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□□┃ 山口社会保険労務士事務所
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飛行機が欠航になり、冬の北海道から出られず出勤できなかったら。
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冬の新千歳空港をナメるな。
https://www.bengo4.com/c_5/n_5523/
冬休み最終日「飛行機が飛ばないんで、会社行けません」…欠勤扱いになってしまう?
去年、2016年の12月、23日、24日と、北海道では大雪が降り、新千歳空港発着の飛行機が軒並み欠航になりました。
1日だけの欠航ならば、ままあることなのですけれども、2日連続、中には3日連続で空港に缶詰状態になった人もいて、数年、もしくは10年に1回ぐらいあるかないかの事態。
しかも、クリスマスの時期にドンピシャで大雪になったものだから、当日に新千歳空港にいた人たちはさぞ大変だったでしょうね。
新千歳空港の冬というと、私も過去に経験があります。しかも1回じゃなくて、2回。
1回目は、2003年の2月中旬。その頃は私は大学生で、長い春休み(大学生の春休みは2ヶ月もある。夏休みよりも春休みの方が長いんです)でしたから、北海道へスノーボードに行ったのですけれども、羽田から新千歳空港への行きの飛行機は、天候は晴れで問題なく飛ぶことができたのですが、帰りが困ったことに。
新千歳空港から東京行きの便は、同空港の国内便としては最も多く、朝早くから夜多くまで便があります。そのため、スノーボードを満喫するため、夜の便で東京に帰ろうと座席を取っていた(確か20時40分に出発する便)ものの、吹雪いてきて欠航に。
夕方までの便は飛んでいたように記憶していますが、夜になると天候が悪くなり、夜の東京便は欠航になりました。
初めての経験で、どうして良いか分からない状態で、航空会社のカウンターでは、搭乗する便を振り替える手続きをして、泊まる場所についてはホテルの一覧表を渡され、自分で探すように案内されました。
「あれ? 飛行機が欠航になれば空港に泊まれるんでしょ?」と思うかもしれないが、欠航した便数が少ないと、空港が開放されないんですね。
去年、2016年12月の欠航は、23日や24日で、祝日でありクリスマスイブでもありましたし、欠航した便も多かったですので、もし空港を開放しなければ、周辺のホテルだけでは受け皿が小さくて宿泊できない人が出たはずです。6,000人ほど飛行機に乗れずに空港に滞留したようですので、この人数を泊められるほどの余裕は空港周辺には無いでしょう。そのため、夜通しで空港を宿泊場所として開放したわけです。
ただ、空港に泊まれれば宿泊費はタダですけれども、硬いコンクリートの床に毛布を敷いて寝たり、ベンチの上で寝たりと、環境は良くありません。ただ、ターミナルビルは4階まであり、1フロアあたりの面積は相当に広いので、雑魚寝ならば6,000人でも収容できます。
12月ほどの規模ではなく、数便程度の欠航だと、通常通りに空港は閉まります。ターミナルビルの閉館時間は23時で、その時間になるまでに空港を出ないといけない。考えてみてください。2月の北海道ですよ。日本でこれ以上寒い環境なんて無いんじゃないかと思えるほどの極寒でっせ。
外で居眠りなんてしようものならば、パトラッシュを追いかけて天国に行ってしまいそうなぐらいの勢いです。
「ぼく、もう眠いよぉ、、」なんて目を瞑ってしまったら、翌朝には冷凍ポークが出来上がります。
「空港に泊まればいいよね?」、「泊まれません」、「えっ?」
飛行機が飛ばなくなったら空港に泊まれるだろうと思っている方もいるでしょうが、それは時と場合によります。
2016年12月のように大規模な欠航が発生すれば、ターミナルビルを閉館せずに開放するのでしょうが、私の場合のように数便程度が欠航するぐらいだと空港には泊まれません。関西空港だと24時間開いているのですが、新千歳空港は24時間営業ではないのです。
となると、自分でホテルを探して泊まらないといけなくなります。もちろん、宿泊費は自己負担。航空会社が負担することはない。航空会社が雪を降らせているわけではないですから、欠航になって泊まる必要があるとしても、ホテルまで用意はしないのですね。
私が初めて新千歳空港で欠航を経験したときは、航空会社のカウンターで便を振り替える手続きを済ませ、宿泊先の一覧(30件ほど掲載されていました)が印刷されたA4サイズの紙を1枚渡されました。
「あぁ、このホテルに電話すれば宿泊できるのかな」と思い、航空会社から貰ったリストのホテルに何件か電話したところ、満室だと断られて、どうしたものかと途方に暮れていた。
でも、こういう場合は空港で夜を明かせるんじゃないかと思い、ターミナルビルの中のベンチに座ってしばらく休んでいると、ターミナルビルは23時で閉館だと放送でアナウンスがあり、これは困ったという状況になりました。
仕方なく外に出て(2月後半の北海道ですから、猛烈に寒い。しかも当日は吹雪)、タクシー乗り場で止まっていたタクシーに乗って、どこか泊まれる場所に行こうと考えましたが、目的地がないので、運転手の方に車内の無線で宿泊できるホテルを探していただき、本当に助かったのを覚えています。
その頃はまだスマホが普及していない頃でしたから、ケータイでチョチョイと検索してホテルを探すなんてことはできず、今考えると不便な時代でしたね。
丸腰で冬の新千歳空港に行くと、私のようになります。
これを読んでいるあなたに覚えておいて欲しいことが3つあります。
まず1つ目。
新千歳空港で自分が乗る飛行機が欠航になったからといって、必ずしも空港に泊まれるわけではないということ。テレビのニュースを見ると、「あぁ、飛行機が飛ばなければ空港で夜を明かせばいいのか」と安易に考えてしまいがちですが、空港が開放されるのは大規模に飛行機が欠航した場合だけ。
実際に新千歳空港で欠航を経験した人だと分かるところですが、経験したことがないと、「空港に泊まればいいや」と油断してしまいます。
私のように自分で泊まる場所を自己負担、自己責任で探さないといけない場合もあるので、この点はお忘れなく。
次に、2つ目。
冬に北海道に行くと飛行機が飛ばない可能性があるので、予め千歳市内のホテルを探してリストを作っておくこと。ネットで探せば、素泊まりで5,000円程度のホテルもそれなりにありますので、そういうホテルを事前にリストアップしておき、スマホなどに保存しておきましょう。
ホテル名と電話番号、住所、これらをスマホでメモしておくか、ホテルのウェブサイトをブックマークに登録しておくのも良いですね。
運悪く泊まることになったら、すぐさまリストアップしたホテルに連絡し部屋を確保する。これぐらいの準備は是非ともしておきたいところです。くれぐれも航空会社からの案内に期待しないように。
最後に3つ目。
自分が乗る飛行機が欠航する可能性がある場合は、事前にネットで別の座席を予約しておくこともできます。
空港のウェブサイトを見れば、予定通りに出発しているのか、遅延しているのか、それとも欠航しているのか分かります(「本日のフライト情報」から見れます)から、スマホで運行状況を調べて、状況によっては別の便の席を先に予約しておく。
席だけを先に確保しておいて、乗る予定の飛行機が欠航になったら、航空会社のカウンターで席を振り替えてもらい、予約しておいた別の便に乗る。座席の予約番号を伝えると、新しい便に振り替えてもらえます。
呑気に航空会社のカウンターから延びる行列に並んでもキャンセル待ちになるだけですから、まずはスマホなどを使って、航空会社のウェブサイトで席を探すのが先です。
そう考えると、欠航時に航空会社のカウンターの列に並ぶ意味というのは無いんじゃないかとも思えてきますね。搭乗便の振替手続きに限って言えば。
- 欠航時に空港で泊まれるとは限らない。
- 新千歳空港に近いホテルを予め探しておく。
- 振り替え便の座席を先に確保しておく。
冬の北海道に行く方はこの3点をお忘れなく。
2度目の欠航。
2度目の経験は、2015年の2月。この時も北海道へスノーボードに行ったのですが、その日は朝から雪と風が強くて、やや吹雪いている感じでした。とはいえ、「まぁ、この程度ならば飛行機は飛ぶだろう」と思って、予定通りシャトルバスに乗り、空港に到着。
到着したのが午前10時過ぎ。新千歳空港2階、国内線の出発フロアに行き、電光掲示板を見ると、私が乗るはずのJAL2502便が欠航。確か11:40分発の飛行機で、ターミナルビルに到着して「欠航」の文字を見た時は、「あんれまぁ、、」という気持ち。
ただ、午前中の便だったので、まだホテルを確保するには早い。2003年2月の教訓通り、千歳市内のホテルは調べてきていたものの、その伝家の宝刀を抜くのはもうちょっと先。
午後や夜の便に振り替える手続きをするべきところですが、これは今まで経験が無かったこと。欠航して、ホテルを探すというケースは経験したのですが、振り替えるのは今回が初めて。
私の航空券はパッケージツアーに組み込まれた特殊なチケットで、他の人と同じように便を振り替えられるのかどうかも分からなくて、ネットで別の便の座席を確保できるということすらも知りませんでした。
正規料金の航空券ならば振り替えも自由にできるのでしょうが、私の持っていた航空券は正規料金で購入したものではないため、他の利用者とは条件が違うのではないかと思ってしまっていたんですね。
そのため、なが~い行列ができている日本航空のカウンターに行くという方法しかその時は思いつかず、20分ぐらいは並びました。その後、やっと自分の番が回ってきて、他の便に振り替えてもらえることになりましたが、乗れるのは翌日の飛行機だけ。当日の飛行機は全部満席。
仕方なく、翌日の便に振り替えてもらったものの、「何とかならんものか」と悶々としていました。時間はまだお昼。ホテルに移動するには早すぎるし、こりゃあ困った。
しばらくすると、ツアーを申し込んだ旅行会社から電話で連絡があり、「いま、山口さんはどこにいますか?」と聞かれ、「新千歳空港です」と。
「実は、本日の17時50分発の伊丹空港行きの席を、山口様のお名前で確保しておりまして、そちらの便に振り替えるのはいかがでしょうか」と提案があった。私の予定では新千歳空港から関西空港に行くはずだったが、行き先が伊丹空港になってしまう。
う〜ん、今日帰るにはこれに乗らないといけない。関空にこだわると明日になる。
カウンターで振り替えた翌日の座席。さらに、旅行会社が手配してくれた今日の伊丹便。両方の選択肢があったが、やはり伊丹便で今日帰ることに。
関空便と伊丹便、2つの座席を確保している状況で、いわゆるダブルブッキングになっていますが、こういうことができるんですね。だから、後から不要な座席を開放する人も出てきて、それをキャンセル待ちする人もいるわけです。
支払いもせずに予約を受け付けたら、場合によっては空席のままで飛行機が飛んでしまうリスクもありますが、その辺も航空会社は織り込み済みなのでしょう。
他の便からの振り替えもあって、17時50分発の伊丹便は満席だったものの、無事、当日中に大阪まで帰れました。とはいえ、実際に飛行機が出発した時間は2時間ほど遅れて、19時40分だったと思います。
この時は、旅行会社の人が別の便の座席を予約してくれたのが決め手でした。
この日、「あぁ、席だけを予約できるのか」と初めて知りました。飛行機の座席を予約する時は、同時に支払いもしないといけないんだろうと思い込んでいたのですが、席だけを確保するのもOKのようです。
欠航になった時(もしくは欠航になることが予想されるとき)は、まず航空会社のカウンターの列に並ぶのではなく、ポケットからスマホを取り出し、他の便の席を確保するのが先。ただし、人が多い場所はネット回線も混雑しているので、人が少ないフロア、1階の到着フロアや4階フロアに行くと人は少なめなので、ネットに繋がりやすいです。
まずは航空会社の人に何とかしてもらおうと考えてしまいがちですが、先にすべきは席の予約。予約すると予約コードなり番号が発行されるので、それを航空会社のカウンターで伝えれば、便を振り替えできます。長い行列で待つこともありません。
また、ツアーパッケージに組み込まれた航空券であっても、欠航の時は他の利用者と同じように振り替えができます(追加料金は無し)。ただし、欠航しない場合には搭乗便の変更はできません。パッケージに組み込まれ、販売された航空券ですから、便を変更できるのは欠航時のみです。
さらに、ネット経由で飛行機の座席だけを先に予約し、それを振り替え便にすることもできます。
経験しないと分かりませんよね、こういうことは。
有給休暇を充当するのが妥当な対処法。
話が長くなりましたが、本論に戻しましょう。
飛行機が飛ばないし、職場に行きたくてもいけないのだから、どうしようもない。まさか歩いて新千歳空港から東京まで行くわけにもいきません。
「北海道新幹線に乗って東京まで行けば?」と無茶振りする人もいるでしょうが、そう簡単にはできないことです。
飛行機から新幹線には振替ができませんし、航空券をキャンセルして新幹線のチケットを買うという方法もありますが、追加の費用が発生しますし(会社が負担してくれるの?)、12月後半のような繁忙期だと新幹線の座席が満席になっている可能性もあります。
さらに言うと、私が北海道へ行く時のようにパッケージツアーで飛行機に乗る場合、通常の航空券とは扱いが異なり、「個人包括旅行運賃」という特別プランが適用されています。そのため、搭乗便の振替(欠航時に限る)は他の人と同じようにできますが、キャンセルした場合にはお金は返ってこないのです(払い戻し不可。欠航であっても)。特殊な航空券なので、航空券だけを払い戻しできないんですね。
ツアーパッケージというのは、飛行機のチケット、空港からホテルまでのシャトルバス、ホテルの宿泊費、食事代、リフト券などが1つのパックになって販売されているもので、バラ売りしてナンボという商品ではなく、全部でナンボという商品なのです。だから、「帰りの航空券をキャンセルして返金するならばいくらになる?」と言われても算定できないのです。
その代わり、それぞれのメニューを単品で組み合わせるよりも半額以下の料金で済みますので、大変お得です。
ゆえに、航空券だけを単独で払い戻しできませんし、ツアーそのもののキャンセルにも制限があります。
「新幹線に乗れば?」と言うのは簡単ですが、実際は飛行機から新幹線に簡単にはスイッチできないのです。
となれば、有給休暇を充当して対応するのが妥当な方法です。
あえて欠勤にすることもないですし、有給休暇の残日数が無ければ欠勤でもいいですが、休暇が残っているならばそれを使ってしまうのが最も簡単な対処法です。
就業規則に飛行機が欠航した場合を想定した規定があるかどうかという点については、業務で出張しているときや、通常通りに出勤する場合に欠航したならば、何らかの決まりがあるかもしれません。しかし、個人のレジャーで飛行機が欠航になった場合まで想定して就業規則が作られている可能性はほぼゼロです。
休暇先からダイレクトに出勤するわけではなく、自宅から出勤するのが普通ですから、休暇で新千歳空港にいるならば、通勤はまだ始まっていませんので、就業規則がそのまま適用される可能性は低いでしょう。
就業規則は業務に関連するルールをまとめたものですから、社員個人の休暇中の出来事まで想定して作り込むことはまず無いです。
そのため、特別休暇が適用される可能性は無いと思っておいたほうがいいです。
あとは、「出社可能になるまで現地で待機せよ」、という部分ですが、これも業務でどこかに行っている場合はそういう業務命令を出せますが、休暇中の出来事で出勤できない状態です。空港で足止めされているならば、それは勤務中ではないですし、出勤も開始していないため、業務命令を出す根拠がありません。
出張中でしたら、それは勤務に含まれますから、業務命令を出す余地がありますが、レジャーで遊びに行っている現地で、待機せよなんて命令を出されても、訳が分かりません(自宅待機ならば分かりますが)。雪で飛行機が飛べないのですから、待機したくなくても待機せざるを得ない状況です。この点でも命令は不要です。
というわけで、最も現実的な対処法は、有給休暇を充当する方法です。
労務管理では、最もシンプルで分かりやすい処理を選ぶのが王道です。あまりトリッキーな方法を用いると、当事者が理解できない場合があり、その後にスッタモンダします。
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