労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

勤務シフトは契約通りに。雇用契約と実際の勤務内容が違う

ズレてますよ?

 

 

契約内容と違う働き方をする人。

雇用契約というのは、会社と社員さんとの間で雇用に関する内容を定めるものですね。

また、雇用契約というのは、口頭だけでも成立しますが、通常は、雇用契約書という文書を作って、会社と社員さんが共有します。

そして、雇用契約の内容に沿って、労務の提供と、それに対する対価の支払いが交差するわけです。


そこで、今回のテーマは、契約の内容とは異なる働き方をしているとき、契約内容と実際のどちらを基準にすべきかという点です。

例えば、週25時間で雇用契約を締結しているが、実際には週35時間勤務しているパートタイム社員さんがいるとします。

本来ならば、契約時間と実際の勤務時間が一致しているはずなのですが、この状態だと契約と実態が乖離していますよね。

では、この状態を放置していても良いのでしょうか。


週30時間を超えると、おそらく社会保険に加入する(フルタイム社員さんの勤務時間を週40時間と仮定)のでしょうが、このパートタイム社員さんの契約時間は25時間ですので、社会保険には加入しないのでしょうか。

さらには、契約時間を20時間を超えないようにして、実態は20時間を超えている(例えば、週30時間とか)という場面だと、雇用保険にも加入しないのでしょうか。

 

 

契約は外装、実態は内装。

もし、契約上は勤務時間を短くしておいて、実際はそれよりも長くしているとなると、加入すべき保険に加入していない状況にもなりますね。

例えば、実際の勤務時間は週30時間を超えているのに、雇用契約では週24時間という決め方をしていると、雇用保険には加入しているが、社会保険には加入していないという状況が生まれうるわけです。

ただ、パートタイム社員さんの場合、社会保険の加入条件に合致したからといって、すぐに加入するというわけではないんですね。

1ヶ月や2ヶ月だけ条件に当てはまっても、その段階で勤務時間を調整して、条件から外れるようにすれば、社会保険には加入しないわけです(実務では、「浸透期間」のようなものがあります)。


他方、雇用保険でも、加入には週20時間を超えることが条件なのですが、ここでも、週20時間をウロウロするような勤務時間に調整されると、加入すべきかそれとも加入しないのかという判断に迷います。


公的保険の加入というのは、きちんと線が引かれていると感じる場面もあるのですが、一方で、意外とファジーな取り扱いをしていると感じる場面もあるのですね。


かといって、ファジーな取り扱いがダメとも言い切れないとも思えます。

書類の提出期限や保険料の支払い期限を過ぎても、いろいろと理由を用意して受け付けてもらえたりして、利点を享受している人もいますから、否定しきれないのですね。


きちんとすれば、「融通が利かない」と言われるし、
融通を利かせれば、「いい加減だ」と言われるし、

悩ましいですね。

 

 

勤務する時間帯を変更しただけでも雇用契約を更新する必要があるかどうか

これまでの勤務時間は朝の8時から夕方の17時まで。休憩時間は1時間を間に挟んで勤務していたとしましょう。その勤務時間を9時から18時までに変更して、休憩時間は以前と同じ1時間のままにする。

このように条件を変更する時に、雇用契約を更新する必要があるかどうか。

勤務時間数は以前と同じで8時間ですし、休憩時間も間に1時間挟んでいる。この点も以前と同じです。変わったところは、時間帯が後ろに1時間ずれているという点です。

以前よりも労働時間が増えたり減ったりしたわけではないですし、休憩時間の増減もありません。そのような変更の際にも、雇用契約書を新たに作成して、契約内容を更新する必要があるのかどうか。

雇用契約を更新する必要はないけれども、勤務時間が変わるとの連絡通知(連絡書や案内書)のようなものを作って、個別に署名や押印などもらって、同意を取っていくだけで足りるのかどうか。

雇用契約と就業の実態は一致していることが望ましいです。契約では8時から17時までという契約であるならば、実際に働く時間も8時から17時までにするのが本来は正しいあり方です。

しかし、契約には契約自由の原則というものがあって、当事者間でどのような内容の契約にするかは任せられていますし、契約の仕方というのも裁量が与えられています。

雇用契約は書面として作成する必要があるのですが、その内容を変更する際も、本来は新しく契約書を作成して署名してもらってという手順を踏まなければいけないものの、変更箇所が軽微なものにとどまる場合は、あえて契約書を新しく作らずに、変更された部分だけを個別に通知して、同意をとっていくという形も可能といえば可能でしょう。

雇用契約を部分的に上書きしたものと考えて、変更通知でもって対応するのも1つの方法ではあります。

今回の場合だと、勤務時間数は8時間で変わっていませんし、休憩時間も1時間で変更はありませんから、雇用契約書を更新せずに、勤務時間帯が後ろにずれる、という点について知らせた書面を作って、それに対して個別に同意をもらって、署名してもらうという形であったとしても、それはそれで有効と考えざるを得ないでしょう。

勤務する時間帯が後ろに1時間ずれたからといって、働く人にとって不利益とまでは言えませんから、就業規則を変更したとしても、何か支障があるとも考えづらいです。

連絡通知などで個別に同意を取っていくならば、いっそのこと新しく雇用契約書を作成して、そこに署名してもらって同意を取っていく方が確実ではあります。書面を作る点では同じ手間ですし。

変更したのは勤務時間帯だけですから、その変更した箇所のみ変えて、他の部分は以前の契約書をそのまま写し取るようなものにしておけば足りますから、雇用契約書を新たに作成して、署名してもらう、という形の方が確実でしょうね。

 

 

 

 

業務の繁閑に合わせて勤務時間や出勤日を変えていくことができるか

雇用契約で、仮に週3日で働くと決めていたとしても、常に週3日で働くほど仕事の内容が一定しているとは限りません。

サービス業では、忙しい時期なり時間帯があるでしょうし、一方で、忙しくはない時期もあります。ならば、忙しい時には出勤する人数を多くして、勤務時間を多くして、という形にしたいし、そうでないときは、人を少なめにしたり、勤務時間を短めにしたり、という形で対応していきたい。

利益や給与は売上がないと生み出せないものですからね。

いつ忙しくなって、いつ暇になるのかがあらかじめ分かっていれば、変形労働時間制を使って、労働時間の枠を配分していけば対応できます。

しかし、日ごとに忙しさがコロコロと変化していくような職場だと、変形労働時間制では対応しきれなくなります。事前に何時間働くかを決めなければいけないのが変形労働時間制ですから。

週3日で契約してるけれども、先週は週3日で出勤してもらって大丈夫だったんだけれども、今週は週2日で足りそうだ、なんてこともサービス業では起こります。

忙しければ週3日でなく、週4日、週5日で出勤してもらいたい時もあるでしょう。一方で、仕事が多くない日だったら、週3日も必要なくて、週1日出勤してくれれば足りる、なんてこともあります。

契約で約束しているのは週3日ですから、本来は週3日で出勤できるようにしなければいけないわけですけれども、業務の繁忙期、閑散期に合わせて出勤してもらうとなると、週3日で固定していては実態に合わなくなる。

じゃあ、どうすればいいのか。

仮に今、週は週2日しか出勤できなかったとすれば、翌週は週4日で出勤してもらって、契約で約束した週3日出勤の状態を維持できるようにする。このように対処するのも1つです。振替休日なり振替出勤を使う方法ですね。

今週は週5日で出勤してもらったとなれば、契約で約束した週3日を超過していますから、契約を超えた2日分に関しては、翌週で休みにする。つまり、翌週は週1日出勤になるというわけです。

こういう形で、契約で約束した日数である週3日を、他の日や他の週と融通しながら維持していくようにすればどうか。

勤務時間でも、1日5時間出勤と契約で決めていたとして、今日は7時間勤務になったから、その代わりに明日は3時間で仕事を終えてもらう。勤務時間を振り替えるのも1つの方法でしょう。

理想としては、契約で約束した通りに、週3日勤務なら確実に週3日出勤できる。1日5時間勤務だったら出勤した日は確実に5時間働くことができる。本来なら契約通りに働けるのが理想ですけれども、業種ごとの特徴なり事情がありますから、事前に契約で決めた通りにはならないものです。 特にサービス業の場合は。

勤務日数や勤務時間を組み替えたとしても、契約で約束した日数、時間を維持するよう工夫すれば、仕事の繁閑によって仕事の忙しさに波があったとしても、ある程度は対応していけます。

柔軟に勤務時間や勤務日数を変えていけるような雇用契約書というのも作れないこともないのでしょうけれども、そのような契約書だと、いつどれだけ働けるのかがわかりませんし、偽装請負になってしまう可能性もあります。

従業員としては、どれだけ仕事があって、どれだけの収入が入ってくるのかを予測しにくく、職場としての魅力が薄れます。

勤務日数と勤務時間を雇用契約で決めて、その契約の範囲内で出勤日や出勤時間を組み替えることがある。これだったら、契約で約束した通りの仕事はできるわけですから、会社側と従業員との間での折り合いをつけられるのでは。

 

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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