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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/2/8号 no.61)━
パートタイムで働く社員の時間短縮勤務
会社によっては、閑散期などになるとパートタイム社員さんが1日いなくてもいい場合があるようです。
例えば、通常は8時間勤務のところ、閑散期には4時間で足りてしまうというような場面ですね。
閑散期で時間短縮するとなると、「会社都合での休業」となりますので、労働基準法26条の休業手当を支払う必要があります。
ただ、閑散期というのは外部要因によるものですから、会社都合というのは必ずしも妥当ではありませんが、やむを得ませんね。
そこで、今回は、パートタイム社員さんの勤務時間を短縮した時、どのように休業手当を計算するかという過程を採り上げます。特に、平均賃金の計算がポイントです。
平均賃金の計算方法は2つある
平均賃金を計算する基本となる方法
「会社都合で休業する際には、平均賃金の100分の60を休業手当として支払う」と決められていますから、平均賃金が計算できないと休業手当も計算できません。
労働基準法 第二十六条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
ちなみに、労働契約で定められた出勤日が休業になった場合が休業手当の支給対象です。元々の休日や労働者の希望による休業は含まれません。
平均賃金の計算は、算定事由が発生した日以前3か月間の賃金総額を、その期間の総日数で割った額になり、「直近3ヶ月間の賃金総額」を「直近3ヶ月間の総日数」で割って計算します(1日の平均賃金)。
1ヶ月の平均賃金だと、上記の計算結果に30を掛けます。
労働基準法 第十二条
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
賃金総額には、基本給だけでなく、各種手当(役職手当、時間外手当、休日手当など)を含めます。
総日数を数えるときは、平均賃金を算定する期間内の日数(カレンダー日数)を合計します。土日や祝日を含めた日数ですので、分母の総日数が大きくなるため、平均賃金は想像しているよりも低くなる傾向があります。
例えば、時給1,000円で1日8時間勤務する社員さんが、1ヶ月で22日勤務したと仮定して、平均賃金を計算すると以下の通りになります。
「8,000円×22日×3ヶ月」÷90日(1ヶ月は30日と仮定)
=528,000÷90
≒5,867
平均賃金は「5,867円」となります。
この計算方法は、「原則法」で計算した平均賃金です。
ところで、原則があるということは、例外もあります。
日給制や時給制の場合、平均賃金の計算には特別な注意が必要
日給制や時給制などで働く人の平均賃金を計算する時には、別の計算方法も利用可能とされています。
「平均賃金=直近3か月の賃金総額 ÷ 総日数」が基本ですが、計算対象となる賃金や日数の扱いが異なります。
日給制は「働いた日数に応じて賃金が支払われる」形態のため、計算の際には「実際に働いた日数」を用います。基本となる平均賃金の計算では、暦通りの総日数でした。
「直近3ヶ月間の給与」を「直近3ヶ月間に実際に勤務した日数」で割るという方法です。
暦の期間ではなく、実際に勤務した日数で計算しているという点が相違点です。
算定期間中に働いていない日(休日や欠勤日)は計算から除外します。さらに、日給が変動する場合でも、すべての労働日の日給を合計して実労働日数で割ります。そのため、実態に近い平均賃金になるのが特徴です。
この方法で先程の例となった数字で計算すると、
528,000 ÷ 66 = 8,000円となります。
平均賃金は8,000円ですので、計算の結果が変わりましたね。
時給制の場合は「働いた時間数」に応じて賃金が支払われるため、計算の際には実際の総労働時間を用いて平均賃金を計算します。
3ヶ月間の総労働時間が240時間、時給1,000円の場合、賃金総額は240,000円。総日数が90日だとすると、240,000 ÷ 90 = 2,666 になり、平均賃金は1日あたり2,666円です。
実務では、実際に勤務した日数を使って計算をします。なぜならば、実際に勤務した日数を分母に置いていますから、計算結果もより現実的な数字になるのが理由です。
休業手当を計算する手順
休業手当は、会社の都合で労働者を休業させた場合に支給される賃金で、労働基準法第26条に基づいています。休業手当の支給額は、平均賃金を基準に計算されます。
労働基準法では、休業手当として平均賃金の60%以上を支給することが義務付けられています。上記で書いた通りです。
休業手当の計算例は以下の通り。
休業日数:5日
休業手当:10,000 × 0.6 × 5 = 30,000円
半日休業した場合の休業手当は次の通りです。
平均賃金:10,000円
休業日数:半日
休業手当:5,000 × 0.6 = 3,000円
休業した部分に対しては休業手当、勤務した部分に対しては通常賃金を支払う必要がありますので、この場合は、休業手当が3,000円、通常賃金が5,000円になりますね。
労働基準法の26条は、1日丸々休むことを想定して書かれていますので、部分休業にあてはめる時には少しだけ考えないといけません。
なお、労働者の責任で発生した休業(例:遅刻や私的理由による欠勤)は、休業手当の対象外です。
給与計算では、休業手当として支払った額を明確に給与明細に記載する必要があります。通常の賃金と区別するためです。
税金や社会保険料は、休業手当であっても通常の賃金と同じ扱いになります。
繁忙期と閑散期があるならば変形労働時間制度も選択肢に
1日4時間勤務、週20時間程度のパートタイム社員に対して変形労働時間制を適用することも可能ですから、繁忙期に労働時間を多くして、閑散期に少なくすることで休業にならないようにできます。
変形労働時間制とは、特定の期間内(例えば1か月や1年)で労働時間の総量を調整し、繁忙期に労働時間を長く、閑散期に短くすることを可能にする制度です。
繁忙期に1日5時間勤務、閑散期に3時間勤務などといった働き方ができます。
繁忙期(第1・第3週): 週25時間(1日5時間×5日)
閑散期(第2・第4週): 週15時間(1日3時間×5日)
メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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