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□□┃ 山口社会保険労務士事務所
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- 在職中に年次有給休暇が失効したときが考えどころ
- 年次有給休暇を買い上げるにはルールが必要。しかし買い上げを予約するルールを作るとダメなのでは?
- 年次有給休暇の買い上げを仕組みにしたくてもできないジレンマ
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年休の買い上げと買い上げ予約の矛盾
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在職中に年次有給休暇が失効したときが考えどころ
年休には2年の時効期間が設定されており、その期間内に使い切れない場合は休暇は失効するということはよく知られていると思います。
在職中に消化しきれなかった年休は、退職後に休暇だけを単独で消化する場合があります。最終勤務日の翌日から休暇だけを利用して、休暇がなくなるまでだけを単独で消化する方法です。この方法だと、休暇がなくなるまで在職することにはなりますが、買い取らずに単独で消化することで休暇を買い取っている場合とほぼ同じ効果をもたらすことができるので利用している人も少なくないはず。
年休が時効に達するまでに退職してしまうならば、上記のような対応で足りるでしょう。
しかし、在職中に時効消滅したときが問題です。退職していないので、単独で年休だけを消化するわけにはいきませんから、どうするかが悩みどころ。
もちろん、時効になるまでに消化してしまうのが一番いいのですが、3日とか4日ぐらいの年休が時効になってしまうことはままあることかもしれません。この場合、そのまま失効にするか、それとも他の手段を用いて活用するのか。判断が分かれるところです。
例えば、時効を2年ではなく、3年や4年に設定する。失効した休暇を買取る。有給の休暇ではなく、無休の休暇として継続して利用出来るようにする。病気や怪我で休む場合に限定して利用出来る休暇として再利用する、などなど。
色々と手段が考えられますね。
年次有給休暇を買い上げるにはルールが必要。しかし買い上げを予約するルールを作るとダメなのでは?
もし、複数の選択肢の中から、「買取る」という選択肢を選んだ場合を今回は想定してみます。
通常、年休を現金化することはできないのですが、時効で失効した年休を買い取ること自体は不可能なことではありません。ただ、できるからといってオススメするわけではなく、出来るだけ年休は時効で失効しないようにするのが良いです。
時効消滅した年休の買い上げといっても、買い上げること自体が稀であって、実際に買い取っている企業はおそらく極少数ではないかと思います。できるからといって、実際に行われているとは限らないのですね。
ただ、もし万一、年休を買い取る場面が発生したとすれば、何らかの基準で買い取る必要があるでしょう。つまり、買い上げるには事前に買い上げのルールを設定したいわけです。在職中に年休が時効により失効する場合で、何日まで買い取りの対象なのか、1日あたりの買い取り単価はいくらなのか、買い取り申請はいつまでに済ませればいいのか、など。事前に決めたいポイントは幾つかあるはず。そこで、就業規則や雇用契約書に時効消滅する年休の買い上げルールを設定したい、と考え始めるかもしれない。
しかし、ルールが必要だとしても、事前に買い取り基準を決めてしまうと不都合なのではないかと疑問を抱くかもしれません。つまり、「事前に年休の買い取りルールを決めてしまうと、いわゆる買い上げ予約になってしまうのでは?」という疑問。
有給休暇を買ってしまうのは39条違反ですし、通達でも禁止されています(昭30.11.30基収4718号)。もし、年休を買い上げることを事前に決めてしまうと、当事者(企業と社員)は買い取りを事前に織り込んで行動してしまい、休暇を利用しにくくなるからです。
しかし、「時効で消滅してしまう年休を買い取るためのルールなのだから、一般的な意味での買い上げの予約ではないでしょう?」という判断もあり得る。確かに、普通に年休を買い取る場合と時効消滅した年休を買い取る場合では状況が違いますよね。後者の場合は法的に差し支えない処理なのだから、それをルール化しても差し支えないと考えるわけです。
一方で、「事前にルールを決めてしまう=買い取り予約」という構図で解釈される可能性もあります。たとえ時効消滅した年休であっても、事前にルール設定することは買い取りの予約だと解釈できるので、ダメだと判断する立場ですね。
買い取るからには何らかの基準が必要。しかし、その基準を設けると物議を醸す。この矛盾する状況を何とか回避しなければいけないわけです。
まず、時効消滅する年休の買い上げルールを事前に設定することは年休の買い上げの予約に該当するのかが問題です。
予約という言葉の意味を考えると、買いあげるかどうかは"未定"なのだから、買い上げ"予約"には当たらないと判断することが可能です。予約とは、将来の一定の時期に契約を成立させることを意味します。つまり、確実に成約することを期待して予約行為が発生するわけですよね。ならば、将来の時点で成約するかどうかが分からない事柄に対して予約という言葉を当てはめるのは間違っているのではないか、と考えるのですね。未定のイベントに対して予約という言葉を当てはめるのは言葉の使い方として間違っているのではないかと判断するのです。この立場では、予約の定義を利用して、年休の買い上げルールを事前に設定することを肯定しています。
また、「処理の内容」と「処理の手続き」で分けて考えることもできるかもしれません。
時効消滅する年休の買い上げは法的に差し支えない"処理内容"なので、事前にルールを整備するという"処理の手続き"も差し支えないと考える立場。内容がOKなのだから、手続きもOKと判断する立場ですね。
一方、確かに時効消滅する年休の買い上げは法的に差し支えないのだが、その手続きを事前に決めてしまうのはダメという立場。内容はOKだが手続きがNGなので、NGと判断する立場ですね。別の説明を用いれば、予め買い取り条件を設定するということは、暗黙裏に買い取りを予約していることと同視することができるので、買い上げ予約に該当するとの主張が可能です。
前者は、内容が良ければ手続きも良いものと推断している。後者は、内容と手続きを別々に検討し、片方がNGであれば全てNGにしてしまう。
上記のどの判断も間違ってはいません。
予約の言葉の意味から判断するアプローチ。内容がOKなのだから、手続きもOKと判断するアプローチ。内容はOKだが手続きがNGなので、NGと判断するアプローチ。
どれも結論として採用されうるものばかりです。
年次有給休暇の買い上げを仕組みにしたくてもできないジレンマ
時効で失効した年休を買い取るためのルールを事前に設定する問題に対する答えは、客観的に決めかねているのが実情です。時効で失効した年休を買い取るだけならば良いのでしょうが、それをルール化するとなると賛成と反対で分かれてしまう。このような状況だと、基準を作れないので、買い取りを実施したくても思うようにできないはずです。
そこで、失効した年休を買い取らずに、他の手段で対処する企業もあります。
1,無給の休暇に変えて利用出来るようにする。
本来は有給の休暇だったけれども、すでに失効してしまっているので、有給の機能を除いて休暇の部分だけで継続的に利用出来るようにする方法です。この方法だと、有給を無給に変えるだけですのでルールの設計も容易です。なお、上限日数や有効期限は別途で設定する必要があるかもしれませんね。
2,時効消滅した年休は、傷病有給休暇として利用できるようにする。
こちらは、有給休暇としての機能を維持したまま、休暇の利用用途を限定する方法です。通常の有給休暇だと理由を問わずに利用出来るのですが、失効した年休に変わった場合には「機能制限された有給休暇」として継続的に利用できるのですね。また、育児や介護に使途を広げることも検討できるのではないでしょうか。なお、こちらも上限日数や有効期限は別途で設定する必要がありますね。
時効消滅で買取るにはルールが必要だが、事前に買取ルールを決めてしまうと、買取り予約になってしまう懸念があるので、無給休暇や傷病有給休暇として逃がす方法を採用しているわけです。
有給休暇は時効消滅する前に完全消化してしまうのが良いのですが、どうしても残ってしまった場合は上記のような方法で対処することを検討するのも一考ではないかと思います。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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