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36協定が必要な残業と36協定が不要な残業

 

3月6日を「36協定の日」とするよう申請するみたいですね。

36協定の周知・浸透に向けキャンペーン「Action!36」を展開/連合の中央委員会

  • 36協定を締結していない。
  • 締結しているけれども、協定で決めた上限時間をオーバーしている。

こういう事業所が法令違反の事例として多く挙げられていますから、36協定への理解を深める取り組みも必要なんでしょうね。

法令違反している会社に遭遇する確率は65.9%。

 

 

36協定で設定する残業の上限時間は何時間がいい?

法定労働時間を超えて残業するには、36協定を締結して届け出る必要があります。協定では時間外労働の上限を設定するのですが、この設定時間をどうするかが考えどころです。

36協定を出せば、何時間でも残業できるというわけではなく、協定で決めた時間数までに制限されます。1日あたりでは何時間まで延長できるのか。1ヶ月あたりでは、1年あたりでは。期間ごとに延長できる時間(残業する時間)を決めるのが36協定の中身です。

法律で許容されている残業時間の限度は、月に45時間、年間で360時間なので、この範囲内で36協定での時間数を設定します。

毎月、ずっと45時間の残業を続けると、年間で540時間になり、360時間を超えてしまいます。

年間の上限を超えず、月間の上限も超えないようにするには、1ヶ月の残業時間は30時間までに設定します。仮に月30時間を12ヶ月続けたとしても360時間なので、法定ラインは超えません。

月30時間が上限とすると、1ヶ月に21日出勤するとして、1日あたりの残業は1時間強までが妥当な水準です。

36協定には1日あたりの延長時間も記入しますから、ここで1時間と書いておくと、月30時間を超えることはないでしょう。

1日あたりでは1時間まで。1ヶ月では30時間まで。1年間では360時間まで。この時間設定で36協定を締結して、実際の運用段階でも協定で決めた時間数を超えなければ、残業の時間管理に関しては問題ありません。

ただ、上記のように設定すると、上限による縛りがキツイですので、例えば1日あたりでは3時間に設定し、月30時間の上限を超えないように時間を管理していくのもアリです。

法定時間外労働がどれぐらい発生しているかどうかは会社ごとに違うので、36協定で設定する時間数もそれぞれ違います。

しかし、あえてこの時間数と言うならば、「1日あたりでは1時間まで。1ヶ月では30時間まで。1年間では360時間まで」という設定を私ならば示します。つまり、1日だと合計9時間労働まで可能ですし、1ヶ月だと、月に170時間がベースとすれば、そこに30時間が乗って、月200時間労働までとなる。

この時間数ならば、示した時間数の範囲内で残業している限り、36協定違反は起こりませんし、法律で決まった残業の上限も超えません。つまり、確実に安全なラインです。

さらに、どれだけ残業をして良いのかという基準が分かりやすいのも利点です。


http://www.sanno.ac.jp/research/fresh2017.html
2017年度新入社員の会社生活調査


上記の生活調査では、1ヶ月に30時間以上の残業を許容できない人が男性で62.7% 女性で79.8%とのこと。

じゃあ、残業そのものはイヤなのかというと、完全に残業なしを望む人は僅か2%程度です。つまり、ある程度の残業は許容しているのです。この「ある程度」がどれほどなのかが分かりにくいところですが、MAXで月30時間までは良いらしいとすれば、先ほどの1ヶ月30時間の設定は現実的です。

なぜ、残業はなくならないのか(祥伝社新書)

なぜ、残業はなくならないのか(祥伝社新書)

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ありがちなトラブルとしては、36協定を締結して届け出ているけれども、協定で決めた時間数をオーバーしてしまい、労働基準監督署から指導を受けるケースです。

自分の会社が締結している36協定の内容を知っている方はどれだけいるのでしょうか。残業が可能な時間数を知っている方がどれだけいるか。おそらく社員の半分以上の方は知らないかと思います。

36協定というのは、締結して届け出たらそれで終わりというシロモノではなく、そこで決めた時間数の範囲内ならば残業が可能ですよ、という労使協定です。この決めた時間数を知らないまま、仕事をしていると、設定時間をオーバーしてしまうわけです。

協定で決めた上限時間数を忘れないようにするには、勤務時間を管理する台帳に上限時間数を書いておくとか、紙に残業の上限時間を印刷するなりしてタイムカードを置いている場所に掲示しておくなど、普段から目に入る場所に上限となる時間数を示しておくのが良いです。

36協定の中身であれ、残業の時間数を掲示するであれ、「分かりやすさ」がポイントです。

 

 

残業代を支払えば、何時間でも残業は可能、、、というわけではない。

「残業代を支払えば、残業をしてもいい」こう考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、法律で決まった時間枠を超えて仕事をすると残業なので、割増賃金である残業代が必要です。

しかし、事前に手続きをせずに、残業を社員さんにさせると、残業代をキチンと計算して正確に支払っていても労働基準法36条違反になります。

「えっ!? 残業代を正確に支払っているのに違法なの?」と思われるかもしれませんが、違法なのです。

残業代を支払って残業するには事前の準備が必要です。それが36協定(サブロクキョウテイ)なのです。

本来は違法行為である残業をOKにする効果を持つ、言うなれば「残業の許可証」のようなものが36協定なのですね。


 

 

残業の時間には上限がある。

「じゃあ、事前に36協定の手続きをして、残業代を支払えば、何時間でも残業は可能なの?」というと、そういうものではないのです。

残業できる時間には限度があって、「延長時間の限度」という基準が定められています。

時間外労働の限度に関する基準(厚生労働省)

厚生労働省のウェブサイトに掲載されているPDFファイルの2ページ目、チェックポイント2という部分に延長時間の限度について書かれています。その部分を見ると、1ヶ月で可能な残業は、45時間までです。

つまり、基本となる所定労働時間が1ヶ月で160時間だと仮定すると、そこに上乗せして45時間まで残業ができますよ、という意味です。

さらに上記のPDFファイルには「特殊な36協定」について紹介されています。この特殊な36協定を利用すると、限定的ですが、さらに延長時間を延ばすことができます。この点について詳しく知りたい方は、ファイルを読んでいただければ良いでしょう。

今回のポイントは、

「残業をするには事前の手続きが必要」
「残業の時間には上限がある」

この2点です。

上記の2点だけを知っておけば、労働基準法36条に違反する残業をしてしまう可能性を低くできます。

サブロク、サブロクと聞くと、「難しそう、、」と思ってしまいますが、要点は上記の2つだけですから、知ってしまえば難しくありません。

 

 

36協定の上限時間 何時間まで残業できるかを把握している人はどれぐらいいるのか。

残業というと、決まった時間を超えて仕事をすることを意味しますが、労務管理では残業は2種類あります。

例えば、10:00から15:00までが勤務シフトとして決まっていたところ、15:30まで仕事の時間が延びた場合。これは残業なのかというと、確かに一般的な意味では残業ですよね。決まった時間を超えて仕事をしているわけですから。

しかし、残業代(法定時間外労働に対する割増賃金のこと)が出る残業というのは、1日8時間を超えて仕事をした場合を意味します。上の例では仕事の時間は5時間30分ですので、残業代が出る残業ではないのですね。

仮に、10:00から19:30まで仕事をすれば(休憩が1時間あると仮定)、仕事の時間は8時間30分ですので、8時間を超えた30分は残業代が出る残業となります。


36協定では時間外労働が可能な時間数を決めますので、この労使協定を見れば1日あたり何時間まで残業できるのか。さらに、1ヶ月あたりだと何時間まで。1年あたりでは何時間。という時間数が決められています。

36協定は労使協定ですから、企業ごとにその内容は異なります。1日2時間まで残業ができる職場なのか、1日4時間までOKな職場なのか。それは個別に締結した協定を見ると分かります。


労働基準法106条では、36協定の内容を労働者に周知する義務があり、何時間まで残業が可能なのかを会社が知らせておかないといけないんです。

では、自分が働いている職場で適用されている36協定の内容を知っている人がどれだけいるのか。私の想像ですが、社員数が100人の会社で、労使協定で決めた、残業が可能な時間数を知っている人は10人もいないのではないかと。


労働時間関連の違反で多いのは、36協定で決めた時間数をオーバーするケースです。一例としては、1日2時間を上限に決めているところ、実際は1日5時間の残業をしていたというものです。

協定で決めた上限時間を知っていたのか、それとも知らずに過ごしていたのか。それは分かりませんが、36協定の中身が社内で共有されず、協定を締結しておけば、何時間でも残業はできるという誤解が生じているのではないかと思います。

労使協定をコピーしてファイルに綴じ、いつでも見れるようにしておく。これで周知はできますし、残業の上限時間数を給与明細に記載しておくとか、タイムカードの近くに掲示しておくとか、普段から残業は何時間までと分かるようにしておくのが良いですね。


残業に対する意識がなぜ緩いのか不思議に思うところですが、後ろめたさというか、ペナルティのようなものを感じにくいのが原因の1つではないでしょうか。

例えば、どこかに何らかの製品を作っている会社があって、今週中に発注者へ納品しないといけない製品があるとしましょう。今週中に納品しないといけないのに、翌週にズレ込んで納品したら何が起こるでしょうか。

「ええで、ええで、遅れてもええんやで」とニコニコしながら発注者は許してくれるでしょうか。おそらくそれはないはず。

「先週中に納品するって決めたやないか。今週に持ってこられても意味ないんやで」、「もう、アカン。あんたのところはアカン」という感じでカンカンに怒るでしょうね。

これと同じなんです。残業は。

納期までに仕事を終える。時間内に仕事を終える。この2つは同じです。

残業が多い会社に何かを注文したら、納期を破ってくるんじゃないかと疑われかねませんから、ホント、良いことはありませんね、残業には。

36協定を締結すれば無制限に残業できる、わけではない。残業代をチャンと払っていたとしても。

http://www.sankei.com/affairs/news/170626/afr1706260027-n1.html
日経新聞に是正勧告、残業時間を超過 中央労働基準監督署

 日本経済新聞東京本社(東京都千代田区)が社員に長時間労働をさせていたとして、中央労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが26日、分かった。勧告は5月30日付。

 日本経済新聞社によると、是正勧告を受けたのは同本社の総務・経理部門などで、社員に労使協定で定めた残業時間を超過する長時間勤務をさせていたという。

 

法定労働時間を超えて残業するには36協定を締結する必要があります。この点はご存じの方も多いはず。

残業代をキチンと払うだけでは十分ではなく、36協定を締結することも必要です。この点ですでにアウトな会社もありますが、ここは手続きの段階なので、キチンと労使協定を締結して、書面を労働基準監督署に届け出れば解決できます。

時間外・休日労働に関する協定届(36協定) | 東京労働局



書類のサンプルは東京労働局のウェブサイトにありますので、まだ36協定を締結して届け出ていないならば参考にして下さい。


日経新聞での出来事ですが、「労使協定で定めた残業時間を超過する長時間勤務をさせていた」という部分が問題の中心部分です。

36協定はキチンと締結しているようですが、そこで決めた時間外労働の時間数をオーバーして是正勧告を受けたということです。

36協定には確かに法定労働時間を超えて残業を可能にする効果はありますが、無制限に残業できる効果はありません。「割増賃金(残業代)を正しく支払っていれば問題ないだろう」と思う方もいらっしゃるでしょうが、残業の時間数には上限があります。

協定の中で、例えば、1日あたり3時間。1週間あたりでは17時間。1ヶ月あたりでは40時間。というように、会社ごとに36協定で時間外労働の上限時間を決めます。ここで決めた時間の範囲内で残業が可能になるのであって、これを超えてしまうと今回の日経新聞のように是正勧告の対象となります。



協定で設定した上限時間を知らずに労務管理をしていると、1日3時間までなのに5時間の残業をしたり、1ヶ月40時間までなのに残業時間が57時間になったりします。

残業が可能な上限時間数が何時間に設定されているのかを知らずに働いている方も多々いらっしゃるかと思いますが、1日あたりでは何時間まで。1週間、1ヶ月あたりでは何時間まで。この具体的な時間数をすぐに確認できるところに表示しておくと良いでしょう。

例えば、タイムカードを置いている場所に、残業が可能な時間数を掲示しておくとか。他には、給与明細の備考欄に表示して上限時間をアナウンスしておくとか。普段から何時間まで残業は可能なのかを知る機会を作っておけば、その時間数の範囲内で勤務時間を調整できますから、今回のような是正勧告を回避できます。


今回は、労使協定で定めた時間外労働の上限時間数を知らないまま、是正勧告に至ってしまったというのが実際のところだと私は推測します。おそらく故意ではなく、過失なのではないかと思います。

日経新聞だけで起こることではなく、36協定で決めた時間数をオーバーする事例は他社でも多いですので、残業が発生する職場ではどこでも同じことが起こり得ます。


36協定で設定されている時間数を知っている方は、どこの会社でも多くはないと思われますので、1日あたり、1週間あたり、1ヶ月あたり、これらの期間での残業が可能な時間数を分かりやすく示しておくのが対策となります。

 

 

36協定がなければ残業できない、というわけでもない。

「残業するには36(サブロク)協定が必要」

と理解している方もいるでしょう。


確かに、
残業するには、
36協定を事前に締結してないといけないのですけれども、

「36協定無しで実施できる残業」
もあります。


「残業」と言っても、種類は1つではないのです。


残業の定義は、
【規定の勤務時間のあと,さらに残って仕事をすること】
と辞書には書かれています。


例えば、

10時から16時まで仕事をすると予定していたところ、
何らかの事情で16時30分まで仕事の時間を延長したとしましょう。


この場合、

16時から16時30分までの30分間は残業です。

残業なのは間違い無いのですけれども、
36協定が必要な残業なのかというと、そうではないのです。

 

 

他方、

10時から19時まで仕事をすると予定していて、
業務上の理由により、19時30分まで時間を延長したとしましょう。

休憩が1時間入ると考えて、
勤務時間は8時間30分になります。


この場合、

19時から19時30分までの30分間は残業です。

では、36協定が必要かどうかというと、
このケースでは36協定を締結しておく必要があります。

 

どちらも残業の時間は30分ですけれども、
前者では36協定がなくても実施できますが、
後者の残業は36協定が必要です。

 

プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術

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36協定が必要な残業かどうかの境目。

1日8時間以内
1週40時間以内

この法定労働時間の範囲内ならば、
36協定無しで残業は可能です。


ただし、雇用契約書で、

「所定時間外労働が発生する場合がある」
「所定の時間を超えて業務を続けるよう指示する場合がある」

という類の内容を書いておく必要があります。

これがなければ、
契約で決めた時間を超えて働いてもらうことはできません。

もし、所定労働時間を超えて勤務すると、雇用契約違反になります。

 

1日8時間を超えないならば、
36協定を適用せずとも残業は可能です。

しかし、

勤務時間が1日8時間を超えた場合は、
36協定を適用しないと残業できないのですね。

 

勤務時間が

1日8時間以内
もしくは
1週40時間以内

であれば、36協定を適用することなく残業はできます。


しかし、

1日8時間を超える
もしくは
1週40時間を超える

ならば、事前に36協定を労使間で締結して、
労働基準監督署に書面を提出しておく必要があります。


ここで、

「じゃあ、法定労働時間を超えないならば、
36協定を出さなくていいの?」

と思う方もいらっしゃるでしょう。


確かに、法定労働時間を超えないならば、
出さなくてもいいのですけれども、

36協定を締結したからといって何か不利益があるわけではないですし、
業務上の都合で、法定労働時間を超えてしまう場合も
数ヶ月に1回ぐらい、もしくは1年に1回ぐらい発生するかもしれません。

そういう場合に備えて、
予防的に36協定を締結しておくと良いでしょう。

 

36協定を届出ていないという理由で
労働基準監督署から指導されるケースもありますから、
法定労働時間を超える残業をするかどうかは不明でも、
協定を締結して、届出ておくことをオススメします。

 

 

36協定があれば、どこまで残業できるのか。

労使協定ですから、
その中身は労使間で決めます。

何時間まで残業できるのか。その上限時間を決めるのが36協定です。


例えば、

時間外労働は、
1日2時間まで
1ヶ月では25時間まで

と36協定で決めたとします。


では、この内容の協定だと実際はどこまで残業できるか。


1日単位では2時間までですから、

これは
「法定労働時間を超えて2時間」
と解釈します。


法定労働時間は1日8時間で、
そこから2時間の時間外労働が可能となり、
最大で1日10時間まで働けます。


また、

1ヶ月単位だと25時間が上限時間ですから、

1日8時間勤務で、月に21日出勤したとして、
労働時間は月168時間になります。

ここに36協定で決めた25時間の枠が上乗せされ、
1ヶ月に193時間まで働けるわけです。

 

先程の例で書きましたが、

【10時から16時まで仕事をすると予定していたところ、
何らかの事情で16時30分まで仕事の時間を延長した】

この場合は、
8時間を超えていないため、

残業時間の30分は、
36協定で延長できる1日2時間の中には含めません

 

この人の場合は、
途中に休憩が1時間入ると考えれば、
最大で21時まで働くことが可能です。


36協定が必要なのは、
19時から21時までの2時間であって、
16時から16時30分までの30分には必要無いのです。

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