給与を余分に払ってしまったり、少なく払ってしまったり、、。
今回は、毎月の給与計算について採り上げます。
通常、給与の計算事務には人間の手が加わりますので、専用のソフトウェアが充実しているといっても、多かれ少なかれミスが発生します。
計算処理は自動で可能だとしても、入力すべきデータの内容を間違えば、計算結果も間違ってしまうわけです。
そこで、もし給与の過不足金が生じてしまった場合、翌月の給与で清算しても良いのかどうかが疑問になります。
例えば、不足金を翌月の給与で清算するとなると、全額払いの原則に違反しますよね。
この場合、会社のミスで過不足が生じたのだから、不足金は支払い、余分に支払った給与は取り返せないとも考えれます。
ただ、「理由なく金額を操作しているのではなく、きちんと理由のある処理だから許される」とも判断できます。
また、過剰に支払われた給与は、いわゆる「原因の無い給付」ですから、民法上の不当利得にもなります。
ちなみに、給与の過不足で主に問題になるのは不足ではなく過払いです。
不足ならば、改めて会社から追加的に支払ってもられば良いだけです。
しかし、過払いだと、社員さんが支払う側になりますので揉めるんですね。
なぜならば、「会社の支払い能力」と「個人の支払い能力」には差がありますから、不足よりも過払いの方がトラブルになるということです。
いくらまでならば清算ができるのか。
例えば、4月に3万円だけ余分に給与が支払われていたという事実が、10月の段階で判明した場合、会社はその過払い給与を取り返すことができるのでしょうか。
単純に考えれば、本来支払うべき給与ではなかったのだから、返還してもらうことができるはずですよね。
先ほど書いたように、「不当利得」ですから。
しかし、社員さんにとっては、半年も経って(現時点は10月)、「4月の給与で3万円が過払いでしたので、11月の給与で過払い分を天引きします」と言われて、すぐに納得できるでしょうか。
「えぇ~、困ります」と言うのではないでしょうか。
「なぜ今頃になって言うのか」というのが社員さんの心理でしょう。
このように過払い給与の額が大きくなった場合、会社ごとに対応が変わります。
現実での給与の過不足トラブルの処理では、少額の精算(1000円未満)ならば翌月での清算を実施している企業もあります。
例えば、時間外手当の計算に間違いがあり、数百円ほど余分に支払われていたので、翌月の給与で清算しますという場面は、少なからずあります。
この程度の清算ならば、社員さんの生活に影響はほとんどありませんから、許容範囲です。
しかし、額が大きくなると、清算を避ける傾向があります。
今回のように、3万円を清算するとなると、社員さんにとっては大なり小なり影響があります。
また、そのような金額になるほどのミスをしたという会社の責任を勘案すれば、簡単に全額を返還してもらうのをためらうこともあるのかもしれませんね。
さらには、回収のためのコストを考えると、費用倒れすることもありえます(小額のお金を返還してもらうために、多くの時間と人を投入する必要があるならば、あえて返還を求めないということ)。
ただ、どこまで清算をして、どこから清算をしないというラインを、どこで引いているのかは分かりません。
これは会社ごとで対応は異なります。
小額でも全て返還してもらう会社もありますし、「ある程度以上の金額(会社ごとに違う)」になれば、それは会社の責任として扱い、過払い給与の返還を求めないこともあるようです。
他には、一部だけ返還してもらい、残りは会社の責任にするという方法もあるでしょうね。
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