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雇用は契約。労働条件通知書(雇用契約書)を作る第一歩とは?

面接と履歴書だけの採用。労働条件通知書を作らない会社

人を採用するとき、働く条件は、就業規則や雇用契約書(雇入れ通知書や労働条件通知書という名称もある)によって示されますよね。就業規則を設けていない会社だと、雇用契約書だけで対処しているのかもしれませんし、就業規則もある会社だと雇用契約書と就業規則で役割を分けているのかもしれない。中には、就業規則も雇用契約書も無いところがあるかもしれませんね。

労働条件にはキチンと明示する必要がある部分もありますが、必要がなければ明示しなくてもいい部分もある。つまり、必要だから記載する、必要ないならば記載しないというように分けることができるのですね。

条件は書面で示すのが望ましいのですが、会社によっては就業規則どころか雇用契約書もなく、履歴書と面接だけで手続きを終わらせるところもあります。この方法ならば、応募や採用の手続きが簡単ですし、すぐに採用が決まる可能性も高いのかもしれない。採用する方も、応募する方も、手続きは簡単である方がいいと思っているのかもしれませんね。

場合によっては、何の書面も要らないときもあるのではないでしょうか。例えば、縁故採用で会社に入った場合だと、おそらく履歴書やエントリーシートを作成することなく、簡単な面談(面接よりも簡易なもの)だけで、「じゃあ、いつから来れる?」という感じになる。履歴書すら作らないのですから、おそらく契約書も作らない可能性が高い。友人の紹介でその人と同じ会社に入るとか、親の知り合いの人が経営している会社に入るとか、先輩や後輩のコネでどこかの会社に入るとか、縁故就職の例は挙げれば他にもたくさんあると思います。

私は書面なしでの雇用契約に賛成するわけではないのですが、雇用するかどうか、この組織に入るかどうかについては当事者が決めることですから、当事者が納得の上で書面を介在させない雇用を成立させることは悪いことではないと思います。

ただ、書面に条件を示しておかないと、後から「こんなはずではなかった」と思う場面が出てくるかもしれない。特に、縁故採用だと、採用する側と採用される側には特殊な人間関係があるかと思いますので、もし労働条件に疑問があっても、なかなか相手にい言いにくいのではないでしょうか。例えば、「親の紹介で入った会社だから、賞与についてアレコレと会社の人に聞くのはマズよなぁ、、」と思ったりするかもしれないですよね。

縁故採用は組織に入るためには有利な手段なのですが、いざ何かトラブルじみたことが起こると、普通に採用された場合よりも解決が厄介です。

面接と履歴書だけによる採用であれ、書面を利用しない縁故採用であれ、良いところばかりではなく、短所もあるわけです。それゆえ、簡単でもよいので、書面を介在させることで、モヤっとした状態を発生させないようにしたいところでうs。

雇用契約書なり労働条件通知書を用意すれば、キチンとした労務管理に変わる。

今まで人を採用するときに書面を作ったことが無いと、最低限の雇用契約書はどうやって作るのかも分かりませんよね。

何をどう書けば良いのか。書面の体裁はどうしたらいいのか。ハンコは押すのかどうか。書面といっても、チャンとした契約書になるわけですから、簡単にホイっと作るのは怖い感じがするはず。

そこで、まずは最低ラインの書面から作ってみましょう。

雇用契約書を作るとなると、テンプレートがないかを探すのではないでしょうか。Yahoo や Google で検索して、「雇用契約書 テンプレート」とか「雇入れ通知書 ひな形」のようなキーワードで検索した経験がある人もいますよね。

厚生労働省のウェブサイト(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/)に労働条件通知書の様式が用意されていますので、初めて書面を作る場合はこちらを参考にすると良いですね。Word版のファイルは、http://www2.mhlw.go.jp/info/download/youshiki.htm のページから利用可能です。

PDFでもWordでも良いですが、実際の書面を見ていただくと、項目が多いと思いませんか。「確かにひな形だけど、こんなにいっぱい書かないといけないの?」と思ったのではないでしょうか。

厚生労働省で紹介している様式は標準タイプのもので、どこの組織でも利用できるように、汎用化した様式で作成されています。それゆえ、会社によっては、項目が多くて使いにくいと感じるはずです。

パートタイマーや学生のアルバイトを採用するために、厚生労働省の様式をそのまま使うのはおそらく不便です。明らかに不要な項目も多いので、空欄がいっぱいできちゃいます。

そこで、必要な項目だけ残して、後は削ってみましょう。内容を削れば、A4用紙1枚に収まるでしょうから、使いやすくなるはず。


まず、http://www2.mhlw.go.jp/info/download/youshiki.htm のページにある『一般労働者用モデル労働条件通知書(常用、有期雇用型/日雇型)』という様式のWord版を見てください。

契約期間、就業の場所、従事すべき業務の内容、この3つは労働基準法施行規則5条にも記載されており、必須項目ですので、このまま使う必要があります。

次に、「始業、終業の時刻、、、」という項目があります。ここで必要な部分は、1(1)の部分にある始業時間と終業時間の部分、あとは2の休憩時間と3の所定時間外労働の有無の部分です。「以下のような制度が労働者に適用される場合」という部分は削除することができます。もちろん、変形労働時間制度やフレックス、みなし労働や裁量労働制度を利用しているならば記入する必要があるのですが、おそらくパートタイマーや学生のアルバイトに対してこれらの制度を適用している事業所は少ないと思います。

あとは、休日の部分ですが、ここも休日の曜日を指定するか、週休2日というように日数を指定するかの2パターンにすればコンパクトにできます。

休暇の部分は、会社独自に特別な休暇が無いならば、有給休暇の項目だけに限定できます。

次の賃金の部分は、最もコンパクトに記載するならば、時間給だけを書くことになる。月給も日給も時給も歩合給も適用される人はおそらくいらっしゃらないでしょうから、必要な記入欄だけを残しましょう。割増手当も労働基準法と同じならば、あえて記載しなくても半ば自動的に法律と同じ扱いになるので、会社独自に割増水準を設定しているのでない限りはカットしても差し支えない項目です。あとは、締め日と支払い日ですが、「賃金締切日:20日 賃金支払い日:月末」というようにシンプルに記載できますね。

あと、パートタイマーの採用で物議を醸すところで、退職手当と賞与があります。「パートタイマーには退職金や賞与は無いのが当たり前」と思いがちですが、無いならば無いというように示していただくほうが良いです。退職金や賞与があると思う人も中にはいらっしゃいますので、有無はキチンと示した方がいいと思います。「賞与:無し 退職金:無し」という記載だけで結構ですので、なるべく省略しないように記載していただきたいところです。

退職に関する事項のところは、定年の退職の届出について項目があります。定年は60歳でもOKなのですが、2012年時点で65歳までの継続雇用が義務化される雰囲気がありますので、もう65歳に設定しておいてもいいかもしれません。

民法627条では、「雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と書かれていますので、手続きは「退職する14日以上前に届け出ること」とするのだ妥当なところかと思います。ただ、実際には、1ヶ月前ぐらいに退職については伝えるでしょうし、1週間前に辞めるといっても辞めることができます。それゆえ、さほど強制力のある部分ではなく、あくまで目安です。

その他の部分は、「雇用保険:有 社会保険:無」というようにコンパクトにまとめる。


今まで書面で条件を示したことがない会社ならば、厚生労働省が用意している労働条件通知書から使い始めてみてはいかがでしょうか。

少しづつ、少しづつ、前へ進むような労務管理ができるよう願っています。

契約書リーガルチェックのポイント-事例でみるトラブル条項例-

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