あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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台風で会社を休みにしたら休業補償が必要?

休業と給与

 

台風でお客さんが来ないので臨時休業にしたい

台風が来ると、色々と影響が出ます。電車が動かない。タクシー乗り場に長蛇の列。風で傘が捲れてしまい壊れる(ビニール傘は即死)。雨がザーザー降って川が溢れる。お店が閉店時間よりも早く閉まる。学校が警報で休校になって、学生は大喜び。

書けば書くほど、まぁ色々とありますね。

風を受け流す傘やひっくり返っても壊れにくい傘もあるようで、簡単に壊れるビニール傘よりもこういう傘のほうがいいですね。ビニール傘は他の人と同じような外見なので、傘立てに立てておくと盗まれやすいですし、安物買いの銭失いになります。

ただ、あのシースルーなところは気に入っています。他の傘だと傘の内側から外は見えませんが、透明のビニールだと中から見えますので、傘を差していても開放感があるんです。あの開放感はビニール傘ならではでしょうね。

今は、郵便局でも雨傘が販売されているんです。「ポキッと折れるんです」という傘で、風を受けると、骨が外側に折れて、風を往なしてくれるシロモノ。

http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2017/00_honsha/0607_02_01.pdf
雨傘「ポキッと折れるんです」の販売開始


さて、傘の話はそれぐらいにして、台風がやってくると、会社やお店の営業をどうするかが問題となります。

例えば、飲食店だと、雨が降るとお客さんが減りますし、台風だとほとんど来客はありません。私も飲食店で働いた経験がありますが、台風が来ると、夜の夕食時間であっても、来客数は普段の半分以下、いやそれよりももっと少なくて、通常の10%から20%ぐらいの来客数になります。

客数が1/5にもなれば、お店を開けているだけで赤字ですから、「こりゃあ、もう店を早仕舞いさせるかな」と思ってしまうところです。お客さんが来ないのですから、たしかに店を開けていてもしょうがないですよね。

 

 

 

では、お店を早く閉めて、従業員の人を帰らせたらどうなるか。

とある場所に、営業時間が17時から22時までの飲食店があったとしましょう。夜の営業は17時ぐらいから始まるお店が多いですし、閉店は22時頃のお店も多いです。

晴れた日だと、22時までキチンとお店を開けているのですけれども、台風が来ると、「今日は20時でお店を閉めようか」となります。

ただ、20時で仕事が終わってしまうと、22時まで働けなくなります。契約では22時まで働くと決めているのに、20時で終わっちゃう。それで給与は17時から20時までの分だけ。


働く条件は契約で決めており、週に何日、出勤した日に何時間働くか。こういったことを予め約束しています。夜の出勤だと、17時から22時までは働いてください、と契約で約束しているわけです。

その約束した時間だけ、会社なりお店は働かせる義務がありますので、閉店時間の22時よりも早い22時に仕事を終わらせてしまうと、契約の一部が不履行になります。となると、何らかの補償が必要です。


何か物を買う契約をして、「この部品を1,000個、買います。来月10日に納品してください」と注文をして、受注者が「はい、分かりました」と受ける。その後、受注者は部品を製造して、納品日に間に合わせます。

しかし、納品日の4日前に、「いや、やっぱり1,000個も要らないので、600個でいいですわ」と連絡してきたらどうなるか。注文を受けた側としては困りますよね。もう1,000個を作り上げて、納品の準備が終わっているのに、要らないと言われたら。

こういう場合は、注文契約の際に、途中解約した場合のペナルティ条項が契約に含められている場合があります。例えば、「キャンセルした注文額の80%を違約金として支払う」というようなものです。

キャンセルした400個、部品1個あたりの単価が8,000円だとすると、総額で320万円です。この80%である256万円が違約金になるわけです。

このようなペナルティ条項を契約に入れることで、発注者に責任を持たせて、キチンと約束した内容を履行させるのです。

 

 

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話を戻して、台風で営業時間を短縮し、勤務時間が2時間減ってしまうと、この2時間に対して休業手当が必要になります。この休業手当は、上記の部品売買契約にある違約金と同じようなものです。約束した物(部品、労働力)を買わなかったのですから、その補償を注文者(使用者)にさせるわけです。


ただし、使用者に責任が無い場合は休業手当を支払う必要はありません。

ここで、「台風が原因だから、使用者には責任は無いんだよね?」と思うところですが、台風による影響といっても、その程度によって対応が変わります。

ものすごい雨で、川が氾濫し、水が街の中に溢れ出して、会社やお店が流れて壊れた。これだと営業できませんし、お店が壊れたのは使用者の責任ではないですから、休業手当を支払う必要はないでしょう。

他にも、落雷で停電が発生し、店内の照明が消えて、精算用のレジも動かなくなったので、お店を閉店したとなると、これも使用者の責任ではありません。

つまり、台風の影響により物理的に営業できなくなった結果、休業した、もしくはお店を早く閉めた。これならば使用者の責任ではないので、労働基準法26条は適用されないでしょう。


しかし、単に雨風が強くてお客さんが少ないのでお店を臨時休業にした。もしくは通常時の閉店時間よりも早く店を閉めたとなると、これは使用者の責任です。

物理的に営業が可能だけれども、使用者の判断でお店を閉めたわけですから、休業手当が必要になります。

ただ、キチンと休業手当を支払って休みなり早退させるところは多くないでしょう(法律違反ですが)。働いてもらわなくても給与を支払わないといけないので、人によっては難色を示します。ノーワーク・ノーペイの考え方しか知らない人だと、休業手当について理解してもらいにくいのです。キャンセル時の違約金について例を示せば分かってくれるとは思いますが、それでも休業手当を理解している人は多くない感じです。


もし、台風で休業なり閉店時間を早める場合は、他の日に勤務時間を振り替えて対応するのが現実的な対処法です。


先程の例だと、20時でお店を閉めたので、残りの2時間は働けなかったのですから、他の日に勤務時間を2時間分上乗せして補償すればいいでしょう。

火曜日に台風が来て20時に閉店したならば、翌日の勤務時間を2時間増やすとか。1日で2時間増やすのが難しいならば、1時間ずつ2日に分けて振り替える(翌日の水曜日と、明後日の木曜日に分散させる)というのも選択肢の1つです。

時間短縮ではなく丸1日休みにしたならば、当日は休みにして、他の日の休みを出勤日に変えます。

台風が来たら、振り替え出勤を検討する。これがポイントですね。

 

 

休業補償と休業手当の違いとは

台風でお店や会社が臨時休業になった時に出てくる言葉として、「休業補償」という言葉と「休業手当」という言葉この2つが出てきますよね。

どちらも休業という点で共通していますが、片方は休業補償で片方は休業手当、それぞれ違う言葉になっています。

言葉が違うということは意味も違っていると予想できるかと。前者の休業補償は、職場で例えば怪我をした人がいて、その怪我を治すためにしばらく休まなければいけなくなった時に、使用者が労働者に対して休業補償するという場面で使う言葉です。 労働基準法の75条と76条に休業補償に関する記述があります。

第75条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

第76条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない。

後者の休業手当は、使用者側の都合で労働者を一方的に休ませたとき、給与の代わりに休業手当という形で賃金を支払わなければいけないというものです。これは労働基準法の26条に根拠があるもので、本来はノーワークノーペイというところですけれども、使用者側の都合で休みになったり、働く時間が短縮された場合は、その補填として休業手当を払わなければいけないというルールなんですね。 


【台風対策】台風が来る前に出勤日を振り替えておく

夏の後半から秋にかけて、台風が何度かやってきますけれども、
天候が悪くなると商売なり仕事に影響があります。

雨がザーザー降って、
風もビュービュー吹いて、

こんな天気で外に出たら怪我をするんじゃないか。

いや、下手したら死んじゃう。


それぐらい強い台風が来るときもありますからね。


「お店や会社を臨時休業にすればいいのに」
「こんな暴風雨の中、出勤させるなんておかしいんじゃないか」

そう思う方もいらっしゃるでしょう。


確かに、
天気が悪い日、しかも台風の日に
あえて営業しなくてもいいじゃないか。

休みにしておいて、
足りない業務は他の日で補填すればいいじゃないか。


いやはや、ごもっともなご意見でございます。

けれども、職場によっては、
雨が降ろうと、風が吹こうと仕事をしようとするところもあります。

 

 

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休ませても給与を払わないといけない ノーワーク・ノーペイにならないとき

雇用契約というのは、
使用者が好き勝手に休みを増やしたりはできないものなんです。


例えば、

週4日勤務で、休みが週3日として契約を締結しているならば、
週に4日は働けるようにしなければいけません。

「今週は暇だから週2日でいいや」とか

「来週は忙しくなるから週5で出勤な」などと
一方的に変えるのは契約違反です。


1つ400円で売ると約束したのに、

コッソリと1つ200円に変えてしまうと、
価格が下がり、売り手は困ります。

500円に変えると、
売り手は儲けが増えて嬉しいですが、
買い手は不満でしょう。

だから、契約で1つ400円と決めて、
売り手、買い手、ともにそれを守ります。


雇用契約もそれと同じです。

週4日で出勤すると契約で決めたら、
チャンと週4日働けるようにしないといけない。


勤務時間も同様。

10時から16時で勤務するところ、

今日は10時から14時まで
明日は9時から12時まで

と日によってコロコロと変えてはいけません。


もちろん、本人の希望で早退するとか、
時間帯を変更するのは構いません。

ただ、使用者側の都合だけで、
契約に基づかず、勤務時間を変えるのはダメです。

 

使用者の都合で契約と違う働き方を求めて、

「明日は台風が来るから、臨時休業で休みにします」
と伝えると、

仕事をしてもらっていない日でも給与(休業手当)を払う必要があるのです。

 

 

 

どうしても臨時休業にしたいなら出勤日を振り替える

休みにしても給与を払うなら、
台風でも出勤してもらったほうがいい。

そういう判断も有り得ます。


労働基準法26条があるから、
台風でも出勤してもらわないといけない。

だから、安易に臨時休業にはできない。


なるほど。そういう気持ちになるのも分かります。

同じ給与を払うならば、
休んでもらうよりは、お店を開けてもらう方がいいですからね。

 

24時間営業のお店は台風でも営業している傾向があります。

コンビニやスーパーマーケット、
フィットネスクラブも営業しているところがあります。


他には、チェーン店も簡単に店を閉めません。

チェーンのラーメン屋やレストランは暴風雨でも開いています。

ショッピングセンターやスーパーマーケットも、
チェーン店のところは台風でも営業している店舗が多いです。


個人経営のお店だと
あっさりと店を閉めちゃうでしょうが、
チェーン店はホイホイと閉められないんですね。


風で物が飛んできて、お店のガラスが割れてしまった。
停電で営業用の機械を動かせない。
ガスが止まっていて焼き鳥を焼けない。
断水でプールを使用できない。

営業したいけれども、
物理的な障害が発生していてできない。

そういう場合は、お店を休みにしても、
使用者に責任は無く、
労働基準法26条の休業にはなりません。

 

しかし、

台風でお客さんが少ない。
来客が無く暇だから。

このような理由で臨時休業なり早仕舞いすると、
休業手当が必要になります。


「営業しようと思えばできる状態なのかどうか」

ここが判断の分かれ目です。


営業が可能ならば、暇でも店は開けておかないといけないんです。


どうしても臨時休業にしたいならば、
他の日に出勤日を振り替えて、
雇用契約で決めた勤務日数や勤務時間を確保できるようにします。

事前に振り替えておけば、
台風の当日は通常の休日と同じですから、
休業にはなりません。

 

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勤怠管理をラクにするには
出勤日や休日の管理、給与の計算、このような勤怠管理は本業とは関係のないバックヤードの業務で負担となりがち。パック業務の負担をなるべく減らして、本業でやっている業務の方に時間や労力を注ぎ込む、そういう就業環境を作りたいもの。
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