1分の遅刻で非難されるが、10分の残業で非難されない
遅刻と残業は何が違うのか。
遅刻と残業は違うものであって、同じ俎上に載せて考えることはあまりないかもしれない。「遅刻はイケナイけれども、残業はまあ仕方ない」と一般的には思われがちなのではないか。
ちょっとでも遅刻すると、「始業の5分前に準備を完了するのが常識だろう」などと言われたりする。しかし、残業ならば、なぜかグチグチ言われない。長く残業していると責任感がある人と思われたりする。
しかし、考えると、遅刻と残業は同じものだと思える。遅刻とは、「決められた時刻に遅れること」を意味する。残業は、「規定の勤務時間を過ぎてからも残って仕事をすること」を意味する。両者は、予定の時間に合わせられなかったという点では同じだ。
同じものであるけれども、一方は非難され、もう一方は非難されることはあるだろうけれども遅刻ほどではない。むしろ、残業する人の方が責任感があるとか、残業すると「がんばってるねぇ」などと褒められたりすることもある。
遅刻は怒られるのに、残業は褒められる。何かヘンだと思いませんか。
「予定の時間までに仕事を始められないこと」と「予定の時間までに仕事を終えられないこと」との間にどんな違いがあるのか。
頻繁に遅刻する人と頻繁に残業する人。この両者に対する評価は違うのではないかと思います。おそらく、前者は怒られ、減給され、場合によってはもっと厳しく処分されるかもしれない。しかし、後者は時間外勤務の割増賃金が支給されるので減給されることはなさそうです。また、残業を頻繁しているからといって、何か人事的に処分される可能性はあまり高くなさそうです。もちろん、度が過ぎれば、ある程度の注意は受けるかもしれませんが、遅刻ほど厳しい対応をされることはないと思います。
決まっている時間を守っていいないという点では同じなのに扱いが異なる。それが遅刻と残業なのですね。
時間に厳しいのかルーズなのか、分からない
「残業していいならば、遅刻だって構わないじゃないか」と考える人がいたとしたら、その人は正常です。10分遅刻したら、10分残業すればいい。そうすれば、遅刻と残業を相殺できるし、残業代も無い。いいことじゃないか。そう思えます。
「残業OKならば、遅刻もOK」これは論理的に筋が通っています。
もし遅刻がダメならば、残業もダメにするべきでしょうね。「1分たりとも遅刻はダメだ」と言うことは、同時に「1分たりとも残業はダメだ」と言っているようなものです。
ただ、遅刻するかどうかは本人がコントロールできるけれども、残業は仕事の内容や分量、進捗状況、納期などに応じて発生するかどうかが決まるものだから、遅刻と同視するのはいかがなものかという考えもあります。
遅刻は本人の責任で起こることだが、残業は必ずしも本人の責任で起こるとは限らない。だから、遅刻は非難され、残業は許される。
確かに、説得力のある反論です。
ただ、説得力のある反論であっても、論理的なおかしさを解消できるものではない。
「残業OKと遅刻OK」はセットになり、「残業NGと遅刻NG」はセットになる。しかし、「残業OKと遅刻NG」をセットにしてしまうと、その職場は時間にキッチリしているのか、それともルーズなのか。分かりにくくなります。
説明の仕方によって、遅刻と残業は併存できる場合もあればできない場合もある。不思議ですよね。