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本妻と内妻で遺族厚生年金をどちらが受給する?

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本妻と内妻で遺族厚生年金の帰属を争う。
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死亡の直前に本妻と別居していたら

ご存知のように、厚生年金に加入している人が死亡すると、残された親族の人へ遺族厚生年金が支給される場合があります。夫婦ならば、配偶者に支給されることが多いでしょうし、さらには、親や子供に遺族厚生年金が支給されることもある。ちなみに、遺族基礎年金は一定の年齢以下の子供を持つ妻が対象者なので、妻だから受給できるとは限らないし、夫は対象外となる。


世の中には、夫婦であっても必ずしも同じ家で暮らしているとは限らず、離れて暮らしている方々もいらっしゃると思います。

仕事の都合で単身赴任している人とか、夫婦だけれども何らかの理由で長い間家に戻っていないとか、夫婦関係がよろしくない状況に至っているので妻が実家に帰っているとか。夫婦が離れていることは決して珍しいわけではない。とはいえ、頻繁にあっても困るのですけれども。

そこで、もし夫婦が離れている状況で夫が何らかの理由で死亡したとき、遺族厚生年金は誰に支払われるかが今回のテーマです。ちなみに、遺族厚生年金には支給要件や受給対象者など細かなルールはありますが、今回はそのような条件には支障はない(支給条件はキチンと満たしているという意味)という前提で話を進めます。

素直に考えれば、夫がなくなれば配偶者である妻に、妻がなくなれば配偶者である夫に遺族厚生年金が支給されると考えるはず。ただし、夫が遺族厚生年金を受給する場合は、55歳以上であることが条件なので、受給者としての順位は妻が受給する場合よりも低くなる(厚生年金保険法59条参照)。

しかし、夫婦が何らかの理由で別居しており、さらに夫婦関係がうまくいっていないとき、遺族厚生年金は配偶者である妻や夫に支給されるのかどうかが問題となる。例えば、夫が家を出て、外で妻と同視できるほどの関係の女性と暮らしており、その夫が病気で死亡したら、本妻に遺族厚生年金が支給されるのか、それとも事実婚状態である内縁の妻に遺族厚生年金が支給されるのかで判断が分かれる。

55歳の夫と52歳の妻の夫婦関係が冷めてきて、夫が家を出て、妻以外の女性とマンションを借りて同棲しているような場面を想定するといいかもしれない。もしくは、妻が家を出て1人でアパートに暮らし、夫は自宅に以前から付き合いがあった女性を呼び、その人と暮らしているという場面でもいいでしょう。なんだか生々しい場面ですが、あくまで仮定ですからご了承下さい。

本妻にも内妻にも遺族厚生年金を受給する権利がある

ご存じの方も多いかと思いますが、遺族厚生年金は、法律上の婚姻関係を有する妻だけでなく、いわゆる事実婚の関係を有する女性も受給の対象になります。ゆえに、婚姻関係をキチンと解消せず、妻以外の女性と生活しているときに夫が死亡すると、遺族厚生年金が本妻に支給されるのか、それとも内妻に支給されるのかが問題となる。

おそらくですが、夫婦関係がよろしくない状況に至り、配偶者以外の人でめぼしい人がいれば、婚姻関係を解消してから他の男性や女性と暮らすかと思います。あえて離婚せずに配偶者以外の人と暮らすとなると、相手が離婚に応じてくれないとか、面倒だからグズグズと手続きをしないとか、慰謝料や養育費で争っているとか、何らかの特別な理由があるのではないでしょうか。法律上の婚姻関係を複数成立させることを重婚(刑法184条)といいますが、上記のような場面は重婚的な内縁関係と表現されるようです。刑法上の重婚とは違い、刑事責任はないものの、民事では問題になる可能性がある。


キチンと離婚の手続きを終えたので他の女性と再婚した夫だが、数カ月後に何らかの理由で離婚が無効もしくは取り消しになり、以前の婚姻関係が復活した。この時点ではすでに再婚しているので、以前の婚姻関係が復元されるとなると、意図せず刑法上の重婚状態となる。この状態の時に夫が死亡して遺族厚生年金が支給されることになったらどうするか。重婚となれば、一時的であれどちらも本妻となるでしょうから、遺族厚生年金をどちらの女性に支給するかで時間がかかるはず。

重婚的な内縁関係だけでなく、上記のように通常の重婚関係でも遺族厚生年金の帰属を考えなければいけない場面も想定できます。もちろん、内縁状態になっている時期に夫が死亡するとか、重婚状態になっている時期に夫が死亡するというのは極めて珍しいケースですが、可能性はゼロではないだろうと思います。婚姻関係の処理と遺族厚生年金の処理が同時に重なったら、なかなか厄介な事案になるのではないでしょうか。

内縁の妻に対して遺族厚生年金が支給されるには、本妻との婚姻関係が形骸化しているかどうかの判定が必要です。形骸化していれば、内妻が実質的な妻として扱われ、事実婚の妻に対して遺族厚生年金が支給される。他方、本妻との婚姻関係が形骸化していないと判断されれば、本妻に遺族厚生年金が支給される。


もし、本妻と内妻で遺族厚生年金の帰属を争うとすると、本妻は夫との婚姻関係が継続している主張をするでしょう。例えば、夫の収入で生計費の大半を賄っているとすれば、これは婚姻関係が存在している事実を補強する材料になる。さらに、具体的な収入額や生計費の内訳を資料として提示すれば説得力が増すはずです。

ちなみに、遺族厚生年金が本妻と内妻のどちらに帰属するかをジャッジするのは、社会保険審査官や社会保険審査会です。なお、年金事務所での裁定に納得できなかったので審査請求したという前提です。例えば、年金事務所では事実婚関係にある内妻へ遺族厚生年金を支給すると裁定したが、本妻がこの裁定に納得せず、社会保険審査官へ審査請求したと考えていただけると良いかと思います。ちなみに、社会保険審査官へ審査請求してもなお納得できないときは社会保険審査会へ再審査請求できます。

審査請求の流れは厚生労働省のウェブサイト(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/shinsa/syakai/02-02.html)にわかりやすく示されています。今回は遺族厚生年金の給付に関する不服ですから、「保険給付等に対する不服」の部分を下に見ていただければいいでしょう。初めに社会保険審査官を経て、その後に社会保険審査会へ移行することがわかるはずです。

あとは、常に同居しているわけではないが、いわゆる「週末婚」のような形で、週末だけは定期的に家に帰ってきているという事実も使えるかもしれない。他には、別居しているものの、1ヶ月ごとに本妻へ仕送りをしているという記録もいいですね。銀行の通帳に定期的に送金されている記録があれば使えるかと思います。

もし、1ヶ月ごとなどのように定期的にではなく、一括で資金を送っていたらどうなるのか。まとまったお金を本妻に送ったとすると、離婚の際の手切れ金というか慰謝料のようなものと解すべきか、それとも生活資金をまとめて送ったと解すべきなのか判断が分かれる。生活資金に限りませんが、「このようにしたら、こうなる」という客観的な基準はありませんので、一括の送金が離婚の意思表示と解釈されることもあれば、単に生活資金を送っただけと解釈される可能性もあります。

他には、メールでこまめに本妻と連絡をとり合っているとか、妻のところにいる子供と会っている事実も使えそうではあります。


一方で、内妻が遺族厚生年金を受け取るには、本妻との婚姻関係が終了している、もしくは関係は形骸化していて夫婦として体をなしていないと主張する必要がある。もしくは、自分自身が本当の妻であるかのような役割を果たしていたと証明するのもアリかと思います。前者はネガティブな証明で、後者はポジティブな証明と考える良いですね。

例えば、「夫が死亡するまで病院で不眠不休で看護していた」と主張すれば内妻の立場は強くなるでしょう。さらには、夫と内妻の間で子供ができていた(妊娠中 or すでに出産している)という事実があれば、これも内妻の立場を補強するはず。

本妻であれ、内妻であれ、お互いに自らの立場を強化する事実や証拠を提示する、もしくは相手の立場を弱める事実や証拠を提示することは可能かと思います。


肝要なのは、どちらに遺族厚生年金の権利が帰属するかを形式的に判断するのではなく、判断材料をたくさん使い、総合的に判断するという点です。

民法の婚姻制度

法律で支えられている本妻と事実で支えられている内妻は、実質は同じだが基礎部分が法律と事実で異なっている。

あえて民法(731条以降)で婚姻制度を設けていることを考えると、本妻と内妻では本妻の方が妻として認められやすいのではないでしょうか。遺族厚生年金の権利でも、なるべく本妻に帰属させ、あくまで例外的に内妻に帰属するようにバイアスがかかる可能性があるのではないかと思います。

容易に内妻を正規の妻として認めてしまうと、法律に基づいた婚姻関係を軽んじることになるかもしれず、法律で夫婦関係を保護した意味が薄れてしまうと考える人がいないとも限らない。

子供の取り扱いでも、婚姻関係の有無によって嫡出子と非嫡出子に区別しているのですから、事実婚よりも法律上の婚姻関係を重視していると想定してもあながち間違いではないのではないでしょうか。

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労務管理の問題を解決するコラム

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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