あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決するサービスを提供しています

2023年度(令和5年度)雇用保険料

令和5年度、2023年度の雇用保険料は、1000分の15.5、パーセンテージに換算すると1.55%に変わります。

2022年度は、10月から雇用保険料が変わり、1000分の13.5になっていましたが、2023年の4月からは1000分の15.5になり、1.55%の雇用保険料になります。

感染症対策のために雇用調整助成金で支払いが多く発生して、保険料を上げて財政状況を安定させていく必要がありますから、雇用保険料も上がっていくというわけですね。

とはいえ上がったと言っても1.55%ですから、給与に占める割合もさほどではありません。

令和5年度雇用保険料率のご案内(厚生労働省)

健康保険料は10%、厚生年金の保険料は18.3%ですから、社会保険料に比べれば雇用保険料は誤差程度と考えてもいいぐらいのものです。

雇用保険は失業した時しか給付が出ないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、在職中でも使える給付があります。

教育訓練給付はその代表例の1つですし、育児休業給付も雇用保険から出ますから、失業しなくても利用できる給付があります。

支払った保険料を回収するのは社会保険に比べて雇用保険は容易です。 

健康な人は健康保険料を過大に支払いますし、年金は70歳代後半まで生きないと収支トントンになりませんので、支払った保険料を回収するのは雇用保険に比べると難しくなります。

新しい雇用保険料に自動で対応してくれる給与計算ソフトとは?
雇用保険料や労災保険料、さらに健康保険料や厚生年金保険料は、あまり変わらないものもあれば毎年のように変わるものもあります。保険料が変われば給与計算で使う数字も変えなければいけませんから、手作業によるミスを防ぐには自動で給与を計算してくれるソフトを使うのが良いでしょうね。

 

1週間の起算日を変えれば時間外手当を減らせるか

1週間は月曜日から始まるのか、それとも日曜日から始まるのか

1週間の起算日は何曜日にするか。これは人によって違いがありますね。市販されているカレンダーを見ると、月曜日から始まっているものもあれば、日曜日から始まっているカレンダーもあります。

1週間は月曜から始まるのが自然だと思うのですが、市販のカレンダーは日曜始まりが多数派ですね。

ネットで使えるカレンダーだと1週間の始まりを何曜日にするのかを自分で決められるようになっています。

労務管理では1週間の始まりを何曜日にするかで時間外手当の計算が変わることもありますので、悩むポイントの1つになっています。

起算日の曜日が違うと時間外手当も変わる

例えば、土曜日と日曜日、週に2日が休みになっていて、土曜日に休日出勤することが時折ある、そういう職場があるとしましょう。日曜日は確実に休みになると考えてください。週に2日休みがあるものの、日曜日は休みになるけど土曜日は出勤することもある、そういう職場です。 

月曜日から金曜日まで出勤して、さらに土曜日に休日出勤する。日曜日は法定休日として休みになる。この場合は月曜日から土曜日まで出勤していて週6日勤務になっていますね。

仮に1日8時間で勤務したとして、月曜日から土曜日だと、週48時間になり、時間外労働は8時間発生しています。

土曜日に休日出勤しているので、他の日を休みにして時間の帳尻を合わせるのですけれども、仮に土曜日に出勤して翌週の水曜日に休みを取ったとしましょう。

今週は月曜日から土曜日まで出勤しているので週48時間の労働時間になります。翌週は水曜日が休みになるので、8時間分の労働時間が少なくなりますよね。

翌週のスケジュールは、月曜日と火曜日が出勤、水曜日は休み、木曜日と金曜日が出勤、さらにこの週は土曜日も休みになって日曜日はいつも通り休みとすると、1日8時間勤務で出勤したのは4日ですから週32時間の労働時間になります。 

1週間の始まりが月曜日だと、このように土曜日に休日出勤すると週48時間の労働時間になります。

では、1週間の始まりを月曜日から土曜日に変更するとどうなるか。

土曜日から1週間が始まると、土曜日に休日出勤をした後、仮に翌週の水曜日に休みを取るとしましょう。この場合、土曜日、月曜日、火曜日、木曜日と金曜日、これで週5日ですから1日8時間労働とすると週40時間になります。時間外労働が発生していない結果になりますね。

月曜日を週の起算日にすると、労働時間は週48時間になります。一方、土曜日を1週間の始まりにした場合は1週間で40時間の労働時間に収まっています。

ならば1週間の始まりを月曜日から土曜日にすれば時間外手当を減らせるんじゃないかと考えるところですよね。

月曜日から土曜日に1週間の起算日を変更してなぜ時間外手当が減るのか。このカラクリは、土曜日に休日出勤をしてから、その後に代わりの休みを取っている、という順序が前提となっているからです。つまり、先に休日出勤してから代わりの休みを取る。この順序を固定しているならば、1週間の始まりを月曜日から土曜日に変更すると、労働時間が週48時間から週40時間に減るわけです。

 

週の起算日を変えずに済ませる方法

起算日を変更するには就業規則を変更する必要があります。相応の手続きも必要になりますよね。

週の起算日をを変更しようかと考える前に、土曜日に休日出勤するよりも先に休みを取れば、1週間の始まりとなる曜日を変更する必要はありません。

どういうことかというと、土曜日に出勤することがわかっているならば、それよりも前の日、例えば水曜日に休みを取っておく。水曜日に休みを取った後、土曜日に休日出勤をすれば、1週間の始まりを月曜日から土曜日に変更した場合と同様に週40時間の労働時間内で収めることができます。

今週の水曜日に休みを取ろうが、翌週の水曜日に休みを取ろうが変わりはありませんから、休日出勤してからその後に休みを取るのではなくて、先に休みを取ってから土曜日に休日出勤するというスケジュールならば、1週間の始まりを月曜日のままにできるでしょう。

休日出勤の代償として休みを取る時は「休日出勤の後」というのが多くの方の考えている順序でしょうけれども、休日出勤した後に休みを取るのではなく休日出勤する前に休みを取っておけば、今回のように1週間の始まりとなる曜日を月曜日から土曜日に変更する必要はありませんし、就業規則を変更する必要もないわけです。

また、休日出勤よりも先に休みを取っておけば、取れるはずの休みをいつまでも取れないという問題も起こりませんから一石二鳥です。 

労働時間の集計を簡単にしてくれる給与計算ソフトとは?
給与計算で最も手間のかかる部分というと、1ヶ月分の労働時間を集計する作業ではないかと。面倒な作業が増えると、それを手作業で行っていたとき、ミスが発生しがちです。

テレワークした日に会社の判断で有給休暇を付けていいの?

半日のテレワークに半日の有給休暇を使わせる

テレワークのやり方には職場によっていろいろなものがあるかと思いますが、テレワークを実施した日が通常想定していた時間よりも短くなって、半日で終わったとします。本来ならば8時間のところ、テレワークの仕事が4時間で終わったと仮定してください。 

そこで、残りの半日分を会社側の判断で有給休暇を付けたとしたら、どういう問題が起こるか。ちなみに、この有給休暇は法律で定められた年次有給休暇で、本人が持っている年休です。そのため会社側の判断で有給休暇を付けられてしまうと、本人が持っている有給休暇が減っていきます。 

半日だけテレワークをして、残りの半日を会社側の判断で年休を充当する。この方法ならば、1日分の給与を支払えますし、本人も給与が減らなくていいんじゃないか、という考えで会社が実施しているのかもしれません。 

テレワークでやる仕事が少なかったため、足りない労働時間を年休穴埋めする方法ですけれども、足りない労働時間を年休で穴埋めすれば、確かに給与は通常通りに支給できるのかもしれません。

労働時間や給与のことだけを考えれば、確かにこのような対応もあるのかもしれませんが、問題は会社側の判断で半ば強制的に有給休暇を使わせているという点にあります。


年休の時季指定権 有給休暇をいつ使うかは従業員が決める

有給休暇を使うかどうかは、従業員本人に時季指定権があるので、会社が一方的に年休を使わせる事はできません。半日分の給与を補てんするために半日年休を入れているのかもしれませんが、その有給休暇を使うかどうかを決めるのは使用者ではなく労働者です。 

会社ができるのは、有給休暇を取得する時季を指定されて、その指定された日に年休を取られると、明らかに業務に支障が出て回らなくなるので、他の日に変更してもらいたいという時季変更権があります。

この時期変更権は使い方に条件があって、「今回の年休は取れない」と有給休暇を拒否できるものではなく、例えば、10月10日に年休を取りたいと労働者が時季を指定をして、その日に年休で休まれるとどう考えても業務が回らなくなるので、10月10日から10月17日に変更してほしい。これが時季変更権の正しい使い方です。

時季変更権を使うときのポイントは、具体的に変更後の日程を決める点にあります。単に「今回は年休を取れません」と拒否するのではなくて、「10月10日から10月17日に変更してください。それでいいですか」と協議するのが年次有給休暇の時季変更権。

話を戻して、テレワークで半日だけ仕事をして、残りの時間は年休を充当するのは、労働者側が同意していれば良いのですけれども、会社側が一方的にそういう扱いにすることはできませんので。

半日だけのテレワークになったときは、給料も半日分にして、その時点でその日の仕事は終わりとするのが現実的な対応です。仕事の時間が半分になったのですから、給与も半分になっても、可処分時間が増えていますから、それは働く側からしたら納得できるものですし、強引に年休を使われるよりは良いのでは。

年次有給休暇の管理にまつわる疑問と正しい対応例
働いてる人にとって年次有給休暇は関心を集めますから、労務管理でも疑問や問題が生じやすいところですよね。労務管理でもトラブルになりやすいのが年次有給休暇の取扱いです。ならば年次有給休暇についてキッチリしている職場にすれば、働いている人たちからの評価も上がっていくでしょうね。

国民年金の加入年齢が65歳まで延長 加入者への利点は?

2022年時点では国民年金の保険料は20歳から60歳まで(最大40年間)支払う制度になっています(第1号被保険者|日本年金機構)。これを2025年から65歳まで国民年金保険料を払えるようになる予定です。

では、国民年金保険料を65歳まで支払うという制度に変更されたらどうなるのか。

国民年金の任意加入制度とは違うもの

ちなみに、2022年時点では、60歳から65歳の間に国民年金に入ろうとすれば任意加入制度を利用することになります。この任意加入制度というのは、入りたい人が追加で国民年金に入れるという制度ではなくて、60歳時点で年金の受給資格期間を満たせない人、または、追加で国民年金に加入することで受給額を満額に近づけたい人、そういった人が追加で国民年金に加入して受給資格期間を満たしたうえで年金を受け取れるように(もしくは増額して受け取れるように)しよう、というのが国民年金の任意加入制度です。

今回書くのは任意加入制度ではなくて、加入している被保険者が一律に60歳で被保険者期間を終えるのではなく、それを65歳まで延長して加入できるようにしましょう、という制度改正です。 

被保険者期間を5年延長して102万円の支払い増加だが

国民年金の保険料が毎月17,000円だとすると年間で204,000円。5年間ならば102万円。5年追加で国民年金保険料を払わなければいけなくなると考えると負担が102万円増えたと解釈するところですが、加入者にとってはどのような利点があるのかを考えてみましょう。

ちなみに、厚生年金の保険料は、支給される給与や賞与から天引きで回収されるので、会社員の方や公務員の方は自分自身で保険料を払うかどうかをコントロールできません。厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれていますから、給与や賞与から天引きで保険料を払うと、厚生年金保険料と国民年金保険料を同時に払っていると扱われます

一方で、国民年金の保険料は、保険料を払うかどうかは本人がコントロールできるようになっています。給与や賞与のように天引きするものがありませんから、 本人から自主的に保険料を払ってもらうようになっているのが国民年金です。

納付書を使って郵便局やコンビニなどで支払ってもいいですし、クレジットカードで払うこともできます。銀行の口座から振替で払うこともできます。さらに、今後、電子マネーでも国民年金保険料を払えるようになる予定です。

国民年金の保険料|日本年金機構

厚生年金との違いは、国民年金は保険料を払うか払わないか、どのタイミングで払うか、毎月払うこともできますし、1年分なり2年分を前倒しで払うこともできます(少しだけ保険料が安くなります)。

国民年金保険料の「2年前納」制度

さらに、免除制度や猶予制度(学生納付特例制度を含む)を利用して国民年金保険料を後払いにすることまでできます。厚生年金の保険料と国民年金の保険料では、それを支払う方法に違いがあるわけです。

年金の受給資格期間は25年から10年に短縮されている

60歳から65歳まで被保険者になって国民年金の保険料を払う制度に変わったとしたら、60歳から65歳までの5年間を追加で保険料を払わなければいけないのかと言うと、確かに表向きはそういうルールになります。5年で102万円という想定も正しいです。
支払う保険料が102万円増えたとなると、費用が102万円増えるということであり、加入者にとっては不利なんじゃないか、損なんじゃないかと感じてしまうところですよね。しかし、後ほど書きますが、ちゃんと利点もあります。

国民年金の年金の受給資格期間は、以前は25年でしたが、制度が改正され2022年時点では10年に短縮されています。極端な形だと、国民年金の保険料は10年分支払えばノルマをクリアしたと考えることもできます。受け取る年金額は少ないですけれども。

保険料を納付した、もしくは免除されたり猶予された期間が10年以上あれば、受給資格期間を満たしますから、受給資格期間を満たした人ならば、それ以上の期間まで強引に国民年金の保険料を集めなくてもいいだろう、という判断もあります。受給資格期間が10年に達した被保険者については、政府はそれ以上介入しないという対応もあるわけです。こうなった場合は、本人が自ら金融資産を構築して老後の生活に備える必要があります。

60歳に到達した時点で年金の受給資格期間を満たしているならば、あえて国民年金の保険料を払わずに、そのまま65歳に持ち込んでいくという選択も加入者にはあります。少ない年金額を加入者が受け入れるという前提ですが。ただし、国民年金保険料を未納している期間があると、障害基礎年金を受けられない可能性がありますので、この点は注意。

国民年金の保険料と税金の還元を受けられる

国民年金で支給される老齢基礎年金は、厚生年金から基礎年金拠出金で支えられていますし、さらに国庫負担割合が1/2です。

国民年金の老齢基礎年金を満額で受け取ると、毎月7万円強の金額になりますが、その支給される年金の半分は国庫負担ですから、受け取る年金の半分は税金が還元されていると考えることもできます。

国民年金の保険料を払うということは、将来、税金の還元を受けると解釈することもできます。逆に、国民年金の保険料を払わなければ、税金の還元を受けられないという立場になります。

厚生年金についてはまた別の話がありますけれども、国民年金の保険料については、支払うほうが加入者にとっては有利な結果になるだろうと筆者は考えています。厚生年金は報酬に比例して支払われる年金ですから、給付額を削減するのは国民年金に比べて容易です。在職老齢年金制度によって給付額が調整されるのは老齢厚生年金ですから、生活を支える基礎年金である国民年金は在職老齢年金によって調整されず、報酬に比例して支払われる老齢厚生年金は在職老齢年金によって給付額が減額されたり支給停止になったりするわけです。

国民年金の給付には手を出しにくいけれども、厚生年金の給付には手を出しやすい。こういう違いも両者にはあります。 

他の金融資産との違いを考えると、公的年金は最終的には政府が保証しなければいけないという仕組みですから、支給される金額は少ないかもしれませんが、最低限の生活費として考えるならばアリです。

公的年金だけで豊かな老後生活を送ることはできないでしょうけれども、生活を支える基礎部分の収入として位置づけるならば国民年金は役立つでしょうね。

iDeCo の掛金を拠出できる期間も65歳まで延長される

被保険者期間が延びて、国民年金保険料の納付期間が60歳から65歳まで5年延長されるならば、iDeCo の掛金を拠出できる期間も60歳から65歳まで延長されるでしょうから、 iDeCo に加入していらっしゃる方には特に朗報です。より運用資金を多くできますので。掛金を増やすと資産が増え、運用益も増えますから、加入期間が延びるのは加入者にとって利点ですね。

iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

掛金を拠出できる期間は、2022年時点では60歳までですけれども、国民年金の被保険者期間が65歳まで延長されたとするならば、それに連動しているiDeCo も65歳まで延長すると考えられますので、掛金を出せる期間も65歳まで延びると考えるのが自然です。

iDeCoの年齢要件は緩和されつつある

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000884281.pdf

65歳まで掛け金を拠出できるようになったiDeCoですが、2022年の11月時点ではさらに拠出可能な年齢を69歳まで延長するかどうかの検討がなされています。

非課税の枠を使ってインデックスファンドを購入して、資産を増加させていくことができるのが利点ですし、さらに公的年金のように年に6回、偶数月に分割で受け取っていかなければいけないものではなく、一時金としてまとめて受け取ることもできます。

69歳まで掛金を出し続けて、退職所得控除を利用してドサッと一時金で受け取ることができるのも確定拠出年金のいいところです。年金として受け取ることもできますが、一時金として受け取ることもできる。それを加入者が選択できるのですから、この点は国民年金や厚生年金よりも加入者にとって利点と言えますね。

ものは考えよう 捉え方次第で良いように解釈できる

被保険者期間が5年延びると、支払う保険料が合計で102万円増える。こう考えると加入者にとっては不利に思えるかもしれませんが、国民年金を受給すると税金の還元を受けていると捉えることができますし、 iDeCo の加入期間も65歳まで延びれば掛金を出せる期間が延びて運用する資産も多くすることができます。

厚生年金と違って保険料は所得に比例せず定額というのも加入者に有利です。

さらに、国民年金の保険料は社会保険料控除になりますから節税の効果もありますよね。 

65歳まで国民年金の被保険者期間が延びたとしても、捉え方によっては良い効果もあるのだと解釈することができるわけですね。

何事も悪いように考えれば悪くなりますが、良いように考えて対応方法を決めれば好転させることもできる例です。

給与計算をラクに。社会保険料を自動で正確に計算。
毎月の給与に社会保険料はかかりますけれども、年に数回支給される賞与に対しても社会保険料はかかります。ならば、その額がいくらになるのかを自動で正確に計算してくれると、給与計算が楽になりますよね。

60歳から65歳まで追加で国民年金に入るべきか

すでに長い期間、国民年金に加入して国民年金の保険料を払ってきた人がさらに追加で60歳から65歳までの5年間、国民年金に入って保険料を払うかどうか。

年金の受給資格期間は25年から10年に変わりましたから、年金の加入期間が10年以上に達していれば、それ以上加入しなくても年金の受給資格はあります。ただし、この10年には保険料納付済み期間だけでなく免除期間や猶予期間も含まれますから、10年だけ加入したとしても年金受給額は少額になってしまいます。

例えば、20歳から60歳まで40年間、国民年金の保険料を払ってきた方ならば、すでに十分な老齢基礎年金を受け取るだけの加入履歴があります。

この人がさらに追加で60歳から65歳までの5年間、国民年金に入って国民年金保険料を払う方がいいのかどうか。

60歳以降の対応についてはいくつか選択肢があります。

まず1つ目の選択肢としては、第1号被保険者として国民年金に入って保険料を払う。追加で5年分の国民年金保険料はかかりますが、年金の受給額は増えます。

2つ目の選択肢。国民年金保険料は保険料を払うかどうかを本人がコントロールできますから、すでに40年間国民年金に入っているので、 もう60歳から65歳までは保険料を払わない。こういう選択もできます。この判断の良し悪しは分かれますから、自己責任ですけれども。

保険料を未払いにしていると、催告の書類が届きますが、受給資格期間の10年を満たしていて、40年分の保険料を納付済み。この人に対して差し押さえでもって保険料を回収するかどうか。おそらく回収しないんじゃないかと予想できます。

どのような基準で催告書を送ったり差し押さえをしたりしているのかは非公開ですが、仮に60歳以降の保険料を払わない人がいたとしても、あえて強引に払わせるほど手間をかけてまでやることではなさそうです。

3つ目の選択肢。会社経由で社会保険に入ると、第2号被保険者になりますから、会社経由で社会保険料を払うことで国民年金保険料を払ったとの扱いにできます。月額 8万8,000円で社会保険に入ったとすると、厚生年金の保険料は18.3%ですから、1月あたり16,104 円。折半で本人負担は8,052円。 毎月8,052円の保険料で済むならば、第1号被保険者として国民年金保険料を払うよりも金額は少なくなります。

60歳以降だと、おそらく選択肢2を選ぶ方が多いのではないかと予想します。

給与計算のときの社会保険料を正確かつラクに計算したいなら
社会保険料は毎年ちょこちょこと変更があるものですから、給与を計算する時に間違わないようにするには、自動で計算してくれる給与計算ソフトの方が安心です。

履歴書を労働者名簿として使える?

人を雇って商売をしているなら、労働者名簿というものを作っておく必要があります(労働基準法107条、以下107条)。社内で従業員一覧表とか、従業員名簿のようなものを作っているかと思いますが、労務管理で必要になるのが労働者名簿なんです。

他にも賃金台帳と出勤簿を作って備え付けておく必要があります。給与計算のサービスを利用すれば自動で帳簿を生成してくれますから、手作業で作ることも減っているかもしれませんね。労働者名簿と他の2つを含めて「法定三帳簿」と言われています。他にも、労働保険や社会保険の番号や記号を管理するため、被保険者台帳を独自に作っているところもあるのでは。帳簿の類は会社にたくさんありますよね。たくさんあって管理が手間ですけれども。

労務管理では3つの帳簿を作っておく必要がありますので、紙で作るよりも自動で生成してくれるサービスだと助かりますね。

107条では労働者名簿を調製するように求めており、どんな労働者がいるかキチンと把握できるようにする目的があります。労働基準監督署の調査が来たときにも出す必要があるものです。そのため、普段から備え付けておく必要があります。

しかし、条文を読んでも、どうやって労働者名簿を作ればいいのか、どういう書き方をすればいいかが書かれていませんので、悩んでしまうところ。「労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入し」という点までは分かるものの、労働者名簿と聞くと、なんだか難しそうで手間がかかりそうな印象ですが、記載する項目は決まっています。

労働者名簿の様式は厚生労働省のウェブサイトに用意されています。

労働者名簿に記載する項目は、氏名、性別、生年月日、従事する業務の種類、住所、雇い入れ年月日、退職もしくは死亡した日の年月日、後はその他事項を記入する履歴の欄や備考欄を設けることもできます。

労働基準法施行規則 53条に労働者名簿の記載について決まりがあります。

従事する業務の種類は、職場の労働者が30人未満の場合はこの項目について書く必要はありません。そのため従業員の数が少ないところだと空欄にしておくこともあります。

労働者名簿と履歴書は似ている

氏名、性別、生年月日、住所、この4つは履歴書に書かれていますね。すべての項目が労働者名簿と重複しているわけではありませんけれども、履歴書と重複する内容がありますので、「履歴書を労働者名簿にすればいいんじゃないか」と思うところ。兼用できれば新たに労働者名簿を作る必要がありませんので。

ウェブで応募する会社ならば、エントリーデータのようなものがありますし、それを労働者名簿として再利用するのも手です。

履歴書であれデジタルデータであれ、採用後に労働者名簿として利用するとの旨を従業員に伝えておく必要がありますが、履歴書はすでに個人別になっているため、労働者名簿にするには都合が良いんですね。

履歴書の空白欄に、従事する業務の種類や雇い入れ年月日、さらに退職したときの年月日を書き込めば、労働者名簿として必要な項目が記載されていることになりますから、履歴書が労働者名簿を兼ねるとこともできるわけです。

2022年時点では、性別を記述しないようにしている申込書などもありますが、労働者名簿には性別の欄がありますから、は2022年の段階ではまだ書く必要があります。

労働者名簿をどうやって作るのか

労働者名簿のテンプレートというか様式は厚生労働省のウェブサイトに用意されています。上記でも載せているものと同じです。

履歴書と兼用せずに単独で労働者名簿を調製するならば、この様式を印刷して利用しても構いませんし、必要な項目が記載されていれば他の方法を用いても構いません。

wordで作る職場もあるかもしれませんし、A4サイズの用紙に手書きで情報を記載しているところもあるのでは。上の様式に手書きで、というのもありますね。個人別に分けておく必要がありますから、excelで一覧に、というわけにはいかないのでしょうけれども、職場の従業員名簿が表計算用のファイルならば、そこに労働者名簿と紐付けられている記号や番号を入れておくのも1つの方法でしょうね。従業員名簿から労働者名簿を検索できるようにしておくんですね。

会社ごとに労働者名簿の作り方には違いがありますので、1つの方法に固定されているわけではないんですね。

履歴書をファイルに綴じて労働者名簿にできる?

募集に応募したときに持って行った履歴書をファイルに綴じて保管している会社が過去にありました。筆者が学生だった頃のことです。パートタイムで働いていた飲食店で、従業員数は全員で8人か9人だったと記憶しています。

管理者の方が手にしたファイルに履歴書が綴じられているのを見かけて、あれが労働者名簿だったのかはわかりませんが、あのような形で労働者名簿を備えるのもアリだなと思えるものです。当時は学生でしたから労働者名簿とは何なのかは知りませんでしたけれども。

履歴書にびっしりと文字を書いている人はそう言いませんし、応募者が持ってきた履歴書に空欄がそれなりにありますから、採用した後、その履歴書の空欄に労働者名簿で必要な項目を追加で記入しておけば、労働者名簿として使えます。

労働者名簿をエクセル(excel)やGoogleドキュメント で作ってもいい?

必要な項目が記載されていれば、上記の様式第十九号でなくても構わないので、作れますよね。

表計算ファイルの一覧形式だと対象者以外も網羅的に表示してしまいますが、不要な情報をマスクして対象者のみ見えるようにして提示することも可能ではあります。

履歴書は紙の書類なので、内容を更新するときは二重線で消して上書きするという手順になるでしょうね。アナログですが労働者数が少ないならこれでも十分です。更新する機会はあまりないかもしれませんが。

Googleドキュメントで個人別に労働者名簿を作って、労働者名簿フォルダーにまとめておく。こういうやり方で労働者名簿を備えておくこともできます。履歴書をそのままファイルに綴る方法とは違いますが、デジタルデータで保管する選択も可能です。

従業員数が少ない職場なら履歴書をファイルして、他方、従業員数が多いならばデジタルデータで作成して管理していく。職場に合わせた方法を用いるのが良いですね。

労働者名簿と履歴書の違い

履歴書は採用時に使う書面ですから、労働者名簿として使われることを想定していないでしょうね。この手のものはちゃんと用途に合わせて使うものですけれども、新たに労働者名簿を作るのではなく、採用時は履歴書、採用後は労働者名簿として再利用される方が馴染みやすいのでは。

お互いに重複する項目がありますし、紙として形がありますから、そのまま兼用すればと思うのも分かります。

採用後も履歴書を利用するとの旨が従業員に伝わっていれば、このような再利用も考えていいでしょうね。

履歴書は雇い入れに関する書類で、これも保存義務があります(労働基準法109条)ので、履歴書を保存する必要があるならば、労働者名簿と兼用して、両者を1つに合体させて保存するという方法も考えられます。

労働者名簿は保存しておく

労務管理で取り扱う記録は、保存する期間が法律で定められていて、労働者名簿は3年間の保管が必要なんですね。いずれ5年に変わるのですが、当面は3年で、というのが2022年時点での取り扱い。

対象の労働者が退職してから3年ですから、思いの外長い期間です。労働者名簿だけでなく、賃金台帳や出勤簿(タイムカードやノートを使っている場合はそれを含む)も保管対象ですから、人数が増えると段ボール箱に入れて保管する必要があります。

書類のままだと段ボール箱が増えていくし、置いておくスペースも必要。

退職すれば、労働者名簿は更新されませんし、タイムカードなり出勤簿が増えていくこともないですから、書類を写真で撮っておいて、その写真データで法定の保存期間まで保管するのも手です。

他にも、書類をスキャンしてPDFで保存しておくこともできますね。デジタルデータだと段ボール箱は要りません。

労働者名簿をデジタルデータにして保存してもいい?

紙で調製した労働者名簿を携帯電話で撮影したり、職場の複合機でスキャンして、画像データとして保存することもできますね。デジタルデータに変換して、書類を処分すれば保管する場所を減らせます。

ハードディスクドライブやUSBメモリーなど物理メディアに保存する選択肢もあります。ただし、この方法はメディアを紛失する可能性がありますので、その点は注意が必要ですね。

写真やスキャンデータならば、さほど大きいデータにはならないでしょうし、クラウドストレージに入れておくのも良いのでは。

DropboxやGoogle Driveに入れておいたり、頻繁に取り出さない業務データならAmazon S3 Glacier(Amazon Web Serviceのクラウドサーバー)にアーカイブしておくのも良いですね。法律で保存期間が設定されているデータならAmazonのサーバーに入れて、指定の期間まで固めておく。 

滅多に取り出さないデータを保存しておくには適したクラウドサーバーで、取り出すときにも料金がかかるため、保存する料金が安いのが特徴。退職した人の労務データを取り出した経験がある方は多くないのでは。取り出すことなく、法律で決まった保存期間を経過するまで持っておく必要がありますが、すぐに取り出せる状態にしておく必要はありませんよね。

料金が100GBで0.1USDとすると、労務管理のデータを保管するとしても、100GBも保管するかどうか不明ですが、仮に100GBだとしても、保存しておく費用は少ないですね。反面、取り出すときに割高な料金が発生しますが、まず取り出さないデータですし、気にすることもないでしょう。

Amazonのクラウドサーバーはある程度の理解が必要で、普段からこの手のサービスに触れている方ならば使えるでしょうが、そうではない方は難しいかもしれません。慣れればそうでもないのですが、Amazon Web Serviceは専門的なサービスという印象を持っている方にはハードルが高いかもしれませんね。

在直中の方の労働者名簿はサッと取り出せるように、履歴書をファイルに綴る形式でも良いでしょう。在職の有無に関わらずデジタルデータにしておくのもありです。退職者であれ在職者であれ、全部デジタルデータで労働者名簿を備えておくと形式が統一できますし、管理もしやすいのでは。

デジタルデータで保管しても、紙のファイルで保管しても、必要な項目が記載されていて、法律で決まった期間まで保管されていればいいわけです。

労働者名簿を作る、保管する方法はいくつかありますが、従業員数が少ない職場ならば、履歴書を労働者名簿として再利用するのも良いのでは。

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