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残業しなくても残業代が出る固定残業代制度

http://www.sanyonews.jp/article/472548
はるやまが「ノー残業手当」導入 4月から、健康配慮し業務効率化

 スーツ販売の子会社・はるやま商事(同)と合わせた計約1200人(課長級以上を除く)が対象。残業時間ゼロの社員に月額1万5千円を支給する。残業した社員についても、残業代が1万5千円に満たない場合は、手当と同額になるよう差額分を支給する。

 手当の総額は年間1億8千万円を見込む。両社の社員1人当たりの平均残業時間は月10時間半で、制度導入により残業代を年間8千万円圧縮できるとみている。


残業しなくても残業手当を支給し、残業しないことに対するインセンティブを用意するのが狙いです。

今までだと、残業しなければ何も無く、残業した場合は割増賃金が支給されていたため、残業することに対するインセンティブはあったものの、残業しないことに対するインセンティブはありませんでした。


ノー残業手当と表現されていますが、いわゆる定額残業代と同じです。一定額の残業代を定額で支払い、給与を計算する際に、不足分があれば追加で支払う。

ただ、定額残業代という名称を使わないのは賢明な判断です。定額残業代に対するイメージは良いものではなく、「残業代を未払いにするつもりなんじゃないか」、「定額支払いにして、残業をやり放題にするつもりなんじゃないか」、「割増賃金をケチるために導入したんじゃないか」などと邪推されがちです。

スマホの料金のごとく、毎月、一定額を支払えば使い放題という感覚で残業代を定額化すると、割増賃金の未払いが発生します。例えば、毎月5,000円だけ支払って、後は残業し放題なんてことになると、それはアウトです。

残業手当を定額で支払うならば、何も定額残業代という名称にこだわる必要はありません。例えば、「定時退社奨励手当」という名称でもいいですし、ノー残業手当という名称も、もちろん可能です。

「残業」という名称が入っていなくても、法定時間外労働に対する割増賃金として取り扱えます。なぜならば、実態判断を優先するのが労働基準法だからです。箱は何であれ、中身が重要なのです。


月額15,000円を定額で支給して、不足が生じた分は追加で支払う。これがはるやまのノー残業手当です。

・1ヶ月間の残業代が6,000円だった場合、この場合は15,000円を支給します(残業せずに9,000円を余分に手にできます)。

・1ヶ月間の残業代が13,000円だった場合、この場合も15,000円を支給します(残業せずに2,000円を余分に手にできます)。

・1ヶ月間の残業代が21,000円だった場合、この場合は21,000円を支給します(定額分の15,000円を超えているので、不足分の6,000円を追加で支払います)。

・1ヶ月間の残業代が0円だった場合、この場合は15,000円を支給します(残業を全くせずに丸々15,000円を手にできます)。


収支としては、年間で1億8千万円が出ていき、圧縮できる残業代が8千万円です。単純な収支では1億円の支出超過ですので、会社が損をしているような感じがします。


しかし、残業が減る効果として、

  1. 人の流出が減り、採用時の教育コストが減る。
  2. イメージアップによる企業評価。
  3. ニュースとして取り上げられた宣伝効果。
  4. イメージアップにより、求人する際のコスト低下。

などが見込めます。

これらを年間1億円で買うと考えれば、必ずしも高い買い物ではないと思います。

この程度の施策でもニュースとして採り上げてもらえるのですから、先行者利益を得るならば今がチャンスです。先に取り組んだほうが宣伝効果が高いですから、過労死や残業代未払いなどが注目される今なら早い者勝ちです。



小銭を捨てて、大銭を節約する。これは商売の基本です。

入ってくるキャッシュよりも出ていくキャッシュを減らす。その結果、手元に残る利益が増える。


今回の施策も、あえて手当を出すことで、長期的な視点で手当を減らすのが狙いです。1億円で1億8千万円を買うようなイメージです。短期的には損をする感じがしますが、中長期的にはプラスになっていく。

千円を捨てて、一万円を拾うような労務管理ができれば言うことなしです。

残業代を未払いにしてケチるようだと、これは「一万円をゴミ箱に捨てて、目の前に落ちている千円を拾う」ようなものですから、後から損をするのは明らかです。

プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術

プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術

  • 作者:小室 淑恵
  • 発売日: 2018/09/06
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残業代もネット使い放題のようにできる?

飲食業界の「長時間労働とサービス残業」がなくならない理由
http://nikkan-spa.jp/708422

( - 引用開始 - )
「飲食店は客待ちの待機時間が多いので、経営者の本音は『接客時間だけが労働』です。例えば、月45時間とか月60時間の時間外労働の割り増し賃金をあらかじめ基本給に組み込む『定額残業代』を導入して人件費を抑える企業がかなりあります。最低賃金で換算している場合が多く、長時間労働でも労務コストが抑えられる『悪夢のサイクル』が完成します」
( - 引用終了 - )

飲食業界の「長時間労働とサービス残業」がなくならない理由 | 日刊SPA!



人件費を減らすために、定額残業代を導入する企業もあるようですが、どれほどのメリットがあるのでしょうか。

基本給に定額の残業代を含めたり、各種の手当に定額の残業代を含めたりと、色々な手法があるようですが、そのような手法を用いるからには、何らかの利点があるのかと思うところですが、果たしてどうなのでしょうか。


例えば、基本給の中に月20時間分に相当する残業代(法定時間外割増賃金のこと)を含めて支払っている会社があるとしましょう。その会社で働いている社員、内田さんの例で考えてみます。

内田さんは、毎月、基本給に月20時間分の残業代を含めて支払われています。この前提で、2014年9月に、法定労働時間外の残業を「14時間実施した場合」と「27時間実施した場合」で比較してみましょう。


月に、月14時間の残業ならば、定額残業代の枠である20時間を超えていません。一方、月27時間の残業だと、定額残業代の枠である20時間を超えています。

この場合、実際に支払う残業代はどうなるのか。この点が問題となります。

給与計算で時間外割増賃金を後から精算する必要がある二度手間な仕組み

まず、残業を月14時間実施した場合。この場合、定額残業代として支払われる残業代は20時間分ですから、実際に支払うべき残業代、14時間分相当をカバーできています。そのため、残業代の支払いに関しては問題ありません。

一方、残業を月27時間実施した場合。この場合、定額残業代として支払われる残業代は20時間分ですから、実際に支払うべき残業代、27時間分相当をカバーできていません。そのため、追加で、不足分である7時間分を支払う必要があります。

定額残業代に対するイメージは、おそらくスマホのパケット定額サービスのような感じで、一定以上の残業に対しては割増賃金を不要にできると思われているフシがあります。

確かに、スマホのデータ通信料金は定額ですから、ドンドンとデータ通信しても料金は増加しない。一定の通信量に達すると通信速度が遅くなったり、高速通信を維持するには追加料金が必要だったりと、選択肢がありますが、通信料金は定額制が標準です。

しかし、労務管理では、実際に残業した時間に対して割増賃金が必要で、「ウチの会社の残業代は定額だ。だから決まった額以上は支払わないよ」と剥れることはできません。


ここで、「じゃあ、定額残業代には何のメリットがあるの?」と思うはずです。その反応はマトモです。

定額枠を超過すれば追加で残業代を支払う必要がありますし、追加で残業代が発生する可能性があるのだから、勤務時間もキチンと把握しないといけない。ならば、最初から、その都度、残業代を計算する方が作業が少なくていいじゃないか。そう思えるはずです。

基本給や手当に残業代を組み込むのも、わざと残業代の内訳がわからないように煙幕を張るためではないかと疑われかねず、社員から不審がられるでしょう。

とはいえ、残業代を定額で支払うことそのものは法律に違反していませんし、他の費目の中に残業代を含めるのも構いません。ただし、実際に発生した残業に相当する残業代はキチンと支払う必要があるので、ヘンな仕組みで残業代を支払っても、それが減るわけではありません。


わざわざ二度手間になる仕組みを導入する必要はないし、残業代が定額枠に達しなければ人件費をアップさせる仕組みにもなります。

ただ、残業代を多く支払ってもいいから、残業代を計算する手間を省きたい。そういう会社には合った仕組みかもしれません。実際に発生する残業時間よりも常に多く残業代の枠を設定しておけば、確かに若干ではあるものの手間を省くことも可能ではあります。

しかし、いずれにせよ、給与計算は毎月行うものですし、勤務時間の管理も行うのですから、定額残業代の仕組みで省ける手間は誤差程度でしかないでしょう。

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