労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

遅刻と残業を相殺してもいいの?

帳消し

 

  

遅刻は、仕事を始める時間に遅れること。

 

残業は、仕事を終える時間を超えて働くこと。

 

「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣 (Asuka business & language book)

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  • 作者:石川 和男
  • 発売日: 2017/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 
では、

残業した代わりに、
遅刻を帳消しにするなんてこと、
やってもいいのでしょうか。


つまり、

残業で仕事の時間を延長したから、
遅刻をなかったことにしたい。

そんなことをやっても良いのかどうか。

 

遅刻してくれて、ありがとう(上) 常識が通じない時代の生き方

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遅刻は遅刻。残業は残業。

例えば、

1時間遅刻してきたから、
仕事を終える時間を1時間延長して、
働く時間が減らないようにする。

これで遅刻がなかったことにできるんじゃないか。

そう思う方もいらっしゃるでしょう。


確かに、

1時間遅れたのだから、
その分だけ勤務時間を延長すれば、
所定労働時間は守られていますよね。

10時始業。19時終業。
11時始業。20時終業。

途中で休憩が1時間入るとすれば、
どちらも仕事の時間は同じです。

 

この処理で遅刻を帳消しにする。


そういうやり方が良いのかどうか。

 

 

割増賃金が不払いにならないように。

先程の例は、

遅刻をした当日に、
勤務時間を1時間延長し、
所定労働時間が減らないようにしています。

 

また、

1日8時間を超えていませんから、
時間外労働に対する割増賃金も
必要がない場面です。

 

同日内に、
遅刻してきて、残業したものですから、

労働時間は同日内で精算できます。

これは自動で行われますから、
就業規則に決まりがなくても、
実現可能な処理です。


ゆえに、

法的には問題は無いです。

 

遅刻して1時間遅れたため、
終業時間を1時間先延ばしする。

当事者間で、そういう合意があれば、
不都合な部分はありません。

 

遅刻に対する処理は法律で決めるところではなく、
当事者間でどういう対応をするか
就業規則で決めておくものです。

 

遅刻したら、その時間は給与は無し。

ノーワーク・ノーペイです。


19時で終わるところを20時まで延長していますが、
これは法的には残業になりません。

残業とされるのは、8時間を超えた時間ですから、
11時から20時まで(休憩が1時間)だと、
8時間ですから、残業は無しです。

 

時間を延長している時点で、
一般的には「残業」と考えられるでしょうが、
法律的に残業になるかどうかは別の問題です。

 

 

他の日に労働時間を付け替えて、残業代の支払いを免れるのはダメ。

一方、

似たような処理方法であっても、
法的に問題が発生する場面があります。


例えば、

月曜日に、
10時から20時まで働いたとしましょう。

休憩は1時間あるとすれば、
当日の労働時間は9時間です。

時間外労働が1時間発生していますね。

この1時間に対して、
割増賃金が必要であることは
ご存知のかたも多いはず。

 


後日、

水曜日に、
何らかの理由で1時間、遅刻したとします。

10時出勤のところ、11時出勤になった。

11時から仕事を始め、
途中で1時間の休憩を取り、
19時で仕事を終わりました。

この日の労働時間は7時間です。

 

月曜日は9時間働いて、
水曜日は7時間です。

ここで、

「月曜日から1時間分を水曜日に
持っていけばいいんじゃないか」
と考える人がいるんですね。


月曜日から水曜日に1時間分、
移動させると、

月曜日は8時間働いて、
水曜日は8時間働いた
という計算になります。

 

その結果、

月曜日は8時間だから、
時間外労働は無かったことになるな。

そう判断するんですね。


本来だと、

1時間分の割増賃金が必要なところ、

水曜日に1時間、労働時間を移動させ

割増賃金の支払いを免れています。


しかし、
こういう処理はできないんです。

月曜日に9時間働いた時点で
1時間の時間外労働は確定していますし、
割増賃金の支払いも確定です。

他の日と労働時間を融通することはできません。

 

 

変形労働時間制を導入すれば、実現可能。

月曜日は9時間働いて、
水曜日は7時間。

となるところ、

他の日と時間数を平均して、

月曜日は8時間働いて、
水曜日は8時間働いた。

という扱いにしたい。


このような処理を望む方もいらっしゃるはず。

 

原則では、
上記のような処理はできませんけれども、

変形労働時間制を導入すれば、
異なる日の間で労働時間の枠を融通できます。

 

ただし、

事前に、勤務シフトを作る段階で、

月曜日は9時間勤務
水曜日は7時間勤務

と決めておかないといけないのです。


当日になって、

「今日は時間を延長して」
「仕事が少ないから、今日は早く上がって」

と成り行きで決めていくのはダメです。


変形労働時間制については、
『残業管理のアメと罠』で詳しく説明しておりますので、
そちらを読んでいただければと思います。

 

 

遅刻すると残業の開始時刻も伸びるの?

遅刻した日に時間外勤務をするとなると、時間外勤務(残業)の始まりはいつになるのでしょうか。つまり、遅刻で所定労働時間がズレると、残業を始める時間も後にずれていくのかどうか。


例えば8:00から17:00が会社所定の勤務時間と仮定します。なお、勤務時間の間に休憩時間が1時間あるとします。ゆえに、勤務時間は8時間です。

そこで、何らかの理由で遅刻して、8:30に出勤してきたとしましょう。つまり、8:30から仕事を始めて、17:00まで勤務するわけです。

 

ただ、「30分遅刻してきたので、終業時刻を30分繰り下げる」という勤務スケジュールに変更することもあるかもしれませんよね。となると、17:30までが勤務時間になるわけです。

そこで問題になるのが、17:00を超えて17:30まで仕事をするとなると、この30分は時間外の勤務、つまり残業なのかどうかという点です。


会社所定の勤務時間は8:00から17:00ですので、この所定の時間枠からははみ出ていますよね。

では、会社が決めた所定時間枠からはみ出ると時間外の勤務なのでしょうか。

それとも違うのでしょうか。

 

 

「1日8時間」の枠で考えると混乱しない。

時間外勤務を判断するときは、常に「1日8時間」を意識して欲しいです(なお、「1週40時間もしくは44時間」という枠もあります)。

1日で8時間の勤務時間枠を超えれば時間外の勤務。他方、1日で8時間の勤務時間枠を超えなければ時間内の勤務です。

これが基本です。


この基本を上記の例にあてはめると、8:30から17:30まで仕事をしたとすれば、8時間ピッタリですので、時間内の勤務です。

8時間の枠を考えるときは、「実働で8時間かどうか」を判断するのがミソですね。


ただし、「所定労働時間を超えたときは時間外手当を支給する」と労働契約や就業規則で決めているならば、所定労働時間は8:00から17:00であり、17:30まで仕事をすれば30分の時間外勤務ですね。

この場合の時間外手当は、会社が独自に用意したもので、25%割増になるかどうか(はたまた別の内容になるか)は、就業規則や賃金規定により決まります。

ただ、時間外勤務を判断するときは1日8時間を用いるのが普通ですから、「所定労働時間を超えたときは時間外手当を支給する」と決めている会社があるとすれば、知らずにウッカリ決めてしまったということもあるのではないでしょうか。


勤務時間が1日8時間を超えれば自ずと時間外になりますから、「所定労働時間を超えたときは時間外手当を支給する」とあえて決めずとも良いのです。

 

 

翌日の勤務時間を短くして残業を相殺できるか

「今日は残業になっちゃったけど、明日の勤務シフトは時間を短くするよ」

こういう対応、ありますよね。時間が長くなったので、他の日の時間を短くして、帳尻を合わせる。なるほど、合理的です。

具体的に書くと、こういう感じ。

(予定)
火曜日:10:00 - 17:00
水曜日:10:00 - 17:00

※話を簡単にするため、ここでは休憩時間は省いて考えます。

予定では、火曜日は7時間、水曜日も7時間。そういう勤務シフトでした。



ところが、実際の勤務は、

火曜日:10:00 - 19:00
水曜日:10:00 - 15:00

となりました。

火曜日の時間が2時間長くなり、その代わりに水曜日が2時間短くなりました。2日間通しての時間は予定と同じ14時間ですけれども、時間の配分が変わっているんですね。

帳尻を合わせるという点では、他の日と勤務時間をやりくりするのは良いのです。しかし、火曜日の勤務時間が2時間増えるとなると、合計で9時間勤務になります。そこで問題になるのが残業の処理です。

「火曜日は2時間長くなったけど、翌日の水曜日は2時間短くするわけだから、火曜日は実質的に7時間勤務だろう。だったら、残業はなかったことにできるんじゃないか?」このように考える人もいます。振替勤務の考え方を応用したような処理です。

確かに、火曜日の2時間を補填するために、水曜日を2時間だけ短縮したのだから、2日間を通してならば、火曜日の勤務時間は7時間であると言えなくもないです。

しかし、実務では、火曜日は1時間の残業が発生したと扱います。1日8時間の上限を1時間超えたので、その1時間は割増賃金である残業代が必要です。翌日、水曜日の時間を短くしても、火曜日の残業がなかったことにはできないのですね。


もし、火曜日に、10時から18時まで、つまり17時から1時間だけ延長し、翌日の水曜日の時間を1時間短縮する。これならば火曜日は残業にならないですし、振替の処理としても問題ないところです。

ただ、8時間を超えてしまうと、もうその時点で残業が確定してしまうので、先ほどのように19時まで働いて、翌日は2時間短縮するという処理方法だと、残業を回避できなくなります。


後から勤務時間を短くして、残業をなかったことにはできない。この点は知っておいて欲しいところです。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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