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高所得者は社会保険料を気にしない? 任意継続の健康保険にも保険料に上限がある。

 

メーター振り切り

 

税金に上限は無いが、健康保険料には上限がある。

【健康保険】令和2年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について

退職後に加入することになる任意継続健康保険に関連する内容が変わります。

健康保険というと、会社経由で入る社会保険、会社経由で入らない人は市町村経由で国民健康保険に入ります。さらに、大規模な企業に勤めてる方だと、その会社独自に健康保険組合があります。このように、大きく分けて健康保険はこの3つです。

会社に在籍してる間、社会保険に入ってた方は、退職した後も、その在職時の健康保険を継続する制度があります。それが任意継続健康保険です。

任意継続被保険者が支払う保険料の上限額が決まった、というのが上記の内容です。

標準報酬月額という難しい表現が使われていますが、これは健康保険料を決めるための数字です。収入に連動して標準報酬月額が決まり、その標準報酬月額に対して保険料率を掛けて、健康保険料の額を算出しています。

標準報酬月額の上限額は、年度ごとに見直されていて、今回決まったのは、令和2年度のもの。「標準報酬月額の上限額」を言い換えるならば、「健康保険料の上限額」と考えていいでしょう。

任意継続被保険者の標準報酬月額の上限が変わるとの内容ですが、これは、健康保険料の上限が変わるという意味です。

会社を退職して、必要な手続きを済ませると、退職後、2年間、協会けんぽの健康保険に加入できます。

国民健康保険に加入するという選択肢もありますが、任意継続で健康保険に入るほうが保険料が少なくなるケースがあり、こちらを選択する方もいらっしゃいます。

国民健康保険には、被扶養者制度がありませんので、被扶養者の分も保険料が必要になります。その点、任意継続健康保険ならば、在職時と同様に被扶養者制度を利用できます。

税金は、収入なり所得に応じて、その金額が決まるものです。一方、社会保険料も収入に応じて決まるのですが、両者には違いがあります。

その違いは、税金には上限が無く、社会保険料には上限が無いという点です。

 


任意継続被保険者の保険料は、月額3万円ほどでストップする。

任意継続で健康保険に入っている人の標準報酬月額の上限が30万円に決まりましたが、これは何を意味するのか。

健康保険料には上限があると書きましたが、退職後に任意継続で健康保険に入っている方にも、保険料の上限が設定されています。

その上限が、標準報酬月額30万円という水準です。

健康保険料は都道府県ごとに違いがありますから、今回は東京都を例にします。

標準報酬月額30万円という水準は、月収が29万円から31万円の間に収まっている方が対象です。標準報酬月額のテーブルで確認すると、22等級に該当します。

健康保険の標準報酬月額や保険料を調べる

標準報酬月額が30万円の方だと、健康保険料は月29,700円です。これを会社と折半すると、本人負担は14,850円。

任意継続被保険者になると、保険料は全額負担になり、月29,700円が上限額になります。つまり、任意継続被保険者になっている2年間は、健康保険料の上限は29,700円でストップするというわけです。

付け加えておきますが、加入者全員の健康保険料が定額で月29,700円になるわけではなく、これは上限の数字です。任意継続被保険者の保険料は、在職時の収入で決まりますから、この上限額よりも低くなる方もいらっしゃいます。

月29,700円が上限になるため、それ以上の収入があっても健康保険料は増えません。

例えば、在職時に、月収60万円だった人だと、標準報酬月額の等級は33等級になり、毎月の保険料は58,410円(本人負担は29,205円)。

この方が任意継続被保険者になると、29,700円が上限ですので、全額負担だと58,410円ですが、それが29,700円に変わります。

在職時の本人負担は29,205円ですから、任意継続被保険者になって、少しだけ保険料が増えています。保険料の実質負担額は、在職時とほぼ同じと言っていいでしょう。

もう1つの例として、在職時に月収100万円だった人はどうか。

標準報酬月額の等級は43等級で、毎月の保険料は97,020円(本人負担は48,510円)。

この方が任意継続被保険者になると、保険料は97,020円ではなく、29,700円になります。

在職中の健康保険料は48,510円で、それが29,700円になるのですから、40%弱ほど保険料が少なくなります。

月収60万円だった方は、保険料はさほど変わりませんでしたが、100万円だった方は、任意継続被保険者になると、保険料が減ります。

つまり、所得が多い人の方が、社会保険料の負担が減っているのです。これが税金との違いです。

在職時の収入が多い方ほど、任意継続被保険者に切り替わった後、健康保険料が減少していると実感しやすいはずです。


高所得で社会保険料を振り切っていく。

月収70万円なり月収100万円なり、退職時にそれぐらいの収入を得ていた人たちならば、退職後に健康保険を任意継続すると、在職中の時よりも支払う健康保険料が減ります。

ただ、月収でそれほどの金額に達する方は、会社員ではさほど多くはなく、おそらく少数派ではないかと。

収入を増やして、高所得者になると、社会保険料を振り切っていくことができます。保険料に上限があるため、思いきり収入を増やせば、社会保険料は一定の上限水準で止まります。

一方、税金の場合は、上限を設けずにパーセンテージで金額を決めているため、収入なり所得が増えれば増えるほど、納税額は無制限に増えます。

高所得の方は、社会保険料については、そんなにワーワー言う事は無いでしょうが、税金に関しては色々と言っている方も多いはず。

ある一定の収入水準を超えていくと、社会保険料に対する負担感は減っていくため、その人の関心は税金に集中していきます。

収入が少ない方は、社会保険料の負担を感じやすくなります。税金に関しては、基礎控除や給与所得控除があり、さらに社会保険料控除、人によっては住宅ローン控除なども利用し、納税額を減らせます。

年末調整で受け取った還付金と、実際に支払った税金を差し引きすれば、さほど税金は払っていないと感じるのではないでしょうか。

一方で、社会保険料は毎月の給与明細に記載されますし、払った社会保険料が年末調整で還付されることもありません。

収入に応じて、パーセンテージで社会保険料が決まるため、社会保険料に上限があるというのを知らない方も多いかもしれませんが、高所得の方だと、社会保険料には上限があるんだな、とご存知の方もいらっしゃるのでは。

山口正博 社会保険労務士事務所
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