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国民年金の加入年齢が65歳まで延長 加入者への利点は?

2022年時点では国民年金の保険料は20歳から60歳まで(最大40年間)支払う制度になっています(第1号被保険者|日本年金機構)。これを2025年から65歳まで国民年金保険料を払えるようになる予定です。

では、国民年金保険料を65歳まで支払うという制度に変更されたらどうなるのか。

国民年金の任意加入制度とは違うもの

ちなみに、2022年時点では、60歳から65歳の間に国民年金に入ろうとすれば任意加入制度を利用することになります。この任意加入制度というのは、入りたい人が追加で国民年金に入れるという制度ではなくて、60歳時点で年金の受給資格期間を満たせない人、または、追加で国民年金に加入することで受給額を満額に近づけたい人、そういった人が追加で国民年金に加入して受給資格期間を満たしたうえで年金を受け取れるように(もしくは増額して受け取れるように)しよう、というのが国民年金の任意加入制度です。

今回書くのは任意加入制度ではなくて、加入している被保険者が一律に60歳で被保険者期間を終えるのではなく、それを65歳まで延長して加入できるようにしましょう、という制度改正です。

被保険者期間を5年延長して102万円の支払い増加だが

国民年金の保険料が毎月17,000円だとすると年間で204,000円。5年間ならば102万円。5年追加で国民年金保険料を払わなければいけなくなると考えると負担が102万円増えたと解釈するところですが、加入者にとってはどのような利点があるのかを考えてみましょう。

ちなみに、厚生年金の保険料は、支給される給与や賞与から天引きで回収されるので、会社員の方や公務員の方は自分自身で保険料を払うかどうかをコントロールできません。厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれていますから、給与や賞与から天引きで保険料を払うと、厚生年金保険料と国民年金保険料を同時に払っていると扱われます

一方で、国民年金の保険料は、保険料を払うかどうかは本人がコントロールできるようになっています。給与や賞与のように天引きするものがありませんから、 本人から自主的に保険料を払ってもらうようになっているのが国民年金です。

納付書を使って郵便局やコンビニなどで支払ってもいいですし、クレジットカードで払うこともできます。銀行の口座から振替で払うこともできます。さらに、今後、電子マネーでも国民年金保険料を払えるようになる予定です。

国民年金の保険料|日本年金機構

厚生年金との違いは、国民年金は保険料を払うか払わないか、どのタイミングで払うか、毎月払うこともできますし、1年分なり2年分を前倒しで払うこともできます(少しだけ保険料が安くなります)。

国民年金保険料の「2年前納」制度

さらに、免除制度や猶予制度(学生納付特例制度を含む)を利用して国民年金保険料を後払いにすることまでできます。厚生年金の保険料と国民年金の保険料では、それを支払う方法に違いがあるわけです。

年金の受給資格期間は25年から10年に短縮されている

60歳から65歳まで被保険者になって国民年金の保険料を払う制度に変わったとしたら、60歳から65歳までの5年間を追加で保険料を払わなければいけないのかと言うと、確かに表向きはそういうルールになります。5年で102万円という想定も正しいです。
支払う保険料が102万円増えたとなると、費用が102万円増えるということであり、加入者にとっては不利なんじゃないか、損なんじゃないかと感じてしまうところですよね。しかし、後ほど書きますが、ちゃんと利点もあります。

国民年金の年金の受給資格期間は、以前は25年でしたが、制度が改正され2022年時点では10年に短縮されています。極端な形だと、国民年金の保険料は10年分支払えばノルマをクリアしたと考えることもできます。受け取る年金額は少ないですけれども。

保険料を納付した、もしくは免除されたり猶予された期間が10年以上あれば、受給資格期間を満たしますから、受給資格期間を満たした人ならば、それ以上の期間まで強引に国民年金の保険料を集めなくてもいいだろう、という判断もあります。受給資格期間が10年に達した被保険者については、政府はそれ以上介入しないという対応もあるわけです。こうなった場合は、本人が自ら金融資産を構築して老後の生活に備える必要があります。

60歳に到達した時点で年金の受給資格期間を満たしているならば、あえて国民年金の保険料を払わずに、そのまま65歳に持ち込んでいくという選択も加入者にはあります。少ない年金額を加入者が受け入れるという前提ですが。ただし、国民年金保険料を未納している期間があると、障害基礎年金を受けられない可能性がありますので、この点は注意。

国民年金の保険料と税金の還元を受けられる

国民年金で支給される老齢基礎年金は、厚生年金から基礎年金拠出金で支えられていますし、さらに国庫負担割合が1/2です。

国民年金の老齢基礎年金を満額で受け取ると、毎月7万円強の金額になりますが、その支給される年金の半分は国庫負担ですから、受け取る年金の半分は税金が還元されていると考えることもできます。

国民年金の保険料を払うということは、将来、税金の還元を受けると解釈することもできます。逆に、国民年金の保険料を払わなければ、税金の還元を受けられないという立場になります。

厚生年金についてはまた別の話がありますけれども、国民年金の保険料については、支払うほうが加入者にとっては有利な結果になるだろうと筆者は考えています。厚生年金は報酬に比例して支払われる年金ですから、給付額を削減するのは国民年金に比べて容易です。在職老齢年金制度によって給付額が調整されるのは老齢厚生年金ですから、生活を支える基礎年金である国民年金は在職老齢年金によって調整されず、報酬に比例して支払われる老齢厚生年金は在職老齢年金によって給付額が減額されたり支給停止になったりするわけです。

国民年金の給付には手を出しにくいけれども、厚生年金の給付には手を出しやすい。こういう違いも両者にはあります。 

他の金融資産との違いを考えると、公的年金は最終的には政府が保証しなければいけないという仕組みですから、支給される金額は少ないかもしれませんが、最低限の生活費として考えるならばアリです。

公的年金だけで豊かな老後生活を送ることはできないでしょうけれども、生活を支える基礎部分の収入として位置づけるならば国民年金は役立つでしょうね。

iDeCo の掛金を拠出できる期間も65歳まで延長される

被保険者期間が延びて、国民年金保険料の納付期間が60歳から65歳まで5年延長されるならば、iDeCo の掛金を拠出できる期間も60歳から65歳まで延長されるでしょうから、 iDeCo に加入していらっしゃる方には特に朗報です。より運用資金を多くできますので。掛金を増やすと資産が増え、運用益も増えますから、加入期間が延びるのは加入者にとって利点ですね。

iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

掛金を拠出できる期間は、2022年時点では60歳までですけれども、国民年金の被保険者期間が65歳まで延長されたとするならば、それに連動しているiDeCo も65歳まで延長すると考えられますので、掛金を出せる期間も65歳まで延びると考えるのが自然です。

iDeCoの年齢要件は緩和されつつある

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000884281.pdf

65歳まで掛け金を拠出できるようになったiDeCoですが、2022年の11月時点ではさらに拠出可能な年齢を69歳まで延長するかどうかの検討がなされています。

非課税の枠を使ってインデックスファンドを購入して、資産を増加させていくことができるのが利点ですし、さらに公的年金のように年に6回、偶数月に分割で受け取っていかなければいけないものではなく、一時金としてまとめて受け取ることもできます。

69歳まで掛金を出し続けて、退職所得控除を利用してドサッと一時金で受け取ることができるのも確定拠出年金のいいところです。年金として受け取ることもできますが、一時金として受け取ることもできる。それを加入者が選択できるのですから、この点は国民年金や厚生年金よりも加入者にとって利点と言えますね。

ものは考えよう 捉え方次第で良いように解釈できる

被保険者期間が5年延びると、支払う保険料が合計で102万円増える。こう考えると加入者にとっては不利に思えるかもしれませんが、国民年金を受給すると税金の還元を受けていると捉えることができますし、 iDeCo の加入期間も65歳まで延びれば掛金を出せる期間が延びて運用する資産も多くすることができます。

厚生年金と違って保険料は所得に比例せず定額というのも加入者に有利です。

さらに、国民年金の保険料は社会保険料控除になりますから節税の効果もありますよね。 

65歳まで国民年金の被保険者期間が延びたとしても、捉え方によっては良い効果もあるのだと解釈することができるわけですね。

何事も悪いように考えれば悪くなりますが、良いように考えて対応方法を決めれば好転させることもできる例です。

60歳から65歳まで追加で国民年金に入るべきか

すでに長い期間、国民年金に加入して国民年金の保険料を払ってきた人がさらに追加で60歳から65歳までの5年間、国民年金に入って保険料を払うかどうか。

年金の受給資格期間は25年から10年に変わりましたから、年金の加入期間が10年以上に達していれば、それ以上加入しなくても年金の受給資格はあります。ただし、この10年には保険料納付済み期間だけでなく免除期間や猶予期間も含まれますから、10年だけ加入したとしても年金受給額は少額になってしまいます。

例えば、20歳から60歳まで40年間、国民年金の保険料を払ってきた方ならば、すでに十分な老齢基礎年金を受け取るだけの加入履歴があります。

この人がさらに追加で60歳から65歳までの5年間、国民年金に入って国民年金保険料を払う方がいいのかどうか。

60歳以降の対応についてはいくつか選択肢があります。

まず1つ目の選択肢としては、第1号被保険者として国民年金に入って保険料を払う。追加で5年分の国民年金保険料はかかりますが、年金の受給額は増えます。

2つ目の選択肢。国民年金保険料は保険料を払うかどうかを本人がコントロールできますから、すでに40年間国民年金に入っているので、 もう60歳から65歳までは保険料を払わない。こういう選択もできます。この判断の良し悪しは分かれますから、自己責任ですけれども。

保険料を未払いにしていると、催告の書類が届きますが、受給資格期間の10年を満たしていて、40年分の保険料を納付済み。この人に対して差し押さえでもって保険料を回収するかどうか。おそらく回収しないんじゃないかと予想できます。

どのような基準で催告書を送ったり差し押さえをしたりしているのかは非公開ですが、仮に60歳以降の保険料を払わない人がいたとしても、あえて強引に払わせるほど手間をかけてまでやることではなさそうです。

3つ目の選択肢。会社経由で社会保険に入ると、第2号被保険者になりますから、会社経由で社会保険料を払うことで国民年金保険料を払ったとの扱いにできます。月額 8万8,000円で社会保険に入ったとすると、厚生年金の保険料は18.3%ですから、1月あたり16,104 円。折半で本人負担は8,052円。 毎月8,052円の保険料で済むならば、第1号被保険者として国民年金保険料を払うよりも金額は少なくなります。

60歳以降だと、おそらく選択肢2を選ぶ方が多いのではないかと予想します。

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