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一石二鳥の効果がある在職老齢年金

働いて減るのは厚生年金。国民年金は収入に関わらず支給される

「働くと年金が減る」こういう話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

年金を受け取りつつ、働いて収入を得ると、年金が減っちゃう。そういう仕組みがあるんです。それが「在職老齢年金」という制度。

在職老齢年金と聞くと、「ふーん、そういう年金があるんだ」と思ってしまうところですが、そうではありません。収入と年金を調整するのが在職老齢年金制度であって、いうなれば「年金額を調整する制度」と言っていいものです。在職老齢年金という年金が支給されるわけではなく、収入に合わせて年金額を調整しますよ、というのが在職老齢年金制度です。

小泉進次郎氏 子育て財源のため「年金返上を」と言い出した

子育ての財源のために、高所得者に年金を返上してもらうように求めていくとの話の中で、在職老齢年金という言葉が出ています。

働いていると年金が減るんだよね、とザックリと理解している方はそれなりにいらっしゃるでしょうが、働いて収入があっても年金が減らない人もいます。さらに、高所得者であっても、在職老齢年金制度による影響を受けずに年金を満額受け取る方法もあります。


まず知っておきたい点ところは、在職老齢年金制度で減額調整されるのは厚生年金だけということ。そのため、高収入であっても、国民年金は減額調整されません。仮に、年収3億円の人であっても、国民年金は減ること無く受け取れます。

さらに、障害厚生年金や遺族厚生年金も、収入に合わせて減額調整されません。在職"老齢年金"ですから、減額調整の対象となるのは老齢厚生年金(年をとってから受け取る年金)です。

「働いて減るのは厚生年金」ここは大事なポイントです。


会社に所属していると、経営者も厚生年金に加入します。社会保険では、専務や代表取締役なども社員と同じように扱われますから、健康保険や厚生年金に会社経由で加入しています。

収入がある水準を超えると、徐々に年金が減額され、さらに収入が増えていくと、年金の全額が支給停止される段階に達します。そのため、年収2,000万円とか5,000万円ぐらいの人だと、以前から厚生年金が支給停止され、0円になっているんですね。そのため、年金を返上したくても、受け取っていないわけですから、それができないのです。

ちなみに、国民年金(基礎年金とも呼ばれます)は収入に連動して減額されませんから、実際に支給されているのは国民年金だけ。

ただし、会社に所属していても、報酬を受け取らない名誉職(会長とか相談役)であるならば、厚生年金は減額されず支給されているでしょうから、返上は可能です。

また、仕事を辞めて厚生年金を受け取れば、在職状態ではなくなるので、在職老齢年金制度で年金はストップしません。この場合も、返上が可能です。


在職老齢年金の支給停止基準額が平成29年4月1日より変更になりました

ちなみに、在職老齢年金制度は年齢ごとに適用内容が分かれています。60歳代前半の方だと、まだ若いと扱われて、年金が支給停止される基準が厳しく設定されています。つまり、収入が少なめでも年金が減額されやすい。

一方、60歳代後半だと、徐々に働く人が減り、年金収入をメインに生活していきますから、支給停止される基準が緩くなります。つまり、ある程度の収入があっても年金が減額されずに支給されやすくなります。

 

 

高齢者を若年者に入れ替える効果がある

2021年に在職老齢年金制度を廃止するかどうか政府内で検討されているようですが、廃止されるからには何か良くない制度ではないかと思ってしまうのですは、本当にそうでしょうか。

厚生年金に加入した方は、将来、老齢厚生年金を受け取れるのですが、年金を受給する段階で、ある程度の所得と年金収入があると、年金の給付額が減額調整されます。これが在職老齢年金の仕組みです。

払った年金保険料を回収するのが目的だとすると、所得にかかわらず年金を受給できるべきだと考えます。この場合、年金が一種の貯蓄になっているような感覚になります。

在職老齢年金制度があれば、一方的に年金の給付を減らすのではなく、所得に応じて減額するため、加入者の納得を得やすい面があります。一律に20%カットなどとなれば、まず実現しませんが、所得に応じて減額となれば受け入れやすいものになります。

年金の給付を削減するとなれば、過去にも何度となく反発を招いてきたのですが、在職老齢年金制度は、年金の給付を抑制する制度であるものの、さほど大きな反発を招くこと無く運用されてきたように感じます。

「働けば年金が減らされるならば、じゃあ働かないでおこう」と判断する高齢者が出てくれば、雇用の枠が空きますから、若年者の雇用を増やすことができます。

年金の給付を抑え、高齢者を労働市場から退出させる。一石二鳥の政策となっているのが在職老齢年金制度とも思えます。しかも、年金の給付が削減されていると感じにくい。そう考えると、よくできた制度です。

「働くと年金が減らされる」と表現すると、さも悪い仕組みであるかのように思えますが、労働者を入れ替えて、年金の給付を抑制する、という点に着目すれば、年金制度にとっては必要なものだとも思えます。

年金以外にも2,000万円の金融資産が必要などという話もありますが、在職老齢年金制度は若年者にとってはむしろ歓迎すべき制度ではないかというのが私の考えです。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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