を作ったニュースが報道されましたが、なんと90%も省人化できたとのこと。
「ユニクロ」が最先端物流センターの内部を初公開 柳井社長が「2〜3年で世界中で全自動化を進める」
つまり、以前は10人でやっていた仕事が1人でできるようになったわけです。
これ、ニュースで見たとき「こりゃあ、スゲーな」と驚いたんです。
省人化率90%はインパクトがありますよ。
ニュースを報道する人はサラッと話していましたけれども、「技術でここまでのことができるのか」と心の中で称賛していましたね。
人間がピッキングや梱包をすれば、時間がかかるのはもちろんですが、作業中に怪我をする人もいるし、棚から物が落ちてきて当たるなんてことも。
有明の倉庫では、天井まで保管庫を置けるようで、人間が作業をしていたら、こうはいきませんからね。
物が上から落ちてきても、人がいなければ怪我をする人はいませんし、機械が少し故障するぐらいで済みます。
こういうことができるなら、もう週40時間も労働時間は要らないんじゃないか。
そう思うのです。
他にも、施設の夜間警備をロボットやドローンに任せるのも良いですね。
センサーとカメラを付けた巡回ロボットが、夜間、人がいなくなったビルの中を見て回っていく。
ロボットから送られた映像は人間がチェックして、問題を発見した場合は人間が現場に行く。
こういう形の警備にすれば、人間の時間をずいぶんと節約できるでしょう。
懐中電灯を持って、建物の中を歩いて行く必要はありません。
アミューズメントパークの夜間警備なら、陸上だけでなく、ドローンで空からビデオ撮影もできます。
人がいませんからね、夜なら。
沿岸部では漁業資源(主にナマコ)を密漁する人たちに頭を悩ませているようですが、これもドローンで空中警備をしておけば、犯人を捕まえやすいのではないでしょうか。
夜間の清掃もロボットに任せられる仕事です。
業種によっては、お店の営業が終わった後、業者に依頼してフロアを掃除してもらうのですが、これをお掃除ロボットにやってもらえば、お店の人間だけで夜間清掃ができます。
営業が終了した後、フロアを巡回して床を掃除し、終わったら充電場所まで戻ってくる。
ルンバは家庭用の掃除ロボットですが、業務用にもう少し大きめのものを作ればいいでしょう。
業者が毎日掃除するわけにはいきませんが、ロボットならば、営業終了後、毎日、掃除をしてくれます。
大型ショッピングセンターは面積が広いですから、人間が掃除をするとなると時間も手間もかかります。
しかし、掃除ロボットならば、営業じていない深夜時間に毎日掃除してくれます。
さらに、掃除ロボットにセンサーとカメラを搭載すれば、警備も同時にやってくれるでしょう。
警備と掃除を深夜に毎日やってくれる。一石二鳥です。
そういうロボットが売り出されれば、ショッピングセンターを運営している事業者ならば購入するでしょう。
週4日勤務を実現する方法
労働時間を減らさないまま週4日勤務を実現するならば、難しいことではありません。
1日10時間勤務で、週4日出勤にすれば、週40時間の所定労働時間は維持できます。
1日8時間を超えると割増賃金が必要ですが、変形労働時間制を導入して、法定労働時間の時間配分を変えれば、割増賃金無しで週4日出勤が可能です。
ただ、この方法だと、「それじゃあ今までと一緒じゃないの?」と言われかねないところ。
トータルでの労働時間は同じですからね。
休みは週休3日になるのですが。
1日10時間勤務で、週4日出勤だと、法定労働時間に縛られている状態のままです。
そのため、「時間配分を変えただけで朝三暮四ではないの?」と言われてしまうんですね。
法律を変えて、法定労働時間を週40時間から週32時間に変えたらどうなるか。
週32時間を上限にすれば、所定労働時間もそれに連動して減り、週4日勤務で1日8時間、週5日勤務で1日6時間+α、という形に変わります。
しかし、政府が法律を改正して、法定労働時間を短縮する可能性は高くないですから、企業毎に工夫する必要があります。
柔軟な週4日勤務を実現する仕組み
週4日勤務を実現するだけならば、先程のように変形労働時間制でもって1日10時間勤務週4日出勤と固定するといいでしょう。
ですが、変形労働時間制はその名の通り、「変形」するところに利点がある制度です。「1日10時間勤務で、週4日出勤」と固定するように変形労働時間制を運用する必要はないんです。
何を変形するのかというと、【法定労働時間を変形させる】のです。
法定労働時間は、1日8時間、1週40時間、と固定されていますが、この固定を解除して、時間配分を変更できるようにするのが変形労働時間制です。
月曜日は5時間勤務だけど、木曜日は10時間勤務。
この場合、木曜日は8時間を超えていますが、月曜日と時間を融通すると、1日あたり7.5時間になり、8時間を超えていません。
変形労働時間制を運用していると、木曜日は7.5時間労働になり、法定労働時間を超えていないという扱いになるのです。
月曜日は5時間勤務ですから、法定労働時間まで3時間の余裕があります。
この余裕を木曜日に回しているというわけです。
それを実現するのが【変形労働時間制】なのですね。
業務の繁閑に合わせて時間配分を変える
1日8時間で法定労働時間が固定されていると、業務の繁忙状況に合わせて働きにくいのです。
変形労働時間制で、法定労働時間の時間配分を他の日や他の週と融通できれば、上の例のように労働時間をコントロールできます。
ただし、当日になって、コロコロと働く時間を変えるのはダメです。
月曜日は5時間勤務と勤務シフトで決めていたところ、当日になって、急遽これを9時間勤務に変えてしまうと、その場合は原則どおり8時間を超えた時間に対して割増賃金が必要です。
事前に勤務時間の配分を決めておくことを条件に、法定労働時間の枠を融通できる。
これが変形労働時間制なのです。
例えば、1ヶ月分の勤務シフトを作成するときに、今月の1週目は週50時間勤務にするけれども、その代りに2週目は週30時間勤務に減らしておく。
こういう変則的な勤務シフトを組めるのが変形労働時間制の良いところです。
1週目は40時間を超えていますけれども、2週目が30時間ですから、10時間の余裕があります。
その余裕を1週目に回しているため、1週目では法定労働時間を超えていないと扱われるのです。
事前に、この週は50時間勤務、この週は30時間勤務、と決めておかないといけませんが、時間配分を変更できるという利点があります。
事前に日毎、週毎の勤務時間を決めておく(勤務シフトを作成する時点で決める)という点が大事で、当日になってコロコロと時間を変えてはいけません。
ここは、変形労働時間制を運用する際の最重要ポイントです。
毎週40時間で固定してしまうのではなく、業務に合わせて時間配分を変えておく。
それが可能になるのが変形労働時間制なのです。
完全に週4日勤務に固定せず、柔軟に働く時間を変化させていきたい。
そういう要望には変形労働時間制が合っています。
この変形労働時間制は、労働基準法にも定められている制度で、公式な仕組みです。
この日は忙しくなる。この日はあまり忙しくない。
この週はお客さんがたくさん来る。この週は暇だろう。
業務の繁閑をある程度予測できる商売ならば、変形労働時間制で時間配分を変えるのは有効です。
一方、繁閑を予測しにくい商売には馴染みにくい制度でもあります。
土日祝日が忙しくなるならば、そこに時間を多めに配分して、平日は少なくするのもいいでしょう。
月末が忙しいならば、月末に時間を回して(1日11時間や12時間にする)、それ以外の日は勤務時間を短めに(1日5時間、6時間に)しておく。
他にも、
- 節分は仕事が多い。
- クリスマスシーズンだけ忙しくなる。
- お盆の時期は忙しい。
- 年末年始は目が回るほど忙しい。
そういう商売にも変形労働時間制は向いています。
忙しい時期がハッキリと分かる商売には変形労働時間制がオススメです。
変形労働時間制については、『残業管理のアメと罠』で詳しく説明していますので、そちらも参照ください。
法定労働時間を週32時間に変えるのか
公式に週休3日を導入するとなれば、法定労働時間を週32時間に変更しなければいけないでしょう。
法定労働時間は週40時間に設定されていて、1日8時間で週5日働くと、40時間ぴったりになります。
一週間に休日が2日あるのも、法定労働時間が週40時間であることに足並みを揃えるためであって、休みが2日で、出勤日が5日、それで1日あたりの所定労働時間が8時間だと、法定労働時間である40時間と帳尻が合うようになってます。
週休3日にするとなると、それだけ労働時間が減りますから、1日8時間が所定労働時間だとすると、1週間あたりでは32時間になります。
法定労働時間を変えずにそのままにするなら、週40時間の範囲内で、週休3日だと、1日あたりの法定労働時間を10時間にすることができます。
変形労働時間制を導入すれば、週休2日から週休3日に切り替えることも可能です。これは以前から可能な方法です。
休みが1日増える代わりに、出勤日の労働時間が延びますので、1日10時間で労働するという前提ならば、週休3日を導入することは可能です。繁忙日に出勤にして、閑散日は週3日で休みにする。忙しい日や時間が予め分かっているなら、変形労働時間制は有効です。
法定労働時間が週40時間という形で固定されていますから、その時間に合わせて所定労働時間が決められてしまう傾向があります。労働時間を週20時間にするにはどうするか。週30時間で仕事を終わらせるにはどうするのか。このような議論がなかなかされないのが実情です。
1日8時間が所定労働時間だとしても、その8時間でみっちり仕事をしている人というのは少数派ではないかと。仕事の時間中であっても、談笑することはあるでしょうし、仕事以外のことに時間を使うこともあるでしょう。ほとんど休憩みたいな状態になっているけれども勤怠上は労働時間に含まれているとか。
労働時間が8時間であるとしても、仕事の密度というのは均一ではないでしょうから、週休3日を実現する余地はあるのではないかと。