厚生年金には25年入っていないけど、これは掛け捨て?
「年金は25年間加入する必要がある」
このことについては新聞でも、テレビでも、雑誌でも、あちらこちらで聞いたり目にしたりするかと思います。
追記:法律が変わり、年金の受給資格期間は25年から10年になりました。本文は25年を10年と読み替えてください。
例えば、厚生年金に17年加入して、そのあと厚生年金に加入することはなかったとしたら、どうなるのか。
25年加入という条件をあてはめると、「17年だから掛け捨てになるのかなぁ」と思えるかもしれない。
確かに、「年金は25年」と理解していると、17年分の加入期間が無意味になってしまうと判断するのも無理のないことです。しかし、17年となると長い期間ですから、これが丸々掛け捨てになるのは困りますよね。
では、どうすれば17年の厚生年金の加入期間は掛け捨てにならないのか。何らかのフォーローがあるのか、それともそのまま消えて行くのか。
年金の受給資格期間25年の内訳
まず考えられるのは、脱退時に精算する方法です。厚生年金には脱退一時金と脱退手当金の2つの制度があって、厚生年金をヤメた時に精算できるようになっています。この仕組みを使えば途中で厚生年金から離脱しても、掛け捨てを回避できる。
ただ、上記2つのメニューは使える人が限定されていて、全ての人が利用するわけにはいかない。
脱退一時金制度は外国人限定ですし、また、脱退手当金は昭和16年4月1日以前に生まれた人限定です。それゆえ、おそらくほとんどの人は対象外になっているのではないでしょうか。
「じゃあ、掛け捨てになる可能性もあるの?」と反応するかもしれませんが、他にも手段はあります。
まず、遺族厚生年金があります。厚生年金をヤメるにはヤメるのですが、死亡する必要があるので、ホイっと選択できる手段ではありませんね。
ではどうするかと悩むところですが、老齢厚生年金は1ヶ月以上の加入で受給できます。
「年金を受給するには25年の加入が必要と言っていたのに、何で1ヶ月以上なの?」と思うかもしれませんね。不思議ですが、本当です。
ただし、1ヶ月以上で老齢厚生年金を受給するには、国民年金に25年以上加入している必要があります。このように言うと、「いやいや、厚生年金の話なのに、なんで国民年金が出てくるのよ」と反応する方がいらっしゃるんですね。確かに、厚生年金と国民年金は別々の制度ですから、2つを混ぜて話されると混乱するかもしれない。
分かりにくいかもしれませんが、国民年金に25年加入しているという前提で、厚生年金は受給できるのですね。また、この25年の中には、厚生年金に加入している期間も25年に含まれます。何故かと言うと、厚生年金は国民年金を含んでいるからです。それゆえ、厚生年金だけで25年加入する必要はなく、国民年金だけで単独で加入していた時期(1号被保険者の期間、3号被保険者の期間、免除や猶予されていた期間)も含めて25年であればいいわけです。
例えば、会社で社会保険に加入し、厚生年金に13年間加入していた方だと、国民年金にも13年間加入していたと扱われるのです。この人の年金加入記録は、「厚生年金保険:13年。国民年金:13年」となります。厚生年金に入っていると、自動的に国民年金にも入っている。この点を知らない方もいらっしゃいますが、大事ですので知っておいてください。
他方、国民年金だけ13年間加入していた方(自営業の方など)だと、厚生年金の加入期間は0年で、国民年金の加入期間は13年です。
※追記
2018年2月時点では、年金に10年加入すれば受給権を得られるようになりました。昔は25年以上加入する必要がありましたが、それが10年に短縮されています。この制度変更により、年金の保険料が掛け捨てになる可能性が低くなりますので、被保険者には有利なものとなります。