「どれ」と「どれ」と「どれ」が残業なのか。
この文章に目を留めているということは、「3つの残業って何だ?」とあなたは思っていますよね。「残業が3つもあるわけがない。残業は残業であって1種類しかない」そう思ったはずです。
確かに、残業は残業であって、他の何ものでもありません。それゆえ、3種類もの数があるわけではないはずです。
しかし、現実には残業は3種類あります。
規定の勤務時間を過ぎてからも残って仕事をすること。これが残業の定義です(1)。
また、1日に8時間を超えて仕事をする。もしくは、1週間で40時間を超えて仕事をする。これも残業の定義として使えます(2)。
前者が辞書での定義で、後者は労働基準法での残業の定義です。
さらに、22時を超えて仕事をしたら残業であり、また、5時よりも前の時間帯に仕事をしても残業と扱う。こんな会社もあるかと思います(3)。深夜残業とか、早朝残業という表現が使われる場合があります。
では、規定の勤務時間を過ぎているけれども、1日8時間の枠を超えていない。そんな仕事は残業でしょうか。労働基準法の定義では残業ではない。しかし、辞書の定義に当てはめると残業になる。これは残業なのかどうか。
(1)に当てはまるが(2)に当てはまらない。これも残業です。正式には「所定時間外労働」と言います。
また、(2)に当てはまると、これは「法定時間外労働」と表現される。
さらに、(3)に当てはまった場合、これは「深夜労働」です。これは厳密には残業ではありません。深夜残業や早朝残業という表現を使うかもしれないけれども、正確には残業とは言わない。しかし、深夜労働を残業の一種として扱っている会社もあるので、残業の1つとして考えてもあながち間違いとまでは言い難い。
(1)所定時間外労働という残業
(2)法定時間外労働という残業
(3)深夜労働という残業
これらが「3つの残業」です。
残業という言葉の使い方。
残業は3つあるとしても、正式な残業は1つだけです。それは(2)の残業です。
1日8時間を超えた仕事、もしくは、1週40時間(44時間の場合もある)を超えた仕事。これが残業です。
「じゃあ、(1)や(3)の残業はニセモノなの?」と思うかもしれない。正式なものは(2)だけと言ってしまうと、そう思ってしまうのも無理のないこと。
会社的には(1)と(3)も残業だろうけれども、労働基準法的には残業ではないのです。
11時から17時までの勤務だったけれども、17時26分まで仕事をした。この場合、17時を超えた26分が残業として扱われるはず。このとき、26分の残業は法定労働時間を超えたことによるものではなく、所定労働時間を超えたことによるものなので、労働基準法的には残業ではない。しかし、所定の時間を超過しているので、所定時間外労働として残業と表現される。つまり、法的には残業じゃないけれども、会社的には残業ということ。
夜や朝に仕事をする人も残業という言葉に遭遇する。19時から仕事を始めて、23時30分に終わる。この場合、22時を超えた1時間30分を残業として処理する。また、朝の3時から7時まで仕事をする時は、5時以降の2時間分が残業となる。左記では、「残業」と表現していますが、労働基準法的には残業ではなく「深夜労働」です。しかし、会社によっては、深夜労働という表現ではなく、深夜残業とか早朝残業という表現を用いているため、22時から5時までの仕事を残業と考えている人もいるはずです。
法定時間外の残業、所定時間外の残業、深夜時間の残業。どれも残業と表現しても構わないのですが、深夜時間の勤務について残業という表現を使うのは避けたほうがいいかもしれない。なぜならば、所定時間をオーバーしているわけではないし、法定の時間枠を超えているわけでもないので、「残業」という文言に馴染まないからです。
もちろん、36協定の手続き、さらに、割増賃金の処理がキチンとしていれば、何を残業と表現しても構わない。キチンと深夜時間帯勤務に対する割増賃金が伴っていれば、深夜労働を残業と表現しても困ることはない。
ただ、場面ごとに適切な表現を使わないと、誤解の元になるかもしれません。
(2)の場合だけを残業と扱うならば誤解が無いので望ましいでしょうね。とはいえ、(1)の場合も残業と表現する必要があるでしょうから、(1)を割増賃金を伴わない残業、(2)を割増賃金を伴う残業と説明して取り扱うのが妥当なところでしょうか。